彼女を欲しがる幼なじみの恋人になってみた

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 座卓の上に参考書と問題集を広げながらも、一向にペンの進まない1学年下の幼なじみは、不貞腐れた顔で友人の悪口を並べ立てている。
「そいつ、親友じゃなかったのかよ。彼女出来たって真っ先に紹介までされてんのに、酷い言い様だな」
「親友だけど! おめでとうって言ったけどっ! でもおめでとうなんて思える気分じゃねーんだもん」
 とうとう机に突っ伏して、俺だって彼女欲しいー彼女欲しいーと繰り返し始めてしまって、鬱陶しいことこの上ない。
「だからって口に出すな。というか俺に聞かせるなよ。後、さっさと勉強しろ。なんのために俺がここに居ると思ってんだ」
「かーちゃんのメシのため。それと金」
「間違っちゃいないし、おばさんのご飯おいしいけどさ」
 なんせ、彼の母にお金払うから勉強見てやってと頼まれた時、月謝額を引く代わりに勉強を見に来る日の夕飯をねだったのは自分だ。
「ご飯作って貰った上、格安とはいえ一応月謝も貰ってる身としては、お前に勉強してもらわないと困るんだけど?」
 大学生の貴重な夜の2時間を提供してやってるのに、友人の悪口を聞かせて終わらせるつもりなのか。
「今日はとてもじゃないけど勉強なんて出来る気分じゃない……」
「そんな時でも頑張るのが受験生なの。お前、自分が希望大学ギリギリ掠るかも程度の学力しかないって、自覚ある?」
 もう12月だぞと言ったら、クリスマスどうしようと返されて、まったく会話が噛み合わない。
「あいつ今年は彼女とクリスマス過ごすからって張り切っちゃってさー。去年までは俺と、他の友だちも誘ったりして遊んでたのに」
「お前にクリスマスやってる余裕なんてねぇよ。誘いがないなら丁度いいから勉強しとけ」
「クリスマスまで勉強とかふざけんな。受験生にだって潤いは必要だっ」
「今まで潤ってたんだからいいだろ。部活三昧で青春してきた代償がこの成績じゃないのか?」
「部活は楽しかったけど、でも全然モテなかったし潤ってはないだろ。彼女出来るどころか、女の子が見に来てくれる事もないとか思わなかった」
「人数ギリギリ弱小サッカー部じゃな」
「そこまでギリギリでも弱小ってほど弱くもなかったよっ!」
 声音が本気になってきたので、悪かったと言って一旦引いた。けれどやはり、それだけ思い入れのある部活生活を送ってきたのだから、充分じゃないかと思ってしまう。
「あーうぁあーこのままだと俺、童貞のまま高校卒業しちゃうーうぅー」
 こちらが謝って引いた事で調子に乗ったのか、まるで駄々っ子のように、妙な節を付けながら声を張り上げる。
「うるせぇっ!」
 思わず頭をはたいてしまったら、思いのほか力が入っていて、鈍い音が響いた。
「痛っ。暴力反対。生徒に手ぇあげていいんですか先生っ!」
「都合よく先生扱いするな。てか別に、童貞のまま高校卒業する奴も、彼女いない歴イコール年齢って高校生も、そんなん大勢いるだろ」
「そんなの、中学で童貞捨てたモテ男に言われてもなんの慰めにもならないですぅー」
「女の子にモテたからって、人生そう潤うわけでもないんだけどね」
「非童貞の余裕!? わームカつくー」
 投げやりな声音に大きくため息を吐いた。
「お前、本当に今日はやる気ないな」
「だからそう言ってんじゃん」
「どうしたらやる気出るんだよ」
「俺にも彼女ができたらやる気出す」
「嘘つけ」
「んなことないよ。彼女いたら受験勉強だってもっと張り合い出ると思うし」
「それ、本気で言ってんなら、俺と付き合ってみる? 彼女じゃなくて彼氏だけど」
「は? 何言ってんの?」
「お試しでお前の恋人やってやるから、やる気出してみろって言ってんの」
「冗談っ。男と恋人になったってやる気なんかでるかよ」
「もしそれで本命大学受かったら、女の子紹介してやるし、卒業前に童貞も捨てさせてやる。って言ったら?」
 ウッと言葉に詰まって考える素振りを見せたから、どうやらそれは彼にとって魅力的な提案だったらしい。
「今すぐ女の子紹介してくれたりは……?」
「するわけないだろ」
「ですよねー」
「言っとくけど、俺の扱い方みて紹介する女の子決めるつもりだから、お試しだからってあんまり適当に扱うなよ」
「うええっマジか」
「別に強制する気もないし、正直、お前が受験失敗したって俺が困るわけじゃないんだよな。わざわざ恋人の真似事してやったり、女の子紹介したりする義理もない……って考えたら、あれ? なんか俺のメリットない気がしてきたかも。ゴメン。割にあわない提案した。やっぱナシに、」
「待って! 付き合う!」
 こちらの言葉を遮って彼が言葉を挟んできた。
「えー……」
 渋ってしまったのは、自分自身が発した言葉で冷静さを取り戻していたからだ。だって確かに、オカシナ提案をした。
「やっぱナシは無しな」
「本当に俺と恋人するの?」
「するする。だから大学合格したらよろしく」
「じゃあ取り敢えず、本気出してその問題集解く所から始めようか」
「はーい」
 随分と良い返事と共にようやく問題集へ取り掛かる姿を見ながら、妙なことになってしまったと思った。

続きました→

 
 
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知り合いと恋人なパラレルワールド11(終)

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 あからさまに呆気に取られた顔をされて心底恥ずかしい。服を脱がされきってもいないのに、アチコチにキスされて撫でられてあっさり感じて、固くしたペニスを布地越しに撫でられ揉まれて擦られただけで簡単にイッてしまった。
 向こうの先輩に触れられた時はここまで呆気なく果てたりしなかったのにと思うと、下手だなんてのは謙遜で、もしかしてこっちの先輩の方が上手かったりするんじゃないかと疑ってしまう。
「先輩、ヘタとか嘘ばっかじゃないすか」
「加減が利かなくてイかせちまうのは下手だからだろ」
 言われてみれば、なるほどそれも一理あるかもしれない。
「あー……」
「なんだその微妙な『あー…』って」
「言われてみれば納得? みたいな」
「そりゃ良かった。てか悪かったな。もっと早く脱がせるべきだった」
 手際が悪いせいで汚したなと謝られてしまったから、布越しに触られるのも焦れったくてたまらなかったからいいですと返しておいた。
「お前のそういうとこには救われるよ」
 苦笑ではあったけれど、柔らかで優しい目をしているから、どことなく嬉しくなる。
「ほら、脱がすぞ」
 促されて脱がされるのに協力しつつ、ぎこちなくても、これはこれでなんだか悪くないなと思った。
 それはきっと、向こうの自分の影を見ないで済むからだろう。向こうの自分の代わりではなく、自分自身に触れて貰っているという実感。
「なんか、先輩が下手で良かった……かも?」
「なんだそりゃ」
「慣れてないみたいな感じが嬉しいかなって。それに俺、先輩が下手とか関係なく、きっとめちゃくちゃ気持ち良かったって感想になりそう」
「それはありそうだと俺も思うが、お前はちょっと俺に対して好意的過ぎだろ」
「だって好きですもん。あ、もちろんこっちの、今俺の前の前にいて、俺に触れてくれてる方の先輩を、ですよ?」
「わかってる」
「それだけですか?」
 こちらの言いたいことは当然伝わっているようで、先輩はしばし逡巡した後、ようやく待ち望む言葉をくれた。
「あー、もうっ。俺だってお前が好きだよ。じゃなきゃ、いくら元々男が恋愛対象だからって、出来る限り優しく、出来るだけ気持よくしてやろう、なんて考えながらお前のこと抱こうとしねぇよ」
「えっ、ちょっ、今なんか、」
「ああ、うん。ちょっと余計なこと言いすぎた。お互い少し黙ろうか」
 少し赤くなった先輩の顔が、グッと近づいて唇を塞がれた。
 照れる先輩なんて珍しすぎる。もっとじっくりその顔を見てみたかったけれど、そんな事を言えるはずもないので、大人しく腔内へ侵入してきた舌へ応える事に集中する。
 その後も向こうの先輩とは全然違う触れ方に目一杯感じさせられて、きっちり3回イかされた後、先輩のを扱いてイかせて終わった。
 本当は先輩のを入れて欲しかったけれど、お願いだからとねだっても、かなりキツイし傷つけそうで自信がないからと言って先輩が頷くことはなかった。
「どうすれば先輩の入れて貰えるようになります?」
 放心するほどぐったりして寝落ちという程には疲れなかったので、余韻に浸るようにして先輩にひっつきながら尋ねたら、頻繁に弄ってゆっくり拡げてくしかないだろと返される。
「自分で弄るの、アナニーとか言うんでしたっけ?」
「ああ」
「それの方法、検索してみます」
「まぁ、お前が自分で拡げるのも一つの手ではあるだろうけど、別に急ぐ必要もないだろ」
「早くちゃんと抱かれたいんですよ、先輩に」
「向こうの俺にも、本当には抱かれてないからか?」
「どういう意味ですか?」
「向こうの俺にも突っ込まれたりしてないだろ、お前」
 疑問符のない断定だった。
「あれは経験あるって反応じゃない。せいぜい指で弄られた程度じゃないのか?」
「そ、ですよ」
 言い当てられて仕方なく肯定する。
「せっかく向こうの俺がお前の処女残してくれたんだから、自分で弄って拡げたりするなよ。勿体無いから」
「は?」
「お前の体が俺に慣れていくのを、じっくり堪能させろって話。その間に俺の方も色々と上達するだろうしな」
 責任持って拡げてやるから一人で急ぐなよと釘をさす先輩の顔は、本気が滲む真面目なものだった。
「それじゃ不満か?」
 どう反応していいのか困っていたが、もちろん不満があるわけではない。慌てて首を横に振ったら、満足そうに笑ってくれたので、なんだか色々どうでもよくなった。
 急いで体を繋がなくても、先輩はもう、ちゃんと自分の恋人なのだ。

< 終 >

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知り合いと恋人なパラレルワールド10

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 あの日の朝、ちゃんと違和感を感じながらも寝起きでつい口を滑らせたことを、心底悔やむが後の祭りだ。
 そう言えばあの時も、先輩は下手だっただろうとかなんとか言っていた事を思い出す。久々で辛かったってどういう事だと思いながら、確かめるように問いかける。
「先輩も、向こうの俺のこと、抱いたんですよね?」
「ああ」
「俺だって向こうの俺ほど上手くないですから、きっと先輩のこと楽しませてあげられませんよ?」
「残念ながら、向こうのお前のテクどうこうがわかるような生活はしてなかったな」
「え? でも、向こうの俺のこと、抱いたって……」
 今まさにそれを肯定したばかりじゃないかという思いに応えるように、先輩は自嘲混じりに苦笑して、一度だけだと言った。
「こっち飛んでた俺との連絡が一切取れなくなったって泣かれて、つい慰めた」
 あっ、と何かが繋がった。
「じゃあ久々って向こうの俺が抱かれるのがって意味で……?」
「それ、覚えてたのか」
「向こうの俺、よく先輩前にして我慢してましたね。来てた先輩、抱いてくれってかなり迫られたって言ってましたけど、そういうのなかったんですか?」
 向こうの自分はかなり積極的らしいし、人生初の恋人が男なんて勘弁してくれだとか、男に抱かれた経験なんて一切ないと言って、こちらへ来た先輩を最初拒絶した自分とは違って、元々男が恋愛対象なら据え膳みたいな事にはならなかったのだろうか?
「本気で誘われたのはこっち戻る前夜くらいだな。ここでは恋人だって話を聞いた最初の夜、代わりにはなれないぞって言ってあったし、向こうもまぁそれは分かってたよ。いくら似てても別人だろ」
「あー……」
「なんだよ」
 先輩らしいと思ってしまったがそれは言わなかった。話を戻すように、そういやと切り出す。
「あの時、やっぱり下手だったとかも言ってましたよね?」
「ああ、言ったな」
「向こうの俺、きもちくなれなかったんですか?」
「さあどうだろな」
 どことなく言い渋る様子に、聞かれたくない話だったのだろうかと思う。
 自分の中では、なんとなく向こうの世界の自分も結局は自分自身という気持ちが強いが、先輩は常に似てても別人というスタンスなのだから、考えてみれば他人のセックス事情を問うたのと同じかもしれない。
 友人に、お前彼女ちゃんとイかせてやったの? と聞くようなものだろうか。そんな真似はしたことがないし、先輩だってそういう話を友人とするタイプではなさそうだ。
 向こうの世界とこちらの世界を同一視してると痛い目見るぞと言われたばかりで、一体何をやっているんだか。
「そんなに気になるなら、今からお前が自分の体で試したらどうだ?」
「ふぇっ?」
 謝るべきかと口を開きかけた所で、ニヤリとした笑みと共にそんな言葉を投げかけられて、妙な音が口から漏れた。
「俺と、付き合うんだろう?」
 一度立ち上がった先輩は、脇のベッドに腰かけ直す。
「ごちゃごちゃ言うよりお互い試したほうが早い」
 確かにその通りだし、きっとこれはチャンスだ。なのに動けずにいたら、先輩がかすかに笑ったようだった。
 もしかして揶揄われたのかとも思ったが、冗談には聞こえない誘いだった気がして、考えるほどに混乱してくる。
「おいで」
 短い言葉は思いのほか柔らかな声で響いた。その声に促されて体の強張りが解けていく。
 期待するなと言いながらそんな風に優しく呼ぶのはずるいなと思いながら、それでも短い距離を移動して、自分も先輩の隣に腰掛けた。

続きました→

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知り合いと恋人なパラレルワールド9

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 先輩が言うには、向こうの世界は同性愛者がこちらと比べ物にならないくらい多く、同性婚も普通に認められているらしい。そして、確認できた数が少なすぎて絶対とは言い切れないが、こちらの世界とは性嗜好が逆な人が多かったとも言った。
「それを踏まえてよく聞けよ。こっちのお前は女が好きで、向こうのお前は男が好きだ。そして、向こうの俺は多分基本的には女が好きで、俺自身は男が好きだ」
「ええっ!?」
「まぁ向こうの俺はお前と恋人だったんだし、今現在お前も俺と付き合いたいと思ってるみたいだから、きっかけと周りの環境次第で性対象の性別なんて曖昧になるもんなのかもとは思ったけどな」
 言葉を切った先輩はこちらの返答を待っているようだったけれど、何を言えばいいのかわからない。困って先輩を見つめたら、先輩はコーヒーを一口啜った後、真っ直ぐに見つめ返してくる。
「向こうの世界とこっちの世界をごっちゃにしてると、痛い目見るのはお前だぞ」
 こっちの世界は向こうの世界ほど、同性で付き合うことに寛容じゃないと続けた先輩は、どことなく苦々しげだ。確かにこうして自分が先輩を好きにならなければ、まったく縁のない他人事で未知の世界だったし、非難する声があることももちろん知ってはいる。
 先輩自身、戻ってこれて良かったと言っていたけれど、それは向こうの自分やその恋人だった向こうの先輩を想っての言葉であって、元々男が好きだというなら、先輩自身はやはり向こうの世界のほうが生活しやすかったのではないかと思った。
「お前は俺を好きになって振られたって何人かに話したみたいだけど、なんだかんだ俺の耳に入るくらいには既に噂になってるし、そんなお前に否定的な奴はサークル内にも当然いる」
 既に噂になっていると聞いて血の気が引いた。というよりもなんだかショックだ。
「応援するとは言えないけどそれでも頑張れって言ってくれたのに……」
「お前が話した奴が、悪意で流した噂かどうかまではわかんねぇよ。複数人に話したなら、そいつらが話してるのをたまたま聞いたとかかもしれないだろーが。後、お前がゲイバー行って俺のために男の経験値積む気だから止めてくれって俺に言いに来たのは、お前の友人だからな。そいつにはおせっかいを感謝した方がいい。お前がここんとこ暴走気味だって心配してたぞ」
 なんとなく誰かは分かってしまった気がするが、それでも誰ですかと聞いてみる。返された名前はやはり、ゲイバーに付き合ってくれと頼んだ時に、止めておけと諭してきていた友人だった。
「正直、ゲイバー行くより合コン行って彼女作るなりしたほうが、こっちの世界のお前は生きやすいと思う。それでももし、お前が俺と付き合いたいってなら、元々男が恋愛対象で現在フリーの今の俺には、断る理由がない」
 答えを出すのは今じゃなくてもいいからしっかり考えろと言われたけれど、考えたって答えは変わらないに決まってる。
 結局先輩がこちらを避けてたのだって、要するに、元々男が好きだったわけではない自分を想ってくれての事だ。向こうよりも同性愛に寛容とは言い難いこの世界に、傷つけられないようにと考えて距離を置いてくれていた。
 そういう所が、きっとたまらなく好きなのだと思う。先輩の持つ優しさに触れるたび、どんどんと好きになる。
「それでも、俺は先輩と、付き合いたい。……です」
「お前は、そう言うんじゃないかって思ってた。ただ、向こうの俺ほどセックス上手くないから期待はするなよ」
「別にエッチなことされたくて先輩と付き合いたいわけじゃないですよ!」
「けど、向こうの俺に抱かれて、めちゃくちゃ気持ち良かったんだろ?」
 先に3回もイかされたって? と揶揄う口調に顔が熱くなった。

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知り合いと恋人なパラレルワールド8

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 悩んだ末、出合い系やハッテン場などを試すのは怖すぎるが、ゲイバーを覗きに行くくらいはしてみる気になった。バーで飲む程度なら、そうそう危険な目に遭うこともないだろう。
 もちろん、この人になら抱かれても良いと思えるような相手と出会えたら、その時は理由を話して、経験を積ませて貰えるよう頼むつもりだった。けれど初めからそんな都合の良い出会いがあるとは思えないし、今まで興味がなく全くと言っていいほど知らない世界に、やはり単身乗り込むのは不安で怖い。
 だから先輩を好きになった事を知らせた友人たちに、初回だけで良いから一緒に来てくれと頼んでみた。
 止めておけと諭してくる友人と、それはちょっとと嫌がる友人と、面白そうだとむしろ食いつき気味の友人とがいたので、面白そうだと言ってくれた友人と出掛ける日を決める。好奇心旺盛でノリの良い友人が居てくれて良かった。
 なのに待ち合わせた時間に、待ち合わせ場所の駅改札に現れたのは、その友人ではなく先輩だった。しかも遠目にもわかる機嫌の悪さだ。
 最初これは偶然で、先輩もどこかへ出掛けるため駅に来たのだと思った。しかし先輩はまっすぐこちらへ向かって来ると、正面に立って睨むように見上げてくる。
「帰るぞ」
「えっ?」
「お前に話がある」
「いやでも、俺、これから友達と出掛けるとこで……」
「知ってる。それと、そいつは来ない」
 嘘だと思うなら電話してみろと続けたので、きっと本当なのだろうと思う。けれど、どうしてと思う気持ちが強く、先輩に睨まれているのもあって、携帯を取り出すことも先輩へ言葉を返すことも出来なかった。
「悪い。機嫌が悪いのはお前のせいじゃない」
 固まるこちらに気づいた先輩が、バツの悪そうな顔でそう言った後、気を静めるように深く息を吐きだしていく。先輩を包む空気が少し和らいだ。
「どうしても行ってみたいなら俺が付き合う。ただし、お前が俺の話を聞いた後でな」
 だから一旦帰ろうと促す先輩の声は、無理に頑張っている様子が滲むものの、優しい甘さで響いた。
「わかり、ました」
 どうにか言葉を絞り出せば、先輩はホッと小さく息を吐いて安堵の表情になる。その顔に釣られてか、こちらもなんだか少し安心した。
 先輩がどこまで知っているのかはわからない。先輩の機嫌が悪いのが自分のせいなら、ゲイバー行きを咎められるのだと予測がつくが、そうでないなら聞かされる話の予想もつかない。しかも話を聞いた後でなら、先輩自身がゲイバー視察に付き合うとまで言っていた。
 何を聞かされるのだろう。あまり悪い話ではないといいなと思いながら、先輩の半歩後ろを並んで歩く。
 やがて辿り着いた先輩の部屋の中は、頻繁に訪れていた以前と変わらず、なんだか懐かしいなと思う。先輩が戻ってきてからはとんとご無沙汰だった。
 なんだか泣きそうになるのは、先輩が入れ替わっていた時期を懐かしんで、と言うわけではなさそうだ。戻ってきた先輩に当初はやんわりと、自分たちも付き合ってみないかの失言後ははっきりと、拒絶されて訪問できずにいた辛さを思い出してしまうのと、その場所へ入れて貰えている喜びとが混ざった、なんとも複雑な気持ちからな気がする。
「俺の話、聞けるか?」
 目の前の小さなテーブルに、取り敢えずといった感じでコーヒーの入ったカップを2つ置いてから、対面に腰を下ろした先輩が聞いてくる。少し心配そうな顔をしているから、泣きそうなのがバレているのかもしれない。
「はい」
「ならまず結論から言うが、お前が向こうの俺を忘れられなくて、俺を諦める気がないってなら、俺はお前と付きあおうと思う」
「えっ?」
「せっかく距離置いてやってんのに、ゲイバー行って男との経験積まれたんじゃ、俺が距離置く意味なんかないからな」
「な、なんで……ってかどういう意味か」
「わからないか?」
「わかりませんよっ!」
 つい声が大きくなった。先輩は落ち着けと言ってから、じっとこちらを見つめてくる。
 待たれていると思って、深呼吸を一つ。そうしてから続けて下さいと促せば、先輩は軽く頷いて口を開いた。
「お前、元々は普通に女が好きなんだろう?」
「そりゃまぁ、そうですけど」
「俺に距離置かれて素っ気なくされても、俺を諦めて女と恋愛しようとは思わなかったのか?」
「だって好きになったの先輩で、先輩が男なのは仕方ないじゃないですか。後、諦めるには、俺は色々知りすぎてます」
「知りすぎてる?」
「向こうの世界でも、俺が積極的に先輩誘ったらしいですし、あまりその気じゃなかった先輩も結局俺を好きになったわけだから、こっちの俺にだってチャンスはあると思うんですよね」
「お前は向こうの世界とこっちの世界を同一視しすぎだ」
 先輩は呆れた様子でため息を付いた後、向こうとは根本的に違うことがいくつかあると言った。

続きました→

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メルフォお返事

メルフォからご意見を下さった なつ様

小説読んで下さってありがとうございます。
ご指摘の件ですが、ご推察いただいたような目的もやはり多少はありまして、対応することが出来ません。
申し訳ありません。

閲覧環境がわからないので私の携帯の話になりますが、私はiPhoneを使用していて、ブログやサイトはSafariで閲覧しています。
Safariにはテキストモードというのがあり、左上をタップすると文字のみを抽出した閲覧モードになります。
下の画像がそのテキストモードです。
textmodeリンクも機能しなくなるので一長一短ありますが、広告類は出ませんし、携帯だと文字が崩れるようなサイトやブログ、文字が小さくて読みにくいサイトやブログなどで重宝しています。
携帯であればこういった機能を探して使うか、他にもブロックツールやアプリなどいろいろとあるようなので、それらを検討していただければと思います。

こちら側での対応ができず申し訳ありませんが、これからもよろしくお願い致します。

 
 
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