親父のものだと思ってた11

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「それは、なんていか、その、俺の体を見てないから言えることで……」
「あなたの裸見たら俺が萎えるかも、って思ってるってこと?」
「うっ、まぁ、うん。てか、多分、原因は俺の方にあるっていうか、……あー、その、自分の体に自信がないっていうか、あんまきれいな肌じゃない、し、お前に裸晒して色々されるのを想像するのが無理っていうか、ごめん」
「一応聞くけど、俺がその気になるか服脱いで体見せてくれるとかは……」
「無理っ!」
「だよね〜」
 好きな相手を抱けるって時に、相手の体を見て萎えるなんてことがあるんだろうか。年齢も性別もわかっているし、服の下に手を入れてその肌に触れた段階ではしっかり興奮しているわけだし、萎えるはずがないと思うんだけど。でも実際に裸を晒しあったことはないので証明がしづらい。
 だからといって、じゃあ抱かれる側になるね、なんて気持ちにも全くならないので、どうにかして信じてもらうしかないよなとも思う。どうすれば信じてもらえるのか、現状全く思い浮かばないけれど。
「あ、のさ」
 黙って考え込んでしまえば、相手から声がかかる。
「とりあえず、お前が抱く側になりたい、って主張はわかった。で、それをわかった上でだけど」
 そこで言葉を切った相手は、何かを迷っているようだ。何か、というよりは、続きの言葉を言うべきかどうか迷っている。
 こちらが抱く側がいいという主張をわかった上で、何かを提案しようとしているようだけれど、こんなに躊躇うような提案に全く想像がつかなかった。
「何? とりあえず言ってみてよ」
 変なことでもいいからと促せば、ようやく言う気になったらしい。
「俺が、お前のを触って気持ちよくする、のを、試してみたい」
「え、いいの?」
「えっ、いいのか?」
 反射的に歓喜の声をあげてしまえば、相手はえらく戸惑っている。なんでだ。
 しかも互いのテンションはぜんぜん違うのに、なぜか口にした言葉が同じだったせいか、思わず見つめ合ったあと、互いに小さく吹き出した。
 笑ったおかげで、どこか緊張していた空気がいっきに緩む。
「なんで俺が嫌がると思ったの」
「それは、だって、抱かれる側になりたくないって言ってたし。それって、俺にあんまりあれこれされたくないってことじゃないのか?」
「え、違う違う違う」
 慌てて首を何度も横にふった。最終的に抱く側がいいという主張に、相手からの積極的な接触を拒むような意図は欠片もない。
「だって、俺のを触って気持ちよくしたついでに、隙を狙って俺のお尻狙うとかじゃないだろ? あれは、いつか体を繋げる日が来た時に俺が抱く側をしたい、ってだけの主張なの。好きな人が、お前を気持ちよくしたいよって言って触ってくれるの、嫌がるわけないって」
「そうか」
「そうだよ」
「でも、俺に触るのはダメだけど、でも俺は触るよ。ってのは、あまりにも俺が勝手すぎないか?」
「そりゃ、出来れば一緒に気持ちよくなれるのが理想だし、俺だけ気持ちよくして貰うの申し訳ないとか、俺だって気持ちよくなってるあなたが見たいとか思うだろうけど。でも、いきなり全部が無理っぽいのはわかってるし、俺に触られるのはまだ無理でも、俺に触るのは出来るかもって思ったなら、是非試してほしいし、キスとかハグとかみたいに慣れて欲しいし、慣れたら、今度は俺に気持ちよくされるのも試して欲しい」
 もちろん無理のない範囲で。ちょっとずつで構わないから。
「そうか」
「そうだよ」
 再度同じやり取りをして、相手も納得が言ったらしい。

続きました→

 
 
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