ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書3

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 感想を聞いてみたい本を数冊持って訪れた翌週末、仕事部屋にはおっさんオススメのエロ本が数冊用意されていた。
 かつておっさんの本部屋には何人も子供が出入りしていたし、本を読まずに騒いでいれば容赦なく追い出されたけれど、それでもおとなしく本を読み続ける子供は少なく、多少のざわめきがあるのは普通だった。おっさんの本部屋以外でだって本は読むし、つまり、一人静かな環境でなければ本が読めない、なんてことは決して無い。
 なのに今、一緒に読むの言葉通り、自分の持ってきた本を同じ部屋の中で読んでいる相手が、先程から気になってたまらない。ただそこに居て、静かに本を読んでいるだけなのに。
 チラチラと盗み見ていたら、ふいに目があって、フッと小さく笑われた。それは意識されている事をわかっている顔だった。
 なんだか悔しいような気持ちで、手元の本にむりやり意識を集中する。時折見られているような気配もあったが、同じように顔を上げて確かめて、フッと笑ってやるような真似は出来なかった。
 どうにも気が散って仕方なく、一冊読み終えたところで二冊目に手を出すのは諦めて、まだ読み終えていない相手を存分に眺め見てやる。
「リビング行って、勝手にお茶でも飲んで待っててもいいけど?」
 暫く見ていたらやはり気づいたらしく、手元の本から視線も上げず、そんな言葉だけが飛んできた。
「見てたいです」
「ん、そう。じゃもうちょっと待ってて」
 気が散るから出て行けと言われるのかと思えば、あっさり見つめ続けることに許可が出る。驚きながらも、その言葉に甘えて眺め続けることおよそ十五分。読み終えたと言って本を閉じた相手が、リビング行こうと立ち上がった。
 昼には少し早いけどまぁいいかと言って出された本日のランチは、サンドイッチ用の薄切りパンと皿に乗った具材だった。それとお湯で溶くだけのスープ。
 食事はテレビ前のソファではなく、二人がけのテーブルセットの方で食べる事が多いのだが、小さな机の上はバターやジャムやマヨネーズなども並んでギチギチだ。
 どうやら今日の昼食は、パンに好きなものを挟んで食べろということらしい。
「手抜きが増してませんか?」
「文句あるなら家帰って食ってくれば?」
「すみません。頂きます」
「というか、こういう飯のがお前が楽しいかと思ったんだけど」
「え、なんでです?」
 彼が作ってくれる手料理を食べるという部分への楽しみが大幅に削られた状態だというのに、いったい何を楽しめばいいというのか。
「いつも暇そうにこっち気にしてるから、作る時間の短縮って意味が一つ。もう一つは、こういう食べ方にすると、相手の好みが見えてくるかと思って。お前の好奇心を刺激するかと思ったけど、そうでもないってなら、俺だけお前見て楽しむことになって悪ぃな」
「は? 俺見て楽しむんですか?」
「お前ほどあからさまじゃないけど、俺だってそれなりにお前を観察してるよ?」
「そ、なんです、か……?」
「うんそう。お前、自分に向かう好奇心には意外と鈍いのな」
 さっき本読んでるお前のこともかなり見てたよと言われたので、やっぱり見てたんだと思いながら、気配は感じてたと返す。
「顔上げないから、よっぽど真剣に本の世界入ってるのかと思ってた。で、どうだった?」
「どうだった、……ってのは」
「感想聞いてる」
「食いながらエロ本の感想を言えと?」
「さっきお前が読んでた本の中に、食欲減退するようなエグいエロシーンはなかったろ。あれ? ない、よな?」
 確かにごくごく普通のセックスをちょっと濃厚に描写していた程度の内容ではあったけれど、食事を開始する前に感想を聞かれるのは想定外だ。出来れば先に、彼の読んでいた本について互いの感想を存分に言い合いたい。ランチタイムをそれで過ごして、エロ本の方の感想は、食後にサラッとスルッと終わらせるつもりでいたのに。
「先に、あれをオススメにした理由、聞いかせてください」
「それ聞くってことは、気づいてんじゃないの?」
「じゃあやっぱり、他のオススメも好奇心でやっちゃう系?」
「まぁそうだね」
「煽ってんですか?」
 好きって気持ちもセックスしたいという欲求も、好奇心からだと前回はっきり認めてしまった。その上で、あえて好奇心から体の関係を持ってしまう話ばかり選んだというのなら、それはもうどう考えてもこちらを煽っているとしか言えないだろう。
「煽ってるよ」
 けれど平然と肯定を返されれば、一瞬次の言葉に詰まってしまう。
「で、も……好奇心でセックスした先、どんな結論になるか、わかりませんよ。スッキリして興味失って、それで終わるかも、しれないのに」
「まぁ現実なんてそんなもんかもだよな」
「じゃあ変に煽ってくんの止めて下さいよ」
「なんで?」
「俺の結論出るの、待ってんじゃなかったんですか?」
 こちらの気持ちがはっきりしないと彼だって動けない。というような事を、前回言っていたくせに。
「まぁ結論は出てなかったけど、でも色々はっきりしてただろ。好奇心で俺とセックスしたいってさ」
「じゃあさせてくれるんですか、好奇心で、セックス」
「いいよ」
 まっすぐに見つめてくる視線に、本気で数秒、体はもちろん思考すらも固まった。

続きました→

 
 
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ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書2

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 レトルトソースを掛けただけっぽいパスタと、インスタントをお湯で溶いただけっぽいスープと、野菜もしっかり食えと言わんばかりに多目に盛られたサラダという昼食を食べながらの本日の話題は、さっきまで読んでいた大人向けじゃない方の本の感想だった。
 以前は本を追加したところでわざわざ教えてくれることはなかったけれど、最近は仕事部屋の方ばかりお邪魔しているせいか、今日は玄関先で顔を合わせた最初に、一応言っておくと言って普通の本部屋に本を追加したことを教えてくれた。
 だったらと向かった本部屋には、追加された本が五冊ほど、わかりやすく他の本とはわけるようにして入口付近の棚に並べられていた。前はこんなわかりやすく置いてはくれず、いつの間にか増えていたのに。
 たくさん並んだ本の中から、今まではなかった本を見つけだした時の嬉しさや楽しさを思うと少し残念ではあるけれど、すぐに新しい本が読めるようにとわけておいてくれた彼の気遣いをありがたいとも思った。
 二冊ほどを読み終えたところでほぼ昼時だったので、次の本へは手を出さずに彼をランチに誘ったのだが、そういう経緯だったので、読んでいた本とそれについての互いの感想を言い合う形になったのはごくごく自然の流れだろう。
 同じように感じた事に嬉しくなったり、全く違う感想や視点に驚いたり感心したり、感想を言い合うというのはあまりに楽しい時間だった。
「こういうの、もっと、したいかも」
「感想の出し合い?」
「うん、そう」
「別に構わないけど、昔読んだ本だとすぐには内容思い出せないからなぁ。しかもお前が最近読んでるのって仕事部屋に置いてるエロ本がメインだろーが。あーでもまぁ、エロ本挟んで互いのセックス感やら語っておくのも悪かねぇか?」
「ちょっ、待って。エロ本の感想を言いあいたいなんて言ってない」
「そうか? 俺はお前のエロ本への感想、気になるけど」
「ええっ!?」
 さらりと言われて驚いたら、なんでお前にあの部屋開放したかわかってる? と問われて、ぐっと言葉に詰まってしまった。
「別にうちの本が読みたいなら、社会人になったならもう来るなとか言うつもりなんて最初からなかったし、好きなだけ通い続けりゃいいと思ってるよ。でもそれは普通の本部屋の話な」
「あの部屋に入れてくれたのは、俺が、あなたを好き、みたいな話をしたから、でしょ」
「きっかけはまぁそれだけど、あの部屋を開放したのは、お前の気持ちがふわっふわしててはっきりしてないからだ。お前の気持ちがはっきりしないと、こっちも動きようがない。大人向けったって完全ヌキ目的なのもあれば、恋愛ベースなものもあるし、そういうの読んで俺とどういう関係になりたいのか、セックス含めて考えろって意味だよ」
 急かす気はないけど待ってないわけじゃないからなと言われて、気持ちを聞かずに居てくれる相手に甘えすぎていたと反省する。
「すみません。考えてないわけじゃ、ない、です」
「ならいいよ。待ってないわけじゃないとは言ったけど、正直、お前がこのままはっきりさせず、ダラダラと俺にボッタクられながら週末に一緒に昼飯食う関係に落ち着くなら、それはそれでありだとも思ってる」
 確かに、このままだとそんな関係に落ち着いてしまいそうな気配はある。しかし膨らむばかりの好奇心が、セックスを含む関係を提示された状態で、相手に触れないという選択をさせないだろうとも思う。
「今の関係に落ち着くつもりはないです。セックスは、したいです」
 言い切ったら少しばかり目を瞠られた。
「そうなんだ。そこはもうはっきりしてるんだ?」
「はい」
「それでその場合って、俺を抱きたいの? 俺に抱かれたいの?」
「そ、れは……」
 言い淀んでしまったら、ますます驚いたらしい。
「セックスしたいって気持ちははっきりしてるのに、抱きたいか抱かれたいかの自覚はまだなんだ?」
「いえ。正確には、どっちもしてみたい、です」
 正直に言ってみたら、あー……となんとも間延びした声を返された。
「好奇心旺盛だねぇ」
「知ってます」
「じゃあ、俺を好きって好奇心はどの辺がメインか自覚ある?」
「あなたを好きって気持ちが好奇心からだって、知ってたんですか?」
「ああ、やっぱそうなの。で、俺の何がお前の興味引くの? 俺がゲイだって隠してないから、男相手のセックス試してみたいって思った?」
「男相手のセックスを試したいというより、セックス中のあなたを見てみたいという好奇心ですかね。だから、抱かれてるあなたも、抱いてるあなたも、両方見たい。みたいな。でもって、その好奇心のメインがどこかを説明するのは、ちょっと、難しいです」
 好奇心からの好意だと自覚してからは、その好奇心の出処についてもそれなりに考えたけれど、この家に通い続けて積み重なったものが色々としか言いようがない。平気で家の中に他人を受け入れるのに、その間その相手を放置して仕事部屋に篭ってしまうという彼の態度がまず普通じゃない。というかこの家には普通じゃないことが溢れている。
「そんなにおかしなこと言いました?」
 わずかな動揺が見て取れるのと、ほんのりと赤くなったような気がする頬を見ながら、もしかして照れてます? とは聞けなかった。
「いや。でもちょっと想定外の返事が来た。そこまで色々はっきり自覚あって、でもまだ俺とどうなりたいかの結論はでてねぇの?」
「ないです。好奇心が満たされてしまった後、あなたとどうなりたいのかわかりません」
「頭でっかち。もしくは真面目バカ」
「は?」
「お前、ここ以外でも本は読む?」
 唐突に話が変わってわけがわからないと思いながら、そりゃ読みますよと返した。
「じゃ、今度お前のオススメだって本持ってきて。俺もお前と一緒に本読むわ。でもって昼飯食べながらそれぞれ読んだ本の感想出し合いしよう。あ、お前が読むのは仕事部屋の本な」
「ちょ、俺だけエロ本の感想言わせるんですか」
「そう思うならお前のオススメエロ本持ってこいよ」
 楽しみにしてると笑われたその笑顔が珍しくて、気づけばわかりましたと了承を返していた。

続きました→

 
 
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雷が怖いので(目次)

「雷が怖いので」プレイリクエストについて

キャラ名はありません。全47話で、他の話に比べるとかなり長めです。
お金持ちなS ✕ 貧乏大学生(視点の主)。はっきりとした年齢差は出てませんが、8歳前後上のイメージで書いてました。
雷が怖い視点の主が、突然の雷雨に逃げ込んだ先で出会った男に、愛人契約という高額時給のバイトを持ちかけられて頷いてしまい、お金と引き換えにほんのりSM混じりの開発調教をされまくるうちに相手の男への恋心を自覚していく話。
攻めは親に売られて痛めつけたいタイプのサディストに所有されていた過去あり。人を好きと思う気持ちがわからないという相手に視点の主が諦めずに奮闘し、最後には「お前が好きだ」と言わせます。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
今回は性的な内容が含まれるものが多いので、性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

2017年3月6日追記。
最終話直後のオマケ話、全4話を追加しました。

1話 逃げ込んだガレージ
2話 雷が聞こえない部屋へ
3話 バイトはクビに
4話 愛人契約の提示
5話 時給千五百円
6話 お試しチャレンジ
7話 契約成立
8話 バイト初日
9話 キスだけで(R-18)
10話 やだって言ったのに(R-18)
11話 初日終了
12話 次回はお泊り
13話 豪華ホテルで誕生祝
14話 食事の前に(R-18)
15話 二日酔い
16話 昨夜の記憶(R-18)
17話 チェックアウト
18話 イヤラシイおねだり(R-18)
19話 抱いてもらえない理由(R-18)
20話 抱かれたい理由と恋の自覚
21話 アナルプラグを入れて向かう(R-18)
22話 ずっとこの日を待っていた(R-18)
23話 気持ちいいばかりの初めてだったのに(R-18)
24話 逃げ出す
25話 雷と彼に追われて
26話 ずぶ濡れの告白
27話 彼の肌に残る傷
28話 一緒にお風呂
29話 痛くて怖いだけのおしおき
30話 好きで居てもいい
31話 洗ってもらう
32話 突き返すバイト代
33話 少し変わったその後の関係(R-18)
34話 彼の過去
35話 大学生活最後の年末
36話 ただただ裸で寄り添って
37話 彼の目的
38話 気づいてしまった
39話 それでも受け入れてはくれない
40話 親から勘当されてきた
41話 彼のものになっていく
42話 心に言葉を刻むということ
43話 ポジティブシンキング
44話 彼を貰う(R-18)
45話 互いに互いだけのもの(R-18)
46話 最奥まで全部(R-18)
47話 いつか二人で挨拶に

直後1 ゆっくり抱かれ続ける(R-18)
直後2 嬉しくて泣きそう(R-18)
直後3 繰り返される好き(R-18)
直後4 目覚めた後もずっと幸せ(R-18)

本編隙間埋めプレイ(目次)

 
 
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ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書1

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 今まで入室禁止だったおっさんの仕事部屋に置かれた、えっちな蔵書を読みに通うようになって、おっさん本人との会話は明らかに増えた。
 訪れた時にはおっさんはリビングへ移動してしまい、やっぱり同じ部屋で過ごすことは無い。仕事部屋なのに追い出すようで悪いが、最悪リビングでも作業は可能だからとのことで、蔵書を部屋の外に持ち出すのは普通の本部屋同様禁止だった。ただ、お茶しようとかお腹減ったから一緒に何か食べないかと、自分から突撃すれば、リビングから追い出されることもなかった。
 滞在していい時間は朝の九時から夕方の六時までと決まっていて、そこは緩めてくれなかったので、仕事がある平日に訪れることはなくなったけれど、仕事休みの週末は朝から一日入り浸りということもあって、以前なら昼は一旦自宅に帰っていたのを今ではほぼ一緒にランチタイムを過ごしている。
 食べているのは主におっさんの手料理だ。パンに適当に具材を挟んだサンドイッチだとか、インスタント麺の上に野菜炒めを乗っけたものだとか、御飯の上に色々乗せられたオリジナルな丼物だとかを、社会人なら払えるだろと一食五百円で提供されている。
 ボッタクリ価格だぞと本人が言うとおり、材料費に五百円も掛かってないのはもちろんわかっているけれど、おっさんの手料理を食べながらおっさんと過ごす時間を思えば安すぎるくらいだった。
 おっさんを観察するように見つめてしまう視線は、たまに見すぎと咎められるものの、こちらの気持ちについては何も聞いてこない。どうしたいのか、どうなりたいのか、はっきりさせてから再チャレンジしろと言われているものの、正直どうなりたいかの結論は出ていなかったので、そんな彼の態度に甘えきっている。
 どうでもいい世間話みたいなものだって、話題を振れば応じてくれるし、おっさん自身のことだって聞けばそれなりに教えてもくれた。聞かれたくないらしいことはさらりと躱されているから、自分から近寄らずにいたから知らなかっただけで、彼は多分コミュニケーション能力がかなり高い。
 ゲイと公言していてもヒソヒソと陰口を叩かれることなく、それどころか近所のおばちゃんが余計なお節介を働くくらい馴染んでいるのだから、考えてみれば全く意外性のない能力ではあるのだけれど。
 そんなおっさんを、多分多大な好奇心で、好きだとは思う。そう、好きの根底にあるのは好奇心だとわかっていた。
 初めて読む本を読み進めるドキドキと、彼と話をして彼の人となりや彼自身のことを知っていくのは似ている気がする。
 ただ本と違って読み終わりがなく、知りたいことは増えていく。最近は彼が言うところの大人向けの本ばかりを目にしているせいで、どうしてもそういった行為についても想像してしまう。大人向けというだけあって、恋愛感情よりも性行為への描写がメインなものばかりなのも、多分良くない気はしている。
 あの日、通うのを止めるから最後に一度だけ寝てくれという話なら応じてもいいと言っていたから、自分相手にセックスすることも可能なのだと知っているのもマズイ。
 してみたい。という欲求は膨らむが、それもやはり好奇心なのだろうとわかっていた。そんな下衆な部類の好奇心を自覚すればするほど、どうしたいのか、どうなりたいのか、わからなくなっていく。
 一度してみたら満足するかといえば、多分きっとしないだろう自信がある。でも仮に、自分が満足するまで相手を付き合わせたとして、じゃあその先にあるのはなんだろうとも思う。おっさんへの好奇心が満たされてしまったら、もうここへ通うことに魅力を感じなくなるんだろうか?
 本が読みたいだけなら、図書館だってあるし、自分自身で買うことだって可能だ。ここへ通う理由が本よりもおっさん自身であることは明白で、彼の蔵書を読み漁ることで、本を通して彼に近づけるような錯覚を起こしている。
 彼の蔵書がやたら魅力的に感じる理由はそこにあるのだと、本人と直接関わることが増えてやっと自覚した。

続きました→

 
 
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雷が怖いので47(終)

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 繋がりを解かずに頬や髪を優しく撫でられる。それを感じたまま、上がってしまった息を整えているうちに、霞みきっていた思考も視界も開けてくる。
 ぼんやりと見上げる先で、柔らかな瞳が楽しそうに、満足げに、優しくこちらを見下ろし笑っていた。
「それで、俺の全部を受け取った感想は?」
「そん、なの、……」
 凄く嬉しいに決まっている。まさか彼の口から好きだという言葉が告げられるとは思っていなかった。彼の声で、お前が好きだと、そう言ってくれるのを聞けるなんて。
 彼が聞かせてくれた好きが、繰り返し耳の奥でこだましている。体ではなく心が、ようやくそれを認識して、じわじわと喜びが広がっていく。
「なんか、嘘、みたい」
「なにが嘘?」
「あなたはきっと俺を好きだって、そう確信はしてたけど。でも、それをあなた自身が認めるのは、もっとずっと先だろうなって、考えてた」
「お前が好きだよ。お前の全部を俺のものにして、ここまで嬉しくなってたら、さすがにもう自分の気持ちをごまかせないだろ」
「良か、った」
 へへっと笑ったらお前にゃ負けたよと苦笑されて、指先が目元にじわりと浮かんでしまっていた涙を拭っていった。
「ごめんな。本当はあの日、お前の愛のあまりのでかさに気づいてから、お前を手放せない未来も少し見え始めてた。でもその未来に抗ってしまった。もっと早くに、お前の想いもこの先の人生も受け取ってやる決断ができてたら、お前に家族を捨てさせるような真似をさせなくて済んだかも知れないのに。お前が俺を選んでも、それで家族から縁を切られずに済む方法を、探してやれたと思うのに」
 お前の行動が早すぎたと、心底申し訳なさそうに悔やんだ顔を見せるので、こちらも本気で申し訳ない気持ちになりつつ口を開く。
「それなんだけど、あの、いつかもうちょっと落ち着いたらでいいから、俺と一緒に、俺の家族に会ってくれない、かな?」
「お前の家族に何を言われたって、もう、お前を手放すことはしてやれないのに?」
「それでいいよ。というかそれが重要というか」
「ちょっと待て。お前、これから先の人生を共にしたい男性が居るって言って、勘当されたんだよな?」
「違いますよ。というか、そこに関してなら、人生の伴侶に男を選んだくらいで親子の縁を切るほど狭量じゃないって怒られました」
「信じられないな。せっかく育てた息子が、明らかに道踏み外してて、それを許す親がいるのか? お前の親が、お前を愛人になれとそそのかして、大金チラつかせてお前の体を汚したような男に、そのまま息子を差し出すようには思えないんだが?」
「あー……さすがに愛人やってたとまでは、言えてない、です。親が十分なお金を出せなかったせいでそんなバイトしてたって思われたくなかったし、実際、お金の問題だけで続けてたわけじゃないし。だから出会いと経緯はちょっと誤魔化しちゃった。けど、俺の事は基本的には信じてくれてるんで、俺が本気で考えて選んだことは、応援、してくれるんですよ」
「ますます意味がわからないぞ。お前は何を話して、何が原因で勘当までされる事になったんだ」
「勘当されたってより、勘当してもらってきた、が正しい、ですかね」
「して貰ってきた?」
「そう。だって親から大事にされてる俺じゃあなたは貰ってくれないけど、逆に、親に捨てられた俺なら、あなたはきっと受け取ってくれると思ったから」
 だからさと、本当に本当に申し訳ない気持ちで、正直に真相を打ち明ける。
「どうしてもあなたを頷かせて、俺との関係を大学卒業後も切らずに居てほしかったから、やれることはなんでもやろうって思って。あなたが手強いから、なりふり構ってられないって、言ったでしょう。親にもそう言って、だから縁切ってって頼み込んで、勘当して貰っただけです。それで勘当を解いてもらう条件は、俺があなたをしっかり捕まえて、あなたと一緒になれて本当に幸せって状態を、家族に見せること。なんですよね」
 ごめんなさいと謝ったら、なんとも言えない顔で、本当にそんなことを親が了承したのかと再度確認された。
「うん、した。実は、頑張りなさいって言われて、こっち帰ってきました」
「お前といい、お前の親といい、俺の想像しうる範囲を大きく逸脱した行動にびっくりだよ」
「生きてきた世界が違いすぎる?」
「そうだな」
「でももう、俺は全部あなたのものだし、あなたも俺のもの、ですよ。違いは埋められなくても、そういう世界もあるって認識くらいなら、出来ますか?」
「ああ。きっとお前は嘘を言ってない」
「それで十分。さっき、あなたが俺への気持ちを認めるのはもっともっとずっと後になると思ってたって言いましたよね。そういう覚悟だったんで、俺の家族に会いに行くのも、いつか、あなたの気持ちがもっと落ち着いてはっきりしてからで、いいんです。あなたが、俺が勘当されたことを気にしてくれたから、ちょっと、焦って話しちゃっただけで」
「いや。少し、安心した気もする。でもそういうことなら、近いうちにお前の家族に会いにいくよ。ただその前に、お前が俺との関係をどう説明したのか、聞いておかないとな」
 急がなくていいよと言ったら、お前が全部俺のものになったってことの重要性がわかってないなと、意味深に笑われて首を傾げた。
「そこに気づかないお前だからこそ、俺も、俺を全部お前にやってもいいって思えるんだけどな」
「どういうこと? 俺が気付いてない重要なことって、何?」
「それは追々、教えてあげる。色っぽい話じゃないし、今はそれより、体が落ち着いたならバスルームに移動しようか」
「も、ちょっと、このままが、いい」
「洗い流すの勿体ない?」
「うん」
「お前の奥深くまで、全部俺に染まった事実は、洗い流したところで変わらないけど?」
「うん」
「もっとして、ってのはなしだぞ? それとも、奥まで綺麗にされるのを怖がってる?」
「もっと、されたい」
 甘えるようにねだってみたら、小さなため息の後で、明日使い物にならなくなってもいいならと返される。これ以上を煽るなら、気持ちに任せて抱くことになるぞという忠告に、それは忠告なんかじゃなくて、まるで甘美な誘惑でしかないと笑ってやった。

<  終  >

ここで終わるか凄く迷った末、あまりに長くなった話なので、もう終わっていいかなとエンドを付けました。なお、本人が気付いてない重要なこと=相手の資産に関する話です。
あまりの長さに更新時間が守れず、最後まで大遅刻ですみません。そして本当に長々とおつきあい、どうもありがとうございました〜!

END直後のオマケ話を読む→

 
 
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雷が怖いので46

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 誰に気持ちよくさせられているのか、イきたくてたまらないほど気持ち良くなっている自分にイく許可を与えられるのが誰なのか。今、泣きながらイくのを耐えているのでさえも、自分が彼のものだからなのだと、丁寧に教えるように一つ一つ言葉を刻み込まれていく。同時に、彼がペニスを突き立て気持ちよさを与えるのは、自分ただ一人なのだと宣言する言葉も甘やかに刻まれていく。
「ほら、ここが最奥。お前のこんな深い場所に入っていいのは俺だけだね?」
 もう言葉なんて出なくて、必死で頷きながら彼の首に縋り付く腕に力を込める。
 最奥へ到達されても、痛みはない。苦しさはあるが、イかせて貰えない方の苦しさが圧倒的で、奥へ入り込まれた苦しさは良くわからなかった。
「じゃあ、今からこの一番深い場所も、俺だけのものになろうな。俺をたくさん擦り付けて、俺の吐き出すもので汚して、俺の全部をお前の深くに刻み込んであげるから」
 意識は保ってろよと言われて、震えそうになりながらもやっぱり必死で頷いた。
 意識を保てというのは、イくなと言われているのと同義だ。だってここまで焦らされてたら、まともな意識を保ったまま達することなんてきっとできない。
 いや、そもそもこの状態で、奥を突かれてどうなるのか想像がつかない。だって一度も中イきしてない状態で、ここまで入り込まれたことがそもそも初めてだ。中イきしてたって快感が足りなければ痛かったり苦しかったりするのに。だから動かれたらやっぱり痛みや苦しさに圧倒されて、イきたくてたまらない気持ちなんて霧散するかもしれない。
「ああ、大丈夫」
 こちらの不安にはやはり気づいたらしく、優しい声が宥めてくる。
「ゆっくりやるし、お前もちゃんと気持ちよくなれるから」
 お前も一緒にイくんだよと言われて、無理だと首を横に振る。彼が言うからには、このまま突かれても気持ちよくはなれるのかもしれないけれど、そうしたら意識を保っていられない。
「何がダメ? 気持ちよくなれそうにない?」
 今、痛くないだろ? と確認されて頷けば、気持ちよくなれるし気持ちよくしてあげるから大丈夫だと、甘やかな声が脳を揺さぶった。この体も心も、彼の声で気持ちよくしてあげると言われたら、期待で興奮が増してしまうように作られている。
 そしてそれを証明でもするように、奥深くをゆっくりと突かれて揺すられる。痛くはないが強烈な快感が走るわけでもなく、じわじわとした熱が広がるみたいにゆっくりとキモチイイも広がっていく。
「ぁ、ぁっ、……だ、めっ」
「どうして? もう、気持ちよくなり始めてる」
「イ、ったら、……飛ん、じゃ」
 こちらの感情はかなり読み取ってくれるけれど、なにもかも見透かされているわけじゃないから、言わなければ伝わらないこともあると知っている。だから言葉をむりやりに絞り出した。
「ああ、意識を保てない不安だったのか」
 やっぱり甘やかな声が、大丈夫だと繰り返す。
「気持ちよさで頭の中が焼ききれるような、そんな激しい動きはしない。そういう抱き方は、今日は、しない。ゆっくり擦られながらじわじわ上り詰めるのも、浅いとこでなら出来るだろ? それと一緒。ここでそうするのは初めてだから、ちょっと時間かかるかもしれないし、焦らしまくったからどこまでキモチイイってなるかはわからないけど、でも、もしお前が何も考えられなくなったとしても、その前にはきっと、俺は全部お前のものになってるよ」
「きっと、じゃ、やだっ」
「わかったわかった。じゃあ、確実に、お前のものになってる。約束する」
 俺がイくまで絶対にお前をイかせない。なんて言ってちょっと意地悪なニヤリとした笑顔を見せられたけれど、ホッとしつつそれでいいと何度も頷いてみせた。
 ふふっと柔らかに笑われた気配の後、お前は本当に俺が好きだねと、今更過ぎる言葉が落ちてくる。どこまでも貪欲に俺の全部を求めてくれるのが嬉しいよとも続いた。
「すき。だい、すきっ」
「うん。俺も好き」
「ぅえっ?」
「俺も、好きだよ。お前が俺のものになっていくたび、自分の中にボコボコ空いてた隙間に、お前が入り込んで満たされていくみたいな感じがしてる。お前が俺のものになって良かったって、凄く、ホッとしてる」
 認めるよと続いた言葉は苦笑を含んでは居たけれど。
「俺はずっとお前が好きで、お前のことがずっと欲しかった。お前を自分のものにしたかった」
 好きだよ。認める。と繰り返されて、真っ先に反応したのは体だった。
「ぁあっ」
「ホント、可愛くて素直な体だね。お前のここが、早く俺だけのものになりたくて、俺のを注げって絞り込んできてる」
 甘い吐息に混ぜて、お前の中がキモチイイよと告げられて、たまらなくなる。
 めちゃくちゃに突かれて、頭の中が焼ききれるような激しい快感が欲しいとすら思いながら、自分から腰を揺すった。
「あ、あっ、すき、すきっ。して、イッて、きもちく、なって」
「うん。俺も好き。色々待たせてゴメンな」
 一緒にキモチヨクなろうなと言われながら、こちらの動きに合わせて奥を優しく捏ねられる。
「あっ、ああっ、や、あたまっ、しろくなっ」
「ん、いいよ。も、いいから。俺はもう全部、お前のものだよ。お前がイくのと同時に、ちゃんと注いであげるから」
 だからこのままイきなさいの言葉に押し上げられて、じわじわと広がりきっていた快楽に身を委ねた。
「ぁぁぁああ、んああっっあああ」
 頭の中が真っ白になっていても、彼を咥え込むその場所を起点に体が痙攣しているのがわかる。中で脈打つ彼のペニスからビュクビュクと精子が吐き出されているのも、ちゃんと感じることが出来ていた。

続きました→

 
 
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