そういえば一度も好きだと言っていない

 ふと気がついた。そういえば一度も好きだと言っていないな。
「好きだ」
 思った次の瞬間には、口からそう零していた。
「え、何を?」
 見下ろす先、目をぱちくりさせて聞いてくるから苦笑する。確かに突然だったとは思うが、この状況で何をと問われるとは思わなかった。
「お前を、に決まってるだろ」
「えっと、何の冗談?」
「冗談で言うかよ。本気で好きだと思ってる」
 言えば嫌そうに眉を寄せる。随分と酷い反応だ。
「今更過ぎでしょ」
「だって言ったことなかったなって思って。というかお前の反応、俺の予想と全然違うんだけどどういうことなの」
「ならどういう反応と思ってたわけ?」
「言われなくてもわかってる。もしくは、やっと言ってくれて嬉しい。のどっちか」
 大真面目にそう思っていたのに、相手はハッと鼻で笑いやがった。
「これってただの性欲処理だよね」
「まぁ最初はな」
「今もだよ。下らないこと言ってないでさっさと突っ込んで腰振れよ」
 確かにその言葉も最もだ。そろそろ挿れても大丈夫そうだと、相手の後孔から指を抜いた所だったし、見下ろす相手は両足を開いて寝転んでいる。
「ほら、早く」
「わーかったって」
 軽く持ち上げた両足を腰に絡めて引き寄せるように力を込めてくるから、悪戯に腰へ絡む足を外すようにして抱え上げた。
「ぁっ、あっ、いぃっ」
 ゆっくりと体重を掛けてペニスを埋めていけば、甘えるような声が鼓膜を震わす。
 初めてこの男を抱いた時から、挿入する際にはかなりの頻度で聞かされてきた声だ。さすが自分から誘ってくるだけあって、随分と抱かれることに慣れた体なのだと思っていた。
 なのに今はその声がわざとらしい。
 そう思うようになってしまったのは、本当に感じ入った時の彼を知ってしまったからだった。
 突っ込まれて揺すられて擦られるだけでキモチイイなんて嘘ばっかりだ。甘ったるくアンアン零すから騙されていた。
「ぅぁっ、バカっ! そこ、やめろって」
 馴染むのを待ってからゆるりと腰を動かせば、すぐさま抗議の声が上がる。
「なぁ、ココ。これが前立腺で、あってるだろ?」
「なに、言って……」
「さすがに調べたわ。というかなんで今まで調べようともしなかったんだろな」
 慣れた様子の相手に、慣れた様子で誘われて、言われるまま突っ込んでいた。突っ込む場所が尻の穴という心理的抵抗は気持ちよさの前であっさり砕けて散ったし、突っ込む側なら相手が男でも女でも大差ないな、なんてことを思っていた自分は、あまりに男同士のセックスに対して無知だった。
「なんで慣れたふりしてたの?」
「えっ?」
「やり慣れてるはずなのに前立腺すら未開発とか、俺が納得行く説明できんの?」
「ど、……ゆ、意味……」
「ホントに慣れてるってなら、最初っから前立腺擦られてイキまくってトコロテンとかいうのしたり、尻だけでイッちゃうメスアクメとかいうのキメて見せたら良かったのに」
「ちょっ、なっ……」
 すっかり言葉を失くしている相手に、もう一度真剣な気持ちと声とで伝えてみる。
「お前が、好きだよ。都合がいい性欲処理だけ続けたかったら、お前の体の変化は無視してた。だからさ、慣れたふりして誘ったのは性欲処理でいいから俺に抱かれたかったくらい、俺が好きだったからだって言ってよ」
 言った途端、相手の目にぶわわと涙が盛り上がってしまってさすがに焦る。
「あ、その、ゴメン。お前が遊び慣れた様子で誘うから、俺もなんか意地になってたのか、遊び相手に惚れたら負けだとか思ってたみたいで。とっくにバレてるだろと思ってたのもあるってのは言い訳だけど、変な意地はらずに、お前が可愛いとかお前を好きになったとか、自覚した時に言っときゃ良かったんだよな。ホント、ごめん」
 一度も好きだと言わないせいで、こちらの好意を隠すせいで、相手もまた想いを隠すのではないかと、さっきふと気づいてしまった。そしてそれは当たりだったと、もう確信している。
「今、そんなの言われたら、信じちゃうよ……」
 泣きかけた声は小さく震えていた。目の縁に溜まった今にも零れそうな涙を指先で拭いながら、出来る限り優しい声音になるよう気を遣いながら口を開く。
「信じてよ。で、お前も俺が好きって言って?」
 促すように頼み込んでやっと、ずっとお前を好きだったという言葉が、相手の口から告げられた。

有坂レイの新刊は『 ふと気がついた。そういえば一度も好きだと言っていないな。 』から始まります。https://shindanmaker.com/685954

 
 
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気付いた時にはもう全部手遅れだった1

我ながら悪趣味だなあの続きです。  最初の話から読む→

 酷い我儘だと呆れながらもどこか嬉しそうに笑った相手が、空の酒坏に酒を注いで勧めてくれたのが嬉しくて、潰れるつもりで注がれるまま杯を重ねていく。
 許された。受け入れられた。そう思ってしまったからだ。
 実際、あの後は明らかに自分たちを包む気配が柔らかに変化したと思う。
 おかげでふわふわに気持ちよく酔うことが出来たし、相手はそんな自分を仕方がないという顔をしながらもアパートへ連れ帰ってくれたし、ベッドに座らせた後で飲んでおけとグラスに注いだ水を運んでくれた。
 ああ、これは全部、告白される前と同じだ。
 嬉しくて、安心して、急激に襲う眠気にしたがい瞼を下ろす。くすっと笑った気配と、可愛いなと聞こえた言葉に眉を寄せたが、そんな細やかな抗議に、相手は益々笑ったようだった。
 まぁいいやと目を閉じたまま体を倒そうとしたら、それを阻止するように両腕を掴まれる。もう眠いのになんで邪魔をするのだと、さすがにムッとして渋々重い瞼を押し上げれば、思いの外近くにあった相手の顔に驚き息を飲んだ。
 ちゅ、と小さく響いた音と、軽く吸われた唇と、ぞわっと背筋を走った何かと。
 キスされた。そう気付いて、ますます驚き目を見張る。そうしているうちに二度目のキスが唇の上に落ちた。
「な、んで……」
「恋人になったんだから、キスくらいしてもいいだろう?」
 ああやっぱり、自分たちは恋人になったのか。なんてことをぼんやり思う。
 じゃあ恋人として宜しく、などという宣言は何もなかったが、どう考えたって自分の言葉は恋人になってというお願いだったし、相手はそれを受け入れたから自分をこうして連れ帰っている。酔っていたって、それくらいはちゃんとわかっていた。
 わかっては、いたけど。
「でもお前とセックス、考えられないよ?」
「わかってる。考えなくていい」
 大丈夫だと囁く甘い声。抱きしめるように背に回った腕が、優しく背をさすってくれる。
 そうか、考えなくて、いいのか。
 安堵とともに再度瞼を降ろせば、優しくて柔らかなキスが繰り返された。もう、驚かなかった。だって恋人になったんだから、キスくらい、したっていい。
 優しく甘やかしてくれるキスにうっとりと身を任す。任せきってしまえば、与えられるキスはなんとも気持ちが良かった。
 唇を柔らかに吸われるのも、時折繰り返し聞こえてくる可愛いという囁きも、心ごとなんだかこそばゆい。クスクスと笑う声は遠くて、笑っているのは自分自身だと、頭の隅ではわかっているのにどこか現実感が乏しかった。
「んっ、……んっ、……ぁ、はぁ……ふはっ」
 誘い出されるようにして差し出した舌を、ピチャピチャチュルチュルと舐め啜られて鼻から甘やかな息が抜ける。ぞわぞわと粟立つ肌がオカシクて笑う。
 ゾワゾワゾクゾク擽ったいのは舌だけじゃなかった。いつの間にか相手の唇は唇以外にも落とされていて、温かで大きな手も体中のアチコチをさわさわと撫でていた。
 ふはっと熱い息を吐けば、そこを重点的に舐めたり吸ったり撫で擦る。そうするとゾワゾワが這い上がって、笑いが溢れていく。ゾワゾワするのは楽しくて、多分少しキモチガイイ。
「ぁ、あっ、きも……ちぃ……」
 素直に零せば、嬉しそうにそれは良かったと返ってくるのが、自分もなんだか嬉しかった。

続きました→

 
 
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好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう

 自分がどちらかと言えば女性よりも、同性である男性を好きになる性癖持ちだということは自覚していたが、同性の恋人を持ったこともなければ、男と体だけの関係を結んだこともない。興味はあったが好奇心よりも不安が大きかったせいだ。
 女性とはできないというわけではないが、それも若さで持て余し気味の性欲のなせるわざだったのか、就職して数年、仕事に慣れ面白く感じるようになるにつれ、とんとそんな気にはなれなくなった。
 自慰で充分と思う気持ちと、年齢的にそれはちょっと寂しいのではと思う気持ちとの間で揺れる。そんな状態だったので、相手が男ならまた違った気持ちが湧くのだろうかと、きっと不安よりも好奇心が若干勝っていたのだろう。
 都内への出張が決まった時、その好奇心が爆発した。それで何をしたかといえば、ゲイ専門の性感マッサージへ、意を決して予約を入れた。
 お金を払いこちらが客としてサービスされる側というのも、口でのサービスも、当然本番行為もないというのが、安心に繋がったというのもあるかもしれない。
 サイトのプロフィールからたまたま目についた同じ年のスタッフを指定し、当日、予約時間より少し早めに店に着けば、そのスタッフが自分を迎えてくれた。
 サイトでは顔にモザイクのかかっていたが、実際に会った瞬間、思わず息を呑んだ。今現在、ほんのりと好意を抱いている自覚がある直属上司に、顔や雰囲気がよく似ていると思った。
 知り合いに凄く似ててと言いながら動揺を滲ませてしまったせいか、急にスタッフの変更は出来ないと、随分と申し訳無さそうに言わせてしまった。キャンセルするかと問われて慌てて首を振る。指名したスタッフが思った以上に好みだったから、なんて理由で帰るはずがない。
 こういった店どころか男との経験皆無というのは予約時に伝えてあったが、再度、通された個室でそれを伝えれば、今日は是非楽しんでリラックスしていって下さいと柔らかに笑われホッとした。
 促されるままシャワーを浴びてから施術用のベッドに横になる。
 似ていると思ったのは顔や雰囲気だけではなく、特に指がすっと綺麗に伸びた手の形がそっくりなのだと気づいていた。この手に今からマッサージを、それも性感を煽る気持ちよさを与えられるのだと考えただけで、恥ずかしいような嬉しいような興奮に襲われる。
 まずは普通のマッサージからで、緊張を解すようにアチコチを揉まれながらの軽い世間話に、緊張やら警戒心やらはあっという間に霧散していた。こんな仕事を選ぶくらいだから、相手の話術は相当だったし、自分も別段人見知りするタイプでもない。
 気づけば気になる上司の事までペラペラと話していて、似ている知り合いがその上司だということも言っていた。
「じゃあ俺、好みドンピシャってことじゃないですか」
 嬉しそうな声が降ってきて、そうだよと返す。
「嬉しいなぁ。あ、でも、そこまで似てるなら、その上司の方の手と思ってくださってもいいですよ?」
「ええっ、さすがにそれは君に失礼でしょ」
 なんてことを言っていたのに、初めて男のツボを知り尽くした同性の手で性感を煽られまくった結果、何度も繰り返す絶頂の中でその上司の名を呼んでしまった。
「ご、ごめん」
「良いって言ったの俺だよ。ほら、気にしないで、もっと気持ちよくなってご覧」
 ハッとして謝ったが丁寧語を捨ててそう返され、オマケとばかりに、上司が自分を呼ぶ時と同じように苗字に君付けで呼ばれて、錯覚が加速する。
 どちらかと言えば自分は性に淡白な方だと思っていたのに、短時間に驚くほど何度も絶頂に導かれてしまった。
 帰り際、また指名しても良いかなと躊躇いがちに問えば、笑顔でぜひと返される。
 これは癖になりそうでヤバイかもしれないと思う気持ちと、週明けに上司の顔がまともに見れるだろうかという不安に揺れながら帰ったけれど、出張も何もないのに次の予約を入れてしまったのはそれから一ヶ月ほどの事だった。

有坂レイへの今夜のお題は『好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう』です。
shindanmaker.com/464476

 
 
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淫魔に取り憑かれてずっと発情期

 壁に手をつき尻を突き出しながら、熱を持った固い楔に尻穴を穿たれると、心に反して自身の熱も昂ぶっていく。発情しきった体は慣れてしまった行為に明確な反応を示すのに、こんなことは望んでいないと反発する気持ちが抑えきれない。
「ぁっ、んぁっ、やぁあっ」
「こんなぐちゃぐちゃのトロトロにして腰振って誘って、何がやぁあだ」
 背後でフンッと鼻で笑った相手は、容赦なくガツガツと尻穴の中をえぐってくる。多少乱暴に突かれても、たまらない快感が体の中を走り抜けていく。なんてイヤラシイ体だと、惨めな気持ちで泣きそうになった。
「何泣いてんだよ。気持ち良すぎってか」
 耐えられず何度かしゃくり上げれば、下卑た笑いが響いて今日の相手はハズレだなと思う。
「すっげ良さそうだもんなぁ」
 淫乱ケツマンコだなどと揶揄い混じりに告げながら、随分と自分勝手に好き放題に腰を振ってくる相手に、こんな体じゃなければ絶対に感じないのにと悔しさがこみ上げた。
「あっ、あッ、もイくっイッちゃう」
 こんな場合はさっさと終わってしまうに限る。
「ほら、イけよ」
「んっ…んっ……あぁっイッてっ……お願い、一緒にイッてぇ」
「はっ、えっろ。だったらもっとケツ締めな」
 パアンと乾いた音が響いてお尻にジンと痺れる痛みが走った。
「はぁんんっっ」
 なのに口からは甘い響きが迸る。実際、痛みと快感は背中合わせに存在している。
「叩かれても感じんのかよ。まじドMだな。おらもっと感じろよ」
 パァンパァンと続けざまに尻を叩かれて、そのたびにあっアッと甘い息を零しながら、相手の望みに応えるように肛門を締めるよう力を込めた。
「はぁっ、良いぞ。イくっ」
 一段と激しい律動の後、体の奥にドロリと熱が広がっていく。結局こちらの熱は置いてきぼりだが目的は達成だ。
 次回を誘う相手の言葉に適当な相槌を愛想よく振りまきながら、この近辺で相手を漁るのはこれで最後かなと思う。自分本位で下手くそなセックスも嫌だが、何より執着されるのが困る。下手な奴ほど執着傾向にあるから、その点から言ってもコイツは要注意人物だ。
 また別の場所を探すのもそれはそれで面倒だが仕方がない。今日のうちにもう一人くらい探したいところだけれど、次はどこへ行ってみようか。
 じゃあねと名残惜しげな相手に別れを告げてその場を後にする。
「おい、居るんだろ」
 歩きながら携帯でハッテン場と呼ばれる場所を検索しつつ、何もない空間に語りかけた。
『居るよぉ』
 声は頭のなかに響いてくる。
「あんま変なの引っ掛けてくんなよ。もうあそこ使えないぞ」
『なんでぇーそんな気にする事なくない?』
「いやアレは面倒なタイプだろどう見ても。だからもっと紳士的でセックス上手いヤツ連れて来いって」
『叩かれて喜んでたくせにぃ』
「何されたって感じる体にしたのお前だろ。あんなのまったくタイプじゃないから」
『ああいうタイプのがさっくり誘われてくれて楽なんだよねぇ。ナマ中出しにも抵抗薄いし』
「だからそこ手ぇぬくなって言ってんの」
『優しくされたらそれはそれで泣いちゃうくせにぃ』
「煩いな。誰のせいでこんな目にあってると思ってんだ」
『ボクのためってわかってるし感謝もしてるよぉ』
 声の主は、100人分の精子を集めるための任務に、女でも男に抱かれたいゲイでもない人間に取り憑いてしまうような、アホでドジで迷惑極まりない自称淫魔だ。100人の相手に中出しされるまで、この体はずっと発情し続けると言われ、実際抜いても抜いても治らない体の熱に、泣きながら初めて男に抱かれたのは二か月近く前だった。
 中出しされるとしばらくの間は体の熱が治まるけれど、それもせいぜい二、三日程度でしかない。おかげで一切そんな性癖がなかった自分が、嫌々ながらも日々男に抱かれて相手の精子を搾り集めている。
 精子を注がれるために発情している体は、男に何をされても基本気持ちが良いと言うのが楽でもあるし、切なく苦しくもあった。
 そんなこんなで、半月くらいはこの現状を呪って泣き暮らしたけれど、そのあとは開き直って積極的に男を漁っている。さっさと100人斬りを達成して、こんな生活とおさらばしたい。
 相手は自称淫魔がその場で適当に見繕ってくれるが、基本アホでドジなので、オカシナ男を連れてくることも多々あった。こんな自分に取り憑いたくらいなので、特に相手の性癖を見抜く力が低いらしい。
 どうやら自分に取り憑くのと似た方法で相手をその気にさせるようだが、その効力は相手が精を吐き出すまでしか持続しないから、ノンケを引っ掛けてきた時は色々と面倒だった。そういう意味では、事後に次の誘いを掛けてきた今日の男は、自称淫魔的には当たりなんだろう。
 わざわざハッテン場まで出向いているのだから、それくらいは当たり前にこなして欲しいし、出来ればこちらへの気遣いもある、セックスの上手い奴を探して連れて来て欲しい。けれどそんな大当たりは、今のところ片手で足りる程度しか記憶に無い。
『ごめんねぇ』
 大きくため息を吐いたら、申し訳無さそうな声音が頭に響いた。
「謝罪はいいから次行くぞ次。次はもっとマシなの引っ掛けてこいよ」
 本当に、早い所100人に抱かれて、こんな日々をさっさと終わりにしようと思った。

お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzHimage

 
 
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アナニーで突っ込んだものが抜けない

 隣の家の幼なじみから、助けてと半泣きの電話が掛かってきたのは土曜の夜も更けた時間だった。内心面倒くさいと思いつつ、お願いだから今すぐ来てと請われて、仕方なく隣の家のチャイムを押した。
 来いと言ったくせに玄関先に現れたのは彼の母で、こんな時間にどうしたのと驚かれてしまったから、電話で呼ばれたと告げて勝手知ったると上がり込む。呼んだくせに出てこない彼に、彼の母も呆れ気味だ。そろそろ寝ちゃうけどという言葉にお構いなくと返してから彼の部屋へ向かった。
 軽くドアをノックしたら入ってという声が聞こえてきたのでドアを開けたが、一見部屋の中に彼の姿がない。おや? と思って視線を巡らせれば、ドア横のベッドが盛り上がっていて、どうやらその中に居るらしい。ご丁寧に頭まで布団をかぶっている。
 助けてというのは体調不良という話なのだろうか? だったら自分ではなくまず母親にでも助けを求めればいい話なのに。
「来たぞ。大丈夫か?」
 それでもそうやって様子を窺ってやる自分は彼に対して甘いという自覚はあった。まぁそれがわかっているから彼も自分を呼ぶのだろうけれど。
「お前だけ?」
「ああ」
 もそもそと顔を出した彼は、半泣きどころではなく泣いていた。真っ赤な目に溜めた涙をボロボロこぼしながら助けてと言われて、さすがに尋常じゃないなと思ったが、何が起きているのかはやはりわからない。
「俺に出来ることならするけど、何をどう助けろって?」
「あの、……そのさ……」
「言わなきゃわからないぞ」
「うん……その、抜けなく……って……」
「抜けない?」
「あの、だからさ……」
 泣くほど困っているのに何を躊躇っているのか、元々泣いて上気していた顔がますます赤みを増していく。
「あの、あの……もちょっと近く来てよ」
「そんな言い難いことなのか?」
 ベッド脇に立って見下ろしていたのだが、仕方ないなと腰を下ろして、彼の顔の横に自分の顔を近づけてやった。
「ほら、これでいいだろ。で、なんなんだよ」
「誰にも、言わないで、欲しい」
「そんなの内容によるだろ」
「だってぇ……」
「さっさと言わないと面倒だから帰るぞ」
「ダメ。やだっ」
 慌てたように伸ばされた手が、ベッドの上に軽く乗せていた手をギュウと握る。その手は彼にしては珍しく冷えて、心なしか震えているようだ。
「本当にどうしたんだよお前。何があった?」
 反対の手で、その手を包むように覆ってやってから、もう一度なるべく優しく響くように問いかける。
「だから抜けなくなっちゃって」
「だから何がどこから抜けないんだよ」
「お尻から……」
「は? 尻? 尻から何が抜けないって?」
「……っが!」
 口は動いたがほとんど音になっていない。
「聞こえねぇよ」
 更に顔をというか耳を彼の口元へ近づけた。再度告げられた単語はどうにか拾ったが、やはりよく意味がわからない。
「は? マッサージの棒? なんだそれ」
「だからツボマッサージするやつ。あるだろこう棒状の」
「あー……まぁ、それはわからなくない。けどそれが抜けないって……あっ?」
 一つの可能性には行き当たったが、まさかと思う気持ちから相手の顔をまじまじと見てしまった。
「お前、そんなものケツ穴に突っ込んで……た?」
「言わないで。言わないでっ」
「言わないでじゃねぇよ。マジなんだな?」
「うん」
 ぐすっと鼻をすすりながら、更に何粒かの涙をこぼす。
「あー……じゃあちょっと見るわ。布団めくるぞ」
「う、ん……」
 躊躇いを無視して布団をめくれば、むき出しの下半身が現れた。無言のまま足を開かせるように手に力を込めれば、おとなしく足を開いてみせる。
 なんで自分がこんなことをと思いつつも、更に尻肉に手を添えを割り開く。その場所は濡れているようだったが閉まっていて、中にマッサージ棒が入っているなどとは到底思えない。
 大きくため息を吐いて覚悟を決める。
「おい、中、触って確かめるぞ」
 ビクリと体が揺れた。躊躇って戻らない返事を待つ気もなく、その場所へ指を触れさせ力を入れる。
「ぁっ……ァ……」
 するりと入り込んだ指先はすぐに固い何かに触れた。
「ああ、……確かになんか入ってんな。てか材質何? プラスチック? 木の棒?」
「木……」
「普通に力んだら出てこないのか?」
「そんなの試したに決まってるだろ」
「まぁそうだな。で、俺に指突っ込んでこれ抜き取れって?」
「ムリ?」
「わかんねぇ」
「お願い」
「ったく、お前、本当バカ。アホな遊び覚えてんじゃねぇぞ。取り敢えずチャレンジはしてやるけど、最悪抜けなかったら医者行けよ」
「医者やだ。お前が抜いてよ」
「俺にだって出来ることと出来ないことがある。いいから濡らすもんよこせ。ローションか何か使っただろ?」
 最低でも2本の指を入れて摘んで引っ張りだすことを考えたら、何かしら潤滑剤があったほうが良さそうだ。
「そこ、あるやつ」
 言われて目を走らせた先にあったのはワセリンのケースだった。
 結局、どうにかこうにか抜き取ることに成功したのは、既に日付をこえた時間で安堵とともにどっと疲れが押し寄せる。
 さっさと帰って眠りたい。眠って今日のことは忘れてしまおう。
 ごめんねとありがとうを繰り返す相手に適当に相槌を打って逃げるように隣の自宅へ帰り、ベッドの中に潜り込む。しかし疲れて眠いはずなのに、体はオカシナ興奮に包まれて眠れない。
 股間に手を伸ばしながら、変なことに巻き込みやがってと幼なじみの彼を罵ったが、オカズは結局のところ先ほどの彼が見せた痴態でもあった。

お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzH

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(攻)俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕

俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕 の攻側の話を同じお題で。

 突き上げるたびに、あっ、あっ、と溢れる吐息は甘く響いて、相変わらず随分と気持ちが良さそうだと思う。見た目や口調や振る舞いからは、真面目で堅物というイメージを抱きがちな先輩が、こんな風に男の下で蕩ける姿を、いったい何人の男が知っているんだろう?
 現在付き合っている恋人は居ないと聞いている。けれどこうして、恋人でもない自分を誘って抱かれているのだから、他にも気軽に誘って楽しむ相手がいるかもしれない。
 自分は先輩が初めての相手で、いまだ先輩以外を知らないのに。
「男ダメじゃないなら、俺で卒業してみる?」
 そう言って笑った時、先輩はかなり機嫌よく酔っていた。多分半分以上、童貞であることを揶揄われただけなんだろう。
 少しムキになった自覚はある。
 話の流れで、童貞捨てたいんすよねーなんて言ってしまったのは、先輩も童貞仲間なんだろうと勝手に思い込んでいたせいだ。真面目な先輩からは、今カノどころか元カノ関連の話が出たこともなかったから、交際未経験なんだと思っていた。
 対象が男なら今カノも元カノも話題に上らないのは仕方がないし、隠しておきたい気持ちもわかる。自分だって、男の先輩相手に童貞を捨てた事を、友人たちには隠している。
 こんな関係になった後も、一度たりとも抱かせろと言われたことはないし、童貞かどうかは結局聞けないままだけれど、あの時点で少なくとも処女ではなかった。まさかこんなエロい体をしてるなんて思っても見なかった。
「ふっ、……アァッ、そこっ……」
「センパイここ、強くされるの好きですよね」
「ん、イイ、そこっ、…ぁあ、あっ、も、……っ」
 どこが気持ちいいのか、どうすると気持ちいいのか、言葉にしてわかりやすく教えられたせいで、どこをどうすれば先輩が気持ちよくなれるのかは知っている。回数を重ねるごとに先輩はあまりあれこれ言わなくなったけれど、今はもう、先輩が漏らす吐息や短い言葉からその気持ち良さがわかるようになってしまった。
 自分なりにネットで調べてあれこれ試すこともしているが、先輩は楽しげに、俺の体で色々ためしやがってと笑う程度で、それを咎めることはしない。気持ち良ければなんでもいい。みたいなスタンスは、ありがたいようでなんだか寂しくもあった。
 自分ばかりがどんどんこの関係にのめり込んでいくのが目に見えるようで、なるべく行為に及ぶ間隔はあけるようにしているけれど、このイヤラシイ体の持ち主がその間どうしているのかを考えるのも辛い。いつ、恋人できたからこの関係はもうおしまい、と言われるかもわからないのに、恋人になってくださいなんて言って、逆に面倒だと切らえるのも怖い。
 俺のこと、どう思ってるんですか?
 聞きたいのに聞けないまま、都合の良いセフレを演じている。そんな関係への不満は少しずつたまっていた。
「そろそろイきそう?」
 良い場所をグイグイと擦れば、切羽詰まって息を乱しながらも必死に頷いている。
「ん、んっ、イ、きそ……あ、ぁぁ」
 先輩が昇りつめるのに合わせて、衝動的にその胸元に齧りついてやった。
「ぅああ、ちょっ、なに……?」
「所有印?」
「は、……なに、言って、あ、あぁっ」
 咎められそうな雰囲気を笑顔で封じながら、こちらはまだ達してないので、イッたばかりで敏感になっているその場所を、更に強めに擦りあげる。
 見下ろす先輩の胸元には赤い印がしっかりと刻まれていて、それを見ながら自分自身が昇りつめるのはいつも以上に心身ともに気持ちがよく、けれど果てた後はさすがに気まずかった。いくらなんでも痕なんて残したら怒られるに決っている。
 しかし、くったりと横たわる先輩は胸元にはっきと残っている痕に気づいていないのか、何も言わない。いつも通り、満足気な顔でうとうとと眠りかけている。
「寝ます?」
 これまたいつも通りそっと頭を撫でてやれば、ふふっと幸せそうに口元をゆるめながら、「うん」と短い応えが返った。
「鍵は新聞受けな」
「はい」
 こちらの返事にもう一度小さく頷いて、先輩はすっかり眠る体勢だ。
 あーこれ絶対痕が残っていることに気づいていない。それとも、わかっていて不問なのか?
 そうは思ったが、起こして問いただすなんて出来るはずもなく、文句を言われるにしてもこれは次回に持ち越しだ。
 衝動で付けてしまったその印を軽く指先でなぞってから、グッと拳を握りこむ。こんな目立つ場所に痕を残したことを申し訳ないと思う気持ちはあるが、後悔はあまりなかった。
 問われて咄嗟に所有印と言ったあれは本心だ。もし他の誰かにも抱かれているとしたら、その相手にこの人は俺のだと主張したいのだ。
 先輩とのこの時間を惜しむ気持ちは大きくて、終わりという言葉は怖いけれど、そろそろこの関係をはっきりさせる時期に来ているのかもしれない。先輩の穏やかな寝息を聞きながら、次回スルーで不問にしろ、咎められるにしろ、あなたが好きだと言ってみようと思った。

レイへの3つの恋のお題:俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕
http://shindanmaker.com/125562

 
 
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