祖父母は伯父家族と一緒に住んでいるので、正月の挨拶に行けば必然的に従兄弟たちとも顔を合わせることになる。
次男とは同じ年齢だったから、小学生の頃は子供だけ互いの家に泊まり合ったり2家族+祖父母と旅行したりの交流もあったのだけど、やはり中学に上がって部活などが始まると従兄弟と遊ぶなんて機会は減っていき、今はもう正月くらいにしか顔を合わせない。
その正月の集まりで、今年は妙に向こうの長男が気になって仕方がなかった。だって弟に対する態度が、なんていうか微妙にオカシイ。
「ずいぶん背ぇ伸びたんだな」
弟は確かにこの1年で驚くほど身長を伸ばしたので、その感想は妥当だと思う。でも、モテそうだのカッコいいだの、挙げ句はちょっと筋肉触らせてだの言い出して、それが同じ男として憧れるって雰囲気よりも、性的魅力を感じてるって言ってるように聞こえて仕方がなかった。弟に話しかける声が妙に弾んでいるせいだろうか。
愛想が足らない弟は、モテるとかどうでもいいというか興味ない、みたいなことを言って全然相手の話に乗ってないし、触らせてってお願いもあっさり拒否っているんだけど。それでも相手は全くこりた様子がないまま、何かと弟に構い続けている。
弟も微妙に鬱陶しそうと言うか迷惑そうにしてるのに、相手がかなり年上ってこともあってか、返答はそっけないものの無視までは出来ないらしく、話しかけられれば応じていた。間違いなく、相手はわかっていて調子に乗っている。
いい加減、止めたほうがよさそうだ。
というかこれってやっぱ、長兄は弟狙いって考えていいんだろうか?
そう思ってしまうのは、最近、自身がゲイと呼ばれる性指向なんだと自覚したせいかもしれない。自覚したと言うか、ようやく認めたと言うか。
だからもし長兄もそうだって言うなら、ちょっと話がしてみたい。
「こいつばっか構ってないで、そろそろ俺にも構ってくれても良くない?」
「えーっ」
「なんでそんな嫌そうなの。失礼だな」
「いやだってお前、俺に構われたいとか絶対嘘じゃん」
確かに、弟みたいに構われたいとは一切思ってないけど。絶対鬱陶しいだけだし。でも話がしたい気持ちは嘘じゃない。というか相手もゲイなのか本気で知りたい。確かめたい。
「可愛い可愛い大事な弟が、変な男に絡まれてたら助けたい兄心ってやつだよ。わかれよ。つかこいつまだ中学生ってわかってる?」
「あー……ね」
青田買いって呟いたの聞こえたぞコラ。
「ね、じゃなくて。だから構うなら俺にしよ? つかちょっとマジに話、聞いて欲しいんだけど」
最後はけっこう真面目な口調で告げてみたら、相手も何かを察したらしい。
「人生相談? なら俺の部屋行く?」
「行く!」
相手が立ち上がるのに合わせて自分も立ち上がれば、隣の弟がそっとズボンの裾を引いてくる。
「どうした?」
「いや、えっと」
「大丈夫。聞いて欲しい話があるのはホント」
ポンッと弟の頭を撫でるように叩けば、ズボンの裾から弟の手が離れたので、じゃあ行ってくると残して従兄弟のあとを追った。
結果から言えば、従兄弟はゲイよりのバイで男相手なら抱かれる側がしたくて、背の高い細マッチョ最高、らしい。
弟は中学生だぞと再度釘を差しつつ、高身長細マッチョなら誰でもいいのかと呆れてしまえば、ニヤリと笑って、好きな男がいるんだろうと指摘されて、ついでにセックス一切未経験なのもどうやらバレた。
相手の男に脈ないのと聞かれて、欠片もないし好きだなんて知られるのは絶対避けたい相手だと答えながら、思わず泣いてしまったのは想定外だったけど、でもなんだか少しスッキリした。
「じゃあとりあえず誰かとセックスしてみたら?」
「は?」
「抱かれたい側? それとも抱きたい側?」
「や、え、なんで?」
「だって脈ないどころか好きも知られたくない相手想い続けるとかしんどいだろ」
「それはそう。だけどそこからなんでセックス?」
「気持ちぃセックス経験したら他に好きになれるやつ出来るかもだから」
「そういうもん?」
「そういうもんだろ。つか俺はそう」
好きだなって思う男はセックスが上手い男ばっかりとか言い出してドン引きした。
「女の子は? 女の子もセックス上手いかで好きになるわけ?」
「あー、いや、女は抱けなくないけどくらいであんま恋愛対象ではないな。てかだからゲイよりなんだって」
「そっか」
じゃあもしかしたら、自分もバイの可能性があるのかも知れない。女の子相手にセックスしたいって思ったことはないけど、それを言ったら、男相手にセックスしたいって思ったことだってないんだから。
「男紹介する?」
「え?」
「セックス上手い男」
「え、嫌だ」
「なんでだよ」
「だってそれあんたのお古……あ、まさか今彼紹介したりしないよな?」
「なるほど。いたら3Pも有りだったな」
「最低。てか今彼氏いないの?」
「居たらさすがにお前の弟にちょっかいかけたりしてないって」
「じゃあ俺とセックスして、って言ったら、する?」
「は? あれ? 抱きたい側だった?」
てっきり片恋相手に抱かれたいんだと思ってた、というその憶測は当たってる。
想い人相手には抱かれる想像しかしたことがない。というか抱かれたいって思ってしまったから、友情じゃないんだと気づいてしまったし、ゲイなんだと自覚してしまった。
「違うけど、いきなり知らない男相手に抱かれる側のセックスとか絶対無理だし。あんたが俺に抱かれるとこ見たら、抱かれるセックス試してみてもいいかもって思うかもだし。絶対上手いわけないから、あんたが俺に惚れる心配もないし」
ほらいい事ずくめ。と言ってみたら、大笑いされたあと、いい性格してんなって言われて了承が告げられる。
お前の童貞貰うの楽しみってニヤニヤして言ってくる相手だって、相当、いい性格だよなと思った。
「別れた男の弟が気になって仕方がない」に出てくる兄(別れた男)の初めての相手は従兄弟で抱く側。
ただしこれを書く前に読み返したりはしてないので、兄関係はたいして情報書いてないから多分大丈夫と思ってるけど、設定食い違うところがあるかもしれないです。
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