気持ちのままに顔を寄せて、ちゅっと軽く相手の唇を啄んでやる。
「あーもー、お前、ほんっと、俺に対して可愛すぎんだけど」
「ならベッド行く?」
いい加減、可愛いも好きも言われ慣れてる相手は、それでも嬉しげに笑って、そんな誘いをかけてくる。
「行く。けど、先にさっきの一緒に住まないかって話、受ける気あるかだけでも聞かせて」
「もちろん受けるよ。同棲って、めちゃくちゃ魅力的な響きだよね」
「んじゃ、後はお前の親の説得か。そういやお前の親って、うちの親の事、どー思ってんだろ」
まさか従兄弟との現在の関係を明かせるはずもないから、手っ取り早いのは、縁切りされた件を持ち出して従兄弟と一緒に住みたいと言うのが良さそうだとは思う。ただ、甥っ子を助ける気になってくれるかどうかは、さっぱりわからない。
思えば、従兄弟から従兄弟両親の話を聞いたことがあまりない。親が従兄弟両親に関してあれこれ言っているのを聞いた記憶もあまりなかった。
とにかく、従兄弟に遅れを取るな、従兄弟に勝て、みたいな事ばかりで、親自身も従兄弟ばかり気にしているような感じだったように思う。でも従兄弟と同じ大学に通うことになって、生活費やらの件で明らかに従兄弟親と張り合っていたから、実親が従兄弟親を意識しまくっているのは確実だ。
「親の説得なんて多分必要ないよ。お前と住むから少し広い部屋借りることにしたって言っても、わかったって言って書類にサインしてくれると思う。お前の親のことも、多分きっと、なんとも思ってない」
悪い意味でそういうとこ無関心なんだよね、と苦笑う顔は、なんだか凄く淋しげだ。
「興味の大半が仕事とかお金とか自分たちの生活の快適さ、なんだよ。うちの親。一人っ子で財産継ぐの俺だから、俺に金かけるのは厭わないと言うか、親の顔に泥塗るような真似とか、親の手を煩わせたりしなけりゃ、俺のことは基本放置で金だけ出してくれる方針だからさ」
有り難いよねと無理矢理に笑ってみせるから、そうだな、なんて言って頷けるわけがない。
「それ、親から信用されてる、って話じゃないのか?」
「そりゃ、信用はされてると思うよ。むしろ親の信用を勝ち取ってきた結果が今だよ」
俺の優等生っぷりをお前は間近に見てきただろうと言われてしまえば、それは確かにそうだったと頷く以外にないけれど。でもやっぱり、その顔はちっとも嬉しそうでも自慢げでもないのだ。
「実はお前も、相当親絡みで苦労してきた、とか言う?」
高校一年時に謝罪した時、親に煽られていた部分が大きかった、というようなことを言ってしまったのもあったし、大学受験をする時に、従兄弟より良い大学なら学費を出してやると言われた事なども、彼は当然知っている。他にも細々、特に高校時代は、相談とも愚痴ともつかないような事を、会話の端々で漏らしていたとも思う。
だから彼はこちらの親事情をそれなりに把握しているのだけれど、彼が彼の親の話題を出さないことを気にしたことなんてなかった。むしろ親への不満などが出ないのは、親との間に何の問題もないからだろうと思っていたし、彼ほどの男であれば当然かとも思っていたのだ。まさか親から、金さえ出せばいいだろう、みたいな扱いを受けてきたなんて、欠片も考えたことがない。
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