目覚めはスッキリとしていて体がめちゃくちゃ軽かった。隣では竜人の姿に戻った男が、まだ軽いイビキと共に眠っている。
行為を終えたのは彼の変化の術が解ける直前で、要するに人型が保てている間いっぱいが食事の時間ということらしかった。
竜人の姿に戻ってもわかる、色濃く漂う疲れの気配。ここでそのまま休めばいいと誘えば、相手は随分と驚いていた。躊躇う相手にこの後の予定はと聞けば、後は自室に戻って休むだけだと言うので、もう少しそばに居て欲しいと頼み込んで引き止めたのは自分だ。
めちゃくちゃ広いベッドは、二人で横になってもまだ充分に余裕がある。だから、まぁいいかといった様子でベッドに沈んだ男の隣に寄り添えば、やはり相手は驚いたようだった。
この姿が怖くはないのかと聞かれたが、今更過ぎて笑ってしまった。姿形は多少違っても、つい先程まで体を繋いで睦言を繰り返していた相手だ。
倒すべき敵として対峙すれば間違いなく恐怖するだろうが、モンスター相手に戦闘を繰り広げていた記憶は既に遠い過去のものになっている。むしろ、殺してやれないと言って謝るような相手を、どう恐怖すればいいのかわからない。
そう告げれば、そうかと言ったきり、彼はあっさり眠りに落ちてしまった。やはり相当疲れていたらしい。
無防備に眠る姿は、こちらへの警戒心がまるでない証のようだ。事実、眠る彼に傷をつける術など一切ないし、そんな気持ちも微塵もない。
どちらかと言えば、相手に対して感じるのは深い興味と好奇心だった。相手は本来の自分の実力では到底お目にかかれないレベルの竜人だ。しかも敵意も悪意もなく、自分を生かすために精を分け与えるという、信じがたい行動を見せている。
疲れた様子の彼を起こしてしまうのが忍びなくて我慢していたが、一眠りした後の今なら、少しくらいは触れても大丈夫だろうか。
体に掛かる布をそろりとどければ、仰向けに転がる相手の腹が見えた。確かに彼の性器をこの体に受け入れていたはずが、下腹部もツルリとして何もない。
不思議に思って体を起こし、その周辺に顔を寄せて確かめる。それは見た目より先に香りで気付いた。
覚えのある甘い芳香が、下腹部の一部から漏れ出ている。食事前だったら、迷わずそこへ舌を伸ばして舐め啜っていただろう。
なるほど、性交時以外は体内に収まる仕組みらしい。
人のように、その近辺を刺激したら、勃起して飛び出してくるのだろうか。などという下世話な興味で、その香りが濃い部分周辺を撫で擦ってみた。
勃起したペニスが飛び出てくることはなかったが、香りが強くなるのを感じ、腹の隙間にじわりと汁が滲み出る。その汁に誘われて、とうとうその場所へ舌を伸ばしてしまった。ちろりと舐めとった汁は、キスによって与えられる彼の唾液とはまた違った、少し酸味のある旨さだ。
性器を収めているのだろう袋の中は、濃厚な先走りの液体で満たされていて、差し込んだ舌ですくうようにベロベロと舐め回す。
「こら。なにをしてる」
つい夢中になって舐め啜っていたら、どうやら起きたらしい男の声が静かに響いた。
「食べ足りない、ということはないだろう?」
そっと肩を捕まれ引き剥がされる。
「もっと食べれそう。って言ったらまだ俺を抱く?」
勃起させてよと言ったらダメだとそっけなく返され少し残念だった。
「この姿で抱いたらお前の体を傷つける。次に人型が取れるまで少し待ってくれ。それに今日は他に予定が詰まっている」
「それは残念。というか、次回もあるのか?」
「無事に食事が摂れたのだから、暫くは私がお前の食事として定期的に供される事になる」
それを聞いてホッとする。
「なるべく、早く、来て」
縋るように頼んでしまうのは、この部屋に一人閉じ込められる時間を思い出して、どうにも寂しく感じてしまったからだ。目の前の男にさんざん優しく抱かれたせいで、気持ちが弱っているのかもしれない。
「私が来れない間、できればお前を世話する者を戻したいのだが……」
「え、あいつにまた会えるのか?」
「無断でスリットに舌を差し込んで舐め回す、などということをされてしまうと、彼の身が危険な気がして考え中だ」
初心な彼を襲わずにいられるならと言われて、うーんと唸ってしまった。美味しそうな香りを撒き散らすのは彼もまた同じだからだ。しかも、目の前の男からたくさんの栄養を貰って、体はメキメキと回復している。小さくても竜人だから力比べで勝てるとは思わないが、前ほど簡単に振り払われる事もないかもしれない。
「まぁ、だいぶ元気になったようだし、私が来れない間の暇が潰せるよう、何かしら考慮はしておこう」
そう言い残して彼が部屋を去ってから程なくして、パタパタと走ってくる軽い足音が近づき、もどかしげに鍵を開けて飛び込んできたのは世話係の小さな竜人だった。
体力が回復したおかげで、この部屋に運び込まれて初めてベッドを降り、部屋の中をウロウロ見まわっていた自分に、飛びつく勢いで抱きついてくる。
「凄い、お前、歩ける」
「あー、うん。腹いっぱい食べたら、元気でた」
「おまえ、食事、出来た。良かった」
半泣きの声に、随分と心配をかけていたようだと気付いて、腹にまとわりつく小さな竜人の頭をそっと撫でた。撫でながら、さてどうしようかと思う。
腹は満たされているからか、尻穴や腸内が蠢くことはないけれど、やはり甘い香りが鼻腔をくすぐってくるのだ。
再度彼に逃げられたくはないからもちろん我慢するけれど、竜人の味をはっきりと知ってしまった上に体が動くようになった今となっては、これは結構きつい状況かもしれない。
次の食事がいつなのかはっきりしないから不安でしょうがない。腹が減ってこの小さな竜人に襲いかかってしまう前に、はやくもう一度食事担当の彼に戻ってもらいたいと切に願った。
<終>
遅刻すみません。最後がどうにも迷って時間食いました。
適当ファンタジーにお付き合いどうもありがとうございました。いつか竜人受も書いてみたい……
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