初恋は今もまだ 親友3

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 触れ合わせた唇がやけに熱い。ジッと触れ合わせていると、そこから熱が広がって顔全部が熱を持ち始める。
 やがて唇の下で小さな笑いが弾けた。
 慌てて顔を上げれば、相手がおかしそうに肩を震わせ笑っている。
「笑うなよ」
 口を尖らせ抗議すれば、だってと言いながらも更に笑いが大きくなってしまった。
「なんかちょっと予想外というか」
「何が?」
「お前と恋人になるって、こういうことなの? っていう驚き? みたいな?」
「だからどういう意味だソレ」
「キスしていいよって言って、触れるだけのキスを長々されると思ってなかった。って意味だけど」
 顔も真っ赤だしと指摘されて、今度は恥ずかしさで顔が熱くなる。
「いいだろ別にっ!」
「悪いなんて一言も言ってないけど」
 でも笑ったくせに。
「だって俺、お前好きって言いまくってたけど、お前相手にエロいことする気なんてなかったし、むしろそういうの考えたら絶対ダメって思ってたし、今だって結構ビビってるもん」
「うん、ゴメン。わかってるつもりだったんだけどゴメン。笑ったのはさ、馬鹿にしてるとかじゃないから許して」
「嘘だっ」
「嘘じゃないって。嬉しかったんだよ。お互い大人になったのにさ、俺たちの関係は高校に入ったあの頃から変わってないというか、改めてそこからスタートするんだな、って思っただけだから」
 でもあんまり焦らさないでと言った相手の手が伸びてきて、ゆっくりと頭を引き寄せられた。そっと目を閉じて、引き寄せられるまま唇を触れさせて……
「ダメとは言わんがそれ以上は部屋行ってやりなー」
 濡れた舌を唇に感じると同時にそんな声が掛かって、驚きに思いっきり体を跳ねる。慌てて後頭部に当てられたままの手を跳ね除けるように顔を上げれば、廊下の先にあるリビングへと続くドアの前に彼の姉が立っていた。
 いつから見られていたんだろう? ドアの開閉する音には気づかなかった。もちろん気づいていたらキスなんて絶対にしなかった。
 血が登って熱くなっていた頭が急激に冷えていく。
「おいいいいっ! 家にねーちゃん居るなら先に言えよっ」
「この時間だし、普通に家族全員居るけど?」
「おーまーえーはーっ! 何考えていいよとか言ってんの? バカなの?」
「いやだって、されたかったし。ムードというか勢い? 大事にしたかったというか、さっさと既成事実欲しかったというか」
 振り向いて、むしろなんで邪魔すんのと姉に向かって投げかけているその頭を、彼の姉に代わってポカリと叩いてやった。サンキューの言葉と共に彼の姉が親指を立てた拳を突き出して来たので、どうやらこの判断は間違ってないらしい。
「どっちかって言ったら感謝して欲しいくらいなんだけどな。この向こう、興味津々の親が待機中」
 ドア開ける? と聞かれて、ブンブンと首を横に振る。親友もさすがに同じように首を振っていた。
「じゃ、喧嘩なり続きなり、さっさと部屋行って好きにしな」
 その言葉に促されるように立ち上がり、そそくさと階段へ向かう。遠くでリビングのドアが開閉する音が聞こえて、やっと緊張が少し解けてドッと疲れが押し寄せる。
「なぁ、反対とかされなかったけど、お前のねーちゃん大丈夫? てか興味津々の両親とか言ってたみたいだけど」
「あー、うん。お前好きになったかもって最初に相談したの姉。遅すぎるって殴られたよ。俺、お前好きになってからアチコチで殴られまくってる」
「は? いやちょっと待てって」
「お前の親だって、俺と付き合うって言っても祝うことはあっても反対はしないだろ。ウチだって同じだって。いつからの付き合いだと思ってんの。お前が俺大好き全開だった頃もばっちり知ってんだから、親ですら随分遠回りしたのねくらいの感じだって」
 マジかよと呟いたら、マジだよとすぐに返された。
「で、喧嘩の続きとキスの続き、どっちする?」
 相手の部屋のドアの前、ドアノブに手をかけた相手が振り返って聞いてくる。
「キスの続きに決まってんだろバーカ」
 開かれたドアの先、部屋の中は昔何度も訪れた頃とあまり変わっていなかった。

続きました→

 
 
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