別れた男の弟が気になって仕方がない29

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 あなたって勘違いな思い込み激しいですよねと、やはり呆れた口調の指摘に反論出来ない。
「前に、兄の本命が俺だと思ってた、とも言ってましたし」
「言ったね。あの時も、今も、色々勘違いしてゴメンな」
 彼ら兄弟は揃って本命に関する情報を隠蔽するから、仕方がない部分だってあると思うのだけど、さすがにお前たちのせいだとは言えそうにない。そういうのは無遠慮に踏み込んでいい部分ではないと思っているし、自分から話さない事に関してはこちらからは触れずに居たほうがいいという判断も、結局は自分自身の選択だ。
「別に謝られたいわけじゃないですけど……」
 あの時も、過ぎたことだし目的は果たしたから別にいいと言っていたっけ。でも、どう見たって「けど」の続きがありそうだ。
「けど、何?」
「損な性分だな、と思って」
「はぃ?」
「性分というか、それが性癖?」
 なんか大変そうと続いた言葉に、思わず待ったをかける。
「ちょっと待って。なんか俺、今、お前に同情されてる?」
 しょうもない性癖持ちな自覚はあるが、二桁近く年下の子供に同情される謂れはないはずだ。
「別に、かわいそうとは思ってないですけど……」
「けど、何?」
「お人好し過ぎて、不安になる」
「それ、お前が不安に思うようなこと? 俺をお人好しだって言うなら、そこにつけ込んでくれていいんだけど」
「兄には見事に付け込まれたみたいですけど、でも結局兄もあなたに振られてるわけですし」
「おい待て。それは聞き捨てならない」
 誰のせいで別れることになったと思ってると言ったら、あっさり俺ですねと返ってくるから、なんだか微妙に会話が噛み合ってなくてモヤモヤする。
「話戻そう。俺がお人好しだと、何が、不安?」
 できるだけ明確にとも付け加えておく。なんせ勘違いと思い込みが激しいと指摘されたばかりだし。
「それは……変な思い込みと勘違いで、俺のためにとか言って、簡単に手を放してくれそうな所が。ですかね」
 明確にと言ったのに、それでもやはりイマイチ意味がわからず首を傾げてしまえば、なぜか拗ねた様子で、口が少しばかり突き出された。
「恋人になれって、あなたが言ったんでしょう」
「え? あ? ああ、そっか。恋人になった場合の不安、って意味……か?」
「そうですけど」
「はは。嬉しい」
「恋人になるなんて言ってませんよ。まだ」
「でもちゃんと、そうなる可能性を考えてくれてる。その不安を拭えたら、恋人になってくれるの?」
 期待を込めて聞いたのに、でも無理ですよねとバッサリ切って捨てられてしまう。
「酷いな。チャンスもくれない気?」
「性分やら性癖やらを簡単にどうこうできるなんて思ってないって話ですよ」
「じゃあどうすればいいの。どうしたらお前は俺と恋人として付き合ってみてもいいって言ってくれるの」
「幾つか聞いていいですか?」
「どうぞ。なんでも聞いてってさっきも言ったし」
「俺の好きに同じ好きを返せる気がしたって言ってましたけど、それ、恋愛感情なんですか? こんな年下の思いっきり子供扱いしてた相手に? 保護者的感情で、それこそ俺への同情がそう錯覚させてるとかじゃないんですか?」
「あー……」
 発した声は自分でもわかる程に落胆が滲んでいた。そもそもこちらの好きが信用ならないと、そう突きつけられているも同然だ。
 好きが信じられないって話かと聞けば、躊躇いがちではあったがはっきりと頷かれてしまう。
「じゃあ、もう一回セックスしてみる?」
「なんでそうなるんですか」
「お前が俺を好き、俺もお前を好き。って前提でやったら、さっきとは違うものが見つかるかもよ?」
 さっきの今なら比較もしやすいだろと言えば、嫌そうに眉を寄せただけではなく、嫌ですと冷たく言い放たれた。
「なんで?」
「き、もちよく、なった、ら頭、回んないし」
「頭で理解するんじゃなくて、俺の好きをそのまま感じてって話だけど」
「だとしても、です。あなたの本気とか、嘘とか、見分けつくわけない、し。絶対流されるだけ」
 やってる最中に恋人になれって言われたら、それだけで頷きそうで嫌だなんて、色々と可愛すぎてどうしてくれよう。
「そんなこと言われたら、逆にやるしかないなって気になるだろ。むしろそれ、最中に恋人になれって言ってくれってお願いなの?」
「違いますよっ。というかしませんよ、あなた」
「なんで言い切るかな」
「だって俺が嫌だって言ってるから」
 好きは信じないのに、そういう部分だけしっかり信頼されていることに、ズルいなぁと思いながら苦笑した。

続きました→

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない28

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 探るような視線に諦めのため息を小さく吐きだし、それから口を開く。
「お前の兄貴とのことだし、あんま言いたくないというか、どこまで話していいかもわかんないんだけど、要は俺の性癖の話なんだよね」
「せい、へき……?」
「そう。性癖。初めて会った時言ったろ。あいつが本当に好きなのは俺じゃないってわかってても、俺たちはそれなりに上手く付き合えてるって。それ、俺の性癖のせいなんだよ。あいつは俺の性癖を知ってて、だから俺を恋人に選んだの」
「それは、どんな……」
 当然そこは聞かれるよなと思いながら、叶わない恋をして苦しんでる子が可愛くて仕方なくて、つい慰めてやりたくなる性癖だと答えた。相手はその言葉の意味を飲み込むためか、眉間に僅かな力を込めながら黙り込んでしまう。
「つまり、あなたに対して叶わない恋をしてる俺を可愛いとか言ってるんですか? それを慰めたいから恋人になってやる、って話、ですか? 俺に、あなたへの片想いを続けながら恋人として側にいろって言ってます? 意味分かんないんですけど。もしそうしたら兄にしてたみたいに、目一杯甘やかし続けてやるって事なら、お断りです。絶対イヤだ」
 やがてそんな答えを導き出したらしい相手の気色ばんだ言葉に、思わず首を傾げてしまった。
「あれ? なんでそうなる。というかそんな理由で恋人になりたがるとか支離滅裂すぎだろ。あと、自分と兄貴とを重ねて考えるなって」
 自分相手に叶わない恋をさせたまま、恋人として付き合おうとか、それは一体どんな鬼畜の所業だ。
「だってそう聞こえたんですよ。違うんですか」
「違うよ。えーと、つまり、俺はそんな性癖持ちだから、可愛い抱きたいって思う子は誰かに片想いしてる場合が多くて、その片想い相手が自分だったって経験はなかったというか、俺を好きって思いながらそれ言い出せなくて泣いてるような子抱くのは、実のところ初めてだったわけ。付き合わないかって言ったのは、そんなお前とこれっきりなのが残念すぎるから。お前の好きに、俺も同じ好きで応えられると思ったから。だよ」
「両想いになったら、叶わない恋で苦しんでる可愛い子じゃなくなりますけど」
「そうだね。正直、お前と付き合った場合、今後俺の性癖がどう作用するかはわからない」
 自分の性癖に関してはかなり早い時期から自覚があったので、過去に恋人としてそれなりの期間付きあった相手の殆どは、セックスに於ける志向や嗜好が近いこと、人間性に好感が持てることなどを意識していて、信頼できる安全なセックスパートナーとしての面が強かった。
 彼の兄だってそうだ。遊び慣れた相手だったからこちらもそれなりに警戒したし、セックスパートナーとして信頼に足るかどうかの証明はして貰っていた。他の恋人たちに比べたら性癖に合致した分の情が強く湧いたけれど、結局相手は恋愛感情をこちらに向けては来なかったから、相思相愛的な恋愛に関しては自分だってなかなかの初心者と言える気がする。
 そしてそれを意識したら、ますますこの子を逃がせないと思ってしまった。
「だってもしお前が俺の恋人になってくれたらだけど、両想いの恋人って、俺にとっても初めてだよ?」
 ビックリした顔をするから、本当だよとダメ押ししておく。少しでも相手の気持ちが揺さぶれたらいい。
「ねぇ、俺の恋人になって?」
 さすがに今度は、絶対イヤですと即答されることはなかった。でもハイもわかりましたも返らないし、頷かれることもない。
 彼の中で引っかかっていることはなんだろう。それらをどうにかして引き出し、ひとつずつ潰して納得させていくしかないんだろう。もしくは、もう一度抱いてみるのもありだろうか。
 ちゃんと彼の想いを受け止めるつもりのセックスをしたら、さっきとは違う顔を見せるかもしれない。けれどそんなセックスを持ちかけるなら、彼を頷かせた後、はっきり恋人という関係になってからの方がいい気もする。
「あの、……」
 グルグルと考えるなか、おずおずと相手が口を開いた。何か聞きたいことがありそうだ。
「うん、何。この際だからもうなんでも聞いて」
 そして全てに納得できたら、どうか恋人になると言って欲しい。
「あなたを好きになるはずがないって思いながら、あれだけ可愛いって言いまくって抱いてくれたのは、最初っから、俺が誰かに片思いしてるとは思ってたからですか?」
「あー……それ、ね」
 正直に思っていたと告げたら、更にその相手が誰かを追求されてしまった。
「それはまぁ、その、お前の師匠だって言う、例の幼馴染を、お前も好きだったんだろうって思ってた」
 言えばやっぱりという顔をされて、どうやら呆れられたようだった。

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別れた男の弟が気になって仕方がない27

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 辛い恋を抱えている子が可愛くて、つい慰めるような真似をしたくなる性癖のせいで、おかしな噂が立ってしまった事がある。
 曰く、抱いて貰うと恋が叶う、らしい。
 たまたま、自分と寝た後で本命とうまく行った相手が数人続いてしまったせいだ。
 もう随分と前になるけれど、特定のパートナーを持たず、頻繁に、続かない相手とわかっていても関係を持っていた時期がある。若かったから持て余し気味の性欲があったし、抱かれる側はやらないし、それなりに大柄なので二人きりの空間で自分相手にむりやり何かが出来る相手なんてそう居ない。という部分で、自分さえしっかり気をつければ大丈夫だと思っていたのだ。
 実際、性病やらの面で被害を被ったことはない。ただ、噂に気付いたら色々と虚しくなってしまった。
 やたらと誘われることが多くなって、最初はモテ期が来たくらいの感覚で喜んでいたのだけれど、積極的に誘ってくるような相手は大概おかしな噂に踊らされて関係を持ちたがっているだけだった。
 それに気付いてしまってからは、さすがにほいほいと誘いに乗る気にはなれなくなったし、なるべく恋人を持つようにもなった。噂はただの噂でしかないと言っても引き下がらない相手も居たから、恋人がいて浮気をする気は一切ないというスタンスを貫くほうが楽だった。
 辛い恋を抱えている子を一時的にでも甘やかしてやりたい性癖があったって、自分を想っていない相手でなければ勃たないだとかの致命的なものではないし、パートナーを持って何度となく繰り返すセックスも悪くない。ただし、そこそこ長く続いて惰性やらが出てくるとうまく行かなくなることも多くなって、そうなってくると元から持つ性癖はそれなりに重要にもなってくるようだった。
 彼の兄とは、恋人と別れた後そこそこの頻度で馴染みの店に足を運んでいた時に、その店の中で声を掛けられ知り合ったのだが、相手は最初から自分を探して訪れていた。さすがに噂も消え去って久しいはずなのに、どこから聞きつけてきたのやら。
 もちろんすぐさま噂を否定して、抱く気はないと追い払った。なのに相手はしつこくて、しかも浮気はしないが通用しないフリーの時期で、なんだかんだあって結局こちらが折れて抱いてしまった。噂に縋ってどうしても、という相手に絆されたわけではない。最初にいささか邪険に追い払ったせいで、相手に何が何でも抱かせてやると思わせてしまったのが多分一番の敗因だ。
 そして一度抱いたら今度は恋人にしろと言い出して、結局それにもこちらが折れて付き合うことになった。とは言っても、しつこく食い下がられて仕方なくというのではなく、これは相手の言い分に納得できたからでもある。
 それは叶える気のない想いを抱き続ける相手をパートナーにして、思う存分甘やかしたらいいという、聞き様によっては随分と放漫でデタラメな理論だった。けれどこちらの性癖を理解した上での提案には違いない。
 叶える気もない恋を抱えて、体だけを満たしてくれる相手と一時的な快楽に耽るような、リスクの高い行為を繰り返していた相手にとっても、安心して甘えていい特定のパートナーが出来るのは魅力的だったのだというのもわかっている。というよりもそういう事を話し合った上で、自分たちは恋人になった。
 実際、恋人関係はかなり順調だったと思う。他に特別に想う相手が居るものの、恋人として誠実に向き合おうとする意思はあったし、一番ではなかっただけで二番目の特別にはなれていた。恋人として付き合った相手の中で、間違いなく一番、愛しいという想いが湧き続ける相手だった。
 もしも自分にそんなおかしな力があるなら、噂通り彼の恋が叶えばいいと思うこともあったし、いつか特別に想う相手よりも恋人である自分の方を好きになって貰えたらいいと考えてしまうこともあった。
 叶うことなんて絶対にないと言い切られていたから、まさか本当に、彼の想い人が彼に振り向くことになるとは思っていなかったけれど。
 そんな彼の兄とのあれこれを思い出しながら、さてどうしようかと思う。絶対に知らないだろうあんな噂を、わざわざ自分から知らせる気もないし、しょうもない自分の性癖だって出来れば口にしたくなかった。けれど付き合わないかと誘った相手に対して、自覚のある性癖を隠したままというのも悪いだろうか。

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別れた男の弟が気になって仕方がない26

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 見つめ合う相手の、潤んだ瞳がゆらゆらと揺れている。赤く腫れた目元がなんとも痛々しくて、指を伸ばすか唇を押し当てるかして慰撫したい衝動を堪えるのが大変だ。今は彼の言葉を待っているのに。
 身の内に湧く衝動に困ったなと思いながらもなんとか耐え続ければ、やがて相手も困ったようにそっと目を伏せたかと思うと、わずかに開いていた隙間を詰めるように身を寄せてくるから驚いた。甘えるみたいに胸元に顔を押し付けられて、さすがに黙っていられない。
「どう、したの?」
 驚きと動揺とを隠しきれず、随分と上擦った声を発してしまった。
「ぎゅって、して、下さい」
 甘えるみたいではなく、本当に甘えられているのだろうか。混乱しながらも、望まれた通り腕に力を込めてやる。
「これでいい?」
 腕の中で小さく頷いた後、相手は一つ息を吐く。素肌の胸に掛かる息は熱かった。
「なんでそんなに俺を甘やかすんですか?」
 自分で擦り寄ってきて、ぎゅってしてなんて可愛いことを言ってきたくせに、こっちこそ、なんでそんなことを聞くのかと聞き返してやりたい。
「甘やかしてやりたいから以外に何かあると思うの?」
「なんでそう思うかを聞いてるんです」
「お前が可愛いから」
「それは俺があの人の弟だから?」
 似てる所があるって言ってましたよねと言われて、なんだか少しガッカリしてしまった。お前の魅力を教えてあげると言って抱いたはずなのに。誰かになろうとしたりせず、お前はお前のままでいいと、そう言ったはずなのに。
「俺に抱かれながら、兄貴の代わりにされてるような気が、ほんの少しでもしてた?」
「いいえ」
「じゃあなんでそんな事聞くの?」
「もし弟じゃなかったら、あなたが俺を気にして、色々構ってくれることなんてなかったと思うから、です。似てるから、兄の後悔を知ってるから、兄みたいな無茶をさせたくなくて、だから俺を抱いてくれたんですよね?」
 なるほどそういう意味か。さすがにこれは否定が出来ない。それに近いことを確かに言ってしまっているし、なにより事実だ。
「でもお前を可愛く思うことと、あいつの事は分けて考えてるつもりだよ。まぁ好みという点で、どうしたって似たタイプを好きになるのはあるだろうけど」
 ついでに言うならと付け加えて、元恋人の弟って所を意識したら逆に抱いたり出来なかったとも教えた。
「あなたが俺を可愛いって言うのは、俺が無謀な子供で、抱いてくれるなら誰でも良いとか言っちゃう危なっかしくて放おって置けないような奴だから、でしょう?」
「まぁそれも一部ではあるけども、それだけであんなに可愛いって言いまくるわけ無いだろ」
「言いますよ。あなた優しい上に、すっかり俺の保護者ですもん。俺の初めてが嫌な記憶にならないように、あなたなりの目一杯で、愛してくれようとしたのは伝わってます」
 ありがとうございましたと言われて、なんと返していいかわからない。
「でもだからこそ、これ以上俺を甘やかそうなんてしなくていいです。約束通り、俺のこぼした好きも、呼んでしまった名前も、忘れて下さい」
 どこか穏やかに言い切った相手に、けれどわかったとは言ってやれなかった。短く嫌だと返せば、相手は少し迷う様子を見せた後、躊躇いがちに口を開く。
「もしかして、兄のことも放って置けなくて、恋人にまでして可愛がってました? だから俺のことも、恋人にしようって、思うんですか?」
 大丈夫ですよと言って、相手は言葉を続ける。
「約束通り、軽率に肉体関係を持つような真似は続けないから、安心して下さい」
「問題はそこじゃない。というか全ッ然違ぇよ。お前の兄貴相手に恋人にならないかと誘った過去なんてない」
「どういう意味ですか?」
「言葉通りだ。俺が口説き落とされた側」
「は?」
 言葉の真意を確かめるためか、胸に埋めていた顔が上がった。

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別れた男の弟が気になって仕方がない25

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 優しくされて、気持ち良くなって、あなたと一緒にイク。って方が、よっぽど酷い真似、ってわかってないから、そういうことが言えるんですよ。
 先程言われたセリフが蘇る。確かにそうだ。全くわかっていなかった。
 いったいどの段階から、相手の想いはこちらへ向かっていたんだろう?
 想う相手が居るようだ、というその想う相手が自分だった可能性に頭を抱えたくなる。兄と好みが嫌になるほど似ているだとか、なれるなら兄になりたいだとか、そんな言葉の端々から、てっきり兄の恋人となった幼馴染が想いの向かう先と思っていた。けれどその相手が兄の恋人だった自分の方だったとしたって、そこまでの違和感がない気がする。
 相手の様子から、継続する関係の結べない相手と思い込んで、最初から一度きりの慰めを渡すつもりで触れていた。嫌がられながら抱く覚悟、結果嫌われてしまう覚悟ばかり決めていて、好きになって貰おうなんて欠片も考えていなかったし、相手がこちらに好意を持っている可能性すら一切考えなかったのだ。
 もし、好きになってという態度を取っていたら、何かが変わっていたのだろうか?
 せめてキスを試してそこまでの拒絶感はないらしいとわかった時に、好きになってくれたら嬉しいと、一言伝えておけば良かった。拙いながらも必死に応じようと頑張ってくれていたのに。そんな相手に自分がかけた言葉といったら、焦る必要はないだとか、応じようと考える必要はないだとか、気持ち悪くないか気持ちよくなれそうかを判断するためのキスだとかだった。相手の好意を受け入れる要素のまるでない態度を見せてしまった。
 ボロボロと溢れだす涙を拭おうと目元に指先を触れさせれば、嫌がるように首を振って、こちらが躊躇ったすきに両腕を持ち上げ、目元を隠すように顔の前でクロスさせる。
「触らないで」
 先程の憤りのある叫びと違って打って変わって、漏れた声は掠れた呟きだった。
「でも俺はお前に触れたいよ。抱きしめて、キスして、好きだって言いたい」
 行き場をなくしていた指先を、隠されていない唇にそっと押し当てる。小さく震える唇を、撫でるように指先を滑らせた。
 指の下、微かに唇が動く。多分ヤメテと言いたかったのだろうそれは、けれど結局、音にはならなかった。
「今から抜くけど、頼むから、逃げるなよ」
 そう声を掛けてから、ゆっくりと腰を引いて彼の中からペニスを引き抜いていく。そうして繋がりを解いてから、まずは好きだよと告げながら軽いキスを一つ落とした。相手は無言で無反応だったが、気にせず隣に側臥し、相手の体へ腕を乗せてそっと力を込めてみる。嫌がる素振りがなかっただけで、今は十分だった。
 暫くそのまま黙って、相手の呼吸に意識を向ける。先程、口でイカせた後と同じだが、散々泣かされて涙が枯れかけているか、それとも泣くことに慣れてしまったのか、しゃくりあげるような様子はなかった。
 それでも相手が落ち着くための時間を十分に置いてから、そっと口を開く。
「お前に嫌われることはあっても、好きになって貰えることはないって思ってた。だから対応を間違えた。お前が俺を好きだと思ってくれるなら、それは本当に、嬉しいんだよ」
 俺と付き合わないかと続けたら、すぐさま絶対に嫌ですとはっきりきっぱり断られて、思わず小さく笑ってしまった。否定であっても言葉が返ってきたのが嬉しかったし、ボロボロと涙を流す姿を見てしまっていたから、多少涙声ではあるものの断固拒否の強気な姿勢になぜかホッとしたのもある。
「もし抱いてくれた相手を好きになれたら、そのまま付き合う気があるって、お前、言ってなかった?」
「あなたは、別」
 そこに嘘はないだろう。自分自身、そう聞いていたのに、それが自分にも当てはまると思ってはいなかった。それは彼のそういった気持ちを、彼の態度や様子から正しく受け取っていたからに他ならない。
「なんで俺だけダメなの」
「十も年上のオッサンが恋人とか嫌です」
 兄の元カレだからと言われるかと思っていたのに、最初に言うのはそれなのか。
「ヒデェな。というかお前、紹介する相手の年齢気にしないって言ったろ。後、十は離れてないから。ギリギリ一桁だから。ついでに言うなら二十八はおにーさんの範囲だから。で、正直なところはどーなの? 兄貴の元カレはダメ? 兄弟ってのをひとまず置いといて、過去の恋人と較べてどうこう言ったりしない程度の誠実さはあるつもりなんだけど」
 言いにくいのかと思って自分から聞いてみた。
「あいつだって、本命とうまく行ってるらしいし、お前が俺と付き合うことにしたからって、文句言ったりしないだろ?」
「そうじゃなくて、だって……」
 言葉を選んでいるのか、迷っているのか、続く言葉はなかなかない。続きを促す代わりに、じっくり考えていいからちゃんと本心を教えてくれと頼めば、ゆっくりと目元を覆う両腕が降ろされ、向き合うように相手も側臥に体勢を変えてきた。

続きました→

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない24

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 散々泣いて真っ赤な目元に、またうっすらと涙が滲んでいく。
「ご、ゴメンっ」
 慌てて目元へ伸ばした手は払われて、顔を見られたくないようでフイと横を向いてしまった。
 その後は懲りずに伸ばす手を嫌がるように、闇雲に腕を振り回してくる。その腕をかい潜って相手に触れようとするが、これがなかなか難しい。無言の攻防は、結局相手が諦めたように腕を下ろすまで続けられた。
 ギュッと目を瞑り、肩を震わせ細く息を吐き出す相手の頭に手を置き、髪を梳くようにそっと撫でる。
「今のは俺が悪かった。ビックリしすぎて、無神経なこと言ったよな」
 もう一度ゴメンと伝えても、相手に反応は殆どなかった。まるで今にも声を上げて泣き出してしまうのを、ギリギリこらえて居るようだ。
「もし、本当に俺を好きだと思ってくれてるなら、嬉しいよ」
 相手は辛そうに震える息を浅く繰り返している。宥めるように、何度も髪を梳いて頭を撫でた。それを嫌がる素振りはなかったものの、だからといって受け入れられているのかはわからない。そのまま泣き出すでもなく、何かを語ることもなく、ただただ辛そうに黙り込むその姿からは、彼が何を考え思っているかはわからなかった。
「お前が俺を好きなら、俺たち両想い、だな」
 両想いだなんて言った所で、喜ぶ反応があるとは思っていない。こちらの気持ちなんて求められていない。なんせ、行為の終了を認識した彼の最初の言葉は、ちゃんと忘れてくれだった。
 それでもここまで言えば、さすがに何かしら反応はあるだろうと思っていた。
 ふざけた事を言うなでも、嬉しいだなんて嘘を吐くなでも、なんだっていい。好きだなんて思っていないと、突っぱねてくれたっていい。
 ヒュッと小さく喉が鳴った。とうとう堪えきれずに泣き出したのだろう。結局、泣かせてばかり居る。
 しかし泣き出したと思ったのは勘違いで、喘ぐような呼吸を数度繰り返した後、思いの外しっかりとした声が聞こえてきた。
「っも、抜いて、下さい」
 終わったんですよねと続いた声は苦しそうに吐き出されてきた割に、熱のない冷たい響きをしている。
 本当に失敗だった。あれは聞かせてはいけない、飲み込むべき言葉だった。
「抜いて落ち着いたら、俺と話、してくれる?」
 熱を吐いた後とはいえ萎えきってはいないし、そんなものが興奮を煽るでなくただただ中にとどまっているのだから、この状態が辛いというのは確かにわかる。こんな状況になければとっくに引き抜いていただろうし、今頃はこちらが先にイッてしまったお詫びも兼ねて、彼のペニスを握って扱いて甘い声を上げさせていたはずだ。
 けれど今、相手の言葉に従い離れてしまったら、この子は間違いなく逃げていく。こちらが忘れるを実行する前に、彼自身が既にもう、口走った名前をなかったことにしようとしている。
「話すことなんて、ない」
 告げられたのは拒否の言葉なのに、内心では良かったと安堵していた。本気で逃げ出すなら、従うふりをするべきだった。頷かれ繋がりを解いてしまった後では、今以上に引き止めるのが難しくなる。
 そういった駆け引きなんて、きっと思いつきもしないのだろう。可哀想にと思う気持ちはあるが、狡くて卑怯な大人な自覚はあるので、当然そこに付け込ませて貰う。
「俺にはあるから、付き合ってって頼んでる」
「俺が、何言っても、忘れてくれる。って言った、くせにっ」
 冷たかった声に熱が帯びた。
「今日この場限りで、だろ。まだ忘れるには早い」
「ヘリクツだっ」
「わかった正直に言う。まさかお前が俺の名前を呼ぶなんて思ってなかったんだよ。忘れてやるって前提がガラッと変わっちまったの」
 言えばずっとこちらの視線を避けるように横を向いていた顔を戻し、はっきりと涙の浮いた瞳でギッと睨みつけてくる。
「だ、からっ、優しくされて、一緒に気持ちよくなろうなんて、ヤだった、のに。忘れてくれない、なら、優しくなんて、されたく、なかった。好きだなんて、言いたく、なかったっ。あなたの、名前、なんてっ、呼びたくなかった」
 憤りの篭った叫びのような言葉を吐き、ギュッと目を閉じる。目の端からボロボロっと大粒の涙がこぼれ落ちた。

続きました→

 
 
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