金に困ってAV出演してみた9

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 一本目の撮影が当たりだったとか、かなり運が良かっただとか、それを強く意識したのは二本目の撮影中だった。初回の撮影から数日しか経過していないその日、一応初回よりは内容を把握した上で挑んだけれど、結果は散々だった。
 金銭的に困窮していて、なるべく早くある程度の金額を稼ぎたい、という気持ちにつけ込まれた自覚はある。わざわざ髪色を変えて、チャラく見えるようにしたのだって自分自身だ。
 いわゆる、万引を見つかって事務所で脅されて色々されてしまう系で、やってもいない万引を責められて、怒られて、何度もごめんなさいを言わされて、相当精神が削られた。感じるどころじゃなかったし、かなり泣いたりもしたけれど、内容的にはそれで問題ないようで、殆ど休憩もないまま気づけば撮影は終了していた。
 時給換算的にはどう考えても今回のほうが段違いに良かったけど、あまり進んで受けたい内容じゃない。とはいえ、次に斡旋される仕事がこっちよりでも、多分きっと受けてしまうんだろうけれど。
 相手役の人も仕事として演技していただけで、本当はそんなに怖い人ではないんだろう。終了が告げられた後は雰囲気を一転して、怖い思いさせてごめんねと何度も謝られてしまったけれど、相手が悪いわけじゃないのもわかっている。わかっていてもやっぱり染み付いた恐怖心は残っていたし、この後プライベートで慰めようかという誘いには全力で断りを入れる。
 そんな中、どう考えても場違いな人物が、元気のいい挨拶を告げながら入室してきた。前回の相手役だった彼だ。
 片付け中のスタッフ陣に声を掛けたあと、近づいてくる彼の目的がこちらだと気付いたらしい隣の相手役は、またどっかで一緒になってもあんまり怯えないでくれよと残して、入れ違いに去っていく。わかりましたと返して相手役を見送ってから、目の前に立つ男の子を見上げれば、来ちゃったと言って笑う。
「えっと、なんで……」
「今日ここで撮影してるって聞いたから。もしかしなくても泣いたよね?」
 目が赤くなっているという指摘に、色々あってと濁しながらも肯定すれば、濡れ衣で怒られたら悔しいし悲しいよねと返されて驚く。
「え、濡れ衣って?」
「え、本当には万引なんてしてないんだから、濡れ衣でしょ?」
「そ、だけど。え、内容まで知ってて来たの?」
「うん。撮影も見たかったけど、間に合わなかった。本当はね、終了直後に掻っ攫ってくつもりだった」
「掻っ攫う?」
「そ。泣いて弱ってるとこにつけ込みたかったのに、失敗したかな?」
 まだ間に合うかと聞かれて首を傾げてしまえば、デートに誘ってるんだよと苦笑された。弱ってるとこにつけ込むだの言っておいて、デートの誘いってなんだそりゃ。とは思ったが、それでも目的はわかってしまった。
「えー……っと、プライベートで慰めエッチしてあげようか的な?」
 可愛らしくデートなどと言った所で、つまりはそういうことだろう。
「もしかしてもう誘われた?」
「あー、まぁ、うん。断ったけど」
「断ったんだ。良かった。いや良くないな。つまりデートは無理だよって、俺もお断りされちゃうやつ?」
 慰めエッチが要らないならご飯だけでもと食い下がられて、それくらいならと了承した。
 慰めて貰うかは、また後で考えようと思う。しんどいセックスを強要された反動で、優しく抱かれたい気持ちがなくはないのだけれど、それを彼に求めていいかは迷うところだ。

続きました→

 
 
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