知ってたけど知りたくなかった1

お題箱より「スレンダーな兄が、自分より体格が良い弟に襲われ、快楽に逆えず兄としての尊厳をへし折られる、的な短編。年齢差は3歳位」な話

 終電で帰宅した夜遅く、音に気をつけながら静かに上り終えたアパートの階段上で、ギクリとして足を止めた。
 自宅のドア前に座り込んでこちらを睨んでいた塊が、ゆっくりと立ち上がる。三歳下の弟だ、という事にはさすがにすぐに気付いたが、なぜここに居るのかはわからない。
「今日は、帰ってこないのかと思ってた。おかえり」
 掛けられた声は穏やかだけど、顔は不満げで怒っているようにも見えた。ポケットから取り出して思わず確認してしまった携帯には、やはり弟からの来訪を告げるような連絡はない。
「あんま脅かすなよ。めっちゃビビった。で、なんで、居るの?」
「ちょっと、今日中に確かめたいことがあって……」
 様子がおかしいのはあからさまだから、余程の何かを抱えているらしい。親のことか、就活か、大学関係か、バイト先関係か。別に相談に乗るくらいは構わないけれど、もう実家を出ているのだから、いきなり部屋に押しかけてくるのはどうなんだ。
「だとしたって、連絡くらいしろよ。週末だし、帰ってこないことだって、あるんだぞ」
 実家と同じノリで、帰ってきたなら話聞いてよと押しかけてくるには、今は互いの部屋の距離が有りすぎる。もう数歩で行き来できる隣の部屋ではないのに。
「ほら、入って」
 鍵を開けてドアを引き促せば、大人しく家の中に入っていく。勝手知ったるとばかりに暗い中をどんどん部屋の奥へと進んでいく相手を、廊下や部屋の明かりをつけつつ追いかける。
「今日はもう、帰ってこないのかと思ってた」
 テーブルセットもソファもない部屋なので、座る場所がそこしかなかった、というのはわからなくもないのだけれど、何の断りもなく部屋の奥に置かれたベッドに腰を下ろした弟が、疲れた様子で大きく息を吐く。会った最初も同じことを言われたが、どうやら、なかなか戻らない自分によほど焦らされていたらしい。
 連絡もなく来るからで、自業自得だ。でも、ギリギリ終電に間に合って良かったなと思う程度には、この勝手な弟の来訪を受け入れてしまっている。
「まぁ今日は、泊まりになるほど盛り上がんなかったからな」
「へぇ。てことは、今日一緒に居たのって、恋人とかではないんだ?」
「週末に恋人と過ごしてたら、間違いなく帰ってきてないだろ。良かったな、俺に恋人居なくって」
「そうだね」
 うっかりアパートの廊下で一夜を過ごさなくて済んで、という意味の自虐だったのに、相手はムスッとしていてそっけない。
「なぁ、お前、ホント、どうしたの?」
 自分もベッドに近づいて、真正面から相手を見下ろしてやる。弟といいつつ、とっくの昔に背を抜かれ、ずっと運動部だったせいか横幅だって下手したらひょろい自分の倍くらいありそうなので、いつもは見上げなければいけない相手を見下ろせるのはちょっとだけ気分がいい。
「兄ちゃんが聞いてやるから、話してみ」
 久々に兄貴風を吹かしている気分の良さと、相手の不機嫌さに釣られて、相手の頭に手を乗せてヨシヨシと撫でてやれば、じっとこちらを見上げていた目がゆるっと細められて、口の端が上がっていく。しかし、頭を撫でられて多少なりとも機嫌を良くするなんて、図体はデカくなってもなんだかんだ可愛いとこはある、なんて思ったのもつかの間、頭に乗せていた手を掴まれ引かれて慌てる。
「おわっ、ごめっ、え、ちょっ」
 前のめりに弟にぶつかった体はあっさり抱きとめられて、気づけばベッドに背中が付いていた。
「えっ……?」
 こちらをベッドに押さえつけるようにして上から見下ろしてくる弟の顔は、もちろん欠片も笑っていない。ジッと見つめてくる顔に焦るのは、そこに紛れもなく男の欲を感じ取ってしまったからで、早く逃げなければと思うのに、こんな体勢を取られて逃げられるわけがないとも思う。
 力で無理なら冷静に言葉で、とも思うけれど、焦る頭の中はヤバいだとかマズいだとかどうしようばかり浮かんでいて、相手を引かせる言葉なんて全く思い浮かびそうになかった。

続きました→

 
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前世の記憶なんてないけど1

 ずっと貴方を捜していました、と言われたのは高校受験を控えた中学三年の冬の塾帰りで、薄暗く人通りのない道の途中で、目の前に立つのはどう考えてもまともな人ではなかった。いや、一応は人のような見た目をしている。ただ、猫っぽい尖った耳とふさふさの尻尾を生やしていただけで。
 正確には猫ではなく狐だったけれど、そんなの中学生男子には見分けがつかない。正直に言えば猫耳カチューシャだと思ったし、そういうコスプレが好きな変質者に声を掛けられたと思ったし、つまり「まともな人ではなかった」というのも、変質者という意味での「まともじゃない」だ。
 おかしな人の相手なんてしてはいけない。というわけで、自慢の足で慌てて逃げ帰った家の自分の部屋の中、なぜかそこに先回りした相手が入り込んでいた。わけがわからず、すぐさま回れ右で逃げ出そうとした自室のドアは開かない。
 パニックになってわーぎゃー叫びながらドアをガチャガチャさせる自分に、相手は最初落ち着いてだとか話を聞いてだとか言って手を伸ばしてきたが、半泣きで腕を振り回し嫌がるこちらにすぐに諦めたらしく、次にはその場に正座し深々と頭を下げた。
 静かにその姿勢を続ける相手に、こちらの気持ちもゆっくりと落ち着いていく。この状況を受け入れ、先に進まないとという気になってくる。だから相手の前に自分も腰を下ろし、何者なの、と声をかけた。
 そこから先は相当眉唾もののファンタジーてんこ盛りで、簡単に言えば、彼が仕えるとある高貴なお方とやらの生まれ変わりが自分なのだと言われた。彼のミスで命を落とし輪廻の輪に還ったとかで、ずっと生まれ変わるのを待っていたんだそうだ。まさか人の世に生まれ変わっているとは、なんて嘆き気味に言われたけれど、そんなことを言われたって困る。
 もちろん前世の記憶なんて欠片もないし、話を聞いただけならやっぱり変質者の思い込みというか作り話にしか思えないのだけれど、ケモノ耳も尻尾も玩具なんかじゃなく彼の体から間違いなく生えていたし、人の家に勝手に入り込んでいるし、結界とか言って鍵のない部屋のドアを開かなくさせるし、狭い家の中であんだけギャーギャー騒いでも母が様子見にも来ないのだ。
 半信半疑ながらも取りあえずは彼の言い分を信じるとして、次に確かめたのは彼の目的だ。目的と言うか、自分が本当に彼の大事な人の生まれ変わりだとして、彼はいったいどうしたいのか。どうなりたいのか。
 聞けば、以前のように仕えたいのだと言われたけれど、その以前が全くわからないのにどうしろというのか。側にいたいにしたって、いくらなんでも彼を自分の部屋に住まわせるわけに行かないだろう。
 一応耳と尻尾は隠せるらしいし、多少は人の記憶も弄れると言うか騙せると言うか別の情報を思い込ませることは可能だとも言われたけれどその場しのぎの一時的なものらしいし、明らかに見た目成人している男性が中高生男子の家に頻繁に出入りするのはオカシイ。やめて欲しい。
 結果、彼はご近所さんになった。彼のアパートと自分の部屋とを繋いで、部屋の中から行き来できるようにしてしまった。むちゃくちゃだなと思いながらも、人の世界の常識から少々外れてしまった生活と彼の存在を受け入れた。
 といっても、仕えてもらうようなことは何もない。せいぜいどれだけ散らかしまくっても、触るな弄るなとでも言っておかない限り、いつの間にかきれいに整理整頓されているくらいだろうか。ちなみに、全く役に立てないとしょんぼりされて、仕方なく散らかしている部分もある。
 彼は前世の記憶を取り戻して欲しそうだけれど、どれだけ話を聞いても今ひとつピンとこないまま、あっという間に出会いから3年以上が経ち、この春、自分は少し遠方に引っ越しをする。遠方の大学に通うため、一人暮らしになるからだ。
 といっても当然相手も付いてくる。アパートの隣の部屋を既に押さえているし、どうせまた中からも部屋を繋いでしまうのだろうから、一人暮らしなんて表向きだけの同棲生活がスタートする。と思っているのはたぶん自分だけなんだけど、相手は今より色々と世話が焼けると、既にウキウキで張り切っている。

続きました→

有坂レイのお話は「ずっと貴方を捜していました」で始まり「銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった」で終わります。 shindanmaker.com/804548

 
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何も覚えてない、ってことにしたかった1

 今日もさっさと逃げ帰ろうとした仕事終わり、今日こそ逃しませんよ、と言って腕を掴んできたのは若干目の据わった入社三年目の後輩だった。
 彼がなぜそんな顔で、こんな事を言うのかわかっている。悪いのは自分で、彼はそれに振り回されている可愛そうな被害者だということも。
 知らぬ存ぜぬを貫き通して逃げまくるのもいい加減限界かもしれない。仕方なく、わかったから手を離せと言えば、素直に掴まれた腕は開放されたけれど、こちらを疑う目は鋭いままだ。
 その彼を連れて、とりあえず駅前にある個室を売りにしたチェーン居酒屋に入店した。
 そこまでしてやっと、これ以上逃げる気がないことをわかってくれたらしい。案内された小さな部屋の中、対面に座る相手は態度を一転してにこにこと嬉しげだった。
 そんな相手にメニューを差し出し、好きに頼めと言えば、相手の機嫌はますます良くなる。相変わらず単純で、わかりやすくて、扱いやすくて、いい。
 ホッとしつつ、相手が店員を呼んで注文を済ませるのを、ぼんやりと見ていた。個室のドアが閉まって店員が去ると、相手がこちらに向き直り、少し拗ねた様子で唇を尖らせる。
「なにホッとしてんですか。俺、一応、まだ怒ってますからね」
「そうか」
「ここ奢られたくらいで、なかったことにはなりませんから」
「だろうな」
 何も覚えてないからなかったことにしてくれ、を受け入れる気があるなら、そもそも逃がしませんなんて言って腕を掴んでは来ないだろう。
「ねぇ、わかってると思いますけど、年明けてからこっち、ほんっとそっけないから、俺、めっちゃショックでしたよ?」
「お前に構いすぎてたせいでああなったんだろう、と思って反省したんだ」
 昨年末の仕事納めの日、納会で少々飲みすぎた上にそのままずるずると三次会くらいまで参加して、酔いつぶれ寸前だった目の前の彼をお持ち帰りしたのだ。正確には、自宅にではなく、そこらのラブホにインした上でやることはやって、翌朝、彼を部屋に残してさっさと逃げ帰ってしまった。
 好意は確かにあったけれど、同じ部署の後輩相手に、あんな形で関係を持つだなんて、大失態も良いところだ。
 抱かれたのはこちらだし、相手も相当酔っていたから、何も覚えてないし、帰れなくて仕方なくそこらにあったラブホを利用しただけだし、きっと何もなかったはずだ。という主張を、慌てて連絡してきた相手にほぼ一方的に告げた後は、今日まで必死に逃げ回っていた。
「ちょ、待って。てことは、今後はずっとこのスタンス? なんて言いませんよね??」
「いや、言う」
 だって二度と、あんな失態は犯せない。部署は一緒だが直属の部下ってわけではないのだから、無駄に構うのを止めればいい。
「うっそでしょ」
 呆然となったところで、最初のドリンクとお通しが運ばれてくる。相手が呆けたままなので、仕方なくこちらが対応するはめになった。
「ほら、ビール来たぞ」
 相手の目の前に置いてやったジョッキに軽く自分のジョッキを当てて、さっさと飲み始めてしまえば、また少し剣呑な顔になった相手が、後を追うようにジョッキを掴む。
 一気に飲み干していくさまを、溜息を飲み込みながら見つめていた。

続きました→

 
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兄は疲れ切っている(目次)

キャラ名ありません。全40話。
雄っぱい持ち大学生弟(視点の主)×疲労困憊社会人兄。どちらも女性経験ありで男性経験なし。
同情から雄っぱいを揉ませたことで兄を意識するようになった視点の主が、彼女ができそうという兄に焦って、酔い潰して先に体だけ手に入れたら大失敗だった話。
目一杯優しくしても一向に絆されてくれないどころか心を閉じていく兄と、最終的には恋人同士になります。
21話から先はダラダラと恋人同士の甘ったるいセックスをしているだけですが、S字結腸まで突っ込んじゃったり、後始末でお湯の排泄させたりが混ざってます。描写は控えめ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 1分百円
2話 酔った兄に絆されて
3話 兄の奢りで居酒屋へ
4話 ラブホ連れ込み(R-18)
5話 兄覚醒と抱く宣言(R-18)
6話 とにかく諦めて(R-18)
7話 泣かれて一時中断(R-18)
8話 再開したけど(R-18)
9話 その後の迷い
10話 上手くいかない(R-18)
11話 兄だけ先に(R-18)
12話 兄の口奉仕(R-18)
13話 精飲と湧き上がる怒り(R-18)
14話 嫌だと言えば開放する
15話 兄の告白
16話 ポンコツなりに必死
17話 兄の惨めさの正体
18話 土下座で謝罪
19話 セックス前から好きだった
20話 やっと恋人同士
21話 初デートの余韻を残して
22話 ちっぱい堪能(R-18)
23話 襲っていいよ
24話 嬉しくて仕方がない(R-18)
25話 いつもと違って(R-18)
26話 耳元に甘い声(R-18)
27話 ゴムを口で着けてみたい
28話 初の対面座位(R-18)
29話 兄が自分で(R-18)
30話 初トコロテン(R-18)
31話 もっと、愛して(R-18)
32話 中出しマーキング(R-18)
33話 奥までじっくり(R-18)
34話 奥のその先(R-18)
35話 これから先はいつだって
36話 抱っこで風呂場
37話 後始末のお手伝い了承
38話 排泄中だって可愛い(R-18)
39話 湯船でうとうと
40話 おやすみ

 
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兄が俺に抱かれたいのかも知れない

 両親共働きで一番先に帰宅する自分が、帰宅時に郵便物を確認することになっている。両親宛のものやチラシ類はダイニングのテーブルに、兄宛のものは兄の部屋の机の上に、自分宛てはもちろん自室に持ち帰るのだが、兄宛のDMを届けた時にふと、兄の勉強机の棚に並んだ参考書の中に漫画本が紛れていることに気づいた。しかもなぜか背表紙が見えないように前後ろに突っ込まれている。
 なんだこれ、と思った時にはそれを引っ張り出していた。
「うわっ」
 肌色の多い表紙に、あ、これ、エロ本隠してたのかということに気づいて慌てたが、すぐに違和感に気づいてマジマジとその表紙を見つめてしまう。
 あれ、これ、もしかしなくても男同士なんじゃ……?
 うわーうわーと思いながらも、手は勝手に表紙を捲り始めてしまう。そして当然の流れとして、そのままそれを読み始めてしまった。しかもしっかり椅子に腰を下ろして。
 読んでいる間にも、脳内にはうわーとかひえーとかの言葉にならない驚きが渦巻いていて、読み終えた後は心臓がバクバクと痛いくらいに脈を打つ。
 知らなかった。兄にこんな趣味があったなんて。というか、他にも隠してたりするのかな?
 部屋を漁ったなんて知られたら絶対に怒られるけど、好奇心には勝てなかった。そんなわけで定番のベッドの下から、数冊新たに発見した漫画を兄の勉強机に積み上げ、黙々と読み耽る。
 やっぱりうわーひえーうわーと思いながらページを捲ってどれくらいの時間が過ぎただろう。
「おい、何してる」
 カチャッとドアノブを捻る音、ドアが開く気配、そして兄の慌てた声が続いた。振り向き兄を見つめる顔は、間違いなく赤くなっているだろう。羞恥でってよりは、興奮で。
「兄ちゃんさ、これオカズに抜いてんの?」
 手にしたままの漫画を掲げれば、多分羞恥で顔を赤くしている兄が、怒ったみたいな険しい顔でドスドスと荒い足取りで近づいてきて、手の中からそれを取り上げてしまう。バンッと音が立つくらい勢いよく漫画を閉じて、それをベッドの方に向かって放り投げる。しかもその後も無言で、机の上に積み上げた漫画を、取り敢えずみたいな感じにベッドへ向かって全部投げてしまう。
 動揺しすぎ。いや、気持ちはわかるけど。
 弟に兄弟ものの、しかもことごとく兄が弟に抱かれてるような描写が入ったエロ本見つかって読まれるってどんな気分? って聞きたい気持ちをどうにか堪える。だって他に聞きたいことがたくさんある。
「ゲイなの?」
「ち、がう……」
「んじゃ腐男子とかいうやつ?」
「は? お前、何言って?」
「あれ? 違った? BLって言うんだろ、ああいう漫画。で、それを楽しむ女子が腐女子で男なら腐男子」
「いや、違ってない、けど。えっ、お前、気持ち悪くねぇの?」
「ビックリはしたけど、気持ち悪かったら部屋漁ってまでして何冊も読まないって」
「いやでも、だって、」
「んでさ、ゲイじゃないなら、あれはそういう漫画のいちジャンルとして楽しんでます、みたいな感じなの?」
「そ……だよ」
 困ったように視線が泳ぐから、これはきっと期待していい。
「なーんだ。残念」
「残念?」
「俺、読んでて結構興奮したけど。兄ちゃんが、あの漫画みたいなこと、俺にされたいのかと思って」
 椅子に座ったままなので、見上げる兄の既に赤い顔が、更にぶわっと赤味を増していく。
「ね、正直にいいなよ。そしたら兄さんのこと、俺がうんと可愛がってあげる」
 さっき読んでた漫画の中のセリフを投げかければ、兄はすぐに気づいたようだった。
「おまっ、それっ」
「あはは。さすがにすぐわかるね。読み込んでるね」
「からかうなよっ。つかもうお前、部屋出てけ。でもって忘れろ。全部忘れろ」
「いやですー。てか、からかってないし」
 もう一度正直にいいなと促せば、うっと言葉に詰まった後、なぜかゲンコツを落とされた。
「暴力反対!」
「お前が悪いっ」
「なんでよ」
「勝手に部屋漁んなバカヤロウ」
「漁ってすぐ出てくるとこに置いとくとか、俺に見つけて欲しかったってことじゃないの」
「違うったら違うっ」
「えーもー漫画と違って全然すんなりいなかいじゃん」
「当たり前だろ。あれはフィクション」
「でもさ、兄ちゃん気づいてる?」
「何を?」
 そんなの、漫画みたいなことをされたいのかという質問に、顔を赤らめただけで否定はしてないってことをだ。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
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ただいまって言い続けたい

 玄関扉を開けた先は、廊下の明かりは点いていなくとも薄明るかった。短な廊下の突き当りにあるリビングへと続くドアに嵌った曇りガラスから、リビングの明かりが漏れているせいだ。
 そのドアが開いて、ますます廊下の明るさが増すと共に、お帰りなさいの弾んだ声が掛けられる。
「ただいま」
 帰宅時に家に誰かが待っててくれるってのはやっぱ幸せだなぁと思いながら、恋人までの短な距離を詰めていく。
「飯温めるので、手ぇ洗ってうがいしてきてください」
 差し出された手に仕事カバンを手渡せば、さっさとしろと急かされてしまう。なるほど。やたら弾んでいた声の理由がわかってしまった。今日は遅くなるから先に飯食っていいよって、遅くなるのが決定した瞬間に連絡は入れていたけれど、どうやら食べずに待っていてくれたらしい。
「そこはご飯にする? お風呂にする? ってヤツやってよ」
「やですよ。だって俺、腹減ってるし」
 知ってる、とは言わなかった。というよりも言う隙がなかった。先に食べずに待ってたんだから急いでと、かなり空腹らしい相手に再度急かされてしまったからだ。
「えー、じゃあ、せめてお帰りのちゅー」
 ねだれば一瞬うっと詰まったものの、すぐさま頬にちゅっと小さなリップ音が立った。口にしてくれないのはわかっていたけど、それでも不満ですと言いたげに口先を少しばかり尖らせれば、相手は困った人だなと言いたげに苦笑する。
「口はうがいしてからです」
 ほら行ってらっしゃいの言葉とともに、肩を掴まれ強引に回れ右させられたかと思うと、洗面所へ向けて背中押し出されてしまう。仕方がないので数歩分廊下を戻って、ハンドソープを使ってしっかり手を洗った後、うがいも念入りに数回繰り返す。
 部屋に戻って、本日の夕飯をテーブルへと運んでいる途中の相手から皿を奪うついでに唇を突き出せば、今度こそおかえりの言葉とともに唇にキスが落ちた。
 満足したので奪い取った皿をテーブルに運び、そのまま自分は席に着いて残りの準備は相手に丸投げしたけれど、相手は文句もなくキッチンとテーブルとを往復している。さすがに今日はかなり疲れているのを察してくれているんだろう。
 
 着々と腕を上げているのがはっきりわかる彼作の夕飯を食べて、既にシャワー済みだという相手に後片付けも押し付けて風呂を使い、疲れてるけどそれは別腹的に気持ちよくなって、というか正確には気持ちよくしてもらって、現在はベッドの中で甲斐甲斐しく後始末をされながらまどろみ中だ。
「最近、随分と甘ったれになりましたよね」
 ざっくりと後始末を終えたらしく、相手もベッドに潜り込んできたから、さっそくすり寄ってくっつけば、そんな苦笑交じりの言葉とともにふわりと抱きしめられる。
「それは誰かさんが目一杯甘やかすから〜」
「知ってます? 俺の夏休み、明後日には終わるんですよ」
 年下の恋人はまだ大学生で、夏休みがとても長い。けれどそれももう終わりが近づいていた。
「知ってるからこそ、この週末は甘え尽くすつもりなんだけど」
 というか彼の夏休み最後の週末を休日出勤なんかで無駄にしたくなかったからこそ、今夜の帰りがここまで遅くなったわけなんだけど。
「ならいいですけど。大丈夫なんですか?」
「大丈夫って何が?」
「甘やかすのはいいんですけど、元の生活に戻れないとかって泣きついて来ないで下さいよ、って意味ですかね」
「えーそれはちょっと保証できない」
 夏休みの大半を半同棲的にこの家で過ごしていたから、彼に行ってきますもただいまも言えない生活に戻ったら、絶対に寂しいに決まってる。もういっそこのまま、大学もここから通えばいいのに。
「それってプロポーズですか?」
「えっ?」
「いっそ大学ここから通えって、今、言いましたよね?」
 どうやら口から言葉にして出していたらしい。
「行ってきますとか、ただいまとか、お前に言える生活、続けたいよ。って言ったら、一緒に暮らしてくれんの?」
 プロポーズしていいならもちろんしたいよ、と言ったら、照れくさそうに、本気にしていいなら引っ越しも考えますと返された。

夏休みを終えて戻ってきました。ただいまです。というわけで、更新再開しますのでまた宜しくおねがいします。

 
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