金に困ってAV出演してみた32

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 だったら最初から、はっきりきっぱり、それは無理だと告げておくべきだ。そう思って正直に打ち明けてみたのだけれど、それはどっちかというと手に入らないなら体だけでもって嗜好だねと、なんだか少し疲れた声で返された。
「まぁ、そう思わせた原因が、俺が書いた台本のせいってのはわかった」
「じゃあ、恋人相手には調教なんてする気なかった?」
「したい気持ちがない、とは言わない、けど」
 ほらやっぱりしたいんじゃん。それを性癖って言うんだ。けれどそれを指摘する前に、相手の言葉が続いてしまう。
「でもそっちは譲れない性癖じゃないかな」
「譲れない性癖?」
「受け入れられないって言われたら、恋人になるの諦めるかもしれない性癖はそれじゃないって事」
「つまり、そんな性癖が、ある?」
「ある」
「えっと、どんなこと?」
「まぁその、あれだよ。ハメ撮りしたいというか、記録を残したい的な」
「あー……」
 なるほど。全く違和感の欠片もない回答に、なんでそれを考えなかったのかが不思議なくらいだった。自分だって、撮られる前提でこの場にいるくせに。
「なんで俺を好きとか言いだしたのか、今のでなんか理解した気がする」
 なんで自分なんだろう、とは思っていたし、理由が聞けるなら聞きたいとも思っていた。だって彼のあの告白を受けるまでに、自分たちが顔を合わせたのは片手の数で足りる程度だったし、一応連絡先を交換してはいるものの、事務連絡に毛が生えた程度のやり取りしかしていなかった。
 それなのに、相手の好きは本気っぽかったし、今日だってそれを疑いたくなるような反応は一切されていない。それどころか、ますます本気らしいと思わされているのだ。
 でもじゃあ一体いつどこで、そんな気になったのか。自分の何が彼にとって魅力なのか。気になるのは当然だろう。
 とはいえ、まさかのそこか、という衝撃は大きい。言われれば納得というか、わからなくはないんだけれど。
 だって盗撮動画を売りたいなんて話は一切されないまま、プライベートでしかなかったあの場面で、カメラを向けられてもけっこうあっさり受け入れてフェラも顔射も撮らせたし、その後盗撮の件を知ったけれど、やっぱり怒ることはしていない。そんな自分を、都合が良い相手と認識されても仕方がない。
「あのさ、一応弁解しておくけど、好きになったの、ハメ撮り許可してくれそうだからってだけじゃないからね!?」
「いやまぁ、別に……」
 ハメ撮りさせてくれそうだからって理由でもいいんだけどね。と自嘲すれば、全然良くないくせにと、何故か相手が不満げに唇を尖らせる。けれどその顔はすぐに満面の笑みに変わった。
「ハメ撮り目当てなんてガッカリって、めちゃくちゃ顔に出てるんだけど、そういうとこがさ、つくづく素直でいいなぁって思うよ。わかりやすくて、一緒にいると凄く安心する」
「それ、まさか褒めてる?」
「褒めてると言うか、好きって言ってる。あと真面目っぽいのに発想が突飛だったり、優しかったり、愛情深そうだったりも、好き。好きになって貰えたら幸せだろうなぁって、めちゃくちゃ期待してる」
 好きになって? と可愛らしい微笑みとともに、小さく首を傾げてみせるさまが随分とあざとい。
「あざとい」
 それをそのまま口に出せば、相手はまたしても不満げに口を尖らせる。でもそれすらも、なんだか妙に可愛い。
「わかっててやってますー。だから絆されてよ」
 さっきと何が違うんだと思ったけれど、どうやらこれも意図的に作られた表情だかららしい。演技力って、こういう所でも発揮されるのか。
「そっちが本気なら、俺も好きを返したいって思ってる。って言ったろ」
「言ったね。つまり俺次第だってなら、本気出して頑張っちゃうけど、いい?」
「頑張るって、何を……?」
 意味深に笑われて思わず聞き返してしまったけれど、いやこれ聞かないほうがいいやつなんじゃ。なんて思ってももう遅い。
「もう、一生手放してあげないよ」
 真剣な表情で真っ直ぐに射抜かれながらそんな事を言われてしまえば、頭の隅ではこれも演技だろと思っているのに、何も言えないばかりかどうにも顔が熱い。

続きました→

 
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