初詣は言われるまでもなく一緒に行くつもりでいた。一緒に行って、一緒に彼の大学合格を祈願してやろうと思っていたから、近隣の合格祈願向け神社と寺もチェック済みだ。
クリスマスの時同様にゴネてこちらを頷かせるつもりだったらしい相手は、一緒に初詣に行きたいという願いも、大晦日から出かけて年越しの瞬間を神社で迎えたいという願いも、二つ返事でOKした自分に随分と驚いていた。
どこへ初詣に行きたいかと聞きながら、調べておいた神社と寺のリストを見せる。
「これって」
「受験生向けの合格祈願用。行けそうなとこ探しといた」
「マジで? てかどういう風の吹き回し?」
「クリスマスにお前が頑張ってるの見せたから?」
「でもあれは、キス、させて貰ったし……」
あの日のキスを思い出しているのか、相手の頬が薄く色付いていく。なんとなく期待のこもった視線を感じたが、さすがにそれは無視をした。
「まぁ、俺が横についてなくてもちゃんと勉強やってんなら、俺もイベント事は渋らず付き合わないと。お前にも、もっと恋人らしくしろって言われたしな」
でもエロい事は受験終わってからなーとオマケのように付けたら、ギョッとした顔をするので、慌てて、女の子紹介されたいなら受験終わるまでは俺で我慢しとけと付け加えた。
「ああ、そういう事」
ホッとするのかと思ったら、何やら渋い顔をしている。まさか俺にエロいことしたいわけ? なんて事を、冗談でも言えそうにない雰囲気だ。
触れてはいけない。突き詰めてはいけない。これはお試しで、彼の受験が終わるまで限定の恋人ごっこをしているだけ。
「それで、どこにするよ」
何にも気づかなかったことにして、少し強引に話題を戻した。
「周りに出店多そうなとこ?」
「お前の初詣の目的ってそこなのかよ」
「当然じゃん」
出店の多さはやはり知名度に比例するだろうか。
「知名度高いとこって言ったらやっぱここだろ」
リストの中から自分もよく知る大きな神社を一つ選んで指差した。しかし相当の人が押しかけるのだろう事も想像に難くない。
「でもめちゃくちゃ混みそう」
「人混み嫌?」
「いや。お前がいいならいいよ。たまにはそんな初詣も楽しそう」
調べたら大晦日から三が日までは24時間ずっと開門しているそうなので、どうせ並ぶだろうと、23時半に向こうへ着くよう逆算して待ち合わせ時間を決めた。
毎年テレビのゆく年くる年で賑わう神社を見ては居たが、実際の年越し神社を舐めていた。知名度の高いところを訪れたのだから当然なのかも知れないが、最寄り駅を降りた時から既に人が一杯で、その流れに乗って神社へ向かうものの、なんとか門を通った辺りで年を越してしまった。
年越しの瞬間は見知らぬ周囲も一緒におめでとうと盛り上がったものの、だんだん口数も少なくなって、黙々と本殿へ向かってゆっくりと進んでいく。
とにかく人が多いので、はぐれないようにを言い訳にして、当たり前のように途中からは手を繋いでいた。数時間は外にいる想定で防寒対策バッチリなのに、人混みに揉まれて暑いくらいで、相手の手は少し汗ばんでいる。
互いになんでもない振りをしているのは明らかだった。きっと自分だけがドキドキしているわけではないのだろうけれど、それはそれでやっぱりちょっと問題なんじゃないかという気もする。
実際付き合う事になってから、彼が真面目に受験勉強に励んでいるのは確かなようだから、今更やっぱりこんな事は止めようなんて言い出せない。そんな事を言い出して、せっかくやる気になっている、受験前の彼の気持ちを乱したくはなかった。
それでも、こんな提案するんじゃなかったという後悔は、日に日に大きくなっている。特に、こんな風にデート紛いの事をしている時は強く思う。
「疲れた?」
参拝を終えた後も人波に従い移動し、周りの人がようやくバラけ出した辺りで、やっとホッと安堵の息を吐けば、隣から気遣う様子の声がかかる。手は参拝時に放して以降は、さすがにもう繋いでいない。
「少しね。思ったよりずっと混んでた。でもお前としてはこっからがメインなんだろ?」
「疲れてるなら、出店巡りなんて無理にしなくてもいいけど」
「大丈夫。でも出店覗きに行く前に、社務所寄らないか?」
せっかくだし絵馬書いたりお守り買ったりしたらどうかと誘ってみたら、行く行くと元気良く笑うので、その笑顔にこちらも少し気持ちが晴れる。
ぐちゃぐちゃと色々考えて後悔しても、それに彼を巻き込んでしまったら本末転倒だ。あまり自分を気遣わせてはいけない。気持ちを切り替えて、今は初詣後の出店巡りを一緒に楽しむのが正解だ。
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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
良い年になるといいですね。
この2人も、この先どうなるのか気になります。
明けましておめでとうございます。
こちらこそ、本年もよろしくお願い致します。
草木さんにとっても良い年になりますように(*^_^*)
この二人は相手が卒業する春くらいまで、イベントに絡めて少しずつ進展していけたら良いなと思ってます。