二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった25

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「あんのクソババァ……」
 殆ど口の中だけで小さくつぶやいた後、大きく溜め息を吐き出した。
「親が結婚やら孫やらを期待してんのはわかってるし、それと真っ向から向き合って、結婚しないのを納得させようとはしてこなかったし、これからだって極力向き合うつもりはないけど、俺が結婚しないのはほぼ確だから」
「なんで?」
「親と向き合うつもりがない理由なら、納得させんのが面倒だと思ってるだけだけど。面倒っていうか、理解しないかもと思ってる」
 そこそこ稼いでて、その稼ぎをつぎ込みたいような趣味やらを持っているわけではないのに、嫁や子供に金を使いたくないから結婚しない、なんて理由が理解されるとはとても思えないからだ。
「あ、いや、結婚しないのがほぼ確なのは、なんで、なのかと」
 そっちか。というか彼には散々言ってきたはずなんだけれども。
「その気になる予定が欠片もないからだよ。っつーかケチだからだって何度も言ってる。稼いでようと貯め込んでようと、嫁や子供に使ってやる気がないし、それでもいいとかいう女を探す気もないし、まぁこんな事は起こるはずがないんだが、もし稼ぐ力のある女に種だけくれって言われたってお断りだからだよ」
「子供いらなくて共働き希望の女性でも?」
「ないな。多分、結婚って形で相手に対する責任が生まれるのが、そもそも嫌なんじゃねぇかな」
 共働きの予定でも相手の身に何かあれば助けなければならないだろうし、相手が働けなくなった場合にじゃあ離婚と即捨てられるわけじゃないのもわかっている。しかも結婚してしまったら、相手の親兄弟や親戚とも無関係ではいられないというのも知っている。
 金銭的な負担をこちらに一切かけない、というのが信じられるような相手が見つかるとは思わないし、だいたい相手にだって選ぶ権利がある。稼ぎがいいとか資産があるような女が、自分を選ぶ理由がない。
「子供いらねってなるのも、余計な責任背負いたくねぇのかも。まぁ、金使いたくないってのが大前提ではあるけど」
「余計な責任……」
「それより。俺が結婚しないのほぼ確なら、お前が俺の年齢気にして恋人になれないって言い張ってんのは撤回されんのか、てのが知りたいんだけど?」
「それは……」
「まだ何か無理な理由、あんの?」
「無理っていうか、俺を恋人にするメリットがわからない、です。俺を恋人にするのも、そこそこ余計な責任発生しませんか?」
「親にバレたらめちゃくちゃ面倒だな、とは思ってるけど、そこはバレないって前提にすれば、メリットはそこそこあるぞ」
「どんな?」
「まずお前を恋人扱いできる」
「いやそれ、俺が嬉しいだけで、あなたのメリットではないですよね?」
「いやお前マジに色々面倒くさいから、好きなのは勝手に理想化した過去の俺で、とか気にしなくていいし、好きだからただそばに居たいんです、みたいなのもまぁ、恋人ならギリ許容できそうな気がするし、期待するから優しくするなとか言ってビービー泣くのも、期待していいぞって言って気にせず甘やかしていい方が楽だし」
「ちょっ、待って下さい。それってメリットなんですか? てかなんでそんな俺を甘やかそうとしてんですか?」
 お前が面倒くさいから、なんて言ったせいなのはわかっているが、どことなく嫌そうに吐き出されてくる声は不審げだ。
「理想の恋人イメージがとか言ってるお前抱くより、俺が好きで俺の恋人になったお前抱くほうが絶対楽しいから、間違いなくメリットだろ。てかお前があんまり俺を好きすぎるから、間違いなく絆されてんだけど、いい加減諦めて甘やかされてくんない?」
 クシャッと顔を歪めるから、ああまた泣かせてしまったと思いながら、また胸元へ顔を押し付けられる前にその顎を取って唇を塞ぎに行った。

続きました→

 
 
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