雷が怖いので プレイ36

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 今度は意識がはっきりしたままなので、脇やらスネやらに生えた毛を丁寧に剃り上げられるだけでも十分に恥ずかしい。あとスネはともかく、脇の下を滑るカミソリの感触はちょっと擽ったい。
 自分で剃れる、という主張は当然あっさり却下されたし、相手は随分と真剣で、そのくせ酷く楽しげだし、許可したのは自分だし、別に嫌なわけじゃない。でも性的興奮を煽るような触れ方はされてないのに反応してしまうのは恥ずかしいし、それを見てニヤつかれるのも恥ずかしい。
 からかわれるのでもいいから、いっそ何か言ってくれればいいのにと思う気持ちもあるが、何を言われたって恥ずかしい気持ちが増すだけだとわかってもいる。
「のぼせそう……」
 恥ずかしさで、という意味で呟いた言葉は多分相手にも正確に伝わったと思うのだけど、壁のフックに掛けられたまま湯を吐き出し続けているシャワーの、湯温を少し冷たいくらいに下げるという対応をされた。
 傍らの床に跳ねるぬるい水が、浴室内にこもる熱気をいくぶん払ってくれるようで、頭がスッキリしてくる気がする。のぼせそうなのは事実で、顔が熱くてぼんやりするのは、羞恥からだけじゃなかったらしい。
 げんきんなもので、頭の中の靄が晴れたら、この状況を楽しめる余裕が少しばかり自分の中にも湧いてくる。だっていつも見上げてばかりの彼を、見下ろす状況なんて珍しい。
 目の前に片膝をついて、立てた方の膝上にこちらの足を乗せて、熱心にカミソリを這わせている。そんな彼へこちらも熱心に視線を注ぎ続けてしまえば、気づいた彼が顔を上げて、ふ、と楽しげな吐息を漏らした。明確に笑っているわけではないけれど、柔らかな表情はかすかな笑みを湛えている。
 楽しそうで良かったと思うし、彼のそんな様子がたまらなく嬉しいとも思う。
 童顔とあいまってますます子供みたいになってるはずだし、もしかしたらこの後、また幼い言葉遣いをねだられるかもしれない。わかってるし予測もしてる。もし本当にそれを求められたら、応じる気でもいる。
 それで彼が満足気にしてくれるなら、多分きっと、もっともっと嬉しくなれる。
 だって、好きな人が喜んでくれたら、楽しそうにしてくれたら、嬉しいに決まってる。ツルツルにされるくらい、実年齢を大きく離れた幼い子供扱いされるくらい、どうってことないと思える。
 彼が欲しいものも、したいことも、自分にできることは全部叶えてあげたい。こちらが差し出せるものは全部差し出したい。
 良かった、嬉しい、という気持ちが、彼が好きだという気持ちへ転化していく。好きだ好きだと、胸の内で想いを膨らませてしまう。
「もう、終わるよ」
 ゆっくりと足を降ろされて、目の前に跪いていた彼が立ち上がる。湯温を戻した温かなシャワーが掛けられて、毛を剃るために塗られていたシェービング剤を流していく。
 肌を撫でていく手つきはやっぱり酷く丁寧で優しかった。
「好き……」
 膨らみきって抱えきれなくなった想いが、ほろりと音になってこぼれ落ちていく。
 返るのは優しいキスだけだけれど、繰り返し落とされる優しいキスは、この想いを否定も拒絶もせずにいてくれるから、ちょっとくらいの胸の痛みは我慢してしまう。胸が痛いとか、抱えてしまった想いが辛いとか、そう言って泣いて彼を困らせるより、優しく降るキスが嬉しいと笑ってみせるほうがいい。
「好き、……好き、です」
 キスの合間にもほろほろと想いを零してしまうせいで、キスはいつまで経っても終わる気配がない。だから自分で先を誘った。
「ね、早く、ベッドへ」
 好きの言葉をぐっと飲み込み、待ちきれないとばかりにねだる。
 好きだと返さなくていいから、彼の指も舌も肌も、もっともっと感じたかった。心に触れて貰う代わりに、彼以外には決して触れさせない、体の深い場所へと触れて欲しかった。
 早く、と口に出したせいか、本当に待ちきれなくなる。早く早くと気がはやる。
 はやく、埋まらない心なんて気にならなくなるくらいに、彼の熱で、その熱に呼び起こされるキモチイイで、体の中も頭の中も満たされてしまいたい。

続きました→

 
 
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雷が怖いので プレイ33

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 驚きを隠さないまま暫く何かを考えていた彼は、バイト中に許すなら初剃毛プレイにはそれなりの金額を払うのに、本当に今ここでそれを許すのかと問うてくる。そんなふうに言われたら、余計に今がいいって思ってしまうのに。
「バイト中に剃るって言われても、俺もう、嫌だって言わないと、思います。でもそうやってお金貰うより、お金で買われてない今の方が、嬉しい」
「そうか……」
 それなら準備をしてくると言ってすぐに立ち上がってしまったので、困ったような、そしてどこか辛そうな顔を見てしまったのは一瞬だった。
 失敗した、のかもしれない。金銭でこちらを買っていたい彼と、買われるという形ではなく彼と過ごしたい自分とで、衝突とまではいかないまでも、会話にしろ互いの感覚にしろ噛み合ってないなと感じることは多々あった。
 彼に抱かれるようになってからも、バイト中に彼のペニスで貫かれることがないままなのは、あの日、仕事として抱かれるのが嫌だと言ったせいなのはわかっている。買われたくないこちらの気持ちを、彼はちゃんと心に留めてくれているし、月の半分はバイトとしてでなく抱いてくれるけれど、でもその根底には、やはりこちらに対してそれなりの金額を支払うべきだって思いが強く残っているんだろう。
 それが時折こんな風に、彼の口からこぼれ落ちてくるのだ。それを素直に受け入れて、お金を積まれることを喜べないのも辛いし、こうしたこちらの反応のせいで、彼にも苦々しい思いをさせてしまう。
 ふわふわに舞い上がっていた幸せな気持ちがしぼんで、そっと瞼を下ろした。こんな酔った頭で、ぐるぐるとアレコレ考えるのはきっと良くない。早く彼に戻ってきてほしかった。
 目を閉じてしまったせいか、どうやらそのまま眠りに落ちたらしく、下半身がムズムズして意識がゆっくり浮上する。そのムズムズがカミソリが肌を滑る感触だというのはすぐに気付いたが、今まさに剃られている最中だと意識すればするほど、どうすればいいかわからない。だってなんか予想外な所にカミソリが当てられている。というか尻たぶを広げられて、アナル周りを剃られてるらしく、多分とんでもなく恥ずかしい格好をさせられている。
 そしてそんなこちらの戸惑いは、あっさり相手に伝わったらしい。
「起きたのか? 一応聞くが、どこまで覚えてる?」
 カミソリの動きががピタリと止まって、持ち上がっていた足が降ろされる。彼の声に促されて目を開ければ、だらしなく開かれた足の間に座っている彼と目があった。手にはもちろん、カミソリが握られている。
「どこまで、って……」
「剃るぞって言われて頷いたことは?」
 言われてみれば、彼の声に夢現で頷いたような気がしないこともない。けれど言われた言葉が剃るぞだったかどうかは、欠片も記憶に残ってなかった。
「はっきりは、おぼえて、ない、です」
「剃っていいって言ったことは?」
「それは覚えてます」
「ならいい。もう終わるから、あとちょっと大人しくしてろよ。動くと危ないから」
 再度足が持ち上げられて大きく開かれた。狙いを定めるように見つめられて、恥ずかしさに身を捩りたくなる。それを耐えるようにギュッと体に力を込めた。
「いい子だ。そのまま動くなよ」
 こんな緊張したままでも、どうやら動きさえしなければ構わないらしい。そのままお尻の隙間にカミソリが当てられて、ゾワッと肌が粟立った。
「ぁっ、……ん……」
 スルスルと滑っていく感触に、毛が剃られているとわかる感触が時折混ざって、なんともいたたまれない。
 毛深い方ではないし、アナル周りなんてほとんど生えてないはずだけれど、それでも無毛のツルツルでないのは確かだし、そこも剃られて当然といえば当然なのかもしれない。頭ではそうわかっていても、剃られるのは前面だけだと思い込んでいたせいで、戸惑いは大きかった。
「終わったぞ」
 やがてそんな言葉とともに、触れていたカミソリが離れて、持ち上がってた足も降ろされる。緊張を解いて大きく息を吐く中、微かに笑うような気配とともに相手が立ち上がったのがわかった。
 テキパキと後片付けを進めていくのを、まだどこかぼんやりとしながら見つめてしまう。なんとなく現実感がないのは、慣れないホテルのベッドの上で、初めての剃毛を受けながら、のん気に寝こけていたせいに他ならないのだけれど。
「眠い?」
 一度眠ってしまったおかげか、酔いはけっこう覚めている気がするし、眠いわけじゃない。
「いいえ」
「なら一緒にシャワーを浴びようか」
 無理そうなら拭いてやるからちょっと待ってろと続いた声には、もちろん、一緒にシャワーを浴びると返した。

続きました→

 
 
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