6章 本当の本当に両想い?
【悟史の部屋】
祐希を押し倒す悟史を見た隆史が、問答無用で悟史を殴りつけた。
祐希:(やばい、さっき以上に怒ってる)
(なんで隆史が帰ってくるかもって考えなかったんだよ、俺)
悟史:いってぇな!
:突然入ってくるわ、人のこと殴るわ、何なんだお前!
隆史:何だじゃねぇ!
:お前こそ祐希に何してんだ!
悟史:泣くから慰めようとしてただけだよ、邪魔すんなよ
隆史:泣かしてんのお前だろ!
悟史:はぁ?
:俺のせいなわけあるかよっ
隆史:明らかに嫌がってただろうがっ
:ほら来い、祐希
:とりあえず俺の部屋に移動な
悟史:おい、横暴すぎんだろ!
隆史:うっせぇ、大事な話があるんだよ
祐希:え、あ、ちょっ
有無を言わさぬ勢いで腕を捕まれ、隆史の部屋へと連れて行かれる。
ドアが閉まると同時にジロジロ顔を見られ、いたたまれずに顔をそらした。
祐希:なんだよ……
隆史:悟史に、何かされたか?
祐希:何か?
隆史:キスとか、それ以上とか?
祐希:な、ないよっ
:てか押し倒されてたのも、悟史が悪いわけじゃないから!
:お、俺が、全部悪い
隆史:なんでだよ
:悟史がお前を好きで、ああなってたなら、お前が襲われてたんだろ
祐希:ちがっ!ちがうから!!
隆史:あんな困った情けない顔してたくせに、なんで悟史庇うんだよ
:そういやほとんど抵抗してなかったよな?
:まさか嫌じゃなかったとか?
:やっぱ悟史が好きなのか?
:悟史と付き合う気で、だから黙って押し倒されてたのかよ!
祐希:違う違う違うっっ
:抵抗出来なかったのは理由が……
:っていうか、本当に、悪いの俺だから
:ごめん、ごめんなさい
:(ああくそ、また涙が……)
隆史:おい、泣くなよっ
:泣いてねぇで、
:なんで悟史じゃなくて祐希が悪いのか説明しろって!
祐希:だって、俺が……
:俺が、隆史のこと、好きになったのが悪い
隆史:はぁ?
祐希:ごめん、気持ち悪よな、ほんと、ごめん
隆史:いや、別に、気持ち悪くは……
祐希:泣いてるからって、気ぃ使わなくていいよ
:男同士で好きとか、俺だって気持ち悪いって思うもん
:でも悟史はさ、俺が隆史のこと好きって知って
:逆に俺を好きになってくれたんだよ
隆史:は?なんだそれ?
祐希:隆史に彼女できて落ち込んでる俺を、ずっと慰めてくれてたの
:隆史の代わりにしていいよって、言ってくれてた
隆史:俺の、代わり……
祐希:そうだよ、悟史、優しすぎんだよ
:あんまり優しいから、甘えて、甘えすぎて
:だからさっきのは俺の自業自得なんだ
:好きって言ってくれる相手に期待させた、俺が、悪い
隆史:あー……
:それで、嫌とも言えずに、押し倒されてたってのかよ
祐希:ごめん、悟史のことも、俺が悪い
:俺が誘惑したようなもんだから、気持ち悪いの、俺だけだから
:俺のことは切っていいからさ
:だから悟史は許してやってよ
隆史:待て待て待て
:切っていいって何?
祐希:だって俺と親友続けんの、もう、無理だろ
:俺、恋愛感情で、隆史のこと好きなんだから
隆史:あーその、俺だって……
:俺も、祐希が、好きなんだけど
祐希:気ぃ使わなくっていいってば
:それとも、泣いたから同情してんの?
隆史:違うって、本気で言ってる
:俺も、恋愛感情で、祐希が好きだ
祐希:ばかっ!
:そんなの信じられるわけ無いだろ
:彼女持ちが何言ってんの
隆史:それだけど、俺、彼女とは別れてる
祐希:は?なんで?まじで?
隆史:マジで
:なんかやっぱ違うって気がして、
:彼女と遊ぶより祐希と遊びたいなって思うこと増えて
:そしたら、振られた
祐希:振られたの?
隆史:うん、そう
:ただまぁお互い様っつうか、
:向こうもなんか違うって思ってたみたいだから
:どっちが先に言い出したかってだけの話だよ
祐希:そ、っか……
隆史:それよりさ、彼女と付き合ってた時の違和感の理由、
:さっきわかったんだよ
祐希:違和感の理由?
隆史:祐希が悟史に好きって言われてるって聞いて、
:めちゃくちゃ頭に血ぃのぼった
:絶対許せないって思って、ああ、俺も祐希が好きなんだ、って
祐希:待って待って
:さっき言ってた許せないっていうの
:男同士で付き合うなんてありえないって話じゃなくて?
隆史:男同士がありえないとか、気持ち悪いとか、
:俺は一言も言ってねぇよ
:なんか、誤解してるみたいだけど
:俺が許さないって言ったのは、悟史と、っていうか
:祐希が俺以外と付き合うの、許せそうにないわ
祐希:それって、隆史、俺と付き合いたいの?
隆史:そりゃ好きなんだから付き合いたいに決まってんだろ
祐希:ほ、本気で?
隆史:さっきから全部本気だけど
:なぁ、信じろよ、俺を
祐希:信じたいよ、信じたいけど、でも……
隆史:俺ら、両想いだぞ?
祐希:うぅっ……
:(そんな事言われたら……)
:(また泣いちゃうじゃん)
隆史:泣くなって
:それとも嬉し泣きか?
祐希:わか、っないっ
:嬉しい、もあるけどっ
:でも喜んでいいのか、わかんなくて
隆史:そこは素直に喜べよ
:でもって、俺を好きだっていうなら、頼むから、
:俺以外の男には触らせんな
:さっき、悟史に押し倒されてるの見て、
:とっさに殴っちゃうくらい嫌だったんだ
:これからは、俺にだけ、触らせてよ
祐希:隆史だけ、って……
:本気で俺に、そんなことしたいって思うの?
隆史:好きなら当然だろ
祐希:男同士なのに……
隆史:まだそれ言うかよ
:好きって気持ちに性別なんか関係ないだろーが
祐希:(おんなじこと、言ってる……)
隆史:っつーかそんな気になるなら試してみりゃいいんじゃね?
祐希:試すって?
隆史:んーじゃあ、キスでもしてみる?
祐希:き、きす!?
:俺が相手で出来んの??
隆史:出来るよっ
引き寄せられたかと思うと、唇にふにっと柔らかな感触が押し付けられる。
祐希:(あ、隆史とまじで、キス、してる……)
:(どうしよ、嬉しい)
:(気持ち悪いとか、全然思えない)
隆史:ほら出来た
:俺は全然気持ち悪くなかったぞ
:むしろめっちゃ良かったしもっとしたい
:祐希は?
祐希:お、俺も、嬉しいばっかりだった
満足げな顔がまた近づいてきて、何度もちゅっちゅと唇をついばんでいく。
祐希:(隆史のキス、すげー気持ちぃ)
:(男とキスなんてしたら、もっと気持ち悪いはずって思ってた)
:(実際はこんなにも満たされてる)
:(ごめん悟史、俺、やっぱ……)
:(隆史じゃないと、ダメみたいだ)
:隆史、俺……
隆史:好きだよ祐希、俺と、付き合ってよ
:なぁ、頼むから
祐希:うん
やったぁと満面の笑みを浮かべる隆史に、これからは恋人としてよろしくと返して、後で一緒に悟史に謝りに行こうと笑いあった。
<終>
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