竜人はご飯だったはずなのに16

1話戻る→   目次へ→

 ベッドの上で広げた足の間に、頭というか口先を突っ込まれ、伸ばされた舌で尻穴に唾液を送り込んでもらう。人の姿のときとはやっぱり全然違う。舌の長さや厚みが違うのは当然だが、鼻も口先も押し付けられていないのに、人のときよりも奥まで舌が届いているのがわかる。
 たまらなく、気持ちがイイ。
 本当はもっと竜の頭を肌で感じられたらいいんだけど。でももっと奥にと頼んだって、これ以上顔を寄せてはくれないだろうし、何かを察した彼によって足を押さえられているので、足を閉じて彼の頭を挟んでやることも出来ない。
 それでも、気持ちが良いと喘いで、もっと奥まで欲しいとねだり、キツく押さえられているわけではないから腰を揺すってみせる。
 あまり暴れるなと掛けられる言葉を無視して腰を揺すり続ければ、だんだん押さえつける力も強くなっていく。気をつけてくれているのだろうけれど、たまに爪の先が肌に刺さる痛みにゾクゾクする。痛めつけられたい被虐趣味なんてないけれど、本当の姿で触れて貰っているのだとわかるのがたまらない。
 ただ、こちらがどれだけこの行為を喜び、快楽に体を震わせたって、彼からすれば食事の疑似行為でただの奉仕で、なによりこの体を傷つける事は禁忌だった。
 唐突に、突き放されるようにして彼の舌も手も気配も遠ざかっていく。ビックリして身を起こせば、彼がこちらの腿を凝視しながら固まっていた。
 その視線をたどるように自分の脚へと目を向けて気づく。彼の爪によって裂かれたらしきところから、わずかに血が滲んでいた。
「あー……こんなの気にしなくていい。っつってもやっぱ無駄、だよな」
「すまない」
「いや多分、謝るのこっちの方。お前が押さえつけてくるの嬉しくて、かなりお前煽った自覚ある」
「押さえつけられるのが、嬉しい? のか?」
 酷く困惑させている。さんざん重ねた食事タイムは、基本的には優しさと楽しさと気持ち良さで満たされていて、無理やりされたいなんて様子を見せたことはなかった。
「というかお前の爪が肌に当たってチクってするのが、人じゃないお前が触れてくれるんだって思えて、凄く嬉しかった。お前の頭挟ませてくれないし、もっと奥にってどんだけ言っても、ケツ穴に口先押し付けてもくれないから」
「私の硬い皮膚が擦れたら、お前の肌に傷がつく」
「それはわかってるんだけど。わかってるつもりだったけど」
 でも調子に乗って爪を立てさせて、結果あっさり放り出されたことを思うと、やっぱり考えなしだったかもしれない。
「やっぱ、もう二度としない、とか言い出す感じ?」
「なぜ、私、なんだ」
 ああこれ、また世話係の彼に頼めって言われるパターンだ。でも世話係の彼とは、性的な方面で深い関係になるつもりはなかった。少なくとも、目の前の男が、自分よりも彼をと勧めてくるうちは。
「そんなの、お前がいいから以外の理由があるかよ」
「食事とセックスがセットになっているから、いやらしい事を頼むのは私にと、思い込んでいるだけじゃないのか。あの子に舐めてもらった事はまだないんだろう?」
「あいつのが上手に舐めれて、俺を傷つけること無く、もっと気持ち良くしてくれるはずだって、そう言いたいわけ?」
「まぁ……そうだ、な」
 聞けばやはり、少し躊躇ったあとで肯定された。
 そりゃ確かに、彼に頼んだらもっと気持ち良くなれる可能性はある。ただしそれは今ではなく、将来的に、というやつだ。彼なら、こちらがどうすればより気持ち良くなれるかを、一緒に探ってくれるはずだからだ。
「俺さ、風呂入った時に、あいつに体洗ってもらうのめちゃくちゃ好きなんだけど、それ知ってる?」
「お前の体を、直接手の平で擦って洗っている、という話は聞いているが、それが何か?」
「俺の体に傷つけたら大変なのはあいつも一緒どころか、多分、あいつの方が問題になるよな。でも、あいつは俺のお願いに折れて、ゆっくり俺への触り方を覚えてくれただけなんだよ。お前みたいに魔法で人の姿になるって逃げが出来ないから、最初の頃はホントおっかなびっくりで、ちっとも気持ち良くなんかなかった」
 一度言葉を切って、何が言いたいかわかるかと聞いてみる。相手は渋々ながら頷いているから、多分、ちゃんと伝わっているだろう。
「俺は、アイツじゃなくてお前に、尻穴舐められるだけでイケるくらい上手になって欲しい。ついでに言うなら、繁殖期じゃないお前を性的に気持ちよく出来る方法があるなら、それを知りたいし実践したい。食事目的じゃなく、もっとお前といやらしいことがしたい。人の姿じゃない、そのままのお前と、したい」
「まるで……」
 戸惑う相手の顔に、ゆっくりと朱がさしていく。竜人は表情が読みにくいと思っていたこともあるけれど、とっくに慣れたし、慣れれば簡単にわかってしまう。
「プロポーズを受けているような気分だ」
 さすがに飛躍しすぎだと思ったけれど、それは人の常識で考えてしまうからなんだろう。彼らの繁殖に関する話は詳しく聞けていないし、そもそも結婚という概念があるらしいことすら今知ったのだけど、それならそれでいいかなと思ってしまう気持ちもある。
「プロポーズだっつったら、受けてくれんの? でもって俺と一緒に、この部屋で新婚生活とかしてくれんの?」
 言いながら、それってかなり理想的な生活なのではと思う。もしそうだってなら、本気で結婚してくれと頼み込みたいくらいだ。
 しかし相手は酷く狼狽えてしまって、なかなか次の言葉が出ないようだった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

竜人はご飯だったはずなのに15

1話戻る→   目次へ→

 さすがに相手も驚いたようで、対面に腰掛けることはせず、座るこちらの脇に立って心配げに顔を覗き込んでくる。世話係の彼じゃないから、宥めるように背を撫でてくれる手はない。
「どうした。この場合、私はどうすればいい?」
 世話係の彼を呼んで来たほうがいいかという言葉に必死で首を横に振り、なんとか咽る合間にちょっと待ってと絞り出す。それだけでも苦しくて、背中を撫でてとまでは頼めなかった。
「ん゛っ、……んんっ、あ゛ー……」
 ようやく吐き気も収まって、脱力するように椅子の背に体をもたれかけながら、大きく息を吐く。
「何アレ。さすがに吐くかと思った」
 多分かなり初期の頃の味に近い。そう思うと、あれでも随分と味の改良がされているらしい。今となってはよくこんなもの飲めてたなと思うけれど、やはり慣れと飢えなんだろう。飢えた体には、こんな味でもこの液体が必要だった。
「おかしいな。味は良くなっていると聞いていたのだが」
「あんな不味いの、久しぶりすぎ。てか口直しを要求する」
「キスか?」
「そーだよ」
 相手に向かって顎を突き出し、大きく口を開けて待つ。思わず肯定したけど、どう考えてもこれは、キスを待つと言うより唾液を垂らされることを待つ姿だなと思う。
「ぁぃ?」
 おそるおそるといった様子で両頬を相手の手に包まれて、咄嗟に口を開けたまま「なに?」と問いかける。
「動かれると怖い」
「ああ、」
 なるほど。世話係の彼と違って、この彼には竜人の姿で触れてもらうことが殆どなかったんだった。今、こわごわと頬に添えられている手だって、もちろん初めて触れられている。
「口ン中唾液ためて、舌に乗せて差し出して」
 ためた唾液を落としてくれてもいいんだけど、どうせならその舌に触れたい。パクリと喰んで舐め啜りたい。
 言われるまま閉じた口をモゴモゴと動かした後、不鮮明な発音で「こうか?」と言ったらしい相手が、濡れた舌を伸ばしてくる。
「うん、そう。そのままジッとしてて」
 頬を包む手を振り切るように、グッと相手の口先へ顔を寄せた。甘いは甘いのだけれど、やはり濃厚さが段違いだと思いながら、口の中へ迎え入れた相手の舌をくちゅくちゅと舐めしゃぶる。
 ここ暫く世話係の彼からの口直しもなかったせいで、本当に久々に味わう旨味を、うっとりしながらひたすら堪能した。
 肉厚の長い舌にチュウチュウ吸い付いていると、体の奥がぎゅんぎゅん蠢いて、足りないもっとと訴える。勃ちあがった性器で塞がれ、擦られ、腸内へたっぷり精液を注がれたいと、ハクハクと尻穴が開閉してしまう。
 それが無理だってことは、わかっているけれど。
「抱かれたい」
 口を離して、熱を持った息とともに訴えれば、相手は少し困ったように苦笑して、それは無理だと返してきた。
「ん、知ってる。だから、さ」
 椅子の上に両足を持ち上げ、腰を突き出すようにしながらM字にした足を開く。下着はないので、はしたなく息づく尻穴も丸見えだろう。
「こっちにも、ちょうだい」
「話がしたいと、聞いてきたんだが」
「話はしたいけど、これは、あんな不味いの持ってきたお前が悪いよ」
 いつも通りなら、口直しが無くても耐えられたはずだ。ここ最近は世話係の彼との口直しのキスを断っていることだって、きっと知っているはずだ。
「ただでさえお前の唾液ってめちゃくちゃ美味いのに、今の俺に口直しでそれを与えたらどうなるか、わかんなかったの?」
「キスは飽くまで口直しで、抱けないなら舐めてとは言えないんじゃなかったのか」
「それ、世話係のアイツだったらの話だろ。今、眼の前に居るのがアイツなら、抱かれたくてたまらないからお前を呼んでって頼むけど。でも、今眼の前に居るのはお前なんだから、抱けないなら舐めて、であってる」
 早くと急かしたら、せめてベッドへ移動してくれと頼まれた。ただでさえ竜人の姿のままで触れるのは怖いのに、椅子の上なんて狭い場所でどうこうするのは心臓に悪いということらしい。
「なら連れてって」
「しかし」
「力加減誤って、多少傷ついたっていいから。それより俺に触ることに、慣れろよ。アイツに出来るんだから、お前だって出来る」
「簡単に言わないでくれ。小さな彼と私とでは、加減する力も大きく違う。こんなことになるなら、人の姿で来ればよかった」
 人の姿だと力も弱まるのかと思ったら、人の肌は柔らかくどこもかしこも滑らかで鋭い爪などもないから、触れ合って傷つけてしまう可能性が段違いということらしかった。しかもやっぱり魔法はかなり苦手らしく、今すぐこの場で簡単に人の姿になることは難しいらしい。それはある意味ありがたかった。
「人の姿が嫌だとは言わないけど、俺はやっぱり、この姿のお前にも、もっと色々触れて貰えるようになりたい。だからまぁ、力加減、頑張って」
 抱き上げてというように腕を伸ばせば、ようやく諦めたような小さなため息の後で、たくましい腕がそっと体に回された。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

竜人はご飯だったはずなのに14

1話戻る→   目次へ→

 話し相手もゲーム相手も風呂も断って、ひたすら暇な時間を一人で過ごす。朝夕に飲まされる液体の味は一向に美味しくなる気配はないけれど、比較的マシなレベルを維持していたから、口直しのキスもねだらない。
 世話係の彼は心配そうにはするけれど、もう、話をしたいとか触りたいとは言わずに、こちらの体調に変化がないか、何か要望はあるかを確認して部屋を出て行く。
 要望は、食事担当の彼に会いたい、と繰り返している。抱かれる食事がしたいのではなく、ただ会いたいのだと、繰り返し伝えた。
 世話係の彼を拒絶し、食事担当を呼べと繰り返すこちらに、彼らがどういう判断を下すのかはわからない。世話係の彼では手に負えない、という状況を作り出すことは、世話係の彼がこの仕事を外されるリスクを負うことでもある。
 でもこのまま世話係の彼と友好的な関係を深めていって、世話係の彼さえ傍にいれば問題ないだろうと判断されるのは困る。問題ないからとこのまま食事の頻度を下げられて、食事担当の彼と会える機会がどんどんと減っていく未来を、本気でどうにかしたかった。
 そんなこちらの気持ちを、世話係の彼は了承済みだ。嘘の報告は出来ないから、本当に接触を最低限に控えて、互いにそっけない態度を取っている。
 正直に言えば世話係の彼がリスク含めて丁寧にアレコレ考えてくれた中から、一番手っ取り早そうなものを選んで決めた計画だけれど、即効性があるのもがキツイのは定石だ。何もすること無く静かな部屋に一人で居ると、ベッドの中でただただ死を待っていたあの時を思い出してしまってゾッとする。
 あの時は近づく死にホッとする気持ちもあったけれど、そう思うと、今はもう死にたいとは欠片も思っていないらしい。竜人たちのモルモットで、セックスが食事で、むりやり生かされているはずなのに、自分に関わってくれる二人の竜人があまりに優しいから、死ぬことも、この生活から必死で抜け出すことも、考えられなくなっている。
 ただ、この生活を続けてもいいと思うには、間違いなく二人とも必要だった。世話係の彼はそれをわかってくれているから、こうして協力してくれるけれど、食事担当の彼にはこれからそれを理解して貰わないといけない。そう思うと気が重くもなって、不安が増していく。
 早く会いたいのに、会うのが怖い。
 そんな不安定な気持ちを持て余しつつ、待つこと数日。例の液体を持ってカーテンを開けに来たのは、世話係の彼ではなく食事担当の彼だった。
 日中も暇を持て余して寝てしまうからか、ここ数日の生活リズムなんてメチャクチャで、ベッドの中で横になっていたけれど深く眠っては居なかったから、すぐに誰が入ってきたのかわかって慌てて身を起こす。
「おはよう」
「おは、よう」
 目があってなんとか挨拶を交わしたものの、ひどく緊張しているのがわかる。戦略だの駆け引きだのは全く得意じゃないのに、これからこの彼相手に、食事以外でもっと会いたいというこちらの要望を飲んでもらわなければならないのだから当然だ。
「たしかに酷い顔をしてるな。起きてこれるか?」
「大丈夫」
 そうかと言った彼は真っすぐテーブルセットに向かい、そこへコップを置くと、今度はカーテンへ向かっていく。
 彼がカーテンを開けて戻ってくるのと、こちらが椅子に腰掛けたのは、ほぼ同時だった。
「どうしても私に話したい事があると聞いてきた」
「ん、来るの、待ってた」
「でもまずはこれを飲んでからだ」
 頷いてテーブルの上のコップを手に取り、いつも通り一息に飲み干したが、どうやら油断していた。ここ暫くそこそこ安定したマズさだったのに、久々のゲロマズさに驚いて、暫く咽てえずいて大変だった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

竜人はご飯だったはずなのに13

1話戻る→   目次へ→

 彼の言いたいことは多分わかってる。好きな相手、というのを、彼が酷く純粋に捉えているのもわかっている。
 好きな相手とはセックスしたいものだと言ったけれど、性欲を発散する目的でだってセックスするし、どちらかと言えばここ数年はそんなセックスしかしていなかった。キスをして、好きだとか可愛いとか魅力的だとか囁いて、互いの興奮を煽る真似を楽しむことはしても、好きな相手と肌を触れ合わせて体を繋ぐ喜びなんてものとは久しく縁がない。
 気の合う仲間とパーティーを組んではいたが、その中に恋人と呼ぶような存在は居なかったし、一つの街に拠点をおいての活動でもなかったから、夜を共にしてくれる相手はそのつど探していた。
 そう思うと、決まった一人の相手と長期に渡って何度も繰り返すセックスなんて本当に久々で、だから妙な情が湧いているだけなのかもしれない。この酷く狭い世界に繋がる、数少ない相手を必死で引き留めようとしているだけで、相手を選び放題の環境なら、世話係の彼も食事担当の彼も全く魅力的には思えないのかもしれない。
 そんなことはないと思うけれど、胸を張って言い切れないのは、そうじゃない場合を実際には経験できないからだ。
 こんな体でなければ、こんな幽閉生活でなければ……
 でも、そんなたられば話は意味がない。今現在この体は彼らの唾液や精液を美味いと感じてしまうし、モルモットとしては間違いなく高待遇だが、彼らとしか関われない生活を強いられている事実も変わらない。
「好きの意味、違ったらダメなのか?」
「え?」
「意味違ったって、お前のことを好きは好き。お前と過ごす時間が長いから、お前のことが好き。お前が繁殖期に入って発情したら、抱いてくれないかなって思うくらいには好き」
 俺を抱くのは無理かと聞いたら、それには迷うこと無く首を振られて否定されたから、それだけで酷く安心した。
「なら、お前の繁殖期に、俺がまだ生きてここに居たら、その時は抱いてくれ」
「約束安心するなら、約束する、出来る。でも約束する、あまり良くない、思う」
「なんで?」
「お前、俺好き、思われる」
「好きだよ?」
「それ違う、好き。でも俺、お前に話す、出来ない」
 好きの意味の違いをはっきり説明できないということかと思ったら、彼らの繁殖に関わる話だから、これ以上詳しく話せないということらしい。人である自分が、どのように扱われるかも彼には全くわからないから、これ以上は食事担当の彼に聞いてみて欲しいと言われたけれど、その彼と次にいつ会えるのかがさっぱりわからない。
 しかも彼が来るのは食事のためだし、前回の妙な誤解を考えると、世話係の彼が繁殖期になった時に抱いてもらう約束をしてはいけない理由なんてかなり聞きにくい。それに彼を好きと思われるのが問題みたいな感じだったけれど、既に食事担当の彼にはそう思われている。もちろん、正しい意味の方の好きで。
「そういやさっき、飯係のアイツの代わりにとか言ってたけど、俺の、お前の言う違ってない方の好きな相手、アイツって思ってる? ちなみに、アイツは俺の本命がお前って思ってて、俺が本当に食べたいと思ってるのも、好きって言われたいのも、言いたいのも、世話係のお前のほうって言われてんだけど」
 言ってみたら珍しく少し怒ったような顔をして、それから大きくため息を吐き出した。
「お前、一人寂しい。俺言う。でもわかってない多い。お前、俺を好き思う、仕方ない。あの人を好きになる、当たり前」
 食事担当の彼を好きになるのも当たり前だと断言されて、また少しホッとしたような気がする。
「お前からすると、お前を好きって気持ちとアイツを好きって気持ちにそう差はない感じ? 寂しいから、セックスして好きって思っちゃうみたいなさ」
 しかし肯定してくれるのかと思ったら、そこは首を振られてしまった。
「食事内容、俺、あまり知らない。好きになる当たり前。でも、どの好きか、俺、わからない。ただ、お前もっと来て欲しい思う、知ってる。食事だけ寂しい、知ってる」
 さすが毎日のように顔を合わせている相手は違う。もちろん、彼の観察眼が鋭いというのもあるのだろうけれど。
「お前が俺の世話係で、良かったなって、思うよ」
「俺、同じ。お前の世話係、なった、良かった」
 彼には触れずに布団の上に落としていた手をスルスルと滑らせて、彼の手をそっと握ってみた。一瞬ピクリと跳ねたけれど、いつもみたいに酷い緊張は伝わってこない。
 緩く握り返される感触に安堵しつつ目を閉じれば、あっさり意識が眠りに落ちた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

竜人はご飯だったはずなのに12

1話戻る→   目次へ→

 ずりずりとベッドの中央へ移動してから寝返りを打って、やっぱり困ったような泣きそうな顔のまま、こちらを見続けていた相手をジッと見つめ返す。
「我慢しなくていいなら、お前、今夜この部屋、泊まってってよ」
 ダメだと思うのにイライラをぶつけるように冷たく言い放てば、相手はあっさり頷いてベッドに乗り上げてくるからビックリした。
「お前の隣、寝る、いいか」
「寝るなら、全部脱いで」
 こちらは脱いでなんて居ないし脱ぐ気もない。それは一方的な要望だ。相手はさすがにビクッと震えて一瞬固まったけれど、それでもすぐに身にまとう布を剥いでいく。黙ったまま黙々と脱いでいて、お前も脱げとは言われなかった。
 恥ずかしそうに顔を赤らめて、時折視線がさまようが、それでも顔を背けてしまうこともない。こちらの要望通り全て脱ぎ捨ててから隣に横たわった小さな体へ、こちらも黙ったまま手を伸ばした。
 互いに無言だけれど、視線だけはしっかり互いを捉えている。その視線からも、手の平の下の皮膚からも、相手の酷い緊張が伝わってくる。
 こちらを心配してくれる相手の厚意につけ込んで、なにをしているんだと胸の内で自嘲しながらも、手の平に触れる感触を手放せないままアチコチそっと撫で擦った。
 食事担当の彼とは少し違うけれど、それでも間違いなく同種の肌触りに、心が浮き立つよりも先に重苦しく沈んでいく。以前なら、世話係の彼をこんなにはっきり触れて撫で回せる時間を、もっと興奮しながら楽しんでいたはずだ。相手の緊張すらも含めて、楽しむ余裕がきっとあった。
「ひぅっ……」
 スリット部を探り当てて、その割れ目を指先でなぞった所で、とうとう悲鳴のような声が漏れる。慌てて口元を覆った手に苦笑しながら、触れていた手をそっと持ち上げて離した。
「無理すんなって」
「でも、お前元気になる方法、俺、わからない」
「ごめん。それは俺も、わかんねぇや」
 でも好き勝手触らせてもらっても、それで元気になれそうにないことははっきりした。そう言ってもう一度ごめんと告げれば、相手はゆるく首を横に振ってから何かを考え込んでいる。
 少ししてから、相手はおずおずと口を開いた。
「お前、目、閉じる。俺、撫でる、する」
「なんで?」
「目、閉じる、する。少し、代わりになる、可能性、ある」
「代わり……って、飯係のアイツの?」
 頷かれて苦笑するしかない。
「それで俺がちょっとでも元気になったら、お前、それでも嬉しいの?」
「嬉しい、思う。おかしいか?」
 素で聞き返されたなと思いながら、やはり苦笑を深くした。
「お前たちには繁殖期があるって聞いたんだけど、お前に繁殖期が来たら、俺のこと、抱く?」
「え?」
「薬の話も聞いたよ。お前には使えないんだってな。お前が俺を抱けないって逃げるのは、今は繁殖期じゃないからで、繁殖期になったら抱いてくれんの?」
「俺……、繁殖期、まだ、かなり先」
「うん。でもアイツよりは周期近いんだろ?」
「それまでに、お前の食事、普通に食べれる、なるはず」
 なんで突然こんな話にと思っているのがありありとわかる様子で、それでも律儀に、戸惑いながらも答えを返してくれる。
「うん。そうかもな。だからさ、その時にそれが食事になるかどうかは関係なく、俺を、抱く?」
「なぜ抱く? 理由、ない」
 本気でわからなそうだった。こんな反応をする相手に、何をどう間違ったら、恋愛感情を抱かれてると誤解できるんだろう。それともそういった感情とセックスは、繁殖期という衝動を持つ彼らにとっては別物なのだろうか。食事担当の彼が当たり前に人のセックスを調べて持ち込んでくるから、なんとなく人も竜人も似たようなものと思い込んでいるだけで。
「人は好きな相手とはセックスしたがるもんなんだけど、お前たちってやっぱ基本セックスは繁殖するためだけにするの?」
「繁殖大事。それも仕事の一つ。でも、」
「でも、何?」
「好きな相手の発情、受け止める、する、嬉しい話、聞く」
「それ、好きな相手と繁殖期が揃わなかった場合、繁殖できなくてもセックス楽しむよって話?」
 聞いたらそこで黙り込んでしまった。そういや薬の話を出された時も、詳しくは言えないがと言っていたっけ。
「あー……言えないなら別にいい」
「俺それ、話す出来るか、わからない。お前が繁殖知る、良くない、思う」
 やはり彼らがどうやって繁殖して数を増やすかなどは、人である自分は知らずに居たほうがいいということらしい。
「だろうな。じゃあ俺達のことだけに話を戻そうか。俺と、食事でも繁殖でもないセックス、したいと思う?」
「なぜ? お前好き、俺じゃない」
 言うと思った。
「好きだよ?」
「俺、お前の世話する。俺、一番お前と居る。好きなる、当たり前」
「俺の好きを否定したのに何言ってんだ?」
「好き、意味、違う。言葉、わからない。でもお前、知ってる」
 わかってるだろうと言いたげな真っ直ぐな瞳に、こちらはやはり苦笑しか返せないから情けなかった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

竜人はご飯だったはずなのに11

1話戻る→   目次へ→

 この体が久々に勃起した、というのがどれだけ彼らにとって重要だったのかはわからないが、翌朝彼は少し慌て気味に部屋を出ていってしまった。報告してこなければならないと言って出ていったから、多分間違いなく報告したいのは勃起したことだし、そんな事を口に出してしまうくらい慌てていたのも間違いない。
 食事内容は逐一報告されているだろうと思ってはいるが、それをはっきりと認めるような発言は今までなかったから、彼からすれば今回のこれはかなりうっかりの失言なんじゃないだろうか。ただまぁ、そうだろうなと思っていたことが確定したからと言って、別にどうということはない。
 問題は、もしそれがなかった場合、彼がこの部屋を慌ただしく出ていくこともなかったのではないか、ということだ。予定があると言って早々に出ていく時もあるが、起きた後にもしばらくのんびりとこの部屋で過ごしてから出ていく時もある。
 今回がどっちだったのかはわからないし、勃起しなくたって早々に出ていってしまったかもしれないが、朝もなるべくゆっくりしていって欲しいこちらの気持ちを彼は知っているし、なるべくそう過ごせるようにと調整してくれているらしいから、予定があると言ってさっさと出ていってしまう頻度は減っている。
 彼ともっと話がしたかった。だって抱かれる食事の頻度を落としていくのは決定済みだ。会える機会は減るばかりで、彼を食事以外でこの部屋に引き込むすべなんてさっぱり思いつかないままだし、オマケに世話係の彼との仲を大きく誤解されている。
 いやまぁ、お前が抱いてくれと言ったのは体の欲求に切羽詰まってとも言えるけれど、それ以外にも散々誘うような真似は確かにしているし、恋愛駆け引きみたいなことを楽しんでいるし、誤解じゃないなと自分自身思ってしまう部分もあるのだけれど。
 でも、本当に食べたいと思っているのも、好きだと言ってほしいのも、言いたいのも、世話係の彼だ、と思われているのはなんだか癪に障る。彼に抱かれることで湧いている情を、信じてもらえずに否定されたことが悔しい。
 だってあれは、たぶん本気で言っていた。セックスに他者への嫉妬を取り入れてみた、という感じではなかった。
 世話係の彼との仲や彼へ向かう想いを、勝手な思い込みで断定されたせいで、あの後、世話係の彼となんとなくギクシャクしているのも、ちょっと腹が立っている。というか、繁殖期になったら抱いてくれるのかとか、腸内に唾液を注いでくれと頼んだら尻穴を舐めるような真似をしてくれるのかとか、食事担当の彼を本気で好きだと言ったらガッカリしてしまうのかとか、それを確かめたくて、でも聞けずに居た。
 だって、こちらの気持ちをかなり勝手に決めつけられているから、世話係の彼の想いも勝手な誤解と思い込みで話していたんじゃないかと思ってしまう。
 こちらの感覚では、こちらがねだりまくるのに折れて、仕方なく口直しのキスをくれているようにしか思えないのに、既に恋愛じみた感情を抱いているなんてとても信じられない。そうなればいいと狙っていたはずなのに、疑う気持ちばかりで、もしかしたらの可能性を前に欠片も嬉しくないのが、これまたなんとも胸が重い。
 胸の中にもやもやとしたものが積もっていって、でもあれこれごちゃごちゃ考えるのはあまり得意じゃないから、だんだんイライラする時間が増えていく。以前なら、派手に体を動かして、お腹いっぱい食べてたっぷり眠れば、それでなんとなくスッキリしたものだけれど、今はそんな真似が出来る状況にない。
 かといって、さすがに世話係の彼にやつ当たるほど大人げない真似も出来なくて、しかたなく彼を避け気味になる。話し相手もゲーム相手も風呂も断った。そして、相変わらず全く美味しくないけど、でもまずくはなく、比較的飲みやすい液体だった日に、とうとう口直しのキスも要らないと言ってしまった。
 空になったコップを差し出して、さっさとベッドに転がり背を向ける。
「俺、お前と話す、したい」
 さすがに放っておけないと思ったのか、心配げな声を掛けてきた相手に、背を向けたままで嫌だとそっけなく返す。
「俺、触る、する。それも嫌か」
「やだ」
「でもお前、寂しい。我慢する、良くない」
 寂しいってなんだと、思わず背後を振り返ってしまえば、困ったような泣きそうな顔で見つめられていた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁