彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(卒業3・終)

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 それなりの準備は自分でしてみたものの、今まで弄ったり、ましてや拡げようなんてしたことがないその場所を、男と繋がるための性器に変えるのは大変だった。
 さっさと童貞を捨てたいだろうに、相手が思いのほか辛抱強く、慣らす行為にむしろ積極的だったのは助かったが、でもその分めちゃくちゃ恥ずかしい。恥ずかしさから早く入れろと思う気持ちと、痛いの嫌だし十分慣らされたいって気持ちとの間で揺れる。
「うっ、……ぁっ……」
 指を増やされたせいで、苦しげな息が漏れているのが自分でもわかる。
「ゴメン、辛い? 戻す?」
 戻すというのは、指を減らした状態でもっと慣らすかという意味らしい。
「痛く、ないから、へーき」
 そのまま続けろと言えば、辛かったらちゃんと言ってよと、頼りなげな声が掛かったものの、埋められた指の動きが少しずつ大きくなっていく。
 セックス中、感じている演技をする女性が少なからず居るらしいが、自分が抱かれる側になってその気持ちが少しわかる気がした。もう少しアンアン出来れば、きっと相手も安心して先に進めるだろう。
 うん、でも、無理。ちょっとそれどころじゃない。
 自分の体に起こっている未知の感覚に、慣れるだけでも精一杯だった。
「ふあぁっ、ん……んぁあっ、あっ……」
 それでも意識すると少しは変わるらしい。恥ずかしい気持ちをねじ伏せて口を開き、少しでも気持ちが良いと思った時にはなるべく声を出してみた。
「ここ? これ? これ気持ちいいの?」
 素直に聞いてくるから、恥ずかしさは倍増する。ばかやろうと思うのに、でもそんな憎まれ口を叩く気にはならなかった。
「ぁあ、ん、た、多分、きもちぃ」
「わ、わかった」
 そんなやり取りを何度か繰り返せば、最初は気のせいみたいだった僅かな快感が、はっきりと自覚できる大きさに膨らんでいく。自分の体のことだけれど、まさか本当に感じ始めるとは思っていなかったので、驚きと安堵が入り混じって、喘ぎながらもなんだか泣きそうになった。
「えっ、ど、どうしたの?」
 すぐに気付かれたが、どう説明していいかなんてわからない。
「な、なんでも、なっ」
「なんでもないわけないだろっ。何? 言って。教えて。嫌になったなら止めるから、だから、泣かないでよ」
「バカかっ」
「酷っ」
「ちゃんと、気持ちぃの、びっくりしてる、だけ」
「本当? 本当に気持ち良く、なれてる?」
「ほん、と」
 演技で喘げるほど慣れてねーよなどと言える余裕はもちろんなかったが、それでも相手は嘘とは思わなかったようで、安心した様子で嬉しそうに笑った。
「ね、じゃあ、そろそろ、いい?」
 必死で頷けば、涙の浮きかけた目元に唇が落ちた後、きざったらしいことすんなと言うより先に、体の中に埋められていた指が引きぬかれていく。
「んあぁぁあっ」
 ぞくぞくと背筋を走る確かな快感に声を上げた。
「だいじょうぶ?」
「いちいち聞くな、バカ」
「だって気になる」
「いいからさっさと来いよ」
「待って今ゴム着ける。というか、指入れてる時とのギャップ凄いんだけど」
「うっ……っるさいな。余計なこと言わなくていいから早くしろって」
「えーもーどんだけ可愛いくなる気なの」
「は?」
「可愛いよ。凄く、可愛い」
「はぁああ??」
 言葉をなくしてはくはくと口を開けたり閉じたりしている間に、ゴムを着け終えた相手が足の間に割り入ってくる。
「そんなビックリされると、こっちもビックリだよ」
「いやだって、お前、か、かわいい……って……」
「好きな相手可愛く思うのなんて、当たり前のことだと思ってたけど」
「う、…あ、ああ、うん。そ、そうか」
「そこで照れちゃうのもビックリなんだけどさ。あの、本当に、大好きだから。だから、その、初めてだし、その」
 もごもごと口ごもる相手に、だって童貞だもんなぁと思ったら、少しだけ気持ちが落ち着いた。
「ああ、うん。大丈夫だからおいで。ちゃんと童貞、貰ってやるから」
 伸ばした手で相手の腕を掴み、そっと自分に引き寄せる。相手は少し困った様子で、ギャップ凄すぎと苦笑した後、ゆっくりと挿入を開始した。
「んっ、んんっ、ぅああっっ」
「ご、ごめっ」
「あやまんなっ」
 平気だからとむりやり笑って見せたら、カッコイイのに可愛すぎて困る、なんてことを呟くように漏らしながら腰を進めて来る。
 さっきから人を可愛い言いすぎだ。童貞丸出しでいっぱいいっぱいのお前だって、こっちからすりゃ相当可愛い。
 なんてことを言える余裕はもちろんない。だから無事に繋がれたあかつきには、まずは童貞卒業おめでとうと言って思いっきり頭でも撫でてやろうと思いながら、詰まりそうになる息を意識的に吐き出した。

<終>

ダラダラと長い期間お付き合いありがとうございました。この二人のお話はこれで終わりたいと思います。

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(卒業2)

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 改めて告白されて了承し、晴れてごっこの付かない恋人という関係に収まった後、じゃあ行こうかといって連れてきたのはラブホテルだった。
 相手は黙ってついて来たけれど、緊張と期待とでずっとこわばった表情をしている。
「先に言っとくけど、さすがに俺も男相手初めてというか後ろは使ったことないから、一応童貞貰ってやるつもりはあるけど、突っ込めない可能性もあると思う」
 期待されすぎも困るし、出来れば理性ぶっ飛ばしてガツガツ来られるのも勘弁して欲しい。なんてことを思いながら口にした言葉にも、この展開にいっぱいいっぱいらしい相手の返答はない。
 まぁ童貞卒業は当分先の覚悟とともに告白してきのだろうし、当然の反応なのかもしれない。
「じゃあちょっと準備してくるから」
 持ってきた荷物ごとバスルームへ向かおうとしたら、慌てた様子でその腕を掴まれる。
「どうした?」
「ど、どうした、じゃなく、って!」
 つっかえつっかえながらもようやく出てきた声は少しかすれていた。
「え、あの、本気で俺に抱かれる気、なの?」
 ここまで付いて来て何を言い出しているんだ。
「そりゃまぁ、お前抱いてもお前の童貞卒業にはならないし」
「てか約束守るつもり、あったの?」
「なに意外みたいな顔してるんだよ。お前だって、約束守れって言い続けたら俺が折れると思ってただろ」
「それは、そうだけど、でも……嫌なんだと、思ってたから……」
「あー……もしかして、考えろは時間稼ぎとでも思ってたか?」
「それもあるんだろうとは思った。告白したら受けてやるって意味なのはすぐわかったけど、正直、恋人って状態でなぁなぁでごまかされて飼いならされるのかと……」
 思わず口をあんぐり開きそうになった。いやまぁ、あまりいい恋人にはならないだろうと、そう思わせるようなことを言った記憶は確かにあるけれど。
「そう思ってて、なのに告白してきたとか、逆に凄いな」
「だって諦めきってた相手が、そんな餌ちらつかせてきたら、罠だろうと毒だろうと食うに決まってる。実際恋人ごっこもなんだかんだ楽しかったから、ごっこのつかない恋人になっても、童貞卒業出来なくっても、多分きっと楽しいこともあるだろって思って」
「お前、健気すぎ」
「うるさい。人の純情弄びやがって」
 あんたって昔っからそうだよなと、諦めの滲む声とともに肩をがっくり落とされる。
「昔っからって、俺、そこまで酷いことお前にしてた?」
「俺の初恋も、ファーストキスも、誰だと思ってんの?」
「は?」
「しかもすっかり忘れてんだろ。薄情もん」
「え、ちょっと待った。話がさっぱり」
「いいよもう。お試しで恋人も、ただの思いつきだったんだろどうせ。知ってるから」
「待った待った待った。え、お前、元から俺が好きとかないよな? あんなに彼女ほしがってて、俺を好きとかないないない」
「そりゃ一回きっぱり諦めてますんで」
「いつ?」
「あんたが童貞捨てた頃。というかあれって俺へのあてつけじゃないの?」
「あー…………そうだった、かも」
 一つ下の幼馴染がしつこくまとわりついてくるのが鬱陶しくて、だんだん体がでかくなって生意気になってくるのも腹が立って、なんだったか些細な事で喧嘩して、むしゃくしゃしながら女の子とそういう事をして、童貞捨てたと報告して以降はしつこく遊びに誘われるのがなくなって、追い払うの大成功と思ったような気がする。
 というか、先に背が伸びた相手に、力で押さえつけられてキスされて、激怒したのが喧嘩の原因だったような……
 ああ、なるほど。自分のファーストキスの相手もこいつだったわ。
 嫌がらせと思ってたし、年下に力負けしたのも悔しかったし、完全黒歴史として記憶を抹消していた。
 黙って相手を見つめてしまえば、思い出した? と聞かれて、少しと返した。
「好かれてたとは思いもしなかった」
「それはまぁ、俺にも原因はあるってわかってる」
 ガキだったからと自嘲する姿に、そう思うと本当に対応が大人になったと思う。
「お試しで恋人は確かに思いつきだったけど、そのお試し期間に俺の気持ちを動かしたのは、間違いなくお前自身だよ」
 吐き出す声は穏やかだった。
「考えろって言ったのは時間稼ぎってわけじゃなくて、もう失敗したくないと思ったから。お試し恋人なんて曖昧なことをやって、お試しだってのに、気持ちがお前に引きずられて育ってくのが怖かった。だからもう、お前と曖昧な状態で関係を進展させるのが嫌だった。本当に、それだけだよ」
 セックスするなら恋人って状態でしたかっただけと言ったら、相手は驚いた様子で目を何度か瞬かせる。
「そういやちゃんと言ってないもんな。ごめんな。俺も、かなり本気で、お前を好きだよ」
 好きになったよと繰り返したら、相手の顔が泣きそうにくしゃりと歪んだ。

続きました→

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(卒業1)

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 失敗しちゃったーという連絡が、紹介した女の子から来たのは、三月終わりの日曜の昼ごろだった。何を失敗したのかと、あまり考えずに返信したら、すぐに童貞貰う前に別れちゃったゴメンと返ってきて、焦りのような諦めのような安堵のような、どれともつかない感情がため息になってこぼれ落ちる。
 きっと元々かなり無理のあるお願いだったのだろう。ごっこの間に、想いを育てすぎてしまった。気付いていたのに、気付かないふりで、最初の約束を押し付けて逃げたのは自分だ。
 ありがとうと送ったら、今度は本命さん頑張ってと返ってきたので、さすがに苦笑するしかなかった。
 友人であるその彼女を味方につけたのか。そうしてこちらの退路を断つのか。なのに苛立ちよりも喜びのが大きいのだから、彼とともに育ててしまった想いはなんとも厄介なものだった。
 未練で包んだまま手付かずで置いていた、机の上の可愛いデザイン缶を手にとって、意を決して蓋を開ける。彼の想いを受け入れる覚悟のようなものと共に、中に入っていた飴を一つ、口の中に放り込んだ。
 彼自身からの連絡は何もなかったが、数時間後に鳴った呼び鈴に、直接来たのかと思う。耳をすませば、母親が応対する声が微かに聞こえ、ホワイトデーの時同様に彼を家に上げる。
 そのまま意識を集中し続ければ、階段を上がってくる足音と共に彼の気配が近づくのが、はっきりと感じられる。椅子ごと向きを変えて部屋のドアを見つめて待てば、トンと申し訳程度にドアを叩いた後で彼がドアを押し開いた。
 まさか真正面に向き合うようにして待たれているとは思っていなかっただろう。えっ、という形に開かれた口からは、けれど音は漏れなかった。
「お前が来るの、待ってた」
「……そう」
 入口で固まってしまった彼を、取り敢えず部屋に入れと促しながら、別れたって聞いたと伝える。
「何か、言ってた?」
「童貞貰うの失敗したから本命さん頑張って」
 相手は明け透けなまでに筒抜けだなと苦笑した後、知ってたけどと続ける。
「で、頑張ってくれる気、あるの?」
「それ、童貞卒業させてやる。って約束を果たせって意味だよな?」
「ここまでギリギリだと、もう、次の女の子紹介するのも無理だろ?」
「そうだな」
 静かに肯定を返したら、あからさまにガッカリされたので、こいつはいつからこんなだっけと不思議な驚きに包まれた。抱かせてやるなんて言うわけがないことを、今の短な返答から察したらしい。
 こちらの態度や僅かな言葉を読んで、慎重に対応し始めたのはいつ頃だったろう。
「一つ聞かせて。彼女はいつからお前の味方だった?」
「最初から。待ってって言ったのに帰っちゃうから、ちょっと腹が立ったのもあって、洗いざらい話して協力して貰ってた」
「まぁ、そうだよな。というか、洗いざらい吐かされて、ノリノリで協力されたが正しい気がするけど」
 合ってるだろ? と聞いたら、あの人凄いねと返ってきたから、そうだろと笑ってやった。
「怒ってる?」
「なんで?」
「はめようとしたから?」
「でも失敗してる」
「あー……まぁ、そうだろうなとは思ったけど、やっぱ、ダメ?」
「ダメ」
「約束したろ」
「したね」
「約束守れよ」
「本気でそれ主張し続けるつもりか?」
「だって言い続けたら、折れそうな気がする」
「まぁ、確かにそれは当たってるよ。でも本当にそれで良いのかもう少し考えな。今月が終わるまで、まだ数日あるだろ」
 今日は帰れと言ったら、大きなため息とともにわかったと返される。
「ああそうだ。ホワイトデーの飴、美味かったよ」
 回れ右して部屋のドアノブに手をかける相手の背中に声をかけた。パッと頭だけ振り向いた相手が、何かを探るように見つめてくる。彼女が最初から味方だったなら、きっと飴の意味はこいつもわかっているだろう。
「嬉しかった」
 意識的に柔らかな微笑みを作ってやれば、相手が少し動揺したようだったから、多分想いは伝わったのだろうと思った。

続きました→

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(ホワイトデー)

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 本命大学に合格を決めた相手に、約束通り女の子を紹介した。今月中に童貞捨てさせてやってという赤裸々なお願いに、笑ってOKをくれるような女の子だけど、まぁ約束は約束だし、その後どうするかは本人たちが決めればいい。
 合格祝い渡すから出てこいと呼び出した相手は、こちらが女連れだったことに最初めちゃくちゃ驚いて、その女の子こそが合格祝いと気付いた後はめちゃくちゃ慌てていたのを覚えている。
 約束しただろと言いながら女の子を紹介した後は、自分だけさっさと帰宅したが、コミュ力の高い女の子だしなんとかなるだろと思っていた。その予想は外れることなく、夜には女の子の方から、お付き合いを開始した旨の連絡があった。正直ホッとした。
 引き止められたのを置いて帰ったからか、相手からはその後まったく連絡がない。でもまぁいいかと放置していたら、昨日、久々に彼が家に訪れた。
 玄関で対応したのは母だったから、要するに、気付いた時には自室に上がり込まれていた。
 ムッとした表情で突き出された袋を、反射的に受け取ってしまったが、最初それが何かはわからなかった。
「何これ?」
「ホワイトデー」
 律儀だなと思ったら少し笑ってしまった。
「お返しなんて要らなかったのに」
「でもなんか高そうなチョコだったし」
「まぁ安いもんではないけど。でもその分、量も少なかったろ」
「てかさ、あれ、本命チョコとは違ったの?」
「どういう意味?」
「あんな本気っぽいチョコ、くれると思ってなかったから、凄く嬉しかったんだけど」
 何やら不穏な発言を、どうやって受け流すかを考える。これは絶対、突き詰めたらいけない話題だ。
「本気っぽいって、そりゃあの時点では一応恋人だったんだから、それなりのもの渡すだろ」
「今は? というか、俺達ってやっぱ別れたの?」
「は? いやだってお前、そういう約束だったろ。お前が大学合格決めた時点で、終わりに決まってんだろ」
「そ、っか。まぁ、わかってたけどさ」
 でも俺、けっこう本気で好きになってたよ。という呟きのような言葉は、聞こえなかったふりをした。
「ね、最後に一回、キスさせて」
「ダメ」
「どうしても?」
「だってお前、彼女居るだろ。しかもそれ、俺の友人だからな?」
 不誠実だろと言ったら、苦笑しながら、意外と誠実だよねと返された。意外だなんて失礼だ、とは思えず、やはり自分も苦笑を返した。
「まぁ、性に緩いタイプと思われてるのは知ってる。別に間違いでもないよ。ただそれは、相手によるってだけ」
 お前にそういう真似はして欲しくない。とまでは言わなかった。
「キスがしたいなら、彼女としろって」
 そうすると返されて、胸の奥のほうが少し痛くなった。でもそれも、気付かなかったことにする。
「あのさ、本当に、ありがとう」
 何に対する礼かは聞かず、どういたしましてとだけ返した。
 そんな、昨日交わした久々の会話を、なんとなく繰り返し思い出す。あれで良かったのだとはっきり思うのに、少しずつ胸の痛みが広がっている気がする。
 机の上に置かれている小ぶりの可愛いデザイン缶を見つめた。昨日渡されたお返しだ。
 中身は飴だとわかっているけど、フタを開けることすらしていない。
 お返しの意味なんて考えているとは思えないけれど、これに彼の想いが込められている可能性を考えてしまったら、とても食べられる気がしなかった。これ以上、未練と向き合いたくなんかない。
「俺だって、けっこう本気で、好きになってたよ」
 伝えられたかもしれない最後のチャンスを、思いっきり跳ね除けたのは自分だ。でもきっとそれでいい。あんな形で始めたごっこ遊びの恋が終わったことを、安堵する気持ちも確かにある。
 ばかみたいな失恋に胸の奥が痛んでも、後悔はしてなかった。

続きました→

 
 
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弟の親友がヤバイ(目次)

キャラ名ありません。全10話。
弟の親友(高3)×社会人(視点の主)。5歳差。
弟とその親友が中学2年の時に、弟に手を出さないようにと釘をさしつつ軽く手を出した(手コキした)ら、弟の親友に恋されてしまった話。
親友がその恋を拗らせまくって、主を縛って手や口でイかせようとしたり、脅して抱こうとしたりして失敗。
弟から真相を聞いた主が、結果的には親友と恋人になります。

下記タイトルは内容に合わせた物を適当に付けてあります。
エロ描写は控えめで挿入はなしですが、それっぽいシーンが含まれるものにはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 四年ぶり
2話 気付けば拘束
3話 勃たない(R-18)
4話 抱かれる覚悟
5話 翌朝・弟来襲
6話 弟に話す
7話 弟に聞く
8話 弟の親友と話す
9話 ホテルチェックイン
10話 恋人に(R-18)

恋人になった二人が初エッチする続編が出来ました。
続編 親友の兄貴がヤバイ

 
 
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弟の親友がヤバイ10(終)

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 相手の手の中に握られた自身の性器は先走りをこぼして、擦られるたびに微かに湿った音を立てている。
 ハッハッと漏らす荒い息を、塞いでくれるキスはとっくに忘れ去られて、熱を孕んだ目がジッと自分を見つめていた。
 自分は今、彼が何度となく繰り返しただろう彼の中の自分と、どの程度の差違を持って痴態を晒しているんだろう。
 観察するようなその目が少し怖い。しかし目を閉じて逃げる気にもなれない。結果黙って見つめ合うばかりだった。
 達するには足りなくて、でも落ち着いたり萎えたりする隙の一切ない刺激に、じわじわと追いつめられていく。
「っ、…ぁ、も、イきたい、……かも」
 なんだか情けないかもと思いながらも、より強い刺激をねだった。
 小さく喉を鳴らしながら軽く頷いた相手が、手の動きを加速させる。強まる刺激に、あッアッとこぼれて行きそうな声を、聞かせるべきなのか飲み込むべきなのか。
「声、聞かせて下さい」
 良くわからないまま噛み殺していたら、単調なくせに熱っぽい相手の声に促されて、それならと求められるまま口を開いた。
「あッ…ああっ……いい、キモチぃ」
 イッちゃうよと訴えたらやっぱり無言で頷かれたので、そのまま相手の手の中に果てる。
 吐き出してしまうと一旦冷静になるのは仕方がなくて、ああやっちまったという思いと、彼の手でイけて良かったと安堵する気持ちとが、胸の中で交錯した。
 そんな中、相手は手の中に吐き出されたものをマジマジと観察していて、終いには鼻を近づけてクンと匂いを確かめた後、更に舌を伸ばそうとしている。
「待って待って待って」
 慌ててその手を掴んで、顔の前から引き剥がす。
「うん、あの、興味わからなくないんだけど、精神的にクるから舐めるのはちょっとなしで」
「それ、割と今更じゃないですか?」
 昨夜貴方の舐めてますけど、という声に出されない言葉が聞こえた気がした。
 手を舐めるのがダメなら、下のを口で綺麗にしてもいいですかと言われて、喉の奥に言葉が詰まる。
「嘘です。無理言ってすみません」
「いや、良いんだけど。良いんだけど気持ちの準備がね。というか、先に聞かせてよ。ちゃんと君の手でイッたけど、君の気持ちはどうなった?」
「吐き出されたものを舐めたいとか、イッた後のしゃぶりたいとかって気持ち悪い欲求が、抑えきれずに漏れ出る程度には、貴方が好きなままですが」
「ちょっ、取り繕う気ゼロ!?」
「まぁ、それなりに満足は出来たんで、無理して受け止めてもらわなくても良いかなとも思いまして」
 後々やっぱ無理って振られるより、これで終わりにしたほうが楽かなって気もするんですよねと、自嘲気味に笑うから思わず引き寄せて抱きしめた。
「あのね、俺の受け止めるって覚悟の程度を、勝手に決めつけて諦めないでくれる? 大丈夫。ビックリしたのと恥ずかしいのとでやめてって言ったけど、口での愛撫とか全然普通だから。どうしても手に吐き出されたものを舐めたいんだってわけじゃないなら、こっちの希望としては、今度する時は口でして。そしたら口の中でイくから、飲みたかったらそれ飲んでよ」
「けっこう凄い事言ってますけど、自覚あります?」
「ダイジョブ。わかってる」
 まぁ顔は間違いなく赤くなってるから、もう暫くこの腕の中にいて貰うけれど。
「俺、貴方を抱きたいって、思ってますけど」
「え、それこそ今更だろ。知ってるよ」
「こんな年下の男相手に、処女散らされても良いんですか?」
「ちょっ、処女って!!」
「あいつに聞きました。男の恋人、いた事ないんですよね?」
「ちょっと色々筒抜け過ぎて怖いんだけど」
「責任感と罪悪感、ですよね。俺なんかに抱かれるの了承したのは」
「責任感や罪悪感で抱かれるんじゃ嫌だってなら、もう少し待ってよ。俺が、君に、恋をするまで」
 腕の中の体が驚きのあまり硬直するのが分かった。だから宥めるようにその背を擦りながら、多分きっとすぐだよと、なるべく柔らかで優しい響きになるよう心がけながら告げる。
「君が持つ恋とはきっと違う。厳密には恋とは呼ばない想いかもしれない。でも俺はさっき君を確かに可愛いと思ったし、今も君を抱きしめながら可愛いなって思ってる。そして、俺を好きだと言ってくれるなら、やっぱりその想いには応えたいって思うんだ」
 腕の中の彼は、考えるように黙ったままだ。
「貴方が、好き、です」
 やがておずおずと告げられた告白に、頬が緩むのを自覚する。
「うん」
「俺と、付き合って貰えますか」
「もちろん。これからは、恋人としての俺を、宜しく」
 言えば、こちらこそよろしくお願いしますと、やや緊張の滲む固い声が返ってきた。

<終>

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