金に困ってAV出演してみた27

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 こちらが生徒を好きになる、なんて展開は彼の中では想定外だったようだけれど、でも好きになっていいとはっきり言ってくれたのだから、きっとこの後、好きを伝えられるような場面を作ってくれるはずだ。その時にちゃんと好きだと言えるように、とは思っているものの、未知の深さまで侵入してくるオモチャに、意識の大半が持っていかれている。
 太さはないので途中まではスルスルと入ってきたし、時々軽く前後されれば凹凸が中のイイ所を擦って、むしろその細さが物足りないくらいだったのに、途中からは奥に入られているという感覚ばかりが強くなって、別の意味で息が乱れた。快感を拾う余裕なんて当然なくて、ハァハァと吐き出す息が荒いのは、どう考えたって恐怖と不安からだ。
「うぅッ」
 お腹の奥がグッと押し上げられるような鈍い痛みに呻いたところで、背後から、ここまでかなという声が掛かる。
「もういいよ。手、離して」
 そう言われても、指先に力が入りすぎているのか、上手く手が開けなかった。内心焦っていると、尻タブを掴む手をそっと撫でられた後、こわばる指先を一本づつ引き剥がしてくれる。
 途中である程度緊張が解けたのか、片手が離れる頃には逆の手も動いて、どうにかシーツに両手をついたものの、今度は腕に力が入らない。伏せてしまった上体を起こせない。
 宥めるように手の外れたお尻を何度も撫でていた彼の手が、するっと腰から背を上って頭を撫で始める。優しい手付きにホッとするのに、息は整わないままだし、腕に力も入らない。
「ねぇ」
 頭では支えきれなくなって、途中から横向きに頬をシーツに押し当て肩で体を支えるようになっていたけれど、その顔を覗き込むように急に彼が顔を寄せてくる。ぼやけた視界をどうにかしたくて何度もパシパシと目を瞬かせれば、少しばかりクリアになった視界の先で、相手は随分と困った顔をしている。
 オモチャは無事に、S状結腸のギリギリ手前まで届いたのかと思っていたのだけれど、もしかしてこちらがあんまり怖がって泣くから、途中で止めてくれたってことなんだろうか。
「あの……?」
「うん」
 なんでそんな顔をするのかとか、この後どうすればいいのかとか、聞きたいことは山ほどあって、でもなんとか絞り出した声には、先を促すような柔らかな相槌だけが返る。
「つづけ、て、いーよ?」
 ますます困った顔をさせてしまったから、どうやら欲しい言葉はこれじゃなかったらしい。
「泣くほど怖いのに?」
「だ、って」
 あんまり優しく頭を撫で続けてくれるから、だって仕方ないじゃないかと思いながら口を開いたら、またぶわっと涙が込み上げてしまう。ううっと呻きながらもどうにか涙を拭おうとしたけれど、それより先に、頭を撫でてくれていた手が頬に落ちて溢れかけた涙を拭っていく。
 その手付きもやっぱり優しくて、涙は暫く止まりそうにない。カメラの前で泣いてしまうのは初めてではないけれど、あの時は慰められることもなく、むしろ泣き顔をもっと晒せって勢いだったのに、今回はどう考えてもこちらが落ち着くのを待たれている。
「この体勢のままじゃ辛いよね。もっと楽な姿勢になろうか。お尻のオモチャも一回抜く? 一回休憩入れようか?」
 これはどうやら、生徒の彼ではなく監督としての彼の言葉なんだろう。でもどうせならこのまま撮影を続けて欲しかった。というよりも、一度抜いてもう一度挿れるところから、なんてのを繰り返したくない。
「へ、きだから、も、ちょっと、待って」
「うん。焦って泣き止まなくていいから。でも、体勢は変えようね」
 ベッドに寝転がっていいよと言われた後、彼に呼ばれてワラワラと寄ってきた数人のスタッフに抱えられるようにして、そろりと体の向きを変えられる。背中を支えてくれるベッドマットの感触に、今度こそ安堵で体の力が随分と抜けた気がする。
 一度大きく息を吐いてから、意識的に深めの呼吸を繰り返せば、気持ちもだんだんと落ち着いてくるようだった。

続きました→

 
 
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