あれはどう考えたってこちらが悪い。酔い潰して、意識がない体を弄って拡げて、力の差をチラつかせて、乱暴にされたくないだろと脅して、そうやってもぎ取っただけの合意だった。
「何が自業自得なんだよ。あれはどう考えたって俺が悪かっただろ」
「あーじゃあ、因果応報、とか、かも」
「いやそれも大差ないつーか、なんで、自分が悪かった、みたいなこと言うわけ?」
「それは、だって、先にお前を女扱いしたのこっちだし。散々お世話になっといて、他に女出来るからお前はもう用済みなって言ったみたいになったのも事実だし。お前が怒るのも当然だなって思ったし。俺には雄っぱいないから穴で返せってのも、まぁ、お前みたいな立派な胸ないの事実だしな」
聞きながら、そういえばそんなようなことを言ったような気がする、というのを思い出す。
胸デカイ女と付き合えそうだからお前はもう用済みだ、なんて言われたら面白くはないと言って、金が欲しいわけじゃないから今までの報酬を体で払えとも言ったんだった。
「つまり、お前が言ったことに何一つ反論できる要素がなかったんだから、お前を責めようがないだろ。確かに取った手段は褒められたもんじゃなかったけど、それだって、あの時お前が動かなかったら翌日には彼女出来てたかも知れないんだし、あのタイミングであの方法しかなかった、てのもわかる気がするから、その件を責めようとも思ってない」
確かに言ったし、兄の言葉の意味が飲み込めなかったわけじゃない。だけど。
「あ、のさ……」
口の中が乾いて嫌な感じがする。
「嫌がらせなんて言って悪かった、彼女できそうで焦っただけ、てので、俺の中では、それ言ったこと、ナシになってた……ん、だけ、ど」
そうだ。自分の中では、それで終わったことになっていた。そうやって脅して、抱かれることを受け入れさせたのに、簡単な謝罪一つで帳消しになんてなるわけがないと、こうして兄自身から突きつけられるまで思い至らなかった。
「あの、だから、あんなのただの言いがかりというか、あの時は、あんたが諦めて抱かれる気になってくれるならなんだって良かったというか、その、酷いこと言って、本当に、ごめん」
「いや別に、怒ってないって。納得してるからお前を責める気はないって話なのに、なんで謝ってくるんだよ」
「だって、辛うじて女の代わりができるお気に入りのオモチャ、ってやつ、俺がそれ言ったからじゃないの? 胸弄られるのめちゃくちゃ嫌がるのも、もしかして、兄貴のない胸揉んだって楽しくないって、あの時俺が言ったからだったりするんじゃないの?」
人の胸は揉みまくるくせにと不満に思っていたけれど、もしそれが事実なら、それこそ自業自得だ。
「だって実際、無い胸なんか揉んでもお前は楽しくないだろ? でも俺はお前に弄られたら、多分、胸だって感じるようになっちゃうからさ。そしたら余計惨めになるのわかってるし、そりゃ、嫌がるに決まってるだろ。本気で嫌がれば、お前、そこまでしつこくしてこないし」
「うん、だから、本当に、ゴメン。ごめんなさい」
ずっと逃がすものかとでも言うように掴んだままだった兄の腕から手を離し、転がる兄の傍らに正座し、シーツに額を擦り付ける勢いで深々と頭を下げた。
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