今更嫌いになれないこと知ってるくせに17

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 目が合ったと思った瞬間、ぶわりと盛り上がる涙に焦る。焦っている間にそれはあっという間に瞳からあふれて流れ落ちた。
「にーちゃんの嘘つき」
「えっ…?」
 ふにゃんと顔を歪ませながら、こちらの戸惑いを構うことなく、甥っ子は言葉を続ける。
「やだって言った。触っても言ったのに」
 グスッと鼻をすする甥っ子が何を言いたいかはわかった。それを言うなら、意地悪じゃなければこちらの抱き方でいいだとか、抱き方を教えてだとか言ったのは誰だと言ってやりたかったが、さすがにそれは飲み込んだ。
「あー……うん、ゴメン?」
「悪いと思ってない」
 思わず疑問符が付いてしまったのを聞き逃さなかったようで、やはりグズグズと鼻をすすりながらも口を尖らせる。酷く子供っぽいしぐさに、逆に愛しさが込みあげるのだから不思議だった。
「そりゃあなぁ……」
「やっぱりだ」
 酷いと口にされても苦笑するしかない。
「だってお前、実際後ろだけでイけたろ? しかも指3本で」
「そーだけどっ」
「俺はお前に気持ちよくなって貰おうと思っただけで、意地悪してたつもりはないぞ?」
 宥めるつもりで頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でながら言葉を続ける。
「やだったなら、ここまでにするか」
「えっ?」
「このまま続けても、お前にさっき以上に怖い思いさせるだろうし」
「え、待って。なんでなんで」
 慌てたように起き上がってこようとする体を制して、逆に自分が甥っ子の隣に寝転んだ。よいせと声をかけながら、仰向けの甥っ子の体を自分側へと向けさせ、軽く引き寄せるようにしながらゆるりと抱きしめる。
 抱きしめた瞬間、本当に大きくなったと、しみじみ思った。なぜか、泣いて口をとがらせ拗ねる姿に、カチリと昔の甥っ子の姿がハマったようで、酷く愛しい気持ちが湧き続けている。
「自分では指2本までしかしたことなくて、しかも2本入れたらあんまり気持ちよくなれないって言ってたもんな。それが指3本入って、前触られないままイッちゃうとか、たとえ、いずれはそうなれるって知ってても、初めての体験にビックリしたろ。途中、怖いとも言ってたよな。ようするに、まだ早いんだよ、繋がるセックスするにはさ」
「嘘っ、やだよ。約束した。抱いてくれるって言った」
「うん。だから抱いたろ。繋がるとこまでは出来なかったけど、充分にセックスだったよ」
「まだ出来るよ。してよ。ちゃんと繋がりたい」
「そう焦らなくたって、いつかまた、もっといい機会がくるって」
「適当なこと言うなよ。いつかっていつ? 俺と恋人になってくれる気でもあるの? 父さんが好きなくせにっ。今しかない。今日しかないのにっ」
 既に緩んでいた涙腺から、ぶわわっと溢れた涙はあとを絶たない。
 次を明確に提示する事は出来ないし、恋人になろうとも言ってやれない。だからと言って、いつかもっと好きな人が出来るよなどと言う事も出来ない。そんな言葉は追い討ちを掛けるようなものだし、そもそもそうなって欲しいなんて欠片も思っていないからだ。
 気持ちに応えられないくせに、出来れば他の誰かを好きになって欲しくはないだなんて、そんな身勝手過ぎる自分の中の気持ちに気づいてしまって遣る瀬無い。
「ゴメン。ごめんなさい。もうやだとかやめてとか絶対言わないからっ。ねぇ、だから最後までしてよ。お願いだから」
 掛ける言葉を持たず、抱きしめ宥めるように背をさするだけの自分に焦れたのか、苦しげに泣きながらも謝罪と懇願を繰り返す相手に、どうしてそこまでと思う。そう思うと同時に、そういえば義兄の変わりでいいと言い切られて始めたのだ、ということも思い出す。目の前の相手の可愛さに夢中になって、途中から甥だとか義兄だとかはすっかりどこかへ飛んでいた。
「指3本いけたんだから、もう入るでしょ? ねぇ、入れてよ。父さんの代わりでいいし、もう優しくしたくないってなら、ひどくしても、突っ込んでくれるだけでも、もぅ、いいから」
 泣きながらなので途切れ途切れではあるが、どこまでも必死に求めてくる。きっと若さゆえ視野が狭くなっているのだとわかっているのに、それを指摘したところで納得はしないだろう、ということまでもわかってしまうから本当に困る。
「お前にこれ以上辛い思いさせたくないんだってわかれよ」
「俺のこと、そんなに大事?」
「大事だよ」
 即答したが、なぜかますます悲しげな顔をさせてしまった。
「でも俺は、このまま抱かれて辛いより、抱いてもらえない方が辛いよ」
「どっちにしろ辛いのわかってるなら、自分の体は大事にしろって言ってんの。こんな形で初めてをムリヤリ散らす必要なんかないだろ」
「だってにーちゃんがいいんだもん。ずっと好きだったんだから初めての人になってよ。そしたら諦めるから。てかもういっそ酷くしてよ。父さんの名前とか呼んだらいいよ。俺が絶望して、二度とにーちゃんに抱かれたいなんて思わなくなったら、にーちゃんだってホッとするだろ」
 やけくそ気味な発言に、こちらもカッと頭に血が上る。
「バカか。そんなん言われて抱けるかバカ」
「なんでだよっ。俺に好かれたままのが困るくせに。このまま抱いて、にーちゃんのこと嫌いにさせてよっ」
「そんな程度で嫌いになれるってなら、そこまでしても抱いてやらない俺を嫌いになれよ」
「そんなの……」
 ぐっと言葉に詰まった後、耐えることを一切やめてわーわー泣きじゃくり始めた相手にぎょっとする。
「わ、悪い。言い過ぎた」
 煽られて売り言葉に買い言葉で言い返すなんて、まったく大人げないことをした。
「にーちゃんのバカっ嫌いだ。嫌いだっ」
 泣きじゃくる勢いはおさまらないまま、まるで甥っ子自身に言い聞かすように嫌いだと繰り返す。実際に嫌いだと言われればこんなにも胸が痛い。
「うん、いいよ。嫌いでいい。本当に、ごめん」
 抱きしめる力を強めても抵抗はなかった。それどころか相手の方からさらに擦り寄り、肩口に泣きはらした目元を押し当ててくる。それでもその口からこぼれるのは、しゃくりあげる声に混じった嫌いの言葉だった。

続きました→

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに16

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 イかせてという要求を素直に飲むつもりはない。握ってはやったが、達せるほどの刺激は与えなかった。
 まだイけないという事に気づかれる前に、少し冷たいぞと声を掛けてから、直接尻肉の間にローションを垂らす。そうしてから、今度は先程までと逆の手をその場所へ押し当てて、萎えてしまわない程度に前を扱きつつ揃えた2本の指を押し込んでいく。
「ふぁっ、はっ、ぁあっ、んぁあ」
 最初だけ苦しげな息が漏れたが、前と後ろとを同じリズムで弄ってやれば、すぐにまた甘くとろけた声を発する。気持ちが良いかを尋ねれば、躊躇いなく気持ちが良いと帰ってきた。
「ん、イイ、きもちぃっ、あ、ああ、……」
 一段と声が高くなり腿に力が入ってきたところで、前の手を離しつつ後ろの手の動きを一切止めれば、昇りつめる事が出来なかった甥っ子の悲壮な戸惑いが強く伝わってくる。
「な、なんで……いじ、わる……?」
 泣きそうな掠れ声がまた意地悪なのかと問うので、極力優しく伝わるようにと思いながら否定を返した。
「違うよ。もっとこっちが気持ち良くなれてから」
 言いながら後ろだけ先に動きを再開させる。
「大丈夫。もうすぐもっとお尻で気持ちよくなるから、ちょっと我慢しながら、楽しみにしてな」
 それからまた、前後同時の刺激を達しそうになるまで続けては、最後の刺激を与えないという事を何度も繰り返した。
 我慢しきれずにイきたいイかせてと繰り返し始めたところで指を3本に増やせば、さすがにキツそうで、手の中のモノが少しばかり勢いを失くしてしまう。
「くっ、あっ、ぅぅっ」
「痛みはない?」
 問いかける言葉は届いているようで、何度も頷く頭が揺れた。苦しいかと問い直せば、やはり同じように頷いてみせる。
「指3本、初めての太さだもんな。でももう根本まで入ってる」
 これ以上太くはならないよと言いながら、埋めた指は動かさず前だけを弄ってやった。
「ん、ぁぁ…ぁあ……」
「うん。ちゃんと可愛い声も出せるな。また気持よくなれそうか?」
「ぁっ、んんっ、だい、じょぶ…た、ぶん、…ぁあ」
「次気持よくなれたら、今度こそイッていいからな」
 そうは言ったものの、さすがに今度は先ほどと同じレベルまで熱が戻るには、少しばかり時間がかかった。
 それでもゆっくりと何度も繰り返すうちに、甘えた声がもうイかせてと頼み始める。そうなってからは、前に回した手だけギリギリで離し、後ろに埋めた指は動きを止めずに中を突き続けるようにした。
 そんなことを数回繰り返したところで、こちらの意図はすっかり相手にも伝わったようだ。
「あ、ああ、ま、えっ、まえっ、やめな、いで…さわっ、てぇ」
「お尻だけでも、もう気持ちいいだろ?」
「やっ、やっ、こわ、い…まえ、もっ、…あ、あぁ…おねっ、がい…」
「んー、じゃあ、手ぇ離してる間はここ弄ってあげよう。ああ、ほら、乳首もピンピンに勃起してるな」
 一切触れていなかった胸の先を、爪先で掻いて捏ねるように押しつぶす。
「あああん、やぁああ」
「今、お尻凄くシマッたよ。キモチイイんだな」
 もう片側へも手を伸ばし、今度は親指と人差し指で摘んで軽く引っ張りながら、指の腹を擦りあわせて挟まれた乳首を転がした。
「やぁっ、だめっだめぇ」
「ダメじゃないだろ。大丈夫だからこのままイッてごらん?」
「ひぅっんんぁぁあやぁぁあ」
 前屈みになり相手の頭に顔を寄せて、凄く可愛いよと囁きながらダメ押しで耳を舐ってやれば、ガクガクと体を震わせて昇りつめたことがわかる。
「はい。良く出来ました」
 一回抜くぞと声をかけてから、埋めていた指をゆっくりと引き抜いた。
 用意していたタオルで自らの指を拭いた後、途中何度も継ぎ足して背中と尻肉に零れたローションを拭ってやって、それからそっと横臥する相手の肩を掴んで引き倒す。一瞬抵抗を感じたが、すぐに素直に従い仰向けになった相手は、羞恥と戸惑いと疲れとを混ぜた表情を見せながらも、どこかぼんやりとしている。
「どうする? 少し休憩しようか?」
 ドロドロになった相手の股間も軽く拭ってやりながら問いかければ、ようやく視線がはっきりと自分を捉えるのがわかった。

続きました→

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに15

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 指2本がキツイと言っていたから、なぜ苦しげな息を吐いたかはすぐにわかった。
「待って。ストップ」
 慌てて止めれば、羞恥に耐え切れなかったのか途中からずっと下ろしていた瞼を上げて、なぜと言いたげに潤んだ瞳を向けてくる。
「気持ちいい所まででいいから」
「でも……」
「気持ちよくなりすぎてイきたくなる?」
 尋ねれば、躊躇いがちにだけれど、肯定を示すように頷いた。やはり感じすぎてしまわないように、指を増やして自ら広げていく方向へ移行したようだ。
「じゃあちょっと俺と交代ね」
 体勢はそのままでいいよと言って、横臥する甥っ子の背後へまわる。ローションを手のひらに多めに垂らしてから、それを送り込むようにしながら、少しだけ開いた後ろの口へ中指をゆっくりと埋めていく。
 緊張からか甥の体はかなり強張っていたし息も詰めているようだったが、さすがに直前まで本人の指が埋まっていたその場所は、指の1本くらいならローションの滑りを借りて難なく収まるようだった。
 取り敢えず根本まで埋めてから、少し待って甥の様子を探る。初めて他人に触れられたのだと思えば、仕方がないどころか可愛らしくもあるが、浅く短く繰り返す呼吸に、やはり緊張が酷いようだと思った。
「深呼吸して。別に痛くも怖くもないだろ?」
 もう片手で肩と背中を撫でてやりなが促せば、少しづつ呼吸が変わっていく。
「そのまま呼吸続けて。俺の指でも、キモチクなろうな」
 言いながら、ゆっくりと指を引き抜いた。抜けてしまわない程度に引きぬいた後は、またゆっくりと中へ埋めていく。
 見ていたと言っても、その場所を弄る指を注視していたわけではない。というよりも、角度的にそんなものは見えていなかった。ただし手や腕の動きから、気持ちが良いだろう速度をある程度は推測できる。
 様子を見つつ、その気持ちが良いであろう速度を保って抜き差しを繰り返せば、一度熱の上がった体はすぐにも快感を思い出したようだった。
「……ぁッ」
「いいよ。また気持ちよくなってきたね」
 可愛いよと声をかければ、背後からでも少し嫌そうに首を横に振るのが分かった。
「本当に可愛いのに」
 相手には確実に見えていないが、少しだけ口を尖らせて拗ねた口調で告げた後、前屈みになって先ほど撫でてやった肩にガブリと齧りついた。
「んああっ!?」
「ちなみに今のは俺からすると意地悪の部類な」
 驚きで大きく上がった声に満足しながら少しだけ笑ってしまったら、ヤダよと今にも泣きそうに弱々しい声が返される。
「意地悪されたくないなら、もっと可愛く啼いてごらん?」
「わ、っかんな…い、ぁ、んっ、ムリっ」
「簡単だよ。素直に気持ちいいって言えばいい」
「ぁあ、…ああんっ、んっ」
「気持ちいいだろう?」
 そういう声を出してるよと指摘しつつ、何度か問い直せば、やがてその口から気持ちが良いとこぼれ始める。
「あ、ぃいっ、…ん、キモチ、いっ」
「いい子だ」
 頭を撫でてやったら、声のトーンが少しばかり上がった気がした。
「あっ、あっ、にー…ちゃ、きもちっ、きもちぃよぉ」
 いい子だ可愛いと繰り返しながら、空いた手で主に上半身の触りやすい場所を優しく撫で擦りながらゆるく刺激してやれば、声音はどんどん甘えを含んでいく。
「ぁあ、も、イきたい…前、さわ、って…イかせてぇ」
 甘ったれたすすり泣きの懇願に、一度指を引きぬきその手を前に回して、ガチガチに張り詰め先走りをトロトロと零して濡れるペニスを握ってやった。

続きました→

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに14

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 あの朝の行為は衝動的にという可能性が高そうだし、ムリヤリに聞き出すような事でもない。なので追求するような真似はせず、軽く握ったままの手を外して、下側奥へとソロリ指先を這わせていく。
「舐めなくていいなら、じゃあこっち、解しはじめていい?」
 追求がなかったことにホッとした様子で頷く甥っ子を促し、まずはベッドの上に上がってもらった。その時、腰に巻かれたままだったバスタオルを解いてベッド下へと放ってしまったから、丸裸にされた甥っ子は心許なさそうな表情で、少しばかり身を縮こまらせている。
「自分でする時どうやって弄ってる? ってか、まずはちょっと自分でやってもらおうか」
 甥っ子が持参した未開封のローションボトルを開封しながら、ふと思いついて口にしてみたら、相手は大層慌てたようだ。
「はぁあ?」
「どうすると気持ちいいのか、やって見せて?」
「ええっ!?」
 驚きと躊躇いと困惑。恥ずかしいかと聞いたら、当たり前だろと焦り混じりの怒声が返ってきた。
「俺が興奮するよ。って言っても無理?」
 無理強いする気はないから横になってと言ったら、サッと伸びてきた手がローションボトルを奪っていく。
「俺いま、優しくされてんのか意地悪されてんのか、わかんないんだけど」
 ほんのり目に涙を溜めながら睨んでくる顔が、彼が幼いころを思い出させて可愛らしいと思う。
「めちゃくちゃ優しくしてるつもりだけど?」
「ホントに?」
「恥ずかしいこと言ったりしたり、させたり言わせたりするの、意地悪でだと思ってんの?」
 セックスって基本そういうのの連続だぞと言ったら、そんなのマンガや動画の世界の話と思ってたと返ってきて苦笑する。
「じゃあやり方変える? 明かりも落として、余計なこと言い合わないで、粛々と解して繋がって腰振ってイッたら終わり」
 そうして欲しいならそうしようと提案したら、むっとした顔で違うと返された。
「これがヤダって言ったわけじゃないだろ」
「でも、どうされたいとかって希望、言ってもいいんだぞ? 嫌なことはしなくていいし、して欲しい事があればしてって言えよ。あるだろ色々。日々のオカズ的なモノがさ」
 突拍子もない物じゃなければ出来るだけ叶えてやるからと言ったら、困った様子で眉尻を下げる。
「意地悪じゃないならいい。にーちゃんの抱き方でいいから」
 にーちゃんのやり方を俺に教えて、なんてセリフを照れくさそうに告げてくるから、こちらもなんだか困ってしまう。
 可愛くてたまらない。
 確かに好かれている。自分への好意が伝わってくる。
 だから同時に、相手の気持ちを思うと申し訳ないとも思ってしまう。こんなに求められているのに、同じ想いを返してはやれないのだ。
 目の前に横臥し、ローションを垂らした指を股間に導いて自ら解す行為を始めた男のことは、純粋に可愛いし愛しいとも思う。
 まったく知らない他人なら、単純に好みの男として可愛がるか可愛がって貰うかして、ただただ楽しんでいただろう。好きだと言われればきっと躊躇いなく好きだと返したし、お互いフリーなら恋人として付き合ったっていい。
 けれど目の前に居る男は義兄の息子で甥っ子で、そもそもは、どれほど節操がなくても踏み越えなかったラインの向こう側に居る相手だ。しかも、義兄はオカズにしていたが、甥っ子はそれすらしたことがない。
 それが突然触れられるほどの距離に現れたって、どうしても気持ちにブレーキが掛かる。まっすぐに好意が伝わってきたって、受け取ることを躊躇ってしまう。
 拗ねたり怒ったり驚いたりする一瞬に、自分が昔大切に愛した甥っ子の面影は確かにある。けれど同時に存在する、昔さんざん頭のなかで妄想を繰り返した義兄とも、やはり被ってしまう一瞬がある。
 男女とも付き合い、相手次第でタチネコどちらもこなしてしまう、そんな自分の節操の無さは自覚していたが、せめて義兄相手の妄想を、抱く側か抱かれる側で統一していれば、なんて今更思っても仕方がない。甥っ子自身がそう望んでいそうだから、という理由だけでなく、抱かれる側で余裕を無くしたら、本当に義兄の名を呼んでしまいそうだという不安もなくはなかった。
 自分の中の気持ちがぐちゃぐちゃだ。求められるままに目の前で、頬を上気させながら自らの身体を慣らす行為を見せてくれるこの可愛らしい男のことを、甥だとか初恋とも言える相手の息子だとかいった心の中のブレーキを外した状態でなら、どう思うのか想像がつかない。そんなことを真剣に考えるのは怖いとすら思う。
「んっ……」
 ごちゃごちゃと考えながら見つめていた先、気持ちよさを耐えるように甘い息を吐き出していた甥っ子から、苦しげな吐息がこぼれ落ちた。

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに13

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 ベッドの上に隣り合って座ったまま、かなり長いことキスを続けた。
 そうしながら、既に素肌の肩や腕、背中や胸をゆっくりと撫でさする。手のひらの下で時折小さくピクンと跳ねる肌と、その瞬間にフッと漏れ出る呼気とで、相手の性感帯を探しだす。
 だんだんと手のひらを下げていき、バスタオルで巻かれた縁を指先でなぞれば、脇腹がヒクヒクと波打つのがわかった。そのままバスタオルは解かずに、バスタオル越しにゆるりと腰を撫で、太ももを辿ってむき出しになった膝頭を柔らかに包んだ。
 マッサージをするように両膝を交互に揉んでから、今度は内腿に沿ってバスタオルの中へと手を滑らせれば、大きく腰が揺れて徐々に膝が開いていく。しかし熱を持つ中心へは触れず、ぎりぎり足の付け根辺りを指先でくすぐりながら時折強く揉みさする。
「ぁ、ふぁっ、ぁっ」
 合わせる唇の隙間から、ひっきりなしに熱い吐息がこぼれ落ち、焦れったそうに何度も腰が揺れた。
「触って欲しい?」
 一旦キスを終えて、耳元へ口を寄せて問えば、必死で頷く振動と「触って」とかすかな声が聞こえてくる。そのまま耳朶を柔らかに食みながら、少しばかり指を更に奥へと進ませて、既に張り詰め硬くなった熱へと触れた。
「あっ、あぁっ…、んグぅッ」
 口を塞がれていないせいで、先程よりも大きくこぼれた声に驚いたのか、ヒュッと息を呑むような音の後、潰れてくぐもった声になる。
「声、出して。抑えなくていいから」
 熱にゆるりと絡めた指をゆっくり上下させながら、耳元から口を離さず囁いた。
「だ…、って……」
「大丈夫。可愛い声だよ」
「なっ、……に言っ、ああ、あっ、やぁっ」
 少し強めに握ってだんだんと刺激を強くしていけば、会話のために開かれていた口から、つぎつぎと甘い声が溢れ出してくる。
「ほら。可愛い」
「うそ、あ、」
「嘘じゃないし、お前にはまだまだもっと可愛くなってもらう。俺に抱かれる、ってのはそういう事だぞ?」
 熱を握るのとは逆の手は、相手を支えるように背後から腕を回して肩を掴んでいたけれど、その手をするりと滑らせ反対側の耳を摘んだ。んっ、と漏れる吐息を聞きながら、耳朶を優しく掻いてやり、それから小指をそっと穴の中に忍ばせる。同時に、目の前の耳穴には舌を突っ込んでやった。
「んああっ」
 肩を竦めて逃げようとするが、反対側の耳を弄る手の小指以外に力を込めて、頭を動かすことを許さない。そのまま両耳をねぶりつつ、熱への刺激を更に強めていく。トロリこぼれる先走りを掬い取って、クリクリと先端に塗り広げながら、竿を包む手のひらは上下に動かした。
「んんっ、だめ、だめって」
「イッていいよ?」
 少しだけ頭を引いて、けれど舌先は耳殻に触れさせたまま、声を耳に吹き込んだ。
「やぁ、あん、にーちゃっああ」
 蜜を吐き出す小さな口を、少し強めに指の腹でこすってやれば、体を強張らせながらあっけなく熱を放った。
「ハァ…ぁっ、ハァんぁっ、やっ」
 弛緩した体を支えてやりながら、吐き出してなお硬度を保つ雄をゆるゆると扱いて刺激すれば、荒い息をつきつつも小さく抵抗を示す。
「ココ、舐められたい?」
 必要ないと言いたげに首を振る。刺激を止めて欲しいのか、バスタオルの上から押さえつけるように手を握られたが、脱力しきっているのかその力は弱かった。それでもその手に従い動きを止めた。
「この前、イッた直後に俺の舐めたのお前だよ?」
「違っ、あれはっ!」
 自分がそうされたいからじゃないかと問えば、慌てたように否定の声を上げる。しかし待ってもその続きが語られることはなかった。

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに12

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 予想通り甥っ子はさっくりシャワーを終えて、腰にタオルを巻いただけの状態で急ぎ戻ってくる。その時自分は、ちょうどベッドの上にバスタオルを広げていた所だった。
 雰囲気やら勢いやらも大事だと思うので、その流れで始めてしまうなら仕方がないが、余裕があるなら出来る準備はしたい派だ。シーツをまるっと取り替えるより、バスタオルを洗濯するほうが楽なのは当然だった。
 それを見た甥っ子は随分とホッとした様子を見せる。
「気持ち変わったりしないって言ったろ」
 苦笑して見せたら、だってと気まずそうに口を開く。
「戻った時にはにーちゃん居なくなってるかもって思って……」
 正直言えば、未だに逃げれるなら逃げたい気持ちはあった。しかしここで逃げてしまったら、どれだけ彼を傷つけるのかわからない。諦め帰るよう説得できず、受け入れる態度を見せた以上、こちらだって覚悟を決めるしかなかった。
「逃げないよ。こっちおいで」
 おとなしく従った甥っ子はぎこちない様子で、ベッドに腰掛ける自分の隣へ同じように腰を下ろす。
「髪もまだ濡れてるし」
「どうせすぐ乾くよ」
「まぁそうだろうけどさ」
 言いながら、取り敢えずで枕横に用意しておいたフェイスタオルを取り上げ、甥っ子の頭にふわりと被せた。そのままゴシゴシと頭を拭いてやっても、甥っ子は黙ってされるがままだ。
「おとなしいな。緊張してる?」
「そりゃ……」
 ぼそぼそと溢れてくる声はやはり元気がなかった。
 ほぼ裸に近い格好で勢い良く戻ってきた割に、そう積極的でもないようだ。さあ抱け! とぐいぐい来られるよりは有り難い気もするが、どう扱っていいか迷うのも確かだった。
 こんなに気を使いながら始めるセックスっていつぶりだろう?
 そう思いながらそっと頭に被せていたタオルを外して、手櫛で何度か髪を梳いて簡単に整えた後、伺うように軽いキスを一つ鼻の頭に落としてみた。
 対する甥っ子も、やはり黙ったまま目を何度か瞬かせて探る気配を見せるので、もう一度、今度はその唇に触れてみる。
「あ、あのさ」
 躊躇いがちなセリフの先を、そっと促す。
「うん、何?」
「名前、呼んだほうが嬉しい?」
「名前を呼び合いたいとかって要望じゃなくて、俺が嬉しいかどうかを聞くわけ?」
 発想が時々面白いなと思いつつ聞き返したら、義兄の代わりになるのなら義兄の呼び方で呼んだほうが嬉しいか、という意味だったようで驚いた。
「俺の言い方が悪かったのは認める。というか、ああ言えばお前が諦めると思ったのは確かだけど、義兄さんの代わりになれってつもりで言ったわけじゃないぞ?」
「違うの?」
 言葉の端々から、そう誤解してるような予感はしていたが、どうやら当たっていたようだ。
「違うよ。ただ俺の中でお前と義兄さんの境が曖昧なんだって話。俺の中でのお前は、どっちかっていったら小学生の頃のイメージが強いし。逆に義兄さんは今のお前より少し年行ったくらいの頃のイメージが強いんだよ。俺がよく遊んでもらってた頃の話な」
「じゃあ、にーちゃんって呼んだままでいいの? でももしかしてそれも嫌だったりする?」
 不安げな様子はやはり、そう呼ぶことで、甥であり弟のような存在であることを意識させると思っているからだろうか。
「好きに呼んでいいよ」
「にーちゃんは? 俺をなんて呼ぶの?」
 苦笑しながら甥っ子の名を呼んでやれば、安堵を混ぜながらも泣きそうに笑った。
 こんな顔をされてしまったら、間違っても義兄を呼べないなと思う。まぁきっと、自分が抱く側でそこまで強く錯覚することもないだろう。そうであればいいなと願うように思った。
「他にも何かあるか?」
 少し考える素振りの後、ないよと言うように首を振る。キュッと唇を噛み締めているから、もしかしたら何かあるのかもしれないが、どうやら飲み込むことにしたらしい。
「後、一応言っておくけど、こっちが経験者だからって、嫌なことされて我慢する必要はないからな?」
 わかったと頷くのを待ってから、ゆっくりと唇を塞いだ。今度はもちろん触れるだけではない。
 時々角度を変えながら、軽く吸い付いて、唇を食んで引っ張った。舌を出して緩く開かれた唇の隙間を突けば、応じるように舌が差し出されてくる。それを舐めて、やはり軽く歯を立てながら自分の口内へと誘いこむ。
 甥っ子からこぼれるぎこちない吐息が、甘く耳の奥をくすぐった。

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