金に困ってAV出演してみた4

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 いつからカメラが回っていたんだろう。ちっとも気付いていなかった。
 ビックリしすぎて、妙な声を上げた後は言葉も出ない。どうしていいかわからないけど、ただただカメラを見続けるのも限界でそっと顔ごと逸らしてしまえば、やっとカメラが遠ざかる。
「驚かしてごめんね?」
 カメラと入れ替わるように戻ってきた相手に、そっと顎を取られて顔の向きを戻されてしまったけれど、対面した相手はなんだか笑いを堪えるような顔をしていた。
 それを酷いと非難していいのかすら良くわからない。だってそもそもAVの撮影に来ているのだから、撮られていることに驚いたり怒ったりするのはオカシイだろと思ってしまう気持ちがある。
「可愛いキス待ち顔、せっかくだから残して貰おうって思って」
 使って貰えたら良いなと言われながら、宥めるような軽いキスが落ちた。
 さっきみたいに触れるばかりのキスが繰り返されて、さっきの続きというか、カメラと代わる前に戻ったのかとは思ったけれど、でも今度は先を促すのを躊躇ってしまう。次はきっと、カメラに譲ったりせずにちゃんと応じてくれるんだろう、とは思うのだけれど。
「ね、怒った?」
「なんで?」
「さっきより緊張してる。緊張っていうか、警戒?」
「警戒っていうか、だって……」
「もし、いつまたカメラに代わられるんだろうって警戒してるなら、もうしない」
「え、でも、そんなの君が決められるようなもんなの?」
「少なくともさっきのは、俺がカメラ呼んでわざわざ代わっただけだから」
「え、マジで?」
「マジで」
「てかどーやって?」
「どーやってって、手で?」
 言いながら彼がカメラに向かって無言で手招いてみせれば、やっぱり無言のまま、さっき目の前にいたカメラが近づいてくる。
「え、そんな簡単に呼ばれちゃうものなの」
「そりゃせっかくのチャンスは逃さないでしょ」
 答えたのはカメラを抱えるスタッフで、そういうもんなのかと納得するしかなかった。
「でももう場所代わるのはなしにする。から、そう警戒しないで、さっきみたいに誘って?」
「えっと、善処は、する」
「あれ? 俺がカメラと場所代わったのだけが問題じゃ、ない?」
「それは……」
 さすがに、カメラが回ってると思ってなかった、なんて言えない。それはあまりにも状況を忘れすぎだという自覚はある。なのに。
「えー気になる。言えないような理由なら、こっそり俺にだけ教えてよ」
 口元にグッと耳を寄せられてしまって、躊躇いながらも結局口を開いた。
 こそっと小声で、彼にだけ聞こえるよう意識しながら、カメラが回ってると思ってなかったことと、今はもう、カメラが回ってることに気付いてしまったこととを告げる。
「ふぁっ、はっ、マジで」
 堪えきれなかったらしい笑いが彼の口から溢れて、まぁ笑われるだろうとは思っていたので、淡々とマジでとだけ返す。
「そっかそっか。それは残念。というか、それが本当なら、カメラと代わったりしなきゃ良かったなぁ」
 あのままベロチューして押し倒しちゃえば良かったと笑う顔が近づいてきて、もう何度目になるのかわからないキスをされた。でも今度は触れるだけで離れていかず、口を開けろとでも言うように唇をペロリと舐められる。
 素直に口を開いて、さっきみたいに誘ってと言われた通りにこちらからも舌を差し出せば、今度は避けられることなく相手の舌と触れ合った。

続きました→

 
 
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金に困ってAV出演してみた3

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 バレバレだろうと一応AVだの設定だのの話題は避けて、出来る限りでいいから「気付いたら閉じ込められていた初対面の二人」というていでいて欲しい。という注意を受けて何度も謝ってしまったが、初心者に設定有りの出演をしてもらってるんだからそんなに気にしなくてもいいし、問題があればまた止めたり最悪編集でどうにかするからと言われてホッとする。
 そんな中、最悪編集でどうにかなるならよほどのことがなきゃノンストップでも良いのではないかと言い出したのは相手役だった。
「えっ?」
「まぁ、閉じ込められて仕方なくセックスする辺りの設定は意識して貰うとしても、初対面の二人には違いないわけですし、別に演技なんて必要ないんじゃないかと」
 むしろ中断されると萎えると言った相手は、次からはこちらが失言しても釣られて反応はしないのでと言い切る。
「なんでそんな自信満々なの。そっちも今日が初撮影って言ってたよね?」
「それ、AVは、って注釈が付くやつです」
「AVは?」
「撮影したりされたりは慣れてんですよ。部活的なやつで」
「あー……なるほど。なんか妙にカメラに慣れてると言うか、気にならないの凄いとは思ってたけど、そういう」
「そうです。元々卒業したら即こっちの世界来たいと思ってて、童貞で処女なのも、初物は高く買ってもらえるんじゃないかなぁという目論見というか下心?」
「へぇ」
 金に困って仕方なく応募した自分とはえらい違いだ。カメラの前で童貞やら処女やらを捨てて、それすら金に変えようという精神というか発想が凄い。年齢なんて一つしか違わないのに、見た目なんて下手すりゃ中学生でも通りそうなのに、自分よりよっぽどしっかり生きてそうだと思う。
 卒業したらこの世界に来たかった、とか平然と言い切る辺り、かなり変な子っぽくはあるけれど。こちらは髪色まで変えておっかなびっくり撮影に来てるというのに、世間の目と言うか、身近な人たちへの身バレなど全く気にならないのだろうか。
 そんな事を考えながら思わず相手をジッと見つめてしまえば、今の所そう簡単に処女を捨てる気はないと前置いてから。
「バリタチ希望の童貞です」
 そんな事を言い切って可愛く笑ってみせるから笑ってしまう。
「俺に、抱かれてくれます?」
「うん。いいよ」
「キスは? しても?」
「え、まさか、それもファーストキスとか言い出す気じゃ……」
 さすがにそれはないだろと思うものの、わざわざカメラの前で童貞を捨てようとする変な子だから、キスだって未経験の可能性はありそうだ。
「ファーストキスだって言ったら、キスもさせてくれる?」
「ま、じで……」
 肯定も否定もないまま可愛い笑顔が近づいてくるのに合わせて、そっと瞼を下ろしてしまう。
 軽く唇に柔らかに押し付けられるだけの唇。それを何度も繰り返されて、自分から口を薄く開いてその先を誘った。
 けれどすぐに深いキスへとはならず、開いた隙間をチロチロと舐められてもどかしい。しかも、更に口を開いて相手の舌を絡め取ってやれと舌を伸ばせば、それを避けるみたいにスッと頭が離れてしまう。
 なんでだよ。という不満に閉じていた目を開ければ、目の前のカメラに心底驚いて、うぎゃっと変な声を上げてしまった。

続きました→

 
 
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金に困ってAV出演してみた2

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 白い壁に囲まれた小さな部屋の中、置かれているのはシンプルな白いパイプベッドと、怪しげな白い箱だけだった。
 ベッドに腰掛け、壁に向かう黒い学生服の背中を見つめているところから、撮影はスタートした。
 唯一の出入り口である、壁に作られた白いドアをガチャガチャと鳴らしていた少年が振り返って、開きそうにないですと困った顔で告げる。
「そっ、か……」
 返す声はぎこちなく、更に緊張で少し震えていたかも知れないが、多分設定的になんの問題もない。
「ヤラないと出られないって、マジだと思います?」
 ベッドへと戻ってきた少年がベッドの上に置かれた紙を指差すと、カメラがその紙に寄っていく。その紙には真っ赤な太字で大きく「SEXしないと部屋の鍵は開きません」と書かれている。
「やるなら俺、突っ込む側がいいんですけど」
 演技の続きに戻るようサインが出て、相手がそう言いながら隣に腰を下ろしてくる。
 すぐ傍らにカメラを抱えたスタッフが居るというのに、全く気にした様子もなく堂々としていて自分とは全然違う。さっき聞いた話によれば、彼も今日が初の撮影らしいのに。
「ほ、ほんき、で?」
「それ、どういう意味で?」
「どういう、って……」
「本気でセックスする気かって話なら、それ試す以外、他にやれそうなことないんで。取り敢えず試したいってのは本気で思ってますけど」
「それは、うん、まぁ、俺も、そうするしかないって、思ってる、けど」
「てことは、突っ込みたいが本気かって事?」
「だって……」
 さすがにその先は言葉にしなかったけれど、何を躊躇ってるかは多分相手にも伝わっていると思う。だって今回の撮影では、どっちが抱く側になっても良いらしいのだ。一通り目を通した台本は、本当に部屋の設定や二人の状況が書かれている程度のいい加減な出来だった。
「おにーさんが、俺に任せとけってタイプなら、俺が抱かれてもいいですけど。でも俺、処女なんで、結構手間かけさせると思いますよ?」
「え、嘘。バリタチなの?」
 自己紹介の中にはタチネコの話はなかったし、渡された台本の設定的に、てっきり相手もリバ可なんだと思っていた。
「バリタチ、なんて単語が咄嗟に出てくるくらいだから、おにーさんだって、こっちの人でしょ?」
「あ、」
 ゲイAVの撮影に来てるんだから、相手だって当然ゲイなんだという認識だったけれど、そういや見知らぬ他人といきなり部屋に閉じ込められている設定だった。
 本当に見知らぬ他人と部屋に閉じ込められてセックスを強要されたなら、まずは相手のセクシャリティを気にしたとしても不思議じゃない。というか、当たり前に相手もゲイだと認識してる方がおかしい。
「セックスしないと出られないぞ、なんていう妙な部屋に見知らぬ男二人閉じ込めるなら、ノンケ連れてくることはないだろうと思ってたけど、やっぱりね。で、おにーさんは? ネコ経験有るなら、俺の童貞食って欲しいんだけど、ダメ?」
「待って。待って。情報多い。え、なに? 今、童貞って言った?」
「言った」
「え、ちょっと、意味分かんない。なんで童貞の処女がゲイAVの撮影なんて、」
「あっ」
「はいカット」
 相手が慌てるのと、撮影の中断が宣言されたのはほぼ同時だった。

続きました→

 
 
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金に困ってAV出演してみた1

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 端的に言えばかなりの金欠で、返す当てもないのに金を借りるのは躊躇われて、だとすると後は払いの良い仕事を得るしか無い。どうせなら実益を兼ねて、なんて事を考えながら選んだのは、ゲイ動画のビデオモデル募集への応募だった。
 大量のソレ系動画が溢れる現代で、しかもゲイ向けとかなり限られた視聴者向けともなれば、そう簡単にバレるはずがない。とは思うものの、一応の用心で髪色を変えた。
 鏡の中に映る雑な金髪の男はいい感じにチャラそうで、少しばかりホッとする。そんな自分の姿を何枚か撮影し、さっそく応募してみればあっさり出演が決まり、メールのやりとりだけであれよあれよと撮影日と撮影場所が決まっていく。
 
 
 指定された日に指定された場所を訪れ、メールでやり取りしていた担当の方と合流し、今日の撮影の簡単な流れやらを聞きながらスタジオに案内される。
 そんなに緊張しなくて大丈夫と励まされながら開いたドアの先は、なかなかに異様な雰囲気だった。異様と言うか、まぁ撮影現場というものに馴染みがないってだけなんだろうけれど。
 まずは監督と紹介された方に挨拶をして、次に引き合わされたのは本日の撮影の相手役だ。まじまじと見つめてしまう先で、相手は可愛らしい笑顔を絶やさない。
「え、あの……」
「はじめまして。今日はよろしくお願いします」
 戸惑うこちらを気にすることなく差し出された手を、やっぱり戸惑いながらもなんとか握り返せば、相手は簡単な自己紹介をしてくれた。名前は当然偽名と言うか芸名なのだろうけれど、高校卒業したての18歳だという言葉には思わず本当なのかと確かめてしまう。
 目の前に立つ学生服の男の子は、どう見たって現役の学生である。中学卒業の間違いじゃないのかと言いたくなるくらいには、見た目といい体格といいどうにも幼かった。
「さすがに年齢はガッツリ確認されてますよ。大丈夫。合法ショタっ子ってやつです」
 自信満々に胸を張られてしまえばそれ以上疑うわけにも行かない。確かに既にいくつもの作品を作ってきたレーベルが、18歳に満たない子供を起用するとも思えないので、高校卒業済みというのも間違いなく事実なんだろう。
「そっか。にしても、学生服って……」
 その格好が余計に彼を幼く見せている気もする。
「ああ、これ。衣装です」
「衣装……ってもしかして俺も学生服に着替えるのか?」
「あれ? 今日の内容、まだ聞いてません?」
「まだ。撮影の流れ、みたいなのは聞いたけど」
 そう思いながら背後を振り返ったのは、もちろん、ここまで案内してくれた担当者に詳細を聞くためだ。しかし後ろには誰も居なかった。目の前の彼を紹介後は、あちらはあちらで別の作業のために離れてしまったらしい。
「台本、これです」
 急に心細くなった所に声を掛けられ慌てて向き直れば、薄い冊子が差し出されている。
「あ、台本なんて有るんだ。え、どうしよう。演技なんて出来る気しないんだけど」
 初撮影だし、現場に行って掘られてそれを撮影されて終わり、と思っていた。いや、応募時の自己PRにはタチ経験も一応は有ると書いたから、目の前の可愛らしい男の子が相手なら、今回は自分が抱く側という可能性もあるだろうか。
 マズい。その想定はなかった。最悪スタッフ任せで好きにされてれば終わるようなものかと思っていたのに、演技を求められたり、初対面の子供にしか見えない男の子を抱かなきゃならないなんて、無理としか思えない。緊張と罪悪感とで勃つ気がしない。
「高度な演技が必要な内容じゃないんで大丈夫ですよ。セリフもほぼ無いし。今回の設定みたいなもんかな」
 どうぞと言われて受け取った冊子の表紙には、SEXしないと出られない部屋に初対面の男の子二人を閉じ込めてみた、と書かれていた。

続きました→

 
 
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