4章 揺れる気持ち
【休日のファミレス】
ランチを食べながら、映画の感想を言い合っている。
祐希:あと、エンドロールの入りがさぁ
悟史:あー、あれ、めっちゃカッコ良かった!
祐希:だよな!
悟史:なんか、いいよな、こういうの
祐希:こういうの?
悟史:映画見て、カッコイイって思うツボが一緒なとこ
:すげー嬉しい
ニッコリ笑う悟史に隆史の笑顔が重なって、ドキリと心臓が跳ねる。
祐希:そ、それは俺も、話してて楽しい、けど……
悟史:楽しい、けど?
祐希:いや、なんでもない
悟史:これもう何度も言ってるけど
:俺と隆史を錯覚したって、気にする必要ないんだからな
祐希:気にならないわけ無いだろ
悟史:隆史の代わりでも、祐希とデートできるだけで嬉しいし
祐希:ほんと、そういう事言うの止めろってば
:悟史が居てくれて良かったって気持ちはあるから説得力ないけど
:代わりが欲しいわけじゃないんだって
悟史:そりゃ俺だって一応さぁ
:俺を好きになってくれたら嬉しいとは思ってるよ?
祐希:俺だって、そう思ってるよ!
:(隆史を想い続けるのは不毛だってわかってる)
:(できるなら、俺も悟史を好きになりたいよ)
:けど!
悟史:わーかってるって
:だからさ、錯覚だってなんだっていいんだってば
:今は俺と一緒が楽しかったり、嬉しかったりするだけで
:そんでいつか、隆史より俺のがいいかもって思って貰えれば
祐希:そんな上手くいくもんか
:(だって似過ぎなんだよ)
悟史が隆史に似せた振る舞いをするせいで、今まで以上に隆史を意識するはめになっている気もして、複雑な気持ちでため息をこぼす。
悟史:いいよ、気長に待つつもりだし
:ちょっとでも隆史の代わりになれてるならさ
:今はそれだけで、かなり満足できてる
祐希:(そんな風に笑うから、ずるい)
:(こんなのダメだってわかってんのに……)
【夜】
隆史LINE:今近くまで来てんだけど
:ちょっと出てこれねぇ?
祐希LINE:わかった
:いつもの公園な
隆史LINE:りょーかい
【自宅近くの公園】
公園のベンチに二人で腰掛けている。
隆史:急に呼び出して悪ぃな
祐希:いや別に、いいけど
:でも久々というか、珍しいな
隆史:んー、最近祐希と話せてないなって思ってさ
祐希:いやそれ、隆史に彼女出来たからだろ
:邪魔しちゃ悪いって気ぃ遣ってやってんだろ
隆史:それは、わかってっけど
:でも、それだけでもないだろ
祐希:それだけじゃない、って?
隆史:最近、悟史とばっか遊んでるみたいじゃん
祐希:前はお前とばっかり遊んでただろ
:隆史と遊べなくなって、それが悟史に代わっただけだ
隆史:じゃあ、俺ともまた遊んでよ
:次の土曜、空いてる?
祐希:いや、空いてない
隆史:何すんの?
祐希:悟史と服買いに行く約束してる
隆史:え、じゃあそれ、俺も行く!
祐希:それはちょっと……
:俺だけで決められないって言うか
止めろと言いながらも、デートという扱いを受け入れてしまっているので、独断で隆史の参加を許可するのは躊躇われる。
隆史:は?相手、悟史だろ?
祐希:そ、だけど
:でもお前だって、遊ぶとき悟史連れてこなかっただろ
隆史:だって悟史、一緒に行きたいとか言わなかったもん
祐希:それまだ仲良くなってなかったからだよ
:なら今は?
:俺と遊ぶ約束してるとこに悟史が連れてけって言ったら?
隆史:えー……別にダメとは……
祐希:あー、まぁ、そりゃそうか
:(隆史と遊び行くのはデートじゃないもんなぁ)
:でも悟史もいいって言うかはわかんないだろ
隆史:なんでダメなんだよ
:てか、悟史がって言いつつ、本当は祐希が嫌なんじゃねぇの?
祐希:違うっ!!
:だって悟史は多分、嫌がるから……
隆史:嫌がるってわかってんの?なんで?
祐希:なんでって、デートに他の男連れてくとかないって言うか
隆史:デート?
祐希:あっ……
隆史:えっ?
:デートすんの?悟史と?
祐希:あー……
隆史:え、うそ、マジ話?
祐希:その、悟史に好きって言われてて……
:(ああもう、ごまかし方なんてわかんないよ〜)
隆史:はぁ?まさか付き合ってんの?
祐希:いや、まだ付き合ってはない、けど
隆史:まだ?
:ってことは、付き合う気はあるってこと?
:つかデート行くってことは、そういうことだろ?
祐希:付き合う気があってってわけでもないっていうか
:ちょっと色々事情があって……
隆史:何だよ事情って
:てか男同士だぞ!?
隆史の言葉に、胸に鋭い痛みが走る。
祐希:彼女作った隆史からすれば、変だろうとは思うけど、でも
隆史:なぁ、悟史と付き合うとか、許せそうにないんだけど
祐希:ご、ごめん……
隆史:謝んなよっ
:謝られたって許せねぇんだよ
どんどんきつい口調になっていく隆史に、隆史への想いを否定されたような気持ちになって、じわりと涙が滲んでいく。
祐希:(ああもう、最悪だ)
:(泣き顔なんて、絶対見せたくない……)
:男同士での恋愛なんて、気持ち悪くて当然だよな
:変なこと聞かせてごめん、帰るっ
隆史:あ、おい、待てよっ
引き止める隆史の声を振り切って、祐希は走って公園を飛び出した。
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