解禁日 1

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 うっかり惚れて、どうにかこうにか頼み込んで恋人の座をゲットした相手は、かなり真面目な優等生タイプの男だった。校則で不純異性交遊が禁止されているのだから、同性ならばいいなんて話はないと言って、交際開始から高校卒業までのおよそ二年間、手を繋いでキスをするだけの関係に終止した。
 これはきっと、しつこく頼み込んでしまったから仕方無く嫌々付き合ってくれているだけで、高校卒業とともに、スッキリサッパリと捨てられるに違いない。なんて思っていた時期もあるが、それが受け入れられるような生半可な気持ちなら、男相手に告白なんてするわけがない。
 学力差はかなりあったが、偏差値なんて学部学科によりけりな部分もあるし、せめて同じ大学に合格を決めてやると頑張った結果、本当にギリギリだったけれど同じ大学への入学切符を手に入れた。それを相手は、凄いな頑張ったなまだ暫くは同じ学校に通えるなと、泣きそうな笑顔で喜んでくれたから驚いたなんてもんじゃない。それは、自分が思っている以上に相手からも想われているかもしれない事実に、初めて気付いた瞬間でもあった。
 せっかく同じ大学に通えることになったのだから、ぜひルームシェアがしたい。ルームシェアというかむしろ同棲がしたい。
 さすがに同棲という単語は伏せたが、誘ってみたら特に渋られることもなく、親に相談すると返されてその数日後には親の許可が出たと言われた。
 そんなわけで晴れてルームシェアという名の同棲が開始となった三月末、押し倒した相手からセックスは四月以降にと言われて、意味がわからなすぎて混乱した。なんでも、三月中は厳密には高校生だから、らしい。
 おいおいマジかと思いはしたが、ここまで来たら数日くらい我慢してやる。四月になったら覚えてろよと言い捨てて、仕方がないので自室で一人寂しく抜いた。
 そして解禁日の四月初日。
「四月になったんだからヤラせて」
 朝食を終えた直後に、そのままストレートに口にしたら、相手はおかしそうに笑って良いよと言った。
「じゃあ、ちょっと準備してくるから、待ってて」
「準備って?」
 シャワー浴びたいとかなら、どうせグチョグチョになるんだからそんなの後でいいだろって言うつもり満々で聞いたら、平然と中洗って拡げてくると返されて顎がはずれるかと思った。
「えっ?」
「何そんな驚いてんの。男同士でするって、要するにお尻の穴使うってことだろ? 準備もなしに入るわけ無い」
「や、それは、そう、だけど……えっ?」
「だからその、えっ、って何? まさか抱かれたい側だった?」
 抱きたいのかと思ってたんだけどと続いた言葉に慌てて、「抱きたいです」となぜか丁寧語で返してしまう。
「じゃ問題ないよね?」
「いやいやいやあるから。問題なくないから。てか準備が必要なのはもちろん俺だってわかってるけど、中洗ったり拡げたりなんて言うほど簡単じゃないだろ」
「ああ、大丈夫。練習したから」
「はぁああああ?」
 思わず上がってしまった大声に、相手もかなり驚いている。
「練習って……えっ、何、お前、一人でそんな事やってたの?」
「一人でって、そんなの当たり前だろ。お前とセックスするための準備なのに、お前に手伝えとでも言えばよかったの?」
「あーうん、そう。それ。言って欲しかった、かも」
「何言ってんだお前」
「いやだってお前、お前の初めての体をじっくり優しく慣らしてやるっていう脳内シミュレーションを、俺がどんだけ重ねてきたと思ってんの!?」
 これもう明らかな逆ギレだなと思いながらも、言わずには居られなかった。相手は呆気にとられた顔をした後、じわじわと頬を染めて、それからなぜかおかしそうに笑い出す。
「ああ、うん、ゴメン。確かに一人で先走ってたかも。でもさ、これ言い訳かもだけど、四月になってからお前と一緒に慣らすんじゃ待ちきれないって思っただけだよ。俺だって、早くお前に抱かれたいって思ってんだから。それにお前だって、やっと抱けるって思ってから更に何日も我慢できる? 指で弄るだけで挿れないまま終わりに出来る? 無理だろ?」
 色々と衝撃な言葉が詰まっていて、すぐには言葉が出なかった。
「あの、お前も、俺に、抱かれたいって思って、た?」
「思ってなかったら練習なんてしてないってば。というかそもそも一緒に住んだりしない」
「そ…っか、うん、そうか。良かっ、た……」
 なんかちょっとあまりにホッとして、思わず泣きそうになる。
「ちょっ……ああ、もう、ごめんって。抱かれたい気持ちがあるって言っちゃったら、お前絶対引きそうにないって思ったし、俺だって流されて許しちゃうだろうって思ってたんだよ。高校卒業するまではしないなんて、妙なことこだわってて悪いとは思ってたって」
「ん、いい。だって俺、お前のそういうとこも、凄く、好きだし」
 言ったら相手もホッとした様子で、俺もお前が凄く好きだよと、柔らかな声を吐き出した。

続きました→

 
 
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2回目こそは

 大学付属の私立高で出会ったそいつとは、高校と大学の7年間、なんだかんだつるんで一緒に居ることがかなり多かった。さすがに就職先は別で、ものすごく遠くはないものの仕事帰りにちょっと誘えるような近さではない距離に離れて、あまりの喪失感にようやく自分の気持に気付いた。
 気付いたばかりで動揺の酷い中、相手から近くまで行く用事ができたから飲もうと誘いが掛かって、結果、アルコールの力を借りて勢いで告白した。驚いたことに両想いだった。
 そしてそのままの勢いでヤッてしまったが、さすがにそれは失敗だった。無知は罪だ。しばらくケツ穴が痛くて泣いた。
 でもその程度で気持ちが変わることはなく、距離はあっても月に一度か二度は時間を作って会うようになったし、旅行の計画なども立てた。初回の失敗が尾を引いて、突っ込むようなセックスはないものの、手で抜きあうような事は何度かしていた。
 そんな関係が一年弱続いた頃、相手に後ろを弄りたいと言われた。どうしても無理なら自分を開発するから、そしたらお前は俺を抱けるか? とも聞かれた。要するに、お前と繋がるセックスがしたいと言われて、後ろを弄る許可を与えた。彼を抱けないことはないけれど、どちらかと言えば抱かれたい。だってあれはあれで、痛かった以外は結構良い思い出になっていたのだ。
 そんなわけで今現在、たっぷりのローションと共に、彼の指がその場所を拓こうとしている。
「ァッ……んっ……も、そろそろ……」
「まだ、だ」
 彼自身、初回がトラウマ気味なのか、結構拡がったと思うのになかなか挿れてはくれない。痛みはほぼないし、多分もう大丈夫だと思うのに。
 ハフハフと喘ぎながら、若干疲れて目を閉じた。中に入っているのは指だけど、彼のペニスが出入りするイメージを重ねて見る。というよりは、以前抱かれた時の事を重ねた。
 多少酔ってはいたが、何度も繰り返し思い出していたのもあって、容易に思い出せる。好きだと繰り返されながら、激しく熱を穿たれ求められ、体は痛いのにそれでも胸の中はトロトロの幸せに満ちていた。
 早くあの時みたいに、たくさんの好きと一緒に激しく突かれたいなと思う。いやでも、今指が出入りしてるくらいのスピードで、時間を掛けてゆっくり捏ねられながら、好きって言われてキスされるのも多分きっとたまらなく幸せだ。
「ぁっ、…あっ、ぁんっ……!?」
 零す自分の声が甘ったるく響いてしまい、慌てて目を開け両手で口を覆う。妄想で善がるなんてさすがに恥ずかしい。
「なんで口隠すんだよ。いい声、聞かせてくんねーの?」
「だっ、って……」
 手の中に吐き出す声はくぐもっていて、相手にははっきり届かなかったかもしれない。
「お前のいい声、聞きたい」
 じゃあ早く突っ込んで、あの時みたいに好き好き言って。なんて言えたら良いのかもしれないけれど、手で口を覆ったまま首を横に振るのが精一杯だった。
「まぁ、声我慢してるのも、可愛いっちゃ可愛いけどさ」
 可愛いなんて言われて、体の熱が上がっていく気がする。
 一度想像したらそう簡単にリセットは出来ず、目を閉じなくても、好きだ好きだと繰り返す相手の声が頭のなかを回っている上、そんな追撃をされたらたまらない。手で口を覆っていても、零す息の甘さも熱さも到底隠し切れない。
「ふぅっ、んんっ、ん、んんっ」
「そろそろ、いいか?」
 ようやくかと思いながら必死で頷けば、やっと指が引きぬかれていく。足を開かれ熱い塊が押し付けられて、期待がゾクリと背筋を走った。

 
 
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憧れを拗らせた後輩にキスを迫られたので2(終)

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 気持ち悪いですよねと続いた言葉に、そんな事ないとは返せなかった。目の前の相手に恋愛感情を抱かれていることが、気持ちが悪かったわけではない。むしろそう言われて、確実に心臓は喜びで跳ねたのだ。
 けれどそれを認めてしまうのは怖かった。相手は全くと言っていいほど知らない後輩で、しかも男なのに、この教室から投げかけられた視線だけで、あっさり告白が嬉しいレベルで意識しているなんて。
 なんと返せば良いのかわからないまま黙り込んでしまえば、相手はこちらの視線から逃れるように、立ったままのこちらを見上げるように上向けていた顔を少し下げた。
「すみません。もう、貴方を追いかけるのは止めます。だから、あの、気持ち悪いのは承知で、お願いします。最後に一度だけ、キス、して貰えませんか?」
 唐突な内容のお願いに、またしても反応ができない。頭が下がって俯いて、フッと小さな溜息を吐かれて、なぜか酷く動揺した。
「おかしな事言って、本当に、すみません。今の言葉も、俺のことも、どうか忘れて下さい」
 机の脇に掛かっていた鞄を手に立ち上がった相手は、やはり俯いたまま、帰るので失礼しますと言って歩き出す。脇を通り抜けようとする。
 とっさに腕を掴んで引き寄せて、その勢いのまま相手の顎を捉えて唇を重ねた。
 もちろん触れたのは一瞬で、すぐに顔を離したけれど、今度は相手が驚きの顔のまま硬直している。心臓が痛いほどに跳ねていて、その顔を見ていられない。なのに、触れた唇が熱くて、もう一度触れたい欲求が湧いていた。
 その欲求に抗えず、もう一度その唇を奪ってから、相手の体を抱きしめる。抱きしめてしまえば、相手の顔を見ずに済むから。などというのはやはり言い訳で、それも結局は自分自身の、相手に触れたい欲求なんだろう。
 しかし、咄嗟に動いてしまったものの、この後どうすれば良いのかわからない。抱き合うまま互いに動けず、口を開くことも出来ず、ただ闇雲に時間だけが過ぎていく。
「あの……」
 やがて、腕の中から小さな声が聞こえてきた。
「ご、ゴメン」
「あ、いえ……」
 思わず謝ってしまったが、結局また沈黙が降りてしまう。もちろん抱きしめる腕はそのままで、体もくっついたままだった。
「期待、しますよ?」
 どうしようどうしようとグルグル巡る思考の中、再度腕の中から小さな声が聞こえてくる。
「俺に期待されても、いいんですか?」
 それは多分、腕を離して開放しろという意味なんだろう。けれどここで離してしまったら、彼に諦められてしまう。追いかけるのを止められてしまう。
 なんで視線一つでここまで相手を意識して受け入れてしまうのかなんてわからないけれど、元々考えるということが苦手な筋肉脳なので、答えの出ない問題に悩むくらいなら、自分の感覚を信じて突き進んでしまえと思った。
「う、うん。……いい、よ」
 覚悟を決めて頷けば、彼の腕がそっと背中に回されるのがわかった。

有坂レイさんにオススメのキス題。シチュ:教室、表情:「無表情(or驚いた顔)」、ポイント:「抱き締める」、「相手にキスを迫られている姿」です。 shindanmaker.com/19329

 
 
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憧れを拗らせた後輩にキスを迫られたので1

 放課後のグラウンドから見上げるとある教室。ここ最近、同じ顔が毎日のようにグラウンドを見下ろしていた。教室の位置から考えて、相手は下級生らしい。
 誰を見ているんだろう。
 結構な頻度で目が合う気がするから、もしかして自分を見ているんだろうか?
 さすがに自意識過剰かとも思ったがどうにも気になる。しかも、こちらがあまりに気にするせいで、部活仲間にもあっさりバレてしまった。
 毎日のようにうちの部を見ている奴がいて気になると言ってごまかしたせいか、ちょっとお前勧誘してこいなどという話になり、翌日は部活に直行せずその教室を訪ねてみた。
 教室の扉をガラッと開けたら、中は既に彼一人で、振り向いた相手が驚きに目を瞠る。
「あれ?」
 声を上げたのは自分だ。グラウンドからの距離では気付かなかったが、知っている顔な気がした。しかしどこで会っていたのかは思い出せない。
「あー……あのさ、ちょっと、いいか」
 黙って見つめ合う空間に耐えられなくなったのも自分が先で、取り敢えず勧誘だけはしておくかと声をかけた。
 頷くのを待って、彼が座る窓際の席まで近づいていく。
「あのさ、うちの部、気になるならこんなとこからじゃなくて、もっと近くで見ないか? それでもし興味湧いたら、ちょっと時期外れたけど、今から入部でも俺たち歓迎するしさ」
 相手は少し困ったように軽く俯いて考えこんでしまう。
「あーいや、無理に、とは言わないけど」
「スミマセン……」
「や、謝らなくていいって」
 顔を上げた相手は申し訳無さそうに苦笑していた。
「あの俺、足、ダメなんですよね。怪我で、走れなくて……」
「あー…ああー、ゴメン。そっか、うん、本当ゴメン」
「謝らないで下さい。未練だってのはわかってて、でも、つい、見るの、止めれなくて」
 気にさせてすみませんとまた謝られて、いやいやいやこっちこそ意識しすぎてゴメンと、謝罪合戦を繰り広げたのち、おかしくなって二人一緒に笑ってしまった。
「あのさ、も一個気になる事あるんだけど、ついでに聞いていいかな」
 笑いの衝動が収まってからそう切り出せば、どうぞと落ち着いた声が返される。
「俺たち、どっかで、会ってない?」
「ああ、会ってますよ」
 あっさり肯定が返って驚いた。
「え、どこで?」
「小学生の頃、試合で。その頃は俺の足もまだ大丈夫だったから」
「あ、経験者?」
「だから未練なんですって」
 やっぱり相手は苦笑顔だ。
「あー……」
「それにしても、良く、気づきましたね」
「なんとなく? でもお前は気付いてて、俺を、見てた?」
「はい」
 またしてもあっさり肯定が返ってきたが、今度は驚くというよりもどこか安堵に近い気持ちが湧いた。
「あ、やっぱ俺を見てたんだ。しょっちゅう視線合う気がしたし、熱い視線にもしかして惚れられてる? とまで思ってさ、自意識過剰過ぎだろ俺、とか思ってたわ」
 笑って流しておしまいにするつもりが、思いの外真剣な相手の目とぶち当たってしまって、笑いかけて開いた口を思わず閉じてしまう。
「それ、自意識過剰でも何でもなく、事実ですよ、って言ったら、どうします?」
「えっ?」
「ちょっと憧れの人でもあったんで、俺が覚えてるのは当然なんですよね。というか、この学校受験したのも、半分以上はもう一度貴方に会いたかったからですし」
 憧れ拗らせてなんか恋愛感情っぽくなっちゃって、俺も困ってるんですよと苦笑する顔は、なぜかもう見慣れたものになってしまった。

続きました→

有坂レイさんにオススメのキス題。シチュ:教室、表情:「無表情(or驚いた顔)」、ポイント:「抱き締める」、「相手にキスを迫られている姿」です。 shindanmaker.com/19329

 
 
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エイプリルフールの攻防4(終)

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 どんな覚悟を決めてきたのか、深刻な顔で玄関前に立つ相手を迎え入れたら、靴を脱いだ矢先に土下座が始まり唖然とする。
 慌てて立ち上がらせて、たくさん好きって言いながら優しく抱いてくれたらそれでいいよと言ったら、相手は随分と呆気にとられた顔をした。追撃で、泣いた分いっぱい優しくされたいと言えば、グッと体を引かれて抱き締められる。
「ごめん。本当に、お前のこと、ずっと好きだった。なのに泣かせてごめん。甘ったれたことばっかしてて、本当にごめん」
 繰り返されるゴメンの言葉を聞きながら、背中に腕を回して、その背をポンポンと軽く叩いてやった。
「も、いいから。それより早く、お前としたい」
 昨日から待たされてるんだからと言ったら、抱きしめる腕を解いた相手が、困惑を混ぜながらも何かを探るような顔で見つめてくる。
「何?」
「本気で、俺に抱かれる気でいるのか?」
「俺のこと、抱けそうにない?」
「そんなこと言ってないだろ。だってお前、去年俺にイかされて泣いたし、その、受け入れる側をするっていうのは、かなり体にも負担が掛かると思うし」
「昨日も言ったけど、今年、お前に抱かれておしまいにするつもりだったから、結構前から体は慣らしてる。だから多分、体は平気」
 慣らしてたという部分で、相手はまた随分と驚いているようだった。さすがに少し恥ずかしいなと思いながらも、相手の驚きを無視して続ける。
「もしお前が頷いて抱いてくれたとしても、それは俺ばっかり好きなセックスできっと辛いんだろうなって思ってたから、ちゃんと両想いで、好きって言われながらするセックスになるかもって思ったら、正直、早く早くって急かす気持ちばっかり強くなってる」
 正直な気持ちを告げて、お前が俺を好きだったって言ってくれたの本当に嬉しいと言いながら、驚いた顔のまま固まる相手へ自ら口付けた。そしてもちろん、自分から深いキスを仕掛けていく。
 すぐに応じてくる相手と舌を絡ませあっていたら、ふいに体が少し浮いて、慌てて口を離した。
「えっ、ちょっ…」
「ベッドまで運ぶだけだ」
「え、この状態で?」
「なら横抱きで運ぶか?」
 イエスもノーも返さないうちにさっさと姫抱きされて、照れるより先にあわあわと慌てているうちに、あっさりベッドの上におろされる。狭いアパートなので、運ばれる距離はめちゃくちゃ短かった。
「好きだ」
「俺も、好き」
 見下ろす真剣な顔にニコリと笑いかけて、早く来てという想いを乗せながら腕を伸ばす。
「お前が、好きだよ」
 唇が触れる直前、もう一度柔らかに囁かれた。きっと本気で、たくさんの好きと優しさを示しながら、抱いてくれる気で居るのだろう。
 胸の中に甘い何かが流れ込んできて、幸せだなと思った。

 
 
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エイプリルフールの攻防3

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 彼の住まいとは片道三時間以上の距離があるとわかっていながら、一度帰って出直すという彼を引き止めることはしなかった。
 引き止めたところで、どう接していいのかわからないというのももちろんある。でも一番はやはり、彼の言葉を信じたい気持ちとともに、またエイプリルフールだと言って手のひら返されるのを恐れる気持ちがあったからだ。もし彼の言葉がまたしてもエイプリルフールの嘘なら、明日彼が来ないというだけで済む。彼の前に、これ以上傷つく姿を晒さなくて済む。
 もちろん、自分だけの片想いじゃないのかもという期待と、全ての本当とやらに対する不安もあった。
 それらを抱えながら気がかりで憂鬱な時間を過ごし、だったらさっさと眠って明日にしてしまえと部屋の明かりを落として布団に潜ってみたものの、結局眠れずに何度も寝返りを繰り返す。
 そんな中で携帯電話が鳴ったものだから、心底驚き布団の中で体が跳ねた。
 発信者は登録されていない。表示されている見覚えのない電話番号に、出るかどうかを迷ったものの、もしかしたら彼なのではという期待で恐る恐る通話ボタンを押した。
「もしもし」
『出てくれてよかった』
 耳に届く心底ホッとした声は、やはり彼のものだった。
「何か、あった?」
『日付越えたから、好きって言っておこうと思って』
 朝まで待てなかったと言いながら、電話の先では相手が苦笑している気配がする。
「え?」
『ずっと、お前が好きだった。子供の頃から、お前が好きだったんだ。そう言ったら、信じるか?』
 驚いてすぐには言葉が出なかったけれど、相手がこちらの言葉を待って黙っているので、考えながらゆっくりと口を開く。
「ちょっと信じがたいけど、でも、だからこそ、嘘じゃないのかなとも思う」
 もうエイプリルフールは過ぎたわけだしと言ったら、すぐにずっとごめんと返ってきた。
『会ってからゆっくり話すつもりだったけど、今、話しても平気か? それともやっぱりそっち行ってからのがいいか?』
「電話のが、いいかな」
 どうせ眠れる気もしないと思いつつ言えば、じゃあ聞いてくれと言って話しだす。
『好きだって気持ちはあるのに、その気持ちがあるからか、お前とは友人のようにすらなれなくて、イライラしておかしな態度ばっかり見せてきた』
 小学生の頃だったが初めて好きだといった日を覚えているかと聞かれて、覚えていると返した。
『思った通りビックリされたのに、バカみたいに腹が立ったんだ。お前が俺をなんとも思ってないどころか、むしろ嫌われてるって知ってたのに、でも、突きつけられる現実にやっぱりいっちょ前に傷ついてた。最初からエイプリルフールを選んで告白したくせに、嘘に出来たこともそれにお前が怒るのも、凄くホッとした』
「あれも、偶然会ったから揶揄ったってわけじゃなかったのか……」
『そう、違う。でも自業自得でショック受けて、その後数年はもう二度とやらないって思ってた。お前との関係も、なんとかせめてすぐ険悪にならない程度にはしたくて頑張ってたけど、その甲斐あってか中学の頃は比較的穏やかだったよな?』
「確かに。でもそれをやめたってことは、気が変わったって事なんだろ?」
『だってお前に好きな女が出来たから』
「えっ?」
『お前に好きな子が出来たって知って、なんか居てもたっても居られない気分になって、どうしてもお前に好きだって言いたくなった。だからまた、嘘に出来るようにエイプリルフールを選んだんだよ』
 とにかく好きって言いたいだけだったはずなんだけどな、と相手の続ける言葉に、ただただ耳を傾ける。
『お前は驚きながらも、ちゃんと俺の話を聞いてゴメンとまで言って振ってくれたのに、逆にその対応で諦められないなと思ったんだ。というか、お前の優しい対応に味しめたというか、エイプリルフールにならお前に好きって言えるんだって、思っちまったんだよな』
 たとえ嘘としか思われなくても、年に一度だけでも、お前に好きって言っていいんだって事実が魅力的すぎたと、相手の声が申し訳無さそうに響いた。
『お前を好きって気持ちがどうにも出来ないのは、もうとっくに気付いてたからな。年に一回くらいバカバカしい遊びに付きあわせたって許されるだろって思ってた。何もかも自分勝手なのは自覚してる。でもな、だんだん欲深くなっていくんだ』
 自意識過剰かもしれないけど、高校三年頃からお前に意識されてるかもって思うようになったと言われて、思わず正解とこぼしそうになった言葉を慌てて飲み込んだ。
『お前が進学してそのアパートに住むようになってすぐ、押しかけた俺をあっさり部屋に上げただろ。しかもお前からの好きって嘘を待ってるって言ったら、やっぱりあっさり好きって言うから、あの時実はかなり驚いた。嘘でも言えるかって返ってくると思ってたから。もしかして少しは俺を好きって気持ちがあって、お前も俺同様、嘘ってことにして好きって言ってるんじゃないかって頭をよぎった』
 答えたくなきゃ答えなくてもいいが、当たってるかという問いに、少し迷ってから当たってると返した。相手はそうかと言って少し黙った後、また話し始める。
『でも今までが今まで過ぎだし、もし実は本当に好きなんだなんて話をしてふざけんなって振られてしまったら、もうこんな遊びすらできなくなる。それくらいなら嘘ってままにして、お前が好きって言ってくれる事を楽しもうと思った。これが俺の、全ての真実だ』
 年に一度だけの遊びってことに色々甘えすぎてたんだと言って、もう一度彼は本当にゴメンと謝罪の言葉をくれた。
 呆れるだろうと聞かれたので、呆れてるよと正直に返す。
「俺、お前を好きって思い始めてから先、この遊びのせいで結構泣いたからね?」
『すまん。俺に出来ることがあれば何でもする』
 じゃあ今から考えとくから、朝になったら覚悟決めてこっち来いよと言ったら、神妙な声がわかったと告げた。

続きました→

 
 
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