弟の親友がヤバイ8

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 弟と幸せにと丸投げした方が、彼にとっても幸せなのではと思う気持ちはもちろんあった。弟が彼を想う気持ちは本物だと思うし、あの弟ならば傷付いた彼を幸せにも出来そうな気がする。
 ただそこには兄としての欲目や、弟の恋を応援したい気持ちやらも当然含んでいるだろう。更に言うなら今回の件の発端が弟で、そこに至る原因が自分にあるなら、責任を取るのは兄である自分の方だという気持ちもある。
 しかし責任という気持ちは、余計に彼を傷付けないだろうか?
 彼に対して恋愛感情が湧くかと言えば正直かなり微妙だ。それでも、同情だったり罪悪感だったり責任感だったりが根本にあろうと、もしまだ本当に自分を求めているというなら、彼の想いに応じてやりたい気持ちも嘘ではなかった。
 というところまで考えて、そういや弟の話しか聞いていなくて、彼自身からは復讐としか言われていない事実に気づく。弟の話を鵜呑みにしていたが、彼自身に別の思惑はないのか、そもそも弟の計画に乗って告白する気があったのか、恋人になりたいという気持ちがあるのか、まずはそこを確かめるべきじゃないのかと思った。
 応じる方向で彼と直接話しをしたい。まずは誤解をといて、それから彼の本心を自分の耳で聞きたい。そう弟に告げに行ったら、弟は笑ってそう言うと思ってたと言った。兄さんってやっぱり結構チョロいよねと続けられたのには少し納得がいかない。
 もし自分が彼に応じるとして、それで弟は構わないのかという疑問に対しては、彼の想いを応援したい気持ちがなかったらこんな計画は立ててないし、もっと早い段階で普通に口説いてたよと返されて納得した。
 自分が悩んでいる間ずっと彼と何やら連絡を取り合っていたらしい弟は、ものの数分で駅前のカラオケに呼び出しを完了し、これ以上泣かせたら許さないからねと釘を差しつつも自分を送り出してくれた。一緒に行く気はないようだ。
 カラオケ店の前で待つこと数分、やってきた彼は黙ったまま軽く頭を下げる。どうしたって気になってしまう目元はまだ少し赤いままで、顔色はあまり良くなく全体的にどこか疲れた様子だった。
 取り敢えず入ろうと促した言葉にも黙って頷くだけの彼を連れて入店したが、もちろん歌いに来たわけではないので、部屋に入っても機器類に触れることはしない。
「まず、一番先に言っておきたいんだけど、俺は別に弟を恋愛対象にはしていない。可愛いけど、大事な弟ってだけだ」
 小さな部屋の中、テーブルを挟んで向かい合って席につき、少し気まずい沈黙が流れた後で口を開いた。
「聞きました」
 彼の様子に、会話が出来るかを危ぶんでいたくらいだったので、はっきりと発せられた声にまずはホッとしてしまう。
「彼が貴方に何を話したか、貴方がなんと答えたか、多分、ほぼ全て聞いてます」
「そ、そうか」
 何やら連絡を取り合ってた中身がそれだったんだろうというのはわかったが、だったらそれも送り出すときに言っておいて欲しかった。
「でも俺は、弟を信じてはいるけど、盲信してはいないんだ」
「盲信、ですか」
「そう。弟からの情報だけじゃ全然足りない。というか、弟の話は補足的なものであって、俺が直接君から聞いてるのは、復讐って言葉と、後は弟に手を出されたくないなら抱かれろって脅迫だ」
「確かに」
「始めっから、俺を脅迫して抱くつもりだった? それとも、俺が素直に君の手でイかされてたら、弟の計画通り告白する気だった?」
「告白する気は、ありましたよ、一応。でも何しても、手だけじゃなくて舐めてすら反応がなかったから、その時点で色々絶望しました」
「いやだからそれ、酷いことされたら萎えちゃう系なんだってば」
 言ったら少し険しい顔になって睨まれる。ああまだそんな顔を向けてくる気概が残っていて良かったと、やはりまた少し安堵した。
「でも俺は、逆の立場で貴方にイかされてるんです」
「穴があったら入れたい盛りの男子中学生と、仕事で日々ヘロヘロになってる社会人とを一緒にするなって」
 苦笑しつつ続ける。
「本当に、幼い君に、酷いことをしたと反省してる。だからその結果の恨みも、生まれてしまった恋心も、君がまだそれを望むならだけど、受け止めたいと思ってる」
「恨みも?」
「そう、恨みも」
「絶望して、すんなり脅迫してでも抱いてしまえって発想が出てくるくらいには、エグい妄想もかなりしてきてますけど」
「うんまぁ、それは、わかってる」
 言えば相手は少し驚いたように目を瞠った。
「本当ですか? あいつの中の俺、けっこう美化されてますよね? その俺に同情したから付き合ってやろうって話じゃないんですか?」
 美化されてるって自覚あるのかと思ったらなんだか笑いそうだった。笑ってしまうのを堪えて、コホンと一つ咳払いしてから口を開く。
「あーうん、それは違う、かな。いやあいつの目を通した君の姿に、罪悪感煽られまくったのはあるから、それも一つの要因ではあるけど。でもさ、あいつが知らないことがあるってのも、話し聞いててわかってるし」
「あいつが知らないこと?」
「あの日、俺がどんな言葉で君を責めたか、弟は知らなかった。君に脅迫されたと言ったら、あいつ凄く驚いてたし。君たちは親友で、かなり色々と深い部分まで話をしているみたいだけど、でも弟が全てを知っているわけじゃない。あいつだって、君にあいつ自身の全てを見せているわけじゃない」
「それは、まぁ、確かに……」
「だから俺は、君自身の言葉を聞きに来たんだよ。弟から大体の事情は聞いた。君の気持ちも弟経由で聞いた。でも、君自身からは、復讐したいとしか聞いてない。今の君の気持ちはどうなってる?」
 そんなことを聞かれると思っていなかったとでも言うように、彼は口元を隠すように手を当てて考え始めてしまった。

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弟の親友がヤバイ7

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 順番に話すねと言った弟の最初の話題は、やはり中二のあの時期のことだった。
 手を出してしまった直後くらいからだろう。急によそよそしくなって、家に呼んでものらりくらりと躱されて、問い詰めたら「お前の兄さんを好きになったゴメン」と謝られてビックリした。という最初の所で、さっそく待ったをかける。
「好きになった? その段階で? あんな目に合わせた相手をか? 嘘だろ?」
 疑問符ばかり飛ばす自分に、弟の罪だよね~という言葉と苦笑が突き刺さった。
「まぁ、好きになったっていうか、性癖を自覚させられた、ってのが正しかった気もするけど。あいつ女ダメみたいだし」
 後はショックで好きだと思い込んだ可能性とか? と続けてくる弟の言葉が胸に痛い。ちょっと脅しておこう程度の軽い気持ちで、本当に、随分と酷いことをしてしまっていた。
「それで俺さ、兄さん好きでもいいから友達やめないでって頼んだの。家に遊びに来てとは言わないから、これからも一緒に遊んでってさ」
 そうして普段は普通に親友として過ごしていたらしいし、彼の想いにわざわざ触れることもなかったようだが、でも色々気付いていくよねと弟は少し重めのため息を吐いた。
「高校入ってから、あいつかなりモテだしたけど、でも全部きっぱり断ってたし。断る理由が好きな人いるからだし。たまに俺が兄さんの話とか出すと凄く楽しそうに聞いてるし。でさ、聞いちゃったの」
「何を?」
「今もまだ兄さん好きなの? って」
 しかも肯定とやっぱり謝罪の言葉とを出されて、兄の何がそこまで彼を惹きつけるのか、気になって相当しつこく聞いたらしい。
「それでようやく聞いたのが、兄さんに手コキされてイかされたのが忘れられないとか、なんじゃそりゃだよ」
 頭にきてその話聞いた日に一回兄さん殴ってると言われて、いつだったか八つ当たりみたいにして殴られたことがあったのを思い出す。珍しい癇癪起こして理由も聞けないままだったが、まさか原因がこれだったとは思わなかった。
「その頃には俺も自分があいつを、親友ってだけじゃなく、そういう意味でも好きなんだろうって自覚あってさ。というかそんな理由で兄さん好きになってんなら、俺で良くね? って思うよね」
 これもう完全に、自分が手を出した事が発端で、弟がそっちに目覚めた系だと頭を抱える。
「ほんっとーにすまなかった」
「え、それ、何に対する謝罪?」
「色々だよ。お前の親友どころかお前まで男に恋愛感情抱くようになったとか、これもうどう償っていいかわからないレベルで動揺してる」
「いや別に、そこはどうでもいいって」
「どうでも良くない」
「だって兄さんが手ださなくたって、あいつの性癖は多分変わらないし、女は好きにならないと思うし、あいつが男ありってわかってたら、俺はやっぱりあいつをそういう方向で好きになっちゃうもん。それどころか、あいつが男なしだったとしても、好きになってたかもしれないし」
 すげーいい奴なんだよと語る弟に、わかるよと返した。弟があの男を特別に思っていて、大好きだなんてことは、昨日の二人を見ていたら疑う余地もない。ただそこに、恋愛感情まで含まれているとは、流石に思ってなかったけれど。
「話戻すけど、手コキされてって聞きだした後くらいからは、まぁそれなりにぶっちゃけた恋愛相談的なこともしてたわけ。兄さん好きって気持ちと、でもやっぱりそれなりに恨む気持ちとはあるでしょ。まぁ恨む気持ちがあるって自覚させたの俺だけど」
「はい待って。恨む気持ちを自覚させた? お前が?」
「まぁね。だってあいつ、自分の気持の整理もしないで、闇雲に兄さんの影追っかけてたからね。酷いことされたって自覚あんまりなかったからね」
 自己防衛かもねと言って弟は続ける。
「じゃあなんであいつ家来なくなったの? 兄さん好きならむしろ会いに来ればいいじゃん。それしないの兄さんに怯えてたからじゃん。好きって言いつつ怖かったんじゃん。あいつは兄さんにもっと怒っていい。ってのをけっこう時間かけて自覚してもらった」
「なんとなく読めてきたけど、昨日の復讐って、やっぱお前の発案?」
「え、ちょっとそれ、ネタばらし早くね?」
「何年お前の兄貴やってると思ってんの。あーでもまぁ、ちょっと納得できる部分もある」
 なんか全体的にアンバランスで、復讐と言いつつもすぐ泣きそうになっていた。
「ちなみに兄さんの手縛ったのは俺。色々考えてたけど、ソファで寝てくれて本当良かったよ。一応気は使ってタオルとか巻いたの正解だったっぽいね」
 弟の視線が手首に注がれて、そういやかなりガッチリ拘束されていた割に、痕などは残っていないことに気づく。
「そりゃどうも。で、復讐って何させるつもりで、本来の落とし所ってなに? あいつに俺を抱かせることまでは考えてなかったんだろ?」
「基本やられたことはやり返す。だから兄さんむりやりイかせるのだけが目的だったよ。まさか勃たないとか思ってなくて、完全に想定外。あいつめっちゃテンパってたと思う」
 それはどうかな。とは藪蛇になりそうで口にしなかった。
 弟はあの日自分がどんなセリフを掛けながら彼に触れたのかまでは聞いていない。弟の計画に乗って、それ以上のことをしようと考えていた可能性はあると思う。そうでなければ、弟に手を出されたくないなら抱かれろなんて話がサラッと出てくるとは考えにくい。
「一応聞くけど、それ成功してたら、その後どうするつもりだった?」
「告白?」
「誰が誰に?」
「あいつが兄さんに。てか、振られたって言ってたから、告白はもうしたんだって思ってた。正直、兄さんがその場でOKするかは五分くらいの確率って俺は踏んでたんだよね。それはあいつにも言ってあった」
「その数字、どっから出てんの」
「弟として過ごしてきた時間から? てかさ、俺の計画では、兄さんがあいつにむりやりイかされるじゃん? でもってあいつが、昔やられた事が忘れられなくて好きになりましたって告白するじゃん? 兄さん絆されてOKするか、ゴメンちょっと考えさせてって反応かなと思ってたの。でもって俺に相談してくると思ってた。泣くほど酷いフラレ方になる想定はゼロだった。おかげですげー焦って、兄さんじゃなくて俺にしなよとか言っちゃったの本当に下手うった。まさか二人の間で、俺に手を出す出さないなんて話が出てると思ってなかった」
 弟は酷く苦々しげに言い募る。
 後半部分は独り言のような愚痴に近いが、前半部分は確かに、そういった流れで告白されてたら、抱かれる覚悟まで決めたくらいだから告白を受け入れてたかもしれないし、さすがにちょっと待ってと保留して弟に相談していただろう可能性も高いなと思う。
「あー……まぁ、お前の読みは間違ってないよ。勃たなかったけど」
「そこは正直頑張って欲しかった」
「無茶言うな」
「でさ、あいつ確実に兄さんが俺をそういう意味で好きって誤解してるけど、どうしよう?」
「それ、俺に否定しに行けって言ってんの?」
「言ってる。てか兄さん的には今の話聞いててどうなの? あいつの気持ちに応えてやろうって気が少しでもある? それとも俺と幸せになってねって感じ?」
 さすがにすぐに答えられなかった。
「俺と幸せにってんでもいいけど、誤解といた上で、俺とのことに反対しない祝福する応援するくらいの事は言ってもらうからそのつもりで」
「うっ……わかって、る。けどさすがにちょっと、考えさせてくれ」
 適当に答えられるよりいいけど、でもなるべく急いでと言って弟は立ち上がる。
「あんな状態、ちょっと放置してたくないから」
 思わずそうだなと同意すれば、弟の表情が少しだけ和らいだようだった。
 取り敢えず部屋戻るけど、気持ち決まったら声かけてと残して、弟はリビングを出て行った。

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弟の親友がヤバイ6

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 先に昨夜何があったか聞かせてと言われて、渋々と話し始める。
 気づいたら手は拘束されてて、復讐だと言って弄られたけど、何されても勃たなくてとまで言ったら、インポなの? という言葉が早速飛んできた。発想があいつと一緒で苦笑する。
「俺、酷いことされたら萎えちゃう系なの」
 だから同じセリフを返してやった。
「えー何それ聞いてないんだけど」
「なんでお前に知らせなきゃいけないんだよ、そんなの」
 というかそんなの、自分だって昨日はじめて自覚したわ。
「あーでもそれか。そこかー……勃たない想定なかったー……」
「それとかそことか何?」
「こっちの話。後で話すからそっちの続き」
 ほら早くと急かされてため息を吐いた。
「でまぁ、泣きそうになってるからちょっとくらい付き合ってやってもと思って、復讐って何したら完了なのって聞いたんだよ」
 で色々あって抱かれることになったんだけど、と続けたら、今度はぎょっとした顔で抱かれたの? と茶々が入る。
「俺が風呂使ってるうちに気が変わったってよ。萎えたからもういいって言われてシャットアウトで終わり」
「てか、抱かれるのオッケーして風呂まで入ったのは事実なの?」
「事実だな」
「ちょっとくらいで抱かれるまでする? 兄さんビッチ説?」
「色々あったって言ったろ! なんだビッチ説って」
「同情とか?」
「違う。あー……まぁその、脅迫されて?」
 また弟の目が大きく見開かれた。
「脅迫? あいつが?」
「そう。まさに脅迫。てかあいつは俺が何言ったら頷くかはっきり知ってたよ」
「何言われて頷いたの」
「俺の弱点はお前」
「え、俺?」
「そう。お前に手を出す代わりにって言われた」
 弟はえええーと戸惑いの声をあげつつ、何やら渋い顔で考え始めてしまう。
 目の前に置かれたカップを手に取り、中の紅茶を一口すすった。リビングに入ったら既にテーブルの上に用意されていたそれは、もちろん弟が淹れてくれたものだ。弟の気遣いと暖かさが胃に染み渡るようだった。
「あのさ、まさかと思うんだけど、昔あいつに手を出したのも俺絡みなの?」
「あー……」
「マジか。てかやられた内容は聞いたけど、なんでそんな事になったかは教えて貰えなかった。てわけで、はい、聞かせて。昔あいつに何言ったの?」
「いや、それはちょっと……」
「俺に言えないような酷いこと言ったんだ」
「ざっくり言うと、弟には手を出すな」
「な、ん、で!?」
 驚きと怒りとを混ぜた弟が、強い口調で問いかけてくる。
「いやだって、あいつ絶対お前狙ってると思ったし、お前が男にどうこうされんのなんて冗談じゃないぞと思ったし……」
「俺今かなり、余計なことしやがってって思ってるんだけど。兄さんが余計なことしないでほっといてくれたら、俺たち普通に惹かれ合って恋人って可能性あったんじゃないのこれ?」
「だってお前があいつを恋愛的に好きなるとか思わないだろ。てかその時点でのお前、俺に隣のクラスのなんとかって女子が気になるって恋愛相談してたからな?」
「ああああそーか、その時期だった確かに」
 あいつに避けられだして、気になる女の子どころじゃなくなったんだったと言われて、まさか自分が手を出したせいで弟がそっちに目覚めたんだったらどうしようかと、内心焦った。
「で、兄さん的には、自分の体差し出してでも、俺をあいつから守りたかったわけ? 一応聞くけど、俺とセックスしたいとか思ってないよね?」
「思ってねぇよ!」
 大事な弟だけどセックス対象なんかにするか気持ち悪いと言ったら、まぁそうだよねとあっさり返ってきた上、今フリーだけど普通に彼女もいたもんねと続いた。
「そういや男の恋人いた事ってあるの?」
「ない」
「てことは兄さん処女じゃん? よくそれで抱かれるのオッケーしたよね、マジで」
「処女言うな。脅迫されて頷いたけど、でもまぁ、自業自得って気持ちも強かったよ。子供に手ぇ出したのは紛れもない事実だし。あいつメチャクチャモテそうなのに、復讐で親友の兄貴抱きたいとか、すっげー人生狂わせた感あるだろ。なんかもうそこまで恨まれてるなら仕方ないかなって思ったんだよ」
「まぁ完全に裏目に出てるけどね。あいつ絶対、兄さんにそこまでさせる俺に、敵うわけ無いって思って身を引いたよね」
「そう、それ。俺は復讐としか言われなかったけど、お前から見るとどうなってんの。恋させたって何? あいつ、まさか俺を好きだったりすんの?」
「そのまさかだよ」
 弟は少し呆れた顔をしながら言って、彼が家に来なくなってからの数年について話し始めた。

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弟の親友がヤバイ5

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 なかなか寝付けず、翌日も寝坊する気満々だった。弟に手を出したりしないという彼の言葉に嘘はなかったと思うし、また一日中二人の勉強風景を見張り続ける気はさすがにない。
 しかし乱暴に部屋のドアが開けられる音で、眠りに落ちたばかりの意識が浮上した。
 次いでドカドカと近づいてくる、やはり乱雑な足音。寝ぼけた頭でも、それが弟のものだというのはわかっていた。しかも多分何かを怒っている。
「おいコラ、クソ兄貴」
 掛布をバサリと剥がされ、寒っと思う間もなく、ドスのきいた声と弟の体重が降ってくる。
「起きろ」
 言われなくてもさすがにもう起きている。目を開けて、腰をまたいで座る弟を見上げれば、やはり眉を吊り上げた顔でこちらを見下ろしている。まぁ怒った顔も怖いってよりは可愛いんですけど。
「おはよう。で、どうした?」
「どうしたじゃない。兄さん、あいつに何言ったの?」
「あいつ?」
「とぼけんな。俺の大事な親友泣かせて、何やってんのあんた」
「あー……」
 泣いたのかと、泣きそうになっていた顔を思い出す。彼の方から弟に泣きついたとは思わないしちょっと想像がつかないが、それでも弟の前では泣くらしい。
「あーじゃない。しかも自分はあいつ振っといて、弟の俺とは付き合わないでって約束させたとか、ホント意味分かんないんだけど」
「は?」
「だからとぼけんなって。俺と付き合うなって言ったんでしょ?」
 なんだろうこの言い方。
 確かに弟に手は出さないという言葉は聞いた。弟に手を出されるくらいならと、この体を好きにさせようともした。けれど約束させたって言うのとはちょっと違わないか?
 いやいや問題はそこじゃない。
「お前らって親友なんだよな?」
「そーだけど何か?」
「でもお前は、あいつを恋愛的な意味で好きだったりすんの? 好き好き言ってたらしいけど、それってお友達としてじゃなく?」
「そーだよ」
 まさかの肯定に、さすがに驚きを隠せない。目を見開いて弟を見つめれば、さすがにバツが悪そうで、自分を見つめる視線が逸れた。
「でも大事な親友だから、あいつの恋を応援したい気持ちだって本物だったよ」
「んんっ?」
 またしてもの違和感に、なんだか話が食い違っているようだと思った。
「おいちょっとお前降りて。でもって、ちゃんと話、しよう。てかあいつは?」
 元凶の相手も呼んでしっかり話そうと思ったのに、弟はまた少し眉を吊り上げる。
「帰った。目ぇ真っ赤にして起きてきて、さすがに今日は勉強できないからゴメンって」
「そうか……」
「てかホント、何したの。何言ったの。どんだけ酷い言葉投げつけたらあんな目になるの。一晩中泣いてたかもとか思ったら、いくら兄さんでもちょっと許せそうにないんだけど」
 ああ、別に弟も泣き顔を見たわけではないのか。そして過去はともかく、昨夜酷い真似をされていたのはどちらかというと自分のほうだ。
「お前さ、俺とあいつのこと、どれくらい知ってる? 俺が昔あいつにちょっと酷いことして、恨まれてるって知ってた?」
「そりゃまぁいたいけな中学生に手コキだけとはいえ手ぇ出したうえ、恋までさせちゃったら、多少恨まれてても仕方無くない?」
「待て待て待て。てかホント一回降りて。お前の話ゆっくり聞きたい。俺の認識とメチャクチャずれてる」
 一つ大きなため息を吐き出した後、弟はゆっくりとベッドを降りた。
 ようやく体を起こしたが、寝足りないのは明らかでやはり少し頭が重い。
「先リビング行ってちょっと待ってて」
「寝直したら承知しないけど」
「わかってる。顔洗ったら行くから」
 もう一つため息を吐いた弟は、待ってるからねと念を押して部屋を出て行った。

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弟の親友がヤバイ4

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 風呂の湯に浸かりながら、あー出たくねぇなぁと思う。もちろん、のんびりゆったりバスタイムを満喫したい、などという理由ではない。
 結局抱かれることを了承し、せめて体くらいは洗ってきたいと頼み込んで、風呂場へ逃げたというのがここへ至る過程だった。
 いきなり抱かせてと言われて、はいどうぞなんて返せるわけがない事を、相手だって充分にわかっていた。わかっていた相手は、こちらの弱い部分を的確に突いてきた。
 要するに、抱かれてくれないなら弟に手を出すぞと脅された。愛すべき可愛い弟を人質に取られて、彼の要求を飲むしかなくなった。
「お前みたいな男があいつの親友だなんて、ホント信じらんねぇよ。まさか、あいつまで脅して、親友面してるわけじゃないよな?」
「俺は、貴方みたいな男があいつの兄貴なの、かなり納得できますけどね。もちろん、脅したりなんかしなくても、あいつは俺を大好きですよ?」
 風呂場へ逃げ込む直前に交わした会話を思い出してため息を吐く。自信満々で弟に好かれていると口に出すその態度が腹立たしい。
「知ってんよバーカ」
 小さくこぼした呟きだけど、声に出したら結構落ち込んだ。
 二人の仲の良さなんて、黙々と勉強しているだけの姿を一日見ていただけでも充分に伝わっている。弟のあの顔も態度も、脅されて出来るようなものじゃない。
 弟が信頼をおいている親友なのは本当だろう。きっと普段はいい男なんだろうなとも思う。成長して随分と背が伸びたし、小柄とはいえない男の体を、優しく抱き上げて運んでやると豪語するだけの筋力があるみたいだし、見た目は悪く無いどころか笑顔はうっかり見とれるレベルだし、話し口調は丁寧だし、勉強していた様子からすると、たぶんきっと頭もそう悪くない。
 女の子にだってちゃんとモテそうなのに、親友の兄貴を脅して抱こうとしてるなんて、本当どうかしている。けれど言い換えれば、それほどまでに幼い彼を傷つけたのだろう。
 まぁ中学生相手に大人気ない事をしたとは思う。まさかそこまでトラウマになっているとも思わなかったが、そんなのなんの言い訳にもならない事は明白だし、それを口にして相手の傷をさらにえぐろうとも思わない。
 脅されて抱かれろと迫られるのは、復讐してやると思わせるほどの仕打ちをした、過去の自分が悪い。わかっている。これは自業自得だ。
「あーもう、しょうがねぇなぁ」
 大きく息を吐きだして、覚悟を決めて風呂を出た。
 ざっと体を拭いてリビングへ戻れば、ソファに腰掛けてぼんやりと空を見つめていた相手が、扉の開閉音で気付いたのか振り返る。
「ちょっ……」
 やられる気満々の腰タオル一丁という格好に、相手が息を呑むのがわかった。
「ソファ汚すわけに行かないからこっちな」
 彼の反応は無視して、ソファ脇を通り過ぎ、隣接の和室へ続く襖に手をかける。和室の中には、彼が今夜寝るための布団が既に敷かれている。
「ま、待って」
 慌てたように伸びてきた手に腕を掴まれた。
「何?」
 既に開けてしまった襖に背を向けて、背後に立つ困惑顔の男と向き合った。
「本当に、俺に抱かれるつもり、なんですか?」
「脅しておいてよく言うよ。あれ言われて、抱かれないって選択なんて出来るわけないだろ」
「ブラコンにもほどがありますよ」
「うっせ。わかっ」
 わかってるの言葉は最後まで言えなかった。相手の唇を押し当てられてしまったからだ。
「やっぱりいいです」
「は? 何が?」
「貴方を抱く気が萎えました」
「はぁあ?」
 今のキスの意味はだとか、風呂にまで入って決めた覚悟をどうしてくれるだとか、何泣きそうになってんだよとか、頭の中にぐるぐると回る言葉はどれも口から出てくることはなかった。
「いやだって、お前……」
「心配しなくても、貴方の大事な弟に手を出したりしませんよ。俺にとっても大事な親友ですし、今後も躊躇いなく大好きって言われてたいですしね」
 可愛いですよね、あいつ。と続いた言葉に、そうだろ~と言いかけて慌てて口を閉じた。弟の可愛さを語り合う相手でも場面でもない。
 なんだか辛そうな顔に傷つけたらしいとは思ったが、やっぱりわけがわからなかった。
「じゃあ、そういうわけで、おやすみなさい」
「えっ、ちょっ、」
 するりと脇を抜けて和室へ踏み込んだ相手は、後ろ手にピシャリと襖を閉めてしまう。
「ええええー」
 もらした戸惑いに応えてくれる者はなく、けれど閉じた襖を自ら開けて、どういうことだと問い詰めるのも躊躇われた。
 暫くそこに立ち尽くしていたが、襖が開く気配はない。やがて肌寒さに気付いて、仕方なく、もやもやとしたまま自室に引き上げた。

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弟の親友がヤバイ3

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 こんな異様な状況の中、男の手なんかで興奮するわけがない。
 お前と違って誰の手でも感じちゃう淫乱じゃないからな。なんて事を思ったりもしたけれど、それを口に出したりはしなかった。そういった事に慣れてない中学生と、そこそこ経験のある現在の自分とでは比較することそのものがオカシイのもわかっているし、そんな言葉を口に出して相手を煽ったらもっと酷い目にあわされそうだ。
 しかし諦めて大人しくされるがままになっても、反応しないことに焦れた相手によって、行為はあっさりエスカレートしていく。
 何をされたかというと、目隠しされた上で咥えられた。しかし目隠しなんてなんの意味もない。相手の顔を見なければ興奮できる、というような状況をとっくに超えている。
 両手を括られ拘束されていることも、ムリヤリ感じさせようという動きも、弟と極力二人きりにさせたくなくてまだ風呂を済ませていないという事実も、はっきり言って萎える要素ばかりだった。
 正直ここまでくると、必死になってバカだなぁという気持ちが強い。復讐だの負けず嫌いだの根に持つタイプだの言いつつも、これじゃ結局、相手にも相当ダメージがありそうだ。
 はぁ、と溜息を吐いたら、相手の動きが止まった。それからそっと体を離す気配がして、相手もとうとう諦める気になったのかもしれないと思う。できればそうであって欲しい。
 その願いが届いたのか、やがて目隠しが外された。ようやく開けた視界の先、困惑を混ぜた泣きそうな顔の相手が、インポかよと怒っている。さっきの余裕は当然無くて、そんな顔で睨まれたって欠片も怖さはない。
 その顔を見ていたら思わず笑ってしまって、相手はますます泣きそうな顔になった。せっかくそこそこ男前に育ったのに台無しだ。そして、そんな顔をさせているのが自分なのかと思うと、さすがに悪いことをした気になって胸が少し痛んだ。
「あのさ、俺、Mじゃないんだよね」
「だったら何?」
「酷いことされたら萎える系なの。でもお前の泣きそうな顔見てたら、ちょっと勃ちそうかもって気になった。……かも?」
「変態」
「まぁ否定はしない」
「ドS」
「そこまでではない、と思う。てか、ちょっと聞いていい?」
 相手は諦めきった顔で一つ息を吐き出すした。
「どうぞ」
「復讐って俺に何したいわけ? 俺がお前の手でイッたらそれで満足して終わり?」
「まさか。取り敢えずやられたことはやり返すってだけで、貴方に気持ちよくなってもらった後は、俺が気持ちよくさせて貰う予定でしたよ。だって遊びに来たら、あいつの代わりに、またキモチイ事してくれるって言ってましたよね?」
 覚えてますかと問われたので、覚えてるけどと返す。
 けれど相手はもう高校三年生だ。きっと手コキ程度で満足なんてしないだろう。だとしたら彼がしたみたいにフェラをしろだとか、もしかしたらそれ以上を求めてくる気なのかもしれない。
「てことは何? お前、俺に抱いて欲しいとか思ってんの?」
 あの時さっさと逃げ出した中学生が、すっかり成長を終えてから戻ってくる意味を考えたら、そのあたりかなと思うがどうなんだろう?
「逆です」
「逆?」
「抱かれるのは貴方の方」
「あっ、あー……そっち、か」
 それならがっちり成長を終えた後じゃなきゃ、近づく気にもならなかっただろうと、思わず納得してしまった。
「だってあいつの代わりだって言うなら、そっちのが自然でしょう?」
「そうね。お前の言い分は間違ってないよ」
 納得はできると、苦笑を零すしかない。
 さて、相手の希望を吐かせてみたけれど、これはどうすればいいだろう?
 彼の泣きそうな顔に過去の所業を反省し、少しくらいなら相手をしてもと思ったりもしたけれど、最終目的が抱くこととか言われてしまうと、やはりそう簡単には、じゃあお互いちょっとキモチクなってみようかなんて持ちかけられない。
「うーん……どうすっかなぁ」
「俺に、抱かれてくれます?」
 迷ったせいで、多少は見込みがあるとでも思ったのだろうか?
「いいよ。なんて言うと思うか?」
「全く欠片も思いませんね」
 相手もさすがに落ち着いて来たようで、返す口調がふてぶてしい。しかし、はっきり否定されてホッとしたのも事実だった。

続きました→

 
 
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