今日の投稿は無理そうです(雑記)

今日は時間が取れなくて、まだ数行しか書けていない状態です。
体調を崩しているわけではないので、今日の分は明日か遅くても明後日には投稿したいつもりでいますが、若干寝不足気味なのと、明日7周年なのでそれに関する記事の方を優先して、もしかしたら1回お休みになるかもしれません。

何のお知らせもなく予定されてた更新がされないと心配をかけてしまいそうなので、短いですが雑記を書いておきます。

 
 
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HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

ここがオメガバースの世界なら15

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 部活の練習に参加復帰する少し前から、リハビリ混じりの自主練に彼も付き合ってくれるようになった。ただただ走ったり柔軟したり筋トレしたりの日々を抜けて、競技の感覚を取り戻していくための訓練には、経験者である彼の協力がありがたかった。
 医者には、日常生活に問題ない範囲までの回復は可能だと言われたが、競技者として活躍できるほどに回復出来るかはわからないと言われている。
 正直に言ってしまえば、怪我を理由に競技をやめる事も考えたのだけれど、活躍できるほど、というのはレギュラー陣に混じって今までと同じように試合参加するのは難しいかもしれない、という意味であって、もう競技が出来ないと言われたわけじゃない。
 どこまで復帰できるかわからないからもういいと、何の努力もせずに諦めて辞めてしまったら、競技そのものは好きだからと楽しそうに試合を見に来てくれていた彼に幻滅されそうな気がしたから。という理由がそこそこの比重を持っていることを、自覚していた。
 だから、自主練に付き合ってくれる彼が楽しげにしているのが嬉しかったし、結局試合に出られる程には回復しないまま引退を迎えてしまったことがなんとなく申し訳なかった。
「ごめん……」
「え、いきなりなんの謝罪?」
 引退後、最初に顔を合わせた時には思わず謝罪が口をついてしまったが、相手からすれば意味がわからないものだったらしい。
「夏の大会終わったから」
「あ、負けちゃったのか。え、でも、試合出てなかったんだよね?」
 試合に出られないのは確定だったので、相手はもちろん観戦には来ていなかった。
「だから、お前にも散々自主練付き合ってもらったのに、試合出られないまま引退になったから、ごめん、って」
「えー……っと、聞いても意味がわからないんだけど」
 困惑顔は本気で意味がわからないと言っているようだ。
「いやだから、俺が復帰できるようにって、お前もあんなに協力してくれてたわけだろ。なのに、結果出せなかったから」
「ああ、なるほど。いやでも謝られても困るというか、そもそもお医者さんの見立てだって強豪校で活躍できるレベルに回復するかわからないって言われてたわけだし、確かに試合復帰できたらいいよねって応援はしてたけど、その応援に応えられなかったなんて理由で謝らないでよ。それに回復が思うように進まないのも俺的にはちょっと有り難かった部分あるし」
「有り難かった?」
「あー……いやだって、俺とじゃ実力に差がありすぎだったところを、俺相手でもそこそこ形になると言うか、その、お前からしたら俺レベルに落ちたって感じだろうからあんまり喜んじゃダメだとは思ってるんだけど、でも、自主練誘ってくれたの本当に嬉しくて。それに、お前が怪我して前みたいに活躍できなくなったのを残念って思う気持ちはもちろんあるんだけど、隣に住む幼馴染としては、お前の怪我があったおかげで昔みたいにお前と一緒に遊ぶ時間が一杯出来たのも、すごく嬉しかった」
 だから謝らないでよと告げる彼は、どこか照れている様子で笑っている。嘘でもお世辞でもなく、本当に、嬉しそうだと思った。
 怪我をした後、ずっと残念だと惜しがられるばかりで、リハビリを重ねても思うように動かない体に苛立つことが多く、だからこそ、自主練に付き合ってくれる彼の楽しげな様子に救われていた部分は大きいのだけど。それをはっきりと、嬉しかった、という言葉にされたことで、抑えが効かなくなる。
「え……」
 気づいた時には相手の唇を奪った後で、目の前には呆然とこちらを見上げる彼の顔がある。
 とうとうやらかしてしまった。とは思ったが、後の祭りでしか無い。
「お前が、本当に俺のオメガなら、良かったのに」
 どうせやらかした後なので、やけくそ気味に、長いこと抱えていた想いも吐露してしまう。
「は……?」
「ファーストキス、勝手に奪ったのは、本当に、ごめん」
「ふぁーすときす……」
 単語を繰り返すようにつぶやいた後で、ようやくその事実を認識したらしい。一気に顔を赤くして狼狽える姿を、間違いなく、可愛いと感じている。

続きました→

 
 
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ここがオメガバースの世界なら14

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※ ここから攻めの視点になります

 退院初日に衝動的に手を出してから先、相手とはたまに抜き合うような妙な関係が続いている。一緒に同じBL本を読んだ結果、こいつ相手なら有りかもと思ってしまった気持ちに間違いはなく、腐男子でもなければ彼女しか居たことがない異性愛者だったはずが、彼の手で気持ちよく果てれてしまったせいだ。
 入院生活で溜まっていた、というのも絶対に大きな要素の一つだったと思うが、初回はともかく、退院してたやすく一人で処理出来る状態でも手を伸ばしてしまう程度には、相手との行為を気に入ってしまっている。
 相手も気持ちよさそうにしているし、アルファもオメガもない世界で番の機嫌を取るために嫌々言うことを聞いているとは思えないし、多分きっとそれなりに、何かしら得るものがあってこちらの誘いに乗ってくれているんだろう。
 まぁ突っ込ませろと言ったことはないし、恋人が居たことのない相手とではキスすら躊躇ってしまうし、初回にあちこち触りまくったのは嫌そうにしてたので、現状やっていることといえば互いの性器を握って扱きあうだけだから、自慰の延長程度に思っているのでも、腐男子としての好奇心で応じているのでも構わないと思っている。
 でももし姉がこの状況を知ったら、相当怒られそうだとも思っていた。さすがに相手もこんな関係になってしまったことを知らせる気はないようだし、自分から言うはずもないので、姉に怒られる日はきっと来ないけれど。ただ、確実に、後ろめたい想いはある。
 時間に余裕があったせいで、姉が送ってきた本を読み切った上、彼のオススメなどにまで手をだしているのもあって、余計に後ろめたさを感じている可能性は高い。男同士の恋愛物語をいきなり大量に摂取したせいか、自分たちの今の状況が、めちゃくちゃ中途半端に感じてしまう。
 実のところ、いっそ恋人になってしまえば良いのかも知れない。と思ったこともあるのだけれど、恋人になんてなってしまったら現状で満足できなくなりそうな予感があるというか、恋人を免罪符に今以上の行為を要求してしまいそうで、どう考えてもBL本に毒され過ぎと判断せざるを得ない。
 だいたい相手だって、こんな関係を長く続ける気はないというか、こちらに次の彼女が出来次第きっぱりさっぱり応じるのを止めると宣言されている。浮気はしたくない、という気持ちが強いようで、彼女が出来たら絶対すぐに知らせると約束していた。
 怪我の後まともに学校に行っていなかったから、学校へ行きだしたら、彼女と別れたことを知って告白してくる女子も出てくるだろう。とは彼に指摘されるまでもなく自分自身思っていたし、実際、学校が始まってから先、告白してくれた女子はいた。
 断ったけど。
 今までだって相手は選んで付き合ってきたし、恋人が居ない状態で告白をお断りするのも初めてではなかったけれど、彼とのことがなかったらOKしていた可能性はある。どちらかというと、彼のようにせっせと世話をしてくれるようなタイプは遠慮したいのに、なぜ、恋人を作って彼との関係を終えようと思えなかったのかは不思議だ。
 部活復帰はまだ難しいものの杖は外れたし、親からのバイト代だってもう出ていないのだから、ずるずると性欲処理まがいの行為につき合わせ続けるのは止めるべきだとも思うのに。
 やはりBL本に毒され過ぎなんだろうか。
 双方、ここがオメガバースの世界なら相手が番、という変な認識を持っているのも、良くないのかも知れない。
 いっそここが本当にオメガバースの世界なら。相手がオメガで自分がその番のアルファだったなら。恋人だとか恋愛感情だとかを取り敢えず脇において、発情期だとかフェロモンだとか本能だとかのせいにして、相手を抱いてしまうことが出来るのに。

続きました→

 
 
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ここがオメガバースの世界なら13

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 口を閉ざしてしまえば、また項に相手の唇が落ちてくる。さすがにもう肩を跳ねるほどの驚きはないが、許容して流されていい場面ではないのもわかっている。
「待って待って待って」
「いや? やっぱ無理?」
「むりっていうか展開わかんなすぎる。なんでいきなりそんな気になってんの?」
「逆に聞くけど、お前、BL本読んで抜いたりって経験、ないの?」
「なっ……に、言って……」
 突然何を言い出してんだと思う傍ら、相手の言いたいことはわかった気もする。つまりさっき読んでた本にはエッチなシーンも含まれていたから、それで催したって意味か。
 え、マジで?
「お、経験ありそう」
「え、でも、さっきの、そんなエッチな話じゃなかった、よね?」
 本のシチュエーションを思い出しつつ彼相手の想像で抜いてしまうことはあるから、厳密には経験無しとは言えないかも知れないが、それを正直に伝えるつもりはないので、経験の有無については無視した。
 ただ、エッチ展開も物語の一部という捉え方をするせいか、エッチなシーンを目にしたからってそれで直接エッチな気分になることはあまりないし、それはさっき読んでいたものよりもっと過激なものを読んでも同じだから、異性の恋人を持てる彼が、男同士の、しかもそこまで過激でもない描写であっさり催しているのが信じられない。
「てかゲイなわけないし、腐男子ですら無い、のに?」
「あー……それは半分くらいお前のせい」
「え、なんで俺のせいなの?」
 責任転嫁酷いと言ったら、じゃあ半分の半分くらいと言い直されて割合が減ったけれど、割合の問題じゃない。
「だーから、腕ん中に俺を番と思ってる相手が居て、そいつが本の中のオメガに同調して片想い辛いって泣きそうになってたり、想いが通じてホッとしてたり、抱いて貰ってんの羨ましがってたら、なんつーか、ちょっと俺も手ぇ出してみたいつーか、試してみてもいいかな、って思ったんだよ」
 お前相手ならイケそうな気がした、らしい。
 彼女とは破局していてフリーの状態で、好きな相手が自分に興味を持ってくれている、というのは単純に嬉しかった。多分間違いなくチャンスだ、とも思う。けれど、じゃあ試していいよって言えるほど、奔放な生き方をしていない。いいよと言って進んだ先で、やっぱ男相手は無理だわ、なんて投げ出されてしまったらとも考えると怖かった。
 どうしていいかわからず、というよりもいいよと言っていいか迷って躊躇っていたら、背後から小さなため息が聞こえてくる。こちらがもたもたしているうちに気持ちが冷めたというか、諦めてしまったのかも知れない。
「なぁ、もしお前が、腐男子だからってリアルに男相手にどうこうするのは別だとか、俺の番になったのは俺を納得させるための口先だけの話だってなら、悪いけど一旦自分ち帰ってくんね?」
「え?」
「だって、さすがにお前居るのに一人で抜くのは気まずいじゃん」
「え、そこまで切羽詰まった話なの!?」
 催したと言っても、男同士であれこれ致す話を読んで試してみたくなった、というのが一番の目的かと思っていた。
「身も蓋もない話をすると、入院生活で溜まってる」
「ほんっとーに身も蓋もないな」
 いやでもそれでちょっと納得してしまったところはある。そういう状況だから、たいして過激でもない、しかも男同士の描写で催してしまったし、たまたま一緒に居たせいで試してみてもいいって気になったのか。
 相手の感覚としては、男友達とAV見てたら抜き合ってた、みたいなのに近い可能性がある。だからお前はBL本で抜いたりしないのって、最初に聞かれたんだろう。
「もうぶっちゃけて言うと、男同士抵抗ないならちょっと俺に付き合って」
「って、俺に何させたいの? それなりに知識はあるけど、お前と違って彼女も彼氏も居たこと無い完全未経験者だし、突っ込みたいとか言われても絶対無理だよ?」
「突っ込ませろなんて言わねぇわ。ちょっと触ってみたいのと、後まぁ、嫌じゃないなら手ぇ貸して。俺の握れそうなら握って」
 そんだけでいいから協力する気があるなら体こっち向けてよと、やっと、ずっと体に回っていた相手の腕が解かれた。

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ここがオメガバースの世界なら12

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 何を言われたか頭で理解するより先に、項に唇を押し当てられて身を竦めてしまう。
「ちょ、くすぐっぁあっっ」
 くすぐったいからやめろという抗議は、途中で驚きの声に変わってしまった。唇が触れていた場所に噛みつかれたせいだ。
 何の覚悟もなかったせいか、以前ほど相手に遠慮がなかったせいか、噛まれる前にその場所を唇で撫でられていたせいか。多分それらが重なって、ゾクリと肌が粟立つほどのくすぐったさに逃げ出そうともがく。このくすぐったさは何だかやばい。
 けれど相手に力で敵うはずがなかった。お腹に回っていた腕が肩を押さえに来て、前屈みになるのも許してくれない。
 強く噛まれているわけではないから痛みはないけれど、何度も繰り返されて腰に熱が集まってくる。やばいやばいと思うなか、ようやく、手を出すってつまりこういうことかと思い至ったけれど、わかったらわかったで益々混乱してしまう。
 なんで突然そんな気になったのかわからないし、だいたい相手にはちゃんと恋人が居るはずだ。試合を見に行くようになったら気付かないわけに行かなかったし、入院先にもお見舞いに来ていた。お見舞いでかち合った時に、紹介だってされたのに。
「ぁ、ぁっ、なんで」
 相手がモテるのはわかっているし、そもそも自分の気持ちに気づいたのも相手に初めて彼女が出来た時だったから、今更彼女を紹介されたくらいで落ち込みはしないのだけど、思い出したらどうしたって胸が痛い。だって恋人がいる状態で、別の相手に気軽に手を出せる男だとは思っていなかった。
 何度か彼女が変わっているのを知っているし、今回の相手ともそこまで真剣な交際ではないんだろうとは思う。でもだからって浮気をしていいはずがない。
「あーくそ、面倒クセェな」
「酷っ」
 唐突に始まった噛みつきは、そんなセリフとともに唐突に終わったが、これは勝手すぎると非難しても仕方がないと思う。
「いや、面倒くさいのはお前じゃなくて足の怪我。っつか、泣くほど嫌ならもっと本気で抵抗しろって」
 どうやら泣き出したことに気づいて止めてくれたらしい。泣かれても気にせず無理強いするような下衆ではなかったようでホッとした。
「退院してきたばっかの怪我人相手に?」
 体格差も力の差もわかりきっているうえで、しかも目の前に投げ出されている足は包帯が巻かれて固定されているのだ。もっと本気を出せと言われても困る。
「人が良すぎだろ。つかやっぱ腐男子っつってもリアルで男相手にどうこうは無理なもん?」
「腐男子以前に、浮気が無理」
「は? 浮気って?」
「お前と何かあったら、お前の彼女に申し訳ないだろ」
 病室で会ってると言えば、ようやく、彼女を紹介済みだと思い出したらしい。
「あー……あれ、な」
「わかったらこの手放せよ」
「ヤダ」
「おいっ!」
「だってもう振られてるし」
「は? ふられた?」
「まぁレギュラー落ち必至だし、部活復帰すら当分先になりそうだし、活躍できない男と付き合ってても意味ないんだろ」
「はぁ?」
「そういう相手ってわかってたから付き合ってとこあるし、気にしてねぇよ」
 それより、と一度言葉を切った相手が、またチュッと項に唇を落とした。ビクッと肩が跳ねれば、クスッと柔らかな笑いが漏れる。
「俺がフリーだったら、もっと手ぇ出しても泣いたりしねぇ?」
 彼女がいるのに、ということばかり考えていたから、そんなことを言われたって、何と返していいか全然わからなかった。

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ここがオメガバースの世界なら11

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※ ここから受けの視点になります

 読み終えたばかりの本を再読することになって、けれど想い人の腕の中でという状況に集中しきれないし、うるっとなって胸が詰まることはあっても、さっきみたいにボロボロと涙を流すようなことにはならなかった。背後の彼がこの状況にどこまで集中できたのかは知らないが、ページを捲る手が滞ることはなかったし、呼吸もずっと安定していたようだし、つまりは泣いてる気配は欠片もなかったっから、自分だけが泣くような羽目にならずにホッとしても居る。
 最後まで読み終えた相手がパタリと本を閉じるのに合わせて、小さく安堵の息を吐いた。これでもう、ここから抜け出すことも許されるだろう。
 そう思って腰を浮かしかければ、本を脇へ放った相手の腕が、それを阻止するように腹へと回ってくる。
「ひえっ」
 抱えられたお腹や相手の胸がペタリと押し付けられた背中の熱に、驚きと緊張と羞恥とでおかしな声が出てしまった。こんなの、意識せずには居られない。
「お前さぁ、もしかして好きな相手、いんの?」
「ふぁっ!?」
 は? と声を上げたつもりが、相手の息が耳に掛かったことで焦ってしまい、またしても口からは変な声が漏れる。けれど相手はこちらの様子なんてどうでもいいらしい。
「姉貴じゃない、別の誰かに片想いでもしてる? もしかして姉貴はそれ知ってて、だからお前のことはただの腐友とか言ってんの?」
 耳の横という至近距離で語られる、想い人の声にうっとり聞き入っていられるような状況でも内容でもない。
 どうしてこうなった。まさか気持ちがバレてしまったんだろうか。いやでも「誰か」と問われているから、相手にはまだ気付かれていないかもしれない。まだごまかせるだろうか。相手が彼であることさえ知られなければいい。とにかくこの状況から抜け出すのが先決だ。
「なんで、そう、思ったの」
 焦って変な声が出てしまわないようにと、ゆっくりと声を吐き出していく。吐き出す息が少し震えてしまったけれど、それ以外は多分普通に喋れている。
「だってお前がさっき泣いてたのって、主人公が片想いに苦しんでるようなシーンだったろ。そこに泣くほど感情移入できんの、お前にもそういう相手が居るからかな、って」
 言い当てられて動揺が加速するが、一緒に読んでいた今回は泣いていないのに、どのシーンで泣いたかバレている意味がわからない。
「泣かなかった、のに」
「いやわかるって。涙は流さなかったとしても、呼吸はかなり乱れてたし。つか相手ってまさか男? だから腐男子やってんの?」
「そんなわけあるかよ」
 とっさに嘘を口走れば、どっちが、と問い返されてしまう。
「どっち、って?」
「男が好き、ってのと、だから腐男子やってる、っての」
「どっち、も」
 事実。という肝心の部分だけ口を閉ざした。男が好きだから腐男子をやってるわけではないが、男を好きにならなかったら気にかけなかったと思うし、手を出す機会もなかったジャンルではあると思う。
「じゃあ片想いしてるってのは?」
「それも」
 事実。とはやはり声に出さない。
「本気にすんぞ?」
 なんで脅されるみたいにそんなことを言われなきゃならないのかわからない。
「てかさっきからなんなの。俺のことなんてどうでもよくない?」
 もしかしたら、彼の姉以外にはっきりと片想い相手が居る、という方が安心できるのかなとは思う。恋愛感情などないという訴えを心底納得してはいなかったから、彼は昔のように自分に構って一緒にいる時間を増やしたのを知っている。
 でも想う相手がいることを、想う相手本人に告げたくなんてなかった。それが自分だなんて思うはずがないから、彼ではない誰かを想っていると誤解されるに決まっている。
 相手を追求されたくないし、無責任に応援されたくもない。いやでも可能性として一番高いのは、こちらの恋情になんて全く興味がない、という対応をされることだろうか。相手が彼の姉ではない、ということにさえ納得できたら、こちらの想いなんて彼にとっては多分どうでもいい。
 俺のことなんてどうでもよくない? と告げながらも、それを肯定されたら間違いなく辛いと思ってしまうのだからどうしようもない。
「お前に好きなやつが居るなら、さすがに手ぇ出しにくいだろ」
 はあぁぁと重いため息を盛大に吐き出してしまえば、お腹に回っていた腕の力が少しだけ強くなって、次にはそんな言葉が耳に吹き込まれてきた。

続きました→

 
 
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