彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(初詣2)

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 あちこちの出店を覗いてまわり、あれこれ食べつつ家族への土産も買って、自宅の最寄り駅に戻って来たのは5時頃だった。
 シンと静まり返る住宅街を並んて歩く。ぽつりぽつりと会話はあるが、さすがに疲れと眠さとで朦朧としている。
 ふわわと大きなアクビをしたら、隣の彼が付き合ってくれてありがとうと言った。
「良いって。これはこれで、なかなか楽しかったし」
 今回は受験生な幼なじみが相手だから付き合ったというだけで、きっともう二度としないけれど、人生一度くらいそんな経験があったっていい。
「いや、今日だけの話じゃなくてさ。お試しでも、ごっこ遊びでも、恋人になってくれてありがとって事」
「気がはやいな。それは大学合格してから言えよ」
「言いたかったんだからいいじゃん。そりゃ可愛い彼女ならなお良いのかもだけど、高校最後のクリスマスも年越しも、恋人と過ごせたってのが奇跡っつーかさ」
 嬉しかったんだもんと続ける口調の子供っぽさに思わず笑う。子供っぽさそのままに、彼は口を尖らせた。
「そりゃそっちはモテモテだから、こんなのたいした出来事でもないのかもだけどさー」
「いやこっちもそれなりに大した出来事だけどな。俺あんまイベント熱心じゃねぇから、年越しを神社でなんて初めてだったし」
「えっ? 初めてだったの?」
 そう言う彼は、今日程の規模の神社は初めてでも、過去に何度か友人たちと経験済みらしい。
「告白されて付き合ってみても続かないの、多分そういうの嫌がるせいなんだよな。あーあと、メールとかラインとか定時電話とかも面倒で、それも振られる原因か?」
「マジでっ!?」
 振られる側なのかと驚かれて、そうだと苦笑で返す。自分から振ることなんて殆ど無かった。そしてそんな事が続けば、だんだん特定の恋人を作ることに消極的になる。
 だからあの時、話の流れだったとしても、なんで自分から試しに恋人してやるなんて口にしたのか、今でも不思議で仕方がない。
「え、じゃあ、クリスマスの時の、十分恋人してるって、あれもしかして本気で言ってた?」
「当然だろ。歴代彼女よりお前相手のが色々してやってるくらいだわ」
「わーマジかー。俺にはお試しだからって手ぇ抜いた対応すんなとか言ってたの誰だよ」
「あー、確かに言った言った。でもそれ、女の子紹介のために取り敢えず形だけ付き合ってみましたって態度ありありなのは、さすがにこっちも腹立つかなってくらいの意味だわ」
「それさ、どっちかって言ったらそっちが、俺を勉強させるために取り敢えず形だけ付き合ってみました。って態度ありありだった気がするんだけど……?」
「そうか?」
「自覚ないとか割と酷い」
「嫌になったなら振ってもいいぞ。本命受かったら女の子の紹介はしてやるし」
「振らないよ勿体無い。ちょっとビックリしただけ。てか逆に、俺かなり優遇されてるっぽい感じもある」
 イベント嫌いなのに神社調べてくれてたし、初詣も一緒に行ってくれたし、自分の分の絵馬にまで俺の受験合格祈願してくれたしと続ける声は機嫌が良さそうだ。
「なんで?」
 ひょいっと目の前に回りこまれて足を止めれば、真剣な顔で見つめられた。
「なんで、って何が?」
「なんで、俺相手だと、嫌いなイベントごとも付き合ってくれるの?」
「お前が幼なじみで受験生で、一応金貰ってる立場だから?」
「それは正直にぶっちゃけ過ぎ」
 嘘でもお前が好きだからとか言ってよと苦笑する。
「ごっこでもお試しでも、今は俺が恋人でしょ。てわけでやり直しね」
 もう一度、なんで? と繰り返されて、思わずため息がこぼれ落ちた。
「お前が、好きだからだ」
「うん。俺も好きー」
 にっこり笑った顔が近づいてくる。
 屋外だし家の近所でもあるけど、どうせ周りに人なんて居ないし、もうかなり疲れてるしいい加減眠い。まともな判断が出来なくたってこれはきっと仕方がない。
 調子にのるなと頭を叩いてやりたい気持ちも、これ以上あれこれ許すのはマズイのではとチラリと過る思考も、そんな言い訳で押さえつけて目を閉じた。

続きました→

 
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