あの日の自分にもう一度

 だってしこたま酔っていた。お前は絶対イケるとおだてられて、某お店のコスプレコーナーになだれ込み、その場で店員巻き込んで一式着替えて化粧までして写真を撮りまくった。新たな自分が誕生した瞬間だった。
 ノリノリで女装したのは自分を含めて数人いたのだが、着用した服や化粧品類は全員で割り勘だったから、そこまで懐が傷んだわけじゃない。しかも自分が着た服となぜか使った化粧品全てが譲られたので、むしろ出した金以上のものを得てしまった。
 そして今、全く酔っていない状態で、服と化粧品一式を前に延々と思案している。酔ってもないのにこれを着て化粧をする、というハードルはかなり高いが、でも、だって。
 携帯の中に残されたあの日の自分は、自分で言うのも何だが、なかなかに可愛かった。しかもめちゃくちゃ笑顔だ。
 あの日の興奮とあの妙な快感を、できればもう一度味わいたい。
「あ、飲めばいいのか」
 ぽんと手を打って、財布を手にコンビニへ向かった。そうだ。シラフでスカートを履くにはあまりにハードルが高いが、あの日のように酔ってしまえば、そのハードルはグッと下がる。
「飲み会でもあんの?」
 ウキウキで買い物かごにアルコール飲料や軽いツマミ類を次々と放り込んでいたら、ふいに声をかけられ振り返る。
「よっ、奇遇」
 片手を上げて見せたのはあの日一緒に飲んでいた一人で、こいつは女装はしなかったが、嬉々として人の顔に化粧品を塗りたくってくれた。
「どうした?」
 相手を見つめたまま口を開かない自分に、相手が訝しがる。
「あー……お前、今日、暇?」
「なに? 俺も参加していいやつ?」
 行く行くとさっそく乗り気な相手に、曖昧に頷いてレジへと向かった。
「幾ら出せばいい?」
「いや、お前は出さなくていいよ」
「いやさすがにそれはダメだろ」
「いいって。てかお前に頼みたいこと、あんだよね」
「え? 何を?」
「それは帰ってから」
「え、なにそれ怖いんだけど」
 どんな飲み会なのかと聞かれても、この場で正直に話すのは絶対に無理だ。
「じゃ止めとく? この酒飲むなら、途中では帰さないけど」
「ますます怪しいな。危険はないんだろうな?」
「お前にはないな」
「は? じゃあお前は?」
「どうかなぁ……」
 他人を巻き込もうとしている時点で、危険はなくはないだろう。あの日の事が忘れられなくて、一人で女装しようとしてたと、この男に知られることになるのだから。
 あれは酔った勢いのお遊びだ。皆でギャイギャイ騒ぎながらやるから許されるのであって、ドン引きされた上で仲間内に言いふらされたら、自分の今後の立場がどうなるかはわからない。
 でも化粧は多分重要だ。でもって絶対、自分よりもこの男の方が腕がいい。
「行く。参加する」
 勢いよく参加表明した相手に、思わずフフッと笑ってしまう。
「お前、優しいなぁ」
「いやだって、何か危険があるかも知れないとこに、お前参加させて知らんぷりはないだろ」
「まぁ、お前が心配するような危険ではないんだけどな」
 肝心な部分をのらりくらりと躱しながら、相手のことを自宅へ誘導する。自宅も飲み会会場になったことが有るので、相手もどこへ行くのかとは聞いてこなかった。
「はい、上がって」
「おじゃましま……って、なぁ、ほんとに飲み会? 何時から? まだ誰も来てないの?」
 玄関先に靴が溢れてないのと、静かすぎる室内に、相手がまたしても不審げな声を出す。
「あー、うん、飲み会、ではない」
「は?」
「一人飲みのつもりだった」
「この量を?」
「まぁ全部飲むかはともかくとして、理性ぶっちぎれるほど酔いたくてさ」
「何があったんだよ。え、俺はお前の見張り役かなんかで呼ばれたの?」
 救急車呼ぶのとかやだよと言うので、さすがにそこまで酔う気はないよと否定する。
「お前に頼みたいのはさぁ……」
 こっちこっちと寝室のドアを開けて、ベッドの上に無造作に広げられたままの服と化粧品を見せてみる。
「これって」
「そう。あの日のやつ」
「え、で、これが何?」
「化粧、して欲しいんだよ。お前に。この前みたいに」
「それは、まぁ別にいいけど」
「あ、いいんだ」
 引かれるかと思ったと言って安堵の息を吐けば、いやだって俺もかなり楽しんだしと返されて、ますます安心した。
「え、つまり、もっかい理性ぶっちぎれるほど酔って女装するって言ってんの?」
「そう」
「なんで?」
「なんで、って、いやだから、俺も楽しかったから……」
「じゃなくて、酔う必要ってあんの? むしろ酒なんか飲まないほうが出来上がりのレベル、絶対上がるだろ?」
「酔ってもないのに女装とかハードル高ぇよ」
「えー、あんだけ証拠写真残して、今更だって」
 女装すんなら飲む前にやろうぜという誘いに、気持ちがぐらりと揺れる。
「前回よりも絶対に可愛くしてやるから」
 そんな言葉に負けてシラフのまま着替えてしまえば、確かに前回以上の美少女が出来上がってしまった上に、何故か相手の方が、次はもっと衣装をどうのと言って上機嫌でノリノリだ。
「いやお前、次はって」
「え、またやるんだろ?」
 もうしないとは言えなかったし、このメイクの腕を手放したくないなと思ってしまったのも事実で、気づけばメイク係に指名しろよの言葉にも頷いていた。

有坂レイさん、今日の単語です ・誕生・スカート・アルコール で何か作ってください
https://odaibako.net/gacha/28?share=tw

 
 
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あけおめとコネタとメルフォお返事(雑記)

明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願い致しますm(_ _)m

昨日の投稿記事の最後にも書きましたが、6日までは一応不定期更新になります。
ただ、明日(2日)は多分更新できるはず。

さすがに今年は昼寝まではしてないけど、昼からそれなりの量飲んで、先程帰宅しました。例年行事。
でもってその後、何か年明けネタ書けないかなぁと久々に診断メーカー弄って、結果、短い話を書きました。
短いのでこのままここに文字色変えて載せますね。

 帰省しない一人暮らし連中で年越しパーティーをしようと誘えば、相手は誰が来るのと聞いた。参加決定メンバーの名前を挙げていけば、あっさり彼も参加を決めたけれど、その理由はわかっている。彼が密かに想いを寄せる男が参加するからだ。
 なぜ彼が想う相手を知っているかと言えば、彼が自分の想い人だからだ。想う相手を見続けていたら、その相手が見ているのが誰かもわかってしまった。
 男ばかりの不毛な一方通行片想いに、気づいているのは自分だけだと思う。

 当日は一番広い部屋を持つ自分の家に総勢7名ほど集まった。
 想い人の隣席を無事ゲットした彼の、反対隣の席に腰を下ろして、彼を挟んで彼の想い人と話をする。だって彼との会話を弾ませるには、彼の想い人を巻き込むのが一番いい。彼の想い人に、彼へ返る想いなんて欠片もないとわかっているから、胸が痛む瞬間はあるけれど、割り切って利用させて貰っている。
 年明け前からいい感じに酒が回っていたが、年明けの挨拶を交わした後もダラダラと飲み続けて、気づけば大半が寝潰れていた。そして隣の彼もとうとう眠りに落ちるらしい。
 先に寝潰れた連中同様、寝るなら掛けとけと傍らに出しておいた毛布を渡してやれば、広げて被るのではなくそれにぼふっと顔を埋めてしまう。酔っ払いめ。
 そうじゃないと毛布の端を引っ張れば、顔を上げた彼がふふっと笑って、お前の匂いがする、なんて事を言うからドキリと心臓が跳ねた。
 そんな顔を見せられると、男が好きになれるなら俺でも良くない? って気持ちが膨らんでしまう。いつか、言葉にしてしまう日が来そうだと思った。

有坂レイの元旦へのお題は『不器用な独占欲・「あなたの匂いがする」・片恋連鎖』です。 https://shindanmaker.com/276636

 

それと、メルフォから年末のご挨拶を送ってくださったMさま。
「理解できない」のお風呂シーン、楽しんで貰えたようで嬉しいです(´∀`*)
今回視点の主の生育環境が複雑だったせいか、いつも以上に気持ち整えるのに時間が掛かってダラダラと続いてしまってますが、ラブラブな二回目エッチを書きたくて堪らないので、もう暫くお付き合いよろしくお願いします。
色々と振り切って乗り越えた先、甘々な二人になって欲しい気持ちは私もかなりあるので、続きも頑張りますね〜

短編や1話完結の話も好きと言って下さってありがとうございます。
せっかくツイッターやってるんだから、もうちょっと遊べたらいいなとは思っているのですが、なかなかそちらにまで手が出せず残念です。でも1年分纏めると、1記事に充分な文字量はあるので、今年も機会見つけて書いていきたいと思います。

よほどのことがない限り、今年も変わらず書き続けるつもりですので、本年もどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

 
 
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ツイッタ分(2019)

ツイッターに書いてきた短いネタまとめ2019年分です。

有坂レイのバレンタインへのお題は「夢はいずれ醒めるもの」、ゆるいBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。 https://shindanmaker.com/666427

街にチョコが溢れる季節になったら、そっとあれこれ吟味して、これだという一つを選んで購入する。最近はじっくりあれこれ眺められるから、ネット通販することも増えた。
どんな風に渡すか、渡したらどんな顔をするか、どんな反応が返ってくるか。バレンタインまで何度も繰り返し考える。告白して、受け入れて貰って、晴れて恋人になるような、そんな甘い夢を見る。
そして14日になったら箱を開けて、たくさん重ねた甘い夢ごと、自分でバリバリむしゃむしゃ食べる。だって、僕から君へのチョコなんて、渡せるはずがないんだもの。

1ツイート短縮版 → 街にチョコが溢れる季節になったら、これだという一つを選んで購入する。渡したらどんな反応が返ってくるか、何度も繰り返し考える。晴れて恋人になるような、そんな甘い夢を見る。 そして14日になったら、重ねた夢ごとバリバリ食べる。だって、僕から君へのチョコなんて、渡せるはずがないんだもの


エイプリルフール

 今日は入社式だなんだで、まともに仕事なんて出来ないのはわかりきっている。しかし後々の事を考えたら、少しでも進めておきたくて、ほぼ始発に近い電車に乗って出社した。
 最寄り駅の改札をくぐる辺りで、声を掛けられ振り向けば、同じ部署の同僚が苦笑顔で片手を上げている。
 少しだけ立ち止まって、他愛ない話をしながら並んで会社へ向かう。随分早いですね、だとか、お前もだろ、だとか、入社式面倒、だとか、仕事させろよなぁ、だとか。
「ところでさ、凄くいい機会だと思うから、ちょっと告白したいんだけど」
 会社のビルに入ってからは周りに誰も居なかったけれど、それを口に出したのはエレベーターの中だった。二人きりの密室ってやつだ。
「え、懺悔的な何かですか?」
 当たり前だが仕事絡みと思われたようだ。
「いや、恋愛的な方」
「ああ、そっち」
 面倒事を想像してか嫌そうな顔をした相手に、にやっと笑ってそう伝えてみれば、相手はなんだと言いたげにあっさり流してしまう。
「なんだつまらん」
 もっと驚けよと言えば、だってエイプリルフールですもんと、不満げに口先を尖らせる。なんだか拗ねているみたいでドキリとする。
「なんつー顔だよ」
 ドキリとしてしまった事に内心少々慌てながら、それをごまかすように、告白されたかったのかと聞いてやる。わかりやすく、からかい混じりの口調と顔で、相手の顔を覗き込んだ。
「そうですよ」
 不満げに口先を尖らせたままの拗ねた顔が近づいて、一瞬の接触の後で離れていく。
 言葉なんて出ない。ただただ目を瞠って相手を見つめてしまう中、目的階への到着を告げる音が鳴り、エレベーターが停まった。
「エイプリルフール、って事にしておきます?」
 クスッと小さな笑いとそんな言葉を残して、開いた扉から相手が出ていくのを、やっぱりただただ見送ってしまった。
 ゆっくりと扉が閉じて行く中、振り返った相手が、やっと驚く顔を見せていたけど、もちろん欠片だって楽しくない。降り損ねたエレベーターが動き出して、一人きり、小さく呻いて頭を抱えた。

 

有坂レイへのお題は「ホント、君って奴は」、赤裸々なBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。 https://shindanmaker.com/666427

口の中に吐き出されたものをごくんと飲み込めば、焦った様子で名前を呼ばれた。顔を上げて、ニヤッと笑って、口を開けて、何も残ってませんよと教えるように舌を出す。「ホント、君って奴は」呆れた顔が寄せられて、けれど差し出す舌を食まれる瞬間には嬉しそうに笑うから。ホント、君って奴は

 

有坂レイへのお題は「君がいない今」、ゆるやかなBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。 https://shindanmaker.com/666427

君がいない今、日々考えてしまうのは、君がどれほど僕を想っていてくれたかと、僕がどれほど君を愛していたかだ。なぜ君が去ったかはわかっているし、君の決意を踏みにじりたくなくて、それらを受け入れ追うことはしなかったけれど、でもやっぱり後悔している。君に、会いたい。会って好きだと言いたい

 

一次創作BL版深夜の真剣一本勝負 第287回のお題は、
・おやつ ・疲れた彼に ・「好き」ってなに?

 なんで、と聞かれて正直に好きだからと言ったら、相手は一気に雰囲気を固くした。
「好き、ってなに?」
「なにって言われても、好きは好きだけど。だいたい、そっちこそ、好きだから受け取ってるんじゃないの。というか、また持ってこいって言ったのそっちじゃない?」
 たまたま放課後下駄箱でかち合った相手があまりに疲れた顔をしていたから、その日の部活で作ったお菓子を一部分けてやったのが始まりで、また持ってこいよの言葉に応じて部活どころか家で作ったものまでアレコレ渡しているのは、彼があまりに美味しそうに食べてくれるから、というその一点につきるのだけど。
「俺が好きなのはお前じゃなくてお前が持ってくる菓子だけ、なんだけど」
 おもいっきり「菓子だけ」の部分を強調して言われて、彼が何を誤解しているかがわかった。
「僕が好きなのもお菓子作りだけだからご心配なく」
「は? つかこれ、お前の手作り?」
「え、今更そこ!? てか市販のお菓子じゃないのはわかって食べてたよね? 誰の手作りだと思ってたんだよ」
「お前の彼女、とか?」
「うっわ最低」
「なにがだよっ」
「僕の彼女の手作りと思いながら、それを僕に渡せってねだるその神経が信じられないんだけど」
「よその男にホイホイ渡せる程度の付き合いなんだろ」
「って思ってたって話ね。勝手な想像で決めつけてましたって話ね」
「あーくっそ、そうだよ。悪かったよ。つか、やめんなよ」
「やめるって何を?」
「菓子、持ってくるのを」
「えー……」
 渋れば焦った様子で、いやほんとゴメン、だとか、また食わせてくれよだとか言い募る。それを黙って見ていれば、今度は情けない顔になって、どうすれば許してくれるんだよと途方に暮れた様子で告げるから、少しばかり驚く。
「そんなに好き?」
「すげー好き」
 言い切ってから、お前が作る菓子の話なと慌てて付け足すから笑ってしまった。
「いいよ。そこまで好きって言って貰ったら、ヤダって言えないよ」
 あからさまにホッとする様子を見ながら、あれこれちょっとマズイかなと思う。好きなのはお菓子作りだけだからご心配なく、という言葉を撤回することになる日が、いつか来そうな予感がした。


これで今年の更新は最後になります。

一年間お付き合い下さりどうもありがとうございました。
今年もまた連載中作品(理解できない)が年またぎになってしまいましたが、年明け後、通常通り更新できるようになるのは6日以降になりそうです。が、連載途中の作品をそこまで放置するのは躊躇われるので、なるべく途中にも更新できるよう頑張りたいと思っています。

 
 
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親戚の中学生を預かり中2(終)

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「待て。いらない。というかしない」
「なんで?」
「なんで、って、そんなの」
 下心は認めるが、相手が中学生の男の子だってことはちゃんとわかっている。フェラしてあげると言われて、じゃあお願いと言い合うような関係が欲しくて、お菓子持参で構いに来ていたわけでもない。
 しかもこの慣れた様子からすると、本当に経験がありそうだ。それも絶対、本人にとって不本意な形で。
「フェラよりハグがいい、から?」
「なにそれ。童貞?」
「ああ、うん、そう。いきなりフェラとかハードル高い」
 言えばふはっと大きく息を吐いて、それからおかしそうに笑い出す。年相応の、作られていない笑顔を初めて見た気がした。
 本当はこんな風に笑うんだなと思いながら見つめていれば、相手が自分の隣のスペースをポンポンと叩いて誘う。応じて横になれば、もぞもぞっと近づいてきた相手が抱きかかえるようにこちらの背中に腕を回した。
「ほんとにハグしてくれるんだ」
「お菓子貢いでくれるお礼くらいは、してもいいって思ってたから」
「俺が運んでくるお菓子って、やっぱ貢物扱いなわけ」
「違うの?」
「少なくとも、こーゆーことしたい意味の貢物じゃあなかった」
「時々やらしい目で見てたくせに」
「それに関しては、隠しきれなくって本当にすみませんでした」
「え、それ謝るとこ? しかも隠しきってたら問題なかった、みたいな言い方なに」
「隠しきれててお前が気づかなけりゃ、お前が不快に思うこともないんだから、心ん中で何思ってようが俺の勝手だろ」
「こっちからすると、隠すの上手な人のが困るけどね。こいつはいつかやらかすなって思える相手のが扱いやすい」
「なるほど。というかやっぱこういうこと、慣れてんの」
「慣れてますけど。童貞には想像つかないようなエロいこともたくさんされてきたビッチですけど。しかもそんな俺のせいで家庭崩壊予定ですけど」
 聞いてないのと言われて、詳しい事はなんも知らないと返せば、余計な事を言い過ぎたと悟ったらしく、チッと舌打ちが聞こえてくる。
 さすがに、この子が原因での離婚問題とは思ってなかった。親はどこまで知っていて、この子を預かって来たんだろうか。
「世の中狂ってんな」
「なにそれ。どういう意味?」
「いくら可愛い見た目でも、中学生の男の子がエロいことされ慣れてるってオカシイだろ」
「ビッチな俺が、そういうことされたくて誘ってる結果だとしても?」
 言いながら、背を抱く腕がスルルと腰を撫でおり尻を揉む。更にぐっと寄せられた体が、わざとらしく股間を圧迫してくる。
「それ嘘だろ。というかもしそれが事実だとしても、中学生の誘いに乗ってる大人が居る時点でだいぶヤバイよ、お前の周り」
 慣れてるって言い切れるくらい当たり前の日常なら自覚ないのかもしれないけどと言いながら、相手の腰を掴んで寄せられた体を引き剥がした。
「自覚はあるよ。俺の周りはだいぶヤバイって。でも相手がオカシクなるのは俺が誘惑するせいらしいからね」
 尻を揉んでいた手がまたスルルと腰を這い登ってくるが、今度は服の下に潜り込んで素肌に温かな手が触れる。擽ったさと気持ちよさが絶妙に混じる手付きでサワサワ撫でられると、確かに煽られ劣情が湧き出しそうだ。
「で、お前としては、俺もそのオカシナ大人に仲間入りして欲しいわけ?」
「そう見える?」
「めちゃくちゃ試されてんなぁとは思う」
「信じてから裏切られるより、さっさと手ぇ出してくれた方が有り難いってのはあるかな」
「もしかして信じさせてよってお願いされてる?」
「いや全く」
「まぁ俺だって煽られ続けたら理性切れる瞬間はあるかもしれないから、信じていいよとか言う気もないんだけど、いくら慣れてるったって中学生の男の子相手に何かするのは抵抗ありすぎるし、お前の誘惑になんか負けたくないし、取り敢えずは買ってきたタコ焼きが冷めきる前に食って欲しいなと思うんだけど」
 タコ焼きという単語にはっきり反応した相手に、一緒に食べようと誘えば、服の中に突っ込まれていた手が抜けていく。
 内心でだけ大きく安堵の息を吐き出しながら、この子がこの家にいられる間に、何がしてやれるかを考えようと思った。

理解できない1話へ→

有坂レイは「場所:ベッドの上 時間:夕 攻め:尽くし 受け:強気 何してる?:イタズラ」で、書(描)いて下さい。
https://shindanmaker.com/204438

 
 
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親戚の中学生を預かり中1

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 コンコンと部屋のドアを叩いても無反応だった。部屋にいるのは確実だから、ヘッドホンで音楽でも聞いているのかも知れない。
「入るぞー」
 再度ドアを叩いてついでに声もかけてから、ゆっくりとドアを開いた。
 ドアの隙間からこぼれるのは蛍光灯の明かりではなく窓から差し込む夕日の赤色だったから、あれ? と思いながらそのまま大きくドアを開いて中を覗く。
 目的の人物はベッドの上だった。ベッド脇にまで近づき見下ろしても、相手の反応は何もない。
 穏やかとは言い難い、眉を寄せた難しい顔をしているけれど、部屋に差し込む夕日のせいもあってどこか色めいて見える。ドキリと心臓が跳ねるのは、自身の中にある下心を自覚しているせいだろう。
 夏休みの間だけ預かる事になった、と言われて突然連れてこられた、一応は親戚らしいこの子の抱える事情について、詳しいことは聞いていない。相手は7つも年が違う中学生で、ついでに言うなら受験生で、親からはあまり構ったりせずそっとしといてやれと言われているのに、どうにも気になってちょくちょく部屋を訪れてしまう。
 口実としてお菓子やらを持参するせいだろう。邪険に追い返されはしないが、もちろん歓迎されてもいない。でもその塩対応になぜか少しホッとする。
 親へ見せる礼儀正しさや愛想の良さに、親自身は全く違和感がないようだけれど、それを見ているとなぜかハラハラするのだ。怯えているような、無理をしているような、そのくせそれを綺麗に隠しきって笑おうとする様子が、どうにも媚びて見えてしまう。
 相手の事情の詳しいことは聞いていないが、親の離婚問題に受験生を直面させたくない、程度のことは聞いている。だからまぁ、離婚問題を抱える親の間で、親に気を遣いながら生活していたなら、大人へ向ける態度がああなるのも仕方がないと、納得出来ないことはないのだけれど。
 見下ろす寝顔がますます歪んで苦しげな息を漏らすから、思わず伸ばした手で頭を撫でた。少しでも楽になって欲しかったこちらの気持ちと裏腹に、相手はビクッと大きく肩を跳ねると、ゆっくりと瞼を上げていく。恐る恐る開かれていく瞳が、こちらの顔を捉えて一度大きく見開かれ、それから何かを迷って揺れる。
 声が掛けれないまま見つめてしまえば、小さく諦めの滲む息を吐いた後、今度はニコリと笑ってみせる。艶やかに、と言えそうなその笑みの威力を、相手は間違いなく自覚している。
「する?」
 疑問符の乗った短な言葉に、けれど何を聞かれたのかわからなかった。
「貢いでくれるお菓子代程度はしてもいいけど」
「は?」
「フェラで良い?」
「ふぇっ!?」
 何を言い出しているんだと驚くこちらを見つめる相手の目は酷く冷めている。
「俺をそういう目で見てる自覚、あるよね?」
 塩対応なのはこちらの気持ちに気づかれてるせいもあるかも、と思うこともないわけではなかったが、まさか相手から直球で指摘されるなんて思わず、何も答えられずに居たら相手に強く腕を引かれて体勢を崩した。
「うわ、ちょっ」
「今更何慌ててんの。やるならさっさとしちゃおうよ。あまり騒ぐとおばさん来ちゃうかもよ?」
 ベッドの上に膝をつくように乗り上げてしまったこちらのズボンのフロントボタンに、躊躇うことなく伸ばされる手を慌てて掴んで阻止した。

続きました→

 
 
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前世の記憶なんて無いけど3(終)

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 眼下にしっとりとして膨らみの半減した尻尾が、戸惑うように震えている。付け根から毛並みに沿うように撫でてやれば、気持ち良さげな吐息をこぼしながら、後孔をきゅうきゅうと締め付けてくる。
「ぁ、ぁ、ぁあ」
「気持ちよさそ。そろそろ尻尾でイケんじゃない?」
 勝手にお尻振っちゃダメだよと言いながら、腰は動かしてやらずに、尻尾だけを何度も撫でた。
「や、ぁ、むり、むり、ですっ」
「そう言わずに、もーちょい頑張ろうよ。ねっ」
 しつこく尻尾を撫でながら、尾の先を持ち上げそこにペロリと舌を這わせた。
「ひっ、ぁっ、だめだめだめ」
 怯えた声音のダメを無視して、尻尾の先を咥えてちゅうちゅう吸ってやれば、びくびくと体を震わせてとうとう絶頂してしまう。
「ほら、できた。お前は本当に可愛いね」
「ぁ、……ぁぁ……」
 いいこいいこと褒めるように更に尻尾を数度撫でてやってから、ようやく尻尾を開放して相手の腰を両手で掴んだ。
「じゃ、尻尾でもイケるようになったご褒美タイムといこうか」
 好きなだけイッていいからねと告げて、ぐっと引いた腰を勢いよく叩きつける。
「ぁあああっ」
 相手の体が仰け反って痙攣し、敏感になっている体は、その一撃だけで軽く達してしまったらしかった。しかしもちろん、手を緩めてやるようなことはしない。
 そのまま激しく腰を振って追い詰めていく。
 相手の体のことは知り尽くしている。彼の性感帯を一から全て開発し、慣らし、躾けてきたのは、前世の自分と今の自分だからだ。一途な彼は、生まれ変わりを待つ間も、その体を誰にも触れさせずに来たらしい。本当に、どこまでも可愛い男だった。
 さて今日はあとどれくらい、人型を保てていられるだろうか。性も根も尽き果てて、人のカタチすら保てず晒すケモノの姿が、酷く愛しくてたまらなかった。
 なんせ、初めてその姿を晒させた時、それが引き金になって前世の記憶を取り戻したくらいだ。
 前世の記憶が戻ったせいで、その後しばらくあれこれと揉めたけれど、結果だけ言えば、恋人にはなれた。というか恋人どころか、指輪を与えて便宜上嫁にした。前世からの主従関係が生きている以上、相手はこちらに逆らえないのだから当然の結果だ。
 むりやり得た関係が虚しくはないのかと思うかもしれないが、そんなことは欠片も思っていない。
 記憶は戻ったが、自分たちの関係まで丸っと全て過去に戻ったわけじゃない。記憶が戻ったので、全くなんの力もないただの人の子、よりは多少マシではあるけれど、それでも、知識があるだけの大した力も持たないただの人の子だ。
 そこには以前あった柵はなく、あるのは、彼が延々と待ち続けてむりやり繋いだ二人だけの縁なのに。
 自分たちがツガイとなったところで、誰も咎めはしないだろう。事実、記憶が戻って、彼とツガイとなってからも、なんの干渉も起きていない。まぁ、様子見、という可能性も高そうだけれど。
「あぁ……ァぁ…………ハァ、ハァ……」
 布団の上に伏した体がとうとう狐の姿となり、目は閉じられ、開いた口から荒い息だけを漏らしている。覆いかぶさるように、しっとりと濡れた毛皮をギュッと抱きしめ、最後の一発を注いでやってからそっと繋がりを解いた。
 ホッとしたように息を吐いて、そのまま寝落ちてしまった体を、なんども優しく撫でてやる。
 いつの間にやら外はすっかり明るくなっていて、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。毛皮を撫でるのにあわせ、差し込んだ朝日の下でキラと相手の毛皮が光ったように見えたが、正確には光ったのは毛皮ではなく、毛皮に埋もれているチェーンのネックレスだ。
 こうして、人型が保てない程に抱いてしまう時があるから、指に通すことが出来ないだけで、そのチェーンには与えた指輪が通されている。毛皮の中からツツッとその指輪を引き出してやれば、まるで輝かしい未来を指し示してでも居るように、銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった。

 
 
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