別れた男の弟が気になって仕方がない14

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 早く抱いてと返された答えに、小さく息を吐きだした。そう言うだろうと思っていた。
 わかったと返して、ベッド脇に置いてあるサイドテーブの引き出しを開ける。中から取り出したのはアイマスクだ。
 涙を隠すように、さきほどからずっと彼の片腕が目元に乗せられたままだった。
「目は閉じたままでいいから、ちょっと一回腕どけて」
 一瞬の躊躇いの後、それでも素直に腕が外されるのを待って、アイマスクを着けてやる。
「えっ?」
 突然目元を覆った感触に、驚き戸惑うのは当然だろう。
「ただの安眠用アイマスク。これで腕で隠してなくても、俺にお前の泣き顔は見えないし、お前も俺を見なくて済むから、四つ這いにだってなれるよな」
 四つ這いにという単語に納得した様子で、相手は一つ頷いた後で寝返りをうち、促した通りの格好を取った。
「うん、いい子。初めてはこっちのが入れやすいし、キツくても向き合って正常位で抱かれたいなんて可愛いこと、お前は言ってくれそうにないもんな」
 言いながら素早く自身のペニスにコンドームを装着し、尖端をアナルにピタリと押し付けてやる。ピクリと体を震わせた相手は、息を潜めてその続きを待っている。
「十分慣らしてるから、そこまで痛くはないと思うけど、痛かったら我慢してないで痛いって言えよ」
 相手が頷くのを待ってゆっくりと腰を押し進めれば、慣らして拡げたその場所は、柔からに開いて尖端を飲み込んでいった。
「ぁあ、ああぁぁっっ」
「そう。そのまま口開けて、息は出してると楽だよ」
 浅い場所が一番感じるようだから、抵抗があるようならそこをたっぷり擦ってやろうと思っていたのだが、大丈夫そうだったのでそのままゆっくりと指では届かなかった深くまで掘り進む。痛みを訴えたらすぐにでもそれ以上の侵入は止めるつもりだった。けれど、苦しげな声を上げはしても痛いとは言わなかったし、もちろん最初に設定したストップワードもない。
「全部、入ったよ」
 相手の尻タブに自分の腰を押し付けた。相手は荒い息を吐きながら、わかっていると言いたげに何度も頷いている。しゃくりあげる余裕もなさそうなその息遣いからは、泣いているかまではわからなかった。
「さすがに全部は苦しいね。初めてのお前相手に、こんな奥の方まで突き荒らす気はないから安心していいよ」
「待っ、て」
 ゆっくりと腰を引いていけば、苦しげな息の中でそれを止める声がする。
「どうしたの?」
「平気、です」
「なに? もしかして、奥までガンガン突き上げられてみたいとか、そういう話?」
 そうだと言うように頷くから、でも気持ちよくはなれないよと忠告混じりに苦笑した。
「いい、です」
「俺があんまり良くないんだけど。それともレイプ願望無いって思ってたのが勘違いで、本当は酷くされたいの?」
 聞けば長いこと逡巡した後で、はいと肯定を返してくる。本当に困ったバカな子だ。その逡巡が、既に否定を示しているのに。
「でもお前、さっさと終わって欲しいんだよな? 俺に奥まで犯せってなら、さっさと終わるのは無理だよ?」
 痛い痛いと泣かれたらこちらが精神的に萎えてしまうのは目に見えているから、どうしても奥を突いて欲しいと言うなら、それなりに奥を馴染ませ慣らして拡げる必要がある。さっき指が届く範囲を散々慣らして拡げたが、指ではなくペニスを使って同じ要領で慣らしていく。
「それにきっとまたいっぱい泣くよ?」
 お前に泣かれるのは辛いよとまでは言えなかった。嫌がられても、たとえ暴れられても、最後まで抱ききってやるという前提で始めた行為で、泣かれることだって十分想定内だ。こちらが辛いから泣くのを我慢しろなんて、言えるわけがない。
「それでも奥まで使って欲しいの?」
 聞けば頷かれて、諦めに似たため息がこぼれ落ちる。怯えたように身を竦ませてしまうから、別に怒っているわけではないと、掴んだままだった腰を宥めるように優しく撫でた。
「じゃあお願いして。奥まで使ってってはっきり言えたら、してあげる」
「…………奥まで、使って」
 覚悟を見せてと言うつもりで告げれば、暫く待たされた後、躊躇いがちに、それでもはっきりとした声が聞こえてくる。
「良く言えました。じゃあ、奥も慣らして拡げていくよ」
 言いながら、さきほど引き抜いた分をもう一度奥まで押し込んだ。

続きました→

 
 
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