罰ゲーム後・先輩受14

1話戻る→   目次へ→

 抱かれるための体の準備は一人でするつもりだったのに、それは嫌だと言い張られて、とりあえず一緒にいられる時間が長いお盆期間中は、一人で勝手に弄って拡げないと約束した。用意された穴にただ突っ込むのが嫌だと思う男の矜持はわかる気がするし、一緒に関係を進めたい気持ちや、自分の手で慣らしたいと思ってくれた気持ちが嬉しかったからだ。
 そのかわり、水族館や遊園地は逃げないからとデートの予定を取りやめて、日中ひたすらベッドの上で、繋がるための場所を慣らして拡げる行為に没頭した。これは、多少強引にでもガンガン自己開発しまくって、出来れば塾が開く前に一回くらいは繋がるセックスにチャレンジしてみたい気持ちがあることを、正直に相手に伝えたせいだった。
 必要なものを揃えて、バスタオルを広げた上で両足を開いてその場所を晒し、惜しみなくたっぷりとローションを注がれながら相手の指を受け入れる。なんら怖くないし痛くもないし、確かに違和感はあるけど、くすぐったいようなゾワリとする感覚が快感の前兆だってこともわかっている。ただ、恥ずかしさだけはどうしようもなかった。
 だって、思いの外相手が饒舌なのだ。今その場所がどうなっているのか、こちらを気遣う言葉とともに伝えてくる。それが恥ずかしくて照れても、戸惑っても、可愛い愛しい好きだと繰り返す。
 彼がそうする理由はわかっている。
 今まで経験してきたセックスで、他人にそんな場所を弄られたことがないのだ。秘された場所を暴いて拡げて弄るのは、当然、自分の側の役割だった。
 抱かれる側をするってのは相手にその役割を譲ることだと、頭ではもちろんわかっている。けれど相手が何を感じるのか、男の尻の穴を弄ることに本当に抵抗がないのか、まだちゃんと抱きたい気持ちで居てくれているのか、主導権を相手に渡して待つ側の不安は思った以上に大きかった。
 それを言葉でも、態度でも、大丈夫だと知らせてくれているだけで、恥ずかしくてたまらない気持ちは、同時に、嬉しくてたまらない気持ちにもさせる。
 やっぱり思った通りだった。まだ最後まで抱かれてはいないけれど、体を預けきってしまっても、欲に任せて乱暴に扱われることなんて一切ない、優しい気遣いに溢れたセックスをしてくれている。過去のトラウマがそうさせるのかも知れないけれど、だったら尚更、自分は与えられる快楽をめいっぱい素直に受け取り、気持ちが良いことを隠さず相手に返してやればいい。
 そんな気持ちから、多少の躊躇いはねじ伏せ、ゾワリとする感覚が育ってはっきりとした快感を掴むようなった後は、尻穴を弄られるのがキモチイイのだと伝えるように喘いだ。
 相手は良かったと言って嬉しそうに笑ってくれたが、良かったはこっちのセリフだと思う。抱かれる側を選んでよかった。彼が嬉しそうでよかった。この体が、彼に抱かれても気持ち良くなれそうで、本当に、よかった。
 それともう一つ、慣らす行為を始めたことで、今までとは大きく変化したことがあった。
 フェラはもちろんとっくに試していたけれど、して貰うのは手より断然気持ちがいいし、興奮だってするけれど、自分がするのにはやはり少し抵抗があると言われて、抜き合う時は基本手で扱き合うばかりだった。されるのが気持ち良いなら、自分だけでもしてやりたかったけれど、こちらがただただ相手のを口で愛してやりたいのだとしても、強引にねだってフェラすれば、相手は内心嫌々ながらでも絶対にやり返してくるからだ。そんな所は張り合わなくていいのに、それはフェアじゃないからと頑として譲らなかった。彼だけが良い思いをする事に、かなり抵抗があるらしい。
 そんな彼が、ねだってもいないのに、積極的にフェラくれるようになったのだ。抵抗があるんじゃなかったのかと、最初はかなりビックリしたけれど、したいからしてるし大丈夫だという彼の言葉を信じて、ありがたく気持ちよくなっている。
 多分、尻の穴を拡げられる違和感を、より強い快楽でごまかそうとしているんだろう。同時にペニスを弄る際、口でもしてくれるようになったのは、挿し込まれる指の数が二本に増えてからだ。
 そして彼が口でしてくれるのだから、こちらも心置きなく口を使ったお返しが出来る。抱かれる側になると決めて、主導権を相手に渡して体を慣らされていても、自分だって相手の体をあちこち弄ってめいっぱいの快楽を引き出してやりたいのだ。
 なんとなくのケジメで平日の宿泊は許可しないままだったので、夜になれば相手は帰って行ったけれど、その分日の高いうちから部屋にこもって一日中そんな行為を繰り返していたのだから、まったくもって欠片も健全さのない日々だった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受13

1話戻る→   目次へ→

 ナンパされても揺らがなかったからですよと告げる声は柔らかで、こちらを見つめる視線もいつの間にか随分と、穏やかで優しいものへと変化していてドキリとする。
「前に、二股かけない程度の誠実さはあるって言ってたっすけど、それ以上に大事にされてると言うか、好かれてると言うか。先輩の好きを信じてなかったわけじゃないんすけど、学校の外でも、学内の生徒の前以外でも、同じかそれ以上にちゃんと恋人として扱われて、なんて言うか、こう、恋人なんだってことを実感したっす」
 これさっきも言ったっすねと照れ笑う顔さえ、やはり穏やかで優しかった。
 確かにデートと思って出掛けていたし、相手が好きって気持ちも日々育ってしまっているけれど、ちゃんと恋人として扱えていたかと言われるとそこまで自信がない。学校内の方がまだ、自分たちが恋人であると知られている気安さから、恋人っぽい触れ合いが出来ていた気がするんだけど。
 いやでも結局、校内でのキスは控えるようになってしまったので、やっぱりそんなに変わらないかも知れない。
「ごめん。俺の方はそこまで、お前を恋人として扱えてた実感ない。むしろ、はたから見たら男友達にしか見えないんだろうなって思って、なんか悔しいくらいだったんだけど」
「そういうの、なんとなく、伝わってたっすよ」
 相手はふふっと柔らかな笑いをこぼして、そういうのを恋人として扱われてると言ったつもりだったと続けた。
「ただでさえデカイ男が二人並んで歩ってると人目につきやすいし、変に注目浴びたくはないんで、先輩が考えてるような恋人らしい扱いを外でされたいとは思わないし、先輩もそれわかってるからしないんすよね? でも実際には出来なくても、手を繋いで歩きたいとか、腕組んで歩きたいとか、引き寄せたい、抱き寄せたい、キスしたいって思ってくれてるの、やっぱり嬉しいっす」
「待って。お前と手繋いで歩きたいなとか思ってるの、まさか顔に出てたりする?」
「家の中でなら結構はっきり。ただ、ちゃんと同時に口で言ってくれる事も多いすけど」
 そりゃあ家の中では隠す気もないし、顔にも態度にもわかりやすく出てるだろう。察しがいいから、こちらが口で言う前に叶えてくれる事も増えている。でも家の外での話をしてるのに、というこちらの不満には気づいているようで、ほんのりとした苦笑とともに、宥めるような声音が言葉を続けていく。
「家の中で鍛えられたんで、外でもなんとなくの雰囲気でわかる、という話っすよ。だから実は半分くらいは、だったら良いなって俺の希望も混ざったはったりすかね」
 あながち外してないみたいで良かったなんて言われて、若干騙されたような気分にムッとしながら相手を見つめた。ただ、あながち外してないというのも、多分、事実だ。
 罰ゲーム期間中から察しは良い方だと思っていたし、気遣いも上手いと思っていた。あまりに自然にそれをこなしていたから、甘やかされていると感じることは多くても、またかとどこか当たり前のように受け止めていた。
 なぜそれを当然だなんて思っていられたんだろう。エスパーでもあるまいし、口に出さないことを雰囲気で感じ取れるようになるには、それ相応の努力なり経験なりが必要なはずだ。
 普段、いったいどれだけ注意深く、彼に見つめられているんだろう?
 元々素養があったにしろ、そうでなければこの短期間で、日々こんなにも心地良く甘やかされてなんかいないはずだ。彼がそこまでしてくれるのは自分が彼の恋人だからだと、考えればすぐにわかることだけれど、頭でわかることと実感することは確かに違うらしい。
 その実感は、騙されたと思ってムッとする気持ちを、照れ恥ずかしい喜びへ塗り替えてしまった。
「俺も今、俺がお前の恋人なんだってこと、ちょっと実感してるかも」
 嬉しいと言ったら、俺もですの言葉とともに、再度顔が寄せられ唇が触れた。そっとまぶたを下ろして、優しく触れ合うだけのキスを堪能する。
 心が満たされて、でも、足りないと思う。気持ち良いことがしたいという直接的な欲求とはまた少し違う感じで、もっと、相手が欲しいと思う。知りたいと思う。
「お前が欲しいよ。お前と、もっと深いところで、繋がってみたい」
 抱いてみたいって思ったってのは、つまり、そういう事だろう?
 そんな確信はありつつも、彼の言葉がどの程度本気の話かはわからず不安で、気持ちも吐き出す言葉も揺れている。
 だから俺もですと甘やかに返されて、安堵と喜びとがあふれるみたいに、少しだけ泣いてしまった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受12

1話戻る→   目次へ→

 お盆前後は塾も入れないし、週三来てくれている家政婦さんも来ない。相手だってその時期は部活なんてないし、塾の休館日は知らせてあったからバイトだって入れてない。だからその期間は冷房効かせた部屋にこもって、ひたすらダラダラいちゃいちゃ過ごそうかと思っていた。
 けれどそんなこちらの希望を、取り敢えず相手に送って伺いを立ててみるかと文面を打ち始めた直後。相手とは近所のスーパーやらスポーツ広場以外に出かけたことがない事に気付いて慌てて、急遽、たまにはデートしようかと誘う文面に変える。
 罰ゲーム期間中も含めて、まともにデートをしたことがなかったけれど、相手はそれを不満に思うことはなかったんだろうか。罰ゲーム中はともかく、ごっこじゃなくなった今は、どこかに行きたいとか言ってくれても全然いいんだけど。とはいっても、デートしてない事実にも気づかず、罰ゲーム中と変わらぬどころか夏期講習で疎遠にするような真似までしていたこちらの非が大きいのはわかっている。
 そう言えば、こんな自分に進んで告白してくれるような女の子たちは、あれしたいこれしたいと主張のはっきりした子が多かったから、自分からデートに誘うなんてかなり久々の感覚だ。夏なんだから海やプールに行くのもいいし、暑いから映画館やプラネタリウムもいい。水族館とか動物園とか遊園地でも、時期的に夏祭りとか花火とかでも良いかもしれない。なんてことをあれこれ考えるのは楽しかった。
 けれどそんなこちらの思惑は、デートしようかだけではまったく通じなかったようだ。
 そういえば最近は外でご飯食べてないですもんねと返ってきて、どういう事だと突き詰めていった結果、彼の中でデート=学校帰りにファミレスやファーストフード店で夕飯を食べる事と刷り込まれているのを知って驚いた。いや確かにそれを肯定するような事を言った気はするけど。
 しかも、そうじゃなくてと海でもプールでもというのを並べ立てれば、そういうのならプロバスケの試合を一緒に見に行きたいですと返ってきた。だからそうじゃない。いや別にそれも悪くないけど、でも今はお盆期間の話をしてるのであって、プロバスケのシーズンが始まるのは九月からだ。
 ただバスケ観戦デートは確かに楽しめそうだから、それはシーズン始まったら行くことにしようと脳内にメモしつつ、再度、お盆期間中どっか一緒に出かけたりしなくていいのと聞いてみた。そしたら今度は、日中遊びに行くなら早めに帰ってこれる場所、花火や夏祭りに行くならその日は泊まらせて下さいと返ってきて、今ひとつ話が噛み合わない。
 こっちは相手が行きたい場所の希望を聞いているのに。
 それでもなんとか互いの希望をすり合わせ、手始めに映画へ行って、次に海へと行ってみたところで、なんで相手が早め帰宅に拘ったり夜遊ぶなら泊まりでなんて言ったのか、あっさりわかってしまった。
 なるほど。男二人で出かけて遊ぶ系のデートをするのは、それなりにストレスと欲求不満が溜まる。特に海で男二人なんて、完全に女の子狙いみたいだったし、実際に声を掛けられもした。もちろんあまり派手にイチャイチャくっついても居られない。
 こうなるだろうってわかってたなら、デートに誘った時に言っておいて欲しかった。というか無駄に精神面まで疲れた気がする。
 久々に泳いだりして肉体的にもそこそこ疲れていたから、帰宅後はエロい気分でというよりは本当にただただ相手にイチャイチャひっついてスキンシップを補給させて貰う目的で、ベッドの上でダラダラうとうと微睡んでしまった。ストレスと欲求不満が溜まると言いつつ海もそれなりに楽しんだけど、でもやっぱりこの時間のが圧倒的に楽しくて幸せだと思う。
 もし相手も同じように思っているなら、当初の希望通り、部屋に引きこもった夏休みでもいいかもしれない。お家デート最高ってことで。
 なのに、遊ぶならここしかないとでも言う感じに詰め込んだ、水族館と遊園地と花火大会の予定を止めにしようかと提案してみたら、わかりましたと言いつつも残念そうな顔をする。
「待って。本当は行きたいってならちゃんと言って?」
「正直今日みたいなこと絶対起こると思ってたんで、デートらしいデートがしたい気持ちはあんまなかったんすけど、でも思ったより楽しめたというか、悪くなかったというか、色々気付かされることもあったので」
「気づくってどんな?」
 思わず聞き返せば、何故かいたずらっぽく笑んでみせるから珍しい。
「気づくというか、今、先輩の恋人なのは俺なんだって、実感する感じっす」
 しかもそんな事を言われても、ますます意味がわからなかった。
「でもデートなのに、そんなイチャイチャできてなかったろ?」
「でもその分こうして今、めちゃくちゃ甘えてきてるじゃないっすか。バランス取れてるんで俺的には全然オッケーっす。ただまぁ俺に気を遣って疲れたのも大きいみたいなんで、無理して出掛けなくてもいいかなとも思ってますよ」
「お前に気を遣うっつーか、だってお前こそ、嫌な思いしたろ?」
 デート中に恋人が他の異性に声を掛けられる姿なんて見たいはずがない。しかも相手の方が隙がないというか、一見無愛想なせいで、多分相手狙いっぽい子でさえこちらに声を掛けてくるものだからたまったもんじゃなかった。
「学校以外でもモテるんすね、というのはまぁ、わかりました」
 笑みを引っ込めマジなトーンで告げられて焦る。
「いやいやいや。俺のほうがチャラそうに見えて声かけやすいだけで、お前狙いも絶対居たからね? てか愛想よく見えたかもだけど、あれ全然喜んでなんかなかったからね?」
 なのに、それを聞いた相手は、またどこかおかしそうに笑っている。
「さすが女の子のあしらい上手いなーとは思いましたけど、あれを喜んでるなんて事は思いませんでしたよ。それより、まさか可愛い女の子に声掛けられてもまったく靡かないとか思ってなくて、だから、そんな姿見れたのは結構嬉しかったっす」
 先輩がナンパされてる時、隣で俺が優越感感じてるなんて思っても見なかったでしょう、なんて続けながら、笑顔がそっと寄せられる。柔らかに触れる唇を、驚きとともに受け止めた。けれど驚きはそこで終わらない。
「驚かせついでにもう一ついいっすか。俺、先輩のこと、抱いてみたいかもって思いました。今日」
「は? えっ? なんで? 今日?」
 あまりに驚いて、疑問符を飛ばしまくってしまった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受11

1話戻る→   目次へ→

 そういえば、突っ込むセックスをしない理由は告げたけれど、過去に彼女の生理が遅れて血の気が引いた経験があるなんてことまでは話してない。もちろん彼相手に限らず、こんな事を自分から進んで話したことなんてないけれど、なぜ自分は抱いて貰えないのだと責めてくるタイプの彼女には話すこともあった。確信を持って、前の彼女のことは抱いていただろうと言われたりもしたから、当然こちらの噂をアレコレ聞かされただろう彼も知っていると思いこんでいた。
 いやでも、こんな噂があるけれど本当ですかなんて聞かれたことはないし、噂を闇雲に信じるタイプではないから、突っ込むセックスはしないというこちらの言葉を信じただけに過ぎないのかもしれない。
「あー……俺だって最初っから今みたいな、一緒に飯食ってついでにイチャイチャさせてくれるなら誰でもいい、って交際はしてなかったんだよ。繋がるセックスもしたし、お前ほど頻繁じゃないけど、泊まってもらったこともある」
「それは相手のことが好きだったから、すか?」
「胸を張ってそうだって言いたいとこだけど、何ていうか、万が一避妊失敗したらどうなるのかって事を理解する前は、当たり前に抱いてたってのが正しい気もする。自分の置かれた状況や立場を認めて、納得して、諦めるのに結構時間掛かったんだけど、その間に付き合ってた子とはそこまで割り切った感じじゃなく恋愛を楽しもうとしてた。そういう意味でなら、相手のことを好きだと思ってたから、抱いてたよ」
 恋愛に逃避して、女の子との甘い時間に逃げて、夢中になって、でも現実が変わらないこともわかっていた。そんな中、生理が遅れている報告やら親からの忠告やらで完全に覚めてしまったけれど、でも一人の寂しさに耐えられなくて、結果、都合よくイチャイチャさせてくれる恋人を求めるようになってしまった。
「もしかしてお前が突っ込まれるの絶対ナシって言ったのって、俺が童貞だと思ってたから、自分の初めての時と重ねて怖くなってたのもある?」
「それは、まぁ、はい」
「じゃあ、絶対優しくするを信じて、突っ込む経験もそこそこ積んでる俺に任せてみたりは?」
 即答はできないようで、けれど迷う様子は見せている。押し切ったら頷きそうな気もするけれど、でもただでさえ罰ゲーム中にたぶらかして惚れさせた負い目のようなものもあるし、男に突っ込まれるなんて経験は彼に必要が無いだろう。
 彼と繋がってみたいのはこちらの欲求で、男なのに男に抱かれるという抵抗感も彼が相手ならほとんどないし、もし自分相手に気持ちのよいセックスが出来れば、抱くのでさえ怖いという相手のトラウマ克服になるかもしれない。
「ゴメン。悩まなくていいよ。繋がるセックスする時は、俺が抱かれるから」
「自分で慣らして拡げるから、ユルユルになったらチャレンジしてくれって、本気で言うんすか?」
「ダメ?」
 暫く逡巡した後、結局、考えさせてくださいと返された。したいって言い出したら別れると即答されてた事を思えば大きく前進したような気もするけれど、先走って勝手に慣らしたりしないで下さいとも言われたから、やっぱりあまり期待はできそうにない。
 それどころか、はっきりしたい意思を見せてしまったことで、今後彼がどう感じるかが不安になる。繋がるセックスが出来なくたって、物足りなくて不満だなんて思うつもりはないけれど、でも一度完全に認めてしまった気持ちを、上手に隠すことが出来るかわからない。
 椅子から立ち上がって、彼の側へ回り込む。辿り着く前に同じように立ち上がっていた相手が、何も言う前に腕を広げてくれたから、そのまま黙ってその腕の中に収まった。それだけでこんなにもホッとする。
「無理して俺を抱く必要なんてないからな。そういうの無しでって始めた恋人だってのもわかってるし、何度も言うけど突っ込まないセックス慣れてるし。今でも十分気持ちいいし、楽しいし、なによりお前と、まだ恋人でいたい」
 甘えるみたいに背に腕を回して抱きつけばキュッと抱き返された。
「わかってます。俺もっす。まだ、先輩と、恋人でいたい」
「うん。してみたい気持ちと、お前じゃ物足りないはイコールじゃないから、そこ、間違えないで?」
「はい」
 短い肯定の後、ゆるりと抱きしめる腕を解かれながらベッドへ誘われる。こちらから誘いをかけることが圧倒的に多いので、そんな小さなことでも結構嬉しかった。
「ん、じゃ、行こ」
 多分、嬉しい気持ちはわかりやすく溢れただろう。
「落ち込ませてすみません。その分いっぱい、気持ちよくするんで」
 トラウマになる程の過去の性行為の失敗を語らせたのはこちらなのに、ホッとした様子でそんな事を言うから、相変わらず随分と甘やかされているらしいと思った。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受10

1話戻る→   目次へ→

 相手の子に泣かれでもしたかと聞けば、一週間くらい泣かれましたと返ってきて、さすがに良くわからない。中学生で初めて同士だったなら、相手が十分に感じられる前に挿入しようとして痛がられたのではと思ったけれど、まさか一週間連続でチャレンジして、失敗し続けたなんてことがあるだろうか?
「えっと……」
 相手のトラウマになってるっぽい過去の行為を聞いていいのか迷う。もし自分が過去の彼女との行為の詳細を聞かれても、それを彼に教えはしないだろう。
 それでも、抱えているものの詳細をもう少し知りたかった。なので、前カノとの事だろうし無理に答えなくてもいいんだけどと前置いてから言葉を続ける。
「一週間も泣かれた原因がセックスの失敗だったの? 挿れようとして、相手に痛いって泣かれた……って感じでは、ない?」
「初めて同士だったんで、痛いのはある程度向こうも了承済みで、痛がってたけど止めて欲しいとは言われなかったんすよね」
 でも痛そうな相手に興奮とか全く出来なくてと苦笑するので、それは別に恥ずべきことじゃないだろと思う。
「いやそれ、痛がる相手に興奮するほうがヤバくない?」
「でも俺、焦っちゃったんすよ。このままだとイくまえに萎えそうって思って。痛そうだから無理したくないってちゃんと言って、途中で止めれば良かったんだって、それはあとから気づいたことで、その時は俺、せっかく頑張って受け入れてくれたのに、イケなかったら悪いって思っちゃったんすよね」
 それで相手の体を強引に揺すってしまったらしい。もうちょっと正確に言うなら、力任せにガツガツと腰を振ってしまったようだ。
 中学のどの時期の話かは知らないが、もし既に、体格もペニスも今と同じくらいだったなら、相手の子は肉体的にも精神的にもさぞ怖い思いをしただろう。というか前に大きけりゃいいってもんじゃないと言っていたから、多分、既に今と同じサイズがあったと思って良さそうだ。さすがに相手の子に同情した。
「処女としたら出血する、くらいの知識は俺にもあったんすけど、どれくらいの量とかそれがどれくらい続くとかは全くわかってなくて、なんとかイッて抜いた後、その出血量にまずビビって、それから一週間くらい相手の出血止まんなくて、でも親に相談なんて出来ないし、病院だってそんなの行けっこないって言われて、泣かれて、責められて、」
「ああ、うん。わかった。もういいよ。思い出させてゴメン」
 まだ続きそうだった相手の言葉を、少し強引に遮った。だってなんだか泣き出しそうだ。 
 出血が止まらず不安な相手に一週間も泣かれて責められ続けたのがトラウマになっているなら、抱く側でもセックスするのは怖いと言った相手の言葉にも頷ける。
 初めて同士で、きっと十分に潤っていない状態だっただろう。そんな場所を、あの大きさのペニスで強引に擦りあげたなら、怪我をさせていてもおかしくない。だからこそ、一週間程度で出血が止まったのなら、むしろ運が良かったとも言える気がする。
「お前がセックス怖い理由はだいたいわかった。ならもし、絶対怪我させない、痛い思いもさせないセックスなら、する気になる?」
「それ、本気で言ってんすか?」
「本気だけど」
「男同士って、使うの尻の穴っすよね。女の子以上に、痛くないとか無理じゃないっすか」
「その穴使ってやってる奴らが居て、気持ちよくなれてるんだから大丈夫だろ。たっぷりローション使ってゆっくり慣らして拡げていったらいいんだよ」
 可能かどうかを考えているようだけれど、眉間に力を込めた渋い表情からは、色好い返事は期待できそうにない。
「傷つけるのが怖いだけで、尻の穴に突っ込むのが気持ち悪い、てわけじゃないんだよな?」
「それは、そうす、けど」
「俺が自分で弄って、お前の入っても絶対大丈夫ってくらいに拡げたら、チャレンジくらいはしてくれる?」
「は? えっ?」
「もしくは、俺にお前の尻の穴弄らせて。絶対痛くしないし傷つけたりしない。お前が気持ちよくなれるまで、根気よく慣らして拡げてあげる。突っ込まないセックス慣れてるから、途中で我慢できなくなって無理に突っ込んじゃったりは絶対しないよ。約束する」
「ちょ、待って。待って、下さい」
 慌てる相手にわかったと返して暫く口を閉じて待てば、やがて混乱が落ち着いたのか、おずおずと相手が口を開いた。
「えと、つまり、先輩はやっぱり繋がるセックスがしてみたい、てことすよね」
「そうだね。したい。お前がセックスしたくない理由聞いたら、余計したくなっちゃった、かも」
 余計にしたくなったなんて言ったせいかびっくりされたので、繋がるセックスの気持ちよさをお前にも教えてあげたいよと、出来るだけ甘やかに囁いてやる。
「まるで知ってるみたいな言い方っすけど、先輩、童貞じゃないんすか?」
「は?」
 いぶかしげに問われた内容に驚きすぎて、すぐには意味のある言葉を返すことは出来なかった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受9

1話戻る→   目次へ→

 少し思い詰めたような顔で、セックスするのが怖いんですと告げられたのは、七月最後の土曜の夜だった。
 恋人ごっこからごっこが外れた所で男同士の気安さはやはりあったし、絶対に先輩のほうが甘えたがりで構って欲しがりと指摘された通り、相手の好意が重いとかわずらわしいなんて思ったことは一度もなくて、でもちゃんと恋人として大事にされていることも伝わっていたから、彼の隣はあまりに居心地が良すぎた。このまま相手に甘えることに慣れきって、想いを育ててしまったら、性的な意味でもっと彼が欲しくなるのは避けられないような気がする。子供が出来る心配のない男同士なら、突っ込むセックスだってありだと、一度でも思ってしまったのは大きいかも知れない。
 だから、当初の予定ではもっと頻繁に夕飯を作りに来てと甘える気でいた夏休みを、一人寂しく過ごしている。というのは嘘で、さっさと夏期講習で気が合いそうな友人を作り、授業後も塾が閉まるギリギリまで自習室を利用した。そうすることで、昼食はもとより夕食も塾内もしくはその近辺で新しい友人たちと摂ることが出来るし、帰宅だって必然的に遅くなる。それは恋人を家に呼んでイチャイチャする時間なんてものはまるでない生活だ。
 講習に申込んだ直後、授業そのものは普段の彼の部活終了時刻とそう変わらないと言っていたせいで、夜にはバイトを入れずに居てくれた恋人には悪いと思いながらも、夏期講習が始まってすぐに、自習室を最大限利用したいから夏休み中の平日はほとんど会えそうにないと言ってしまった。
 避けている、という自覚はないわけではなかった。でももちろん、突っ込まれるのも突っ込むのもナシで、こちらがしたいと言ったら別れると言い切った相手に、繋がるセックスができないなんて物足りないと思ったわけじゃない。さすがにまだ、そこまではっきり欲求が湧いているわけじゃない。でもそんな欲求が湧いてしまわないように、少し距離を置いたほうがいいだろうとは確かに思っていた。
 なぜ距離を起きたいのかきっちりと説明せずにそんなことをしたら、彼がどう思うかなんてわかりきっていたのに。繋がるような行為は無理だと言われて思いの外ショックを受けてしまったから、少しくらい彼も傷つけばいいと思って説明を省いたのだとしたら、間違いなく恋人に向かないクズな男だと思う。ほとんど無意識ではあったけれど、そんなものはなんの言い訳にもならないことはわかっていた。
 夏休み最初の週末は、相手もまだ様子見だったんだろう。途中中断後初の触れ合いだったけれど、こちらからそのことには一切触れなかったし、相手も触れては来なくて、つまり互いに極力今まで通りに過ごした。でも更に一週間、簡単なメッセージのやりとりだけで過ごした間に、相手も色々と思うことがあったらしい。
 先週同様、今まで通りを半ば演じるような時間を過ごした後、ベッドに誘ったら相手はゆるく首を振って拒否を示した。話し合いをしましょうと続いた声の冷たさに血の気が引いていく。胸が締め付けられて息苦しい。
 それを見ていた相手は、少し困ったように、先輩が好きなんですと言った。
「先輩は? 俺を、好きですか?」
 もちろん即座に好きだと返せば、繋がるセックスがしたいくらいに? と質問が重ねられる。
「しなくていい。お前と、恋人でいたい」
「じゃなくて。したいかしたくないかの話っす」
 抜きあうだけじゃ物足りなくなってませんかと聞かれて、お前じゃ物足りないって態度を長く続けられたら彼が耐えられないのだと、はっきり忠告されていたことを思い出す。
「まさかこれ、別れ話?」
「違います。先輩が好きだって、言ったばかりっすよ。それより、どうなんすか?」
 したいかしたくないかを再度問われて、興味はあると正直に返した。
「でもどうしてもしたいってほどの欲求はまだない。ただ、今後そうならないとは限らないから、これ以上お前にメロメロしてくのはマズいかもとは思ってる。ちょうど夏休みだし、お前に甘えきった生活を少し改善しようと思ってもいる。それをちゃんと説明せずに、勝手にお前と距離おいたのは、本当に、ゴメン」
「男同士なら子供出来ないから、突っ込んで気持ちよくなりたい、てのとは違うんすよね?」
「もちろん違う」
「俺が好きだから、俺と繋がるセックスをしてみたい。繋がれるなら、どっちが抱く側でも構わない。ってことで、いいんすか?」
「いいよ。抱かれるのは絶対無理でも、抱く側なら出来るってなら、俺が抱かれる側になる」
「怖くないんすか?」
「お前に抱かれること? 別に怖くなんてないけど」
 だって抜き合うだけとは言え既にその肌を知っている。欲に任せて襲いかかられるなんて全く思えないし、乱暴な扱いだってされないと思う。むしろ色々気遣いながら優しく抱いてもらえそうな気さえする。
 まぁ童貞ではないと言っても経験は少なそうだし、男同士なんて互いに初めてなのだからそもそも問題なく繋がれるかがわからないし、相手はともかく抱かれるこちらはそう簡単に気持ち良くなれないだろうなとも思うけれど。
 でもやっぱりそこに、怖いなんて要素はない。
「俺は、セックスするの、怖いっす。抱かれるのはもちろんですけど、俺が、抱く側でも」
 どこか思い詰めた表情に、ああ、なるほど、と思う。中学生時代に既に経験したというセックスで、何かしらトラウマを抱えるような失敗をしたらしい。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁