ここがオメガバースの世界なら6

1話戻る→   目次へ→

※ ここから攻めの視点になります

 高校二年の夏の初め、試合中の怪我で入院した。
 試合会場から病院に付き添ってくれたのは試合を見に来ていた幼馴染で、隣に住む同じ年の彼とは色々あって、通う高校は違うのだけれど多分それなりに仲は良い。
 入院が決まって病室のベッドの上に落ち着く頃には部の顧問や家族への連絡は終わっていたし、慌てて駆けつけてくれた母を宥めて入院手続きへと連れて行ってもくれた。手術中は家族の付添が必要で、それも母がどうにか仕事に都合をつけてくれたけれど、退院するまでの数週間、頻繁に病室に出入りして必要なものの買い出しやら洗濯やらを請け負ってくれたのは、やはり幼馴染の彼だった。
 かなり割のいいバイトだよと笑っていたから、親が彼に頼んである程度金銭の支払いをしているようだが、生まれた時から一緒に育ってきた彼への、うちの家族からの信頼は篤い。
 この春大学に進学して家を出た姉とも二人きりでお茶会をするほど仲が良いし、それに気づいた昨年、家に誰も居ない時を狙って家に上げているなんて疚しいことがあるに違いないと親に訴えたら、親はむしろ姉と幼馴染が付き合うことを歓迎したくらいだ。
 姉には親にチクったことをその後しこたま怒られたし、彼が腐男子だということは口外禁止と強く約束させられた。口外禁止を強く約束させられたのは、なぜ姉とこっそり二人きりでお茶会を開いていたのか察しただろう親もだったけれど。
 男なのに男同士の恋愛を扱う物語を楽しんでいる、というのを、他者に知られたくない気持ちはわからなくもない。家族相手には隠すことを止めた姉だって、自覚した初期は隠していたそうだし、姉が腐女子と知っている友人もそれなりにいるようだが、知らないまま親しくしている友人知人のほうが圧倒的に多いとも聞いている。
 どうやら、姉の趣味を認めるどころか同じ趣味持ち、という点でも、親としては姉の恋人に彼を推したいらしい。正直意味がわからないと思っていた。
 姉と同じ高校へ進学したのだから頭の出来は問題ないとしても、なんだか色々とどんくさい奴だし、姉とほとんど身長が変わらないし、自分と同じ年の彼は姉からすれば二歳も年下だし、姉の隣に並んで釣り合いが取れるとはどうしても思えなかったからだ。姉の隣に立つのは、姉を守ってくれそうな頼りがいのある男じゃないと嫌だと思う。シスコン気味なのは認める。
 ただの腐友で恋愛感情はないと姉と彼の双方から明言された上に、番になる相手はお前でもいいよと項を差し出されたことで一応は引いたけれど、親にまであっさり歓迎されて、二人がそのまま恋人として付き合い出すのではと当初はかなり心配していた。
 だから姉とのお茶会に同席したり、一緒に出かけないかと誘ってみたりと、可能な限り姉と二人きりにさせないようにもしていたのだが、なんせ小学生の頃は何の打算もなく一緒に楽しく遊んでいた相手だ。中学時代に同じ部活で自分だけがさっさとレギュラー入りしてしまったことや、相手がなかなか試合に出れるレベルに到達しなかったことで、なんとなく気不味くなりこちらから疎遠にしていただけだと、一緒にいる時間が増えるにつれて思い知った。
 プレイヤーとしての才能がなかっただけで競技そのものは今も好きだと言うから、試合を見に来ないかと誘うようにもなった。これも当初は姉と引き離すのが一番の目的だったはずだ。どうしたって部活に多くの時間を取られていたから、彼が興味を示してくれたことを都合がいいとすら思っていた。
 けれど彼が本当に観戦を楽しんでいるのがわかってしまったら、姉が卒業したからと言ってもう来なくていいとは言えない。試合日程は聞かれる前に自ら教えてしまう。
 そんな感じで、昔ほど無邪気に仲良しなわけではないが、色々とあって今もそれなりに仲が良い。そして今回この入院騒ぎを経て、思っていたよりは頼りがいがあるらしいと認識を改めた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です