親父のものだと思ってた36

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 やばい。
 黙ってじっとしていた相手の背がピクリと震えて、間違いなく相手もこの状況を把握している。
 気持ちを鎮めようと焦れば焦るほど、なぜか興奮していく悪循環にはまってどうしていいかわからない。なのに。
「ぅあっっ」
 キュッと根本が締め付けられる感覚に、たまらず声を零してしまった。
「ぁ、ちょっ」
 キュ、キュ、と何度か繰り返されて、どうやら意図的にお尻の穴を収縮させているのだとわかったけれど、こちらの戸惑いは増すばかりだ。だって、これがやりたくて「もうちょっとだけこのままこうしてて」と言われたわけじゃないはずだからだ。
 しかも、腕の中から堪えきれなかったらしい笑い声が、小さく漏れてくる。
「うぅ、酷い……」
「ごめん、あんまりお前が可愛くて」
「意味わかんないんだけど。てか煽んないで欲しいんだけど」
「そうだな。じゃ、一回抜くか」
「えっ?」
「降りるから一回腕どけて。あと、ゴム、つけ直してよ」
「抱っこはもういいの?」
「うん。も、大丈夫」
 言われるまま背を抱いていた腕を下ろせば、上体を起こした相手がその流れのまま腰を持ち上げていく。といってもやはり動きは緩やかなので、根本から先端へと向かって、ゆっくりときつめの締め付けが移動していくのがたまらなく気持ちがいい。
「んっっ」
 開いた傘が引っかかって、そこが抜ける時は更に焦らされたけれど、そこが抜けてしまえばあとはつるっと亀頭すべてが抜けていった。
「……はぁ」
 残念な気持ちも少々混ざりつつも、相手が自ら降りてくれたことに小さく安堵の息を吐く。
「で、何してんの」
 降りた相手がベッドの上に転がっているローションボトルに手を伸ばすのを横目に見ながら上体を起こせば、お前はこっちねと、新しいゴムのパッケージが差し出された。思わず受け取ったけれど、さすがにすぐさまそれの封を開ける気にはなれず、手に持ったまま相手見つめてしまう。
「2回目する前に、俺の方もローション足して置こうかと思って」
 こちらの視線には気づいたようで、躊躇いなくローションボトルから中身を手のひらに出しながらそう返されたけれど、展開の速さに全くついていけない。いやまぁ、2回目するって話にはなってたし、繋がったまま大人しく待てずに反応させたのはこちらだけど。
「ちょ、待って。我慢できなくて体が反応しちゃったのは事実だけど、こっちの気持ちの切り替え、まだできないよ。てかさっきの何だったの」
「俺が、お前にちゃんと抱かれる覚悟、決めるための時間」
「え?」
「俺が張り切ってお前を気持ちよくしなくても、俺がお前に任せて体預けても、お前は間違いなくちゃんと自分で気持ちよくなれる。ってのはわかってるんだよ。ただ、お前は俺を気持ちよくしたい気持ちが強いうえに、俺より断然、筋力も持久力も精力もあるだろ。なんせ若いからさ。そのお前に主導権渡すのは、やっぱ、怖い。自分でコントロールできない中で、自分がどうなるかわからない不安がある」
「無理強いするつもりはないし、無理って言われたら、出来る限り、途中でもやめる。つもりは、あるよ?」
「わかってるよ。それに関しては実績もかなりあるし、信頼もしてる。俺が自分で主導権握ってたいなぁとか、お前に主導権渡すの怖いなとか不安だなってのは、そういうのじゃなくてさ。さっきも言ったけど、お前が可愛くて仕方ないってとこなの」
「え、つまり……?」
「つまり、お前が熱心に俺を気持ちよくしようと頑張って、それで本当に俺が気持ちよくなった時、お前が一緒に気持ちよくなるのを見逃すのが惜しい。ていうか正直いうと、お前が気持ちよくなってるとこを見て興奮してるとこがかなりあるから、自分の快感に意識向けるより、お前の快感に意識向けてたいんだよね」
「……は?」
「けど、お前に主導権渡しといてそれやると、お互い無駄に焦れて時間掛かる上に、俺の体が持たないから、もしお前に主導権渡すなら、俺はちゃんと自分の快感に向き合って、お前に気持ちよくして貰うことに集中しなきゃなんだけど、それが上手く出来るかわかんないってのも躊躇う理由だったんだよ」
「そ、そう、なの」
 なんと返していいのかわからなくて、とりあえず相槌を打ってしまったが、主導権を渡したくない理由が想像の斜め上を突き抜けている。

続きました→

 
 
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