先生、教えて4

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 純粋に、整体とマッサージをして貰うだけの出張施術は結局最初の一回だけだった。実技授業の延長みたいな感じで、交互に施術し合うみたいな関係に持ち込んだのはもちろんこちらだ。
 授業の延長気分だったから、こちらが相手に触れる時間分も払うつもりだったし、実際しばらくは払っていた。何度も繰り返すうちに、上手くなったからと少しずつ割り引かれて、とうとう往復の交通費だけ払えば来てくれるようになった現在の関係を、どう呼べば良いかわからない。
 話しかける時はやっぱり先生と呼んでしまうし、相手だって随分と砕けた口調になって、一人称が時々俺になってたりするけど、やっぱりスクールに通っていた頃と変わらず名字に君付けで呼ばれるし、友人と呼ぶような距離感ではないなと思う。
 もちろん、恋人でもない。たまに思い出したようにデートに誘ってみるけれど、相変わらず、そういうのはしないよとか、嫌だよって笑われて終わりだった。そのくせ、施術内容をどんどんと際どいものに変えても、その手を拒絶されたことはない。しかも相手はこちら以上の技術でもってやり返してくれるからたまらない。
 つまり最近はもう、交互に性感マッサージを施しあっているような感じになってるし、双方とも不感症ではないので当然二人とも勃つし、相手の手でイくし、相手をイかせることもする。なんでそんなことを許すのか、意味がわからない。この関係がなんなのかわからない。
 どういうつもりと聞けないのは、聞いて確かめて今の関係が終わってしまう可能性を考えてしまうからだろう。デート一つしてもらえない以上、どう考えても恋人のような関係にはなれそうにない。だとしたら、今のこの状況で彼がどこまで体を許すのか、行けるところまで行ってみるのが良いんだろうか。
 問題は、自分の身を守りながらというのが非常に難しい点だ。だってどう考えたって、自分が触ってもらってる時の反応の方が大きい。彼の手は本当にめちゃくちゃキモチガイイ。でも同じくらい彼を気持ち良く出来ているとは到底思えなかった。自分の手に彼も感じてはくれるけれど、イってくれるけど、感じ入って呆けてくれるような瞬間はない。
 させてって言ったら、前立腺だって探らせてくれそうだけど、立場を変えて自分がされることを考えてしまうと恐ろしかった。自分の未知なる性感帯を発掘したり開発したいわけじゃない。
 それでも、こちらの興味がアナルだったりそのナカだったりに注がれていることはあっさり相手に伝わってしまったらしく、こちらがそこへ手を伸ばすより先に、彼の指にアナルを撫でられて飛び跳ねる勢いで驚いた。
「ちょ、え、なにっ!?」
 うつ伏せていた体を思わず起こして、尻をかばうように手を当てながら相手と向き合うように座る。少し驚いた顔をしているのは、彼が思う以上に、こちらが警戒心むき出しな反応をしたからだろう。でもすぐに、可笑しそうに笑い出す。
「嫌だったならゴメン。そこ、最近なんだかやけに興味ありそうだったから。場所が場所だし、さすがに言い出せないのかなって思ってたわ」
「興味があるのはする側だけです」
「みたいだね」
 どうしようかと言われても、何を聞かれているのかすらよくわからない。
「自分の体で実感した方がてっとり早いと思うんだけど、でも、こっちの反応見ながら、無茶なことしないで、ちゃんと気持ちよくしてくれそうって思えるくらいには、その腕、信頼してたりするんだよね」
 知識はあるんだろと聞かれたので、それなりにしっかり調べたつもりですと返した。
「でもなぁ……本当に、される側になるのは全然興味なし?」
 気持ちよくしてあげるよと薄っすら笑う顔をじっと見つめてしまう。とっくに気づいていたことだけど、彼はどうやら男相手への性感マッサージをかなり経験している。

続きました→

 
 
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先生、教えて3

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 彼の何に惹かれたかなんてもうとっくに話してる。貰った言葉が嬉しかったんだって確かに言った。簡単に忘れるくらい自分との会話はどうでもいいのかって思うと少し残念で、でもへこんでる場合でもないから、初めて会ったのは大学の体育館だったってところから遡って何に惚れたかを話してやる。
「いや、それは聞いたし知ってるよ」
「は? じゃあ、何が疑問だっていうんですか」
「それでもう一度僕に会いたくて、ここ探し当てて、更には入学まで決めたってのはまぁいいよ。でもそれだけで気持ち引っ張れるほど、何かしてる? 期待するなって言った通り、特に思わせぶりなことしてないはずなんだけど」
「あーまぁ、それはたんに、俺が諦めが悪い人間ってだけじゃないすかね」
 諦める気ないのと聞かれてないですと即答すれば、呆れたため息が返された。
「思うんだけど、君がやってる競技ね。ずっとそれに注いでた熱量の行き場を探して迷ってたところに僕が現れたもんだから、これ幸いと僕に振ってるだけじゃない?」
「痛いとこ突きますね」
「なんていうか、デート誘われまくるけどイマイチ本気っぽさないというか、切羽詰まった感じないしね。どっちかというと暇を持て余してる感がある」
「あれ? そんな感じに思われてるとは心外。いつだって本気で誘ってんのに」
「冗談で誘われてると思ってるわけじゃないけどさ。ちゃんと考えて誘ってくれてるのは、誘われる場所でわかるし」
「だから、本気で、一緒にどっか遊びに行きたいんですって。どこなら行ってくれるか必死で考えますよ、そりゃあ」
「そうか」
「そうです」
「でもごめんね。恋されてるなぁって感じもないから、デートの誘い断るのになんの罪悪感もわかないのはありがたい、とか思ってるわ」
「酷い。というか恋されてない感じとかってわかるもんなんですか?」
「いやそりゃわかるでしょ。というか、本気がヤバイ感じならわかる」
 だから迷うんだよねと、またしてもため息が吐き出されてくる。
「懲りずに何度も手を変え品を変えデートに誘われるくらいなら、いっそ体目当てでとか言い出してくれたら楽なのに」
「うっわ。講師と生徒の恋愛禁止が聞いて呆れる。じゃあ、体目当てです」
「思い切りがいいね。でも体目当てならお金とるよ?」
 バイトしてる余裕なんてほぼなくて、大学に加えてこのスクールの授業料まで払ってくれている親に対して小遣いアップを言い出せるはずもなくて、つまり、そんな金銭的余裕はかけらもない。というのはわかっているのだけれど。
「ちなみにいくらほど?」
「まさか本気で考えてる?」
「セックスがしたい、かどうかは正直わかんないですけど、まぁ、あなたの時間を金で買えるってならそれはそれで有りな気はします。金ないですけど」
「あー……そこまで思ってんの。なら、コース終了して会えなくなったあと、どうしても会ってって時は買われてあげてもいいかな」
「本気にしますよ。てか値段は?」
「んー……相場だと十分千円くらいじゃないの」
 それってマッサージやら整体やらの相場じゃないのか?
「あれ? じゃあ、つまり、そういう体目当てもあり、と」
「あ、出張費と場所代も君持ちね」
「え、それ、卒業後じゃなきゃダメなんですか」
 ダメだよと言った相手は、その後デートに誘うのではなくなんとか彼の個人的な連絡先を聞き出す方向へシフトした自分に、本気で最後までその連絡先を守りきった。人への当たりは柔らかいのに本当に手強い。
 スクールの日程を全て終えた最後の授業、卒業祝いなどと言いながら渡されたメモに、感極まって思わず泣いた。

続きました→

 
 
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先生、教えて2

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 スクールには真面目に通ったし、授業も真面目に受けた。合間合間に自分の話をして、それと絡めるように相手の話を引き出して、ついでに開き直って口説いたりもする。
 だって彼が言った、講師と生徒の恋愛禁止は、それだけなら仮にスクールにバレたとしても別になんのペナルティもなかった。講師側に、生徒に手を出すのはやめましょう(色々と問題が起こりやすいので)、程度の注意喚起をしてるのは事実らしいけど。以前、既婚者相手に手を出して揉めた講師がいたとかなんとかで、その講師は発覚後辞めさせられたらしいけど。
 それらの情報は受付での雑談中に彼以外の講師だったり事務の人だったりに聞いた。つまり彼以外にもあちこち完全にバレているが、意外とそちらは協力的だった。なんせ、二人きりな個人授業になるように狙いまくるこちらに、他の人が入っていないコマを教えてくれたりする。
 何でなのかは知らない。自分と彼と二人セットで、遊ばれてる可能性が一番高いと思う。自分がここを卒業するまでに彼を落とせるかどうかを、実は裏で賭けの対象にしていると言われたって、きっとあっさり信じてしまうだろう。
 同僚に裏切られていると嘆く彼だって、別にそれをどうこうしてはいないようだし、こちらをキツく拒むわけでもない。直接的な口説き文句はさすがに窘められるし、ダメとか無理とか言われるけれど、でもそれだけだ。
 態度が優しいのは講師だからと言うよりは彼の仕様っぽくて、ただ人当たりが優しいのと心根が優しいのは別だってことはわかっていて、彼はきっと人当たりだけが優しい人だってことにもさすがにもう気づいている。ただ、心根が本当はどうなのかはわからない。だってそこまで踏み込ませてくれない。キツく拒むことはないけれど、やんわりと、けれど確実に、これ以上はダメというラインが存在する。
 なんだかんだでコースを半分ほど消化したところ、そろそろ手詰まりかなぁと思う。あれこれ試したけれど、結局デート一つ出来てはいない。彼とこの場所以外で会える手段を引き出せない。
 まぁ別に、これ以上深く関わらなくたって、十分楽しい時間を過ごせているし、当初の目的の半分は達成されているとも思うのだけど。でもなぁと、思ってしまうのもまた事実だった。
 彼と恋人になりたいって欲求はたいして育ってないものの、あのラインを飛び越えて彼に近づいてみたい欲求が新たに生まれて、それは日々着々と育っているようなのだ。
 でもどうしたらいいんだろう?
「最近、前ほどあれこれ言ってこなくなったけど、何かあった?」
「それをわざわざ聞いてくる意味は?」
「飽きたならそれでいいし、押してダメなら引いてみよう的な駆け引きなら引っかかりたくないし、大学やクラブの方で何かあって悩んでるなら話聞いてもいいよってくらいの情はあるよって感じ?」
 なるほど。押してダメなら引いてみよう、みたいな事もしてみれば良かったのか。これを言われた後じゃ、今更だけど。
「簡単に言えば手詰まりってだけですかね」
「ああ、なるほど。じゃあいいね」
「全く良くないですね。いったい何に誘えば、あなたとデート出来るんですか」
「いや、何に誘われたって、二人でお出かけとかしないけど」
 懲りないねと言われて、さすがに懲りてますよとは返せなかった。懲りてるから、次の手が思いつかないのだ。どれだけ彼の話を引き出し、彼の興味がありそうなものへ誘っても、一緒に行ってはくれない。行ってみたよという事後報告は何度か受けたから、本当に、一緒に出かける気が一切ないのだとわかっただけだった。
「じゃあ課外授業とかしてくださいよ。先生なんだし」
「理解が足りないとか授業についていくのが難しい、って理由での補講希望なら、コースの中にちゃんとあるでしょう」
 本当に必要だと思うならと付け足された。これだけほぼ一対一の個人授業を重ねまくった生徒の理解度がわからないはずがないから、そう言われるのは仕方がないだろう。
「ここ以外で会いたいって話でしょ。折り返し地点過ぎてなんも進展してないから、このままコース終了しちゃったらどうやってあなたに会おうって、そういうの考え始めてんですよ」
「整体以外のコースに申し込むとか?」
「鬼ですね。いくら掛かると思ってんだ。てかそもそも別コース専任で教えてないでしょ、あなた」
 彼だけを指名して通えるってなら、うっかり考えたかもしれないけど、さすがに親への負担やら、クラブへの言い訳が思いつかない。素直にそう零せば、なんでそんなに僕が好きなのと聞かれて驚いた。

続きました→

 
 
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先生、教えて1

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 それは完全な下心からの入学だった。
 スポーツ推薦で入学した大学だったけれど、選手層の厚さにベンチにすら入れない日々が続いて腐り掛けていたときに、たまたま出会ったその人は整体師でほとんど一目惚れに近かった。顔にというよりは、温かな手と柔らかな声音と、なにより彼がくれた言葉に。
 そのスポーツに真摯に向き合ってるのがわかる、綺麗な筋肉がついている。そう褒められたのが、結果が出ない中でも頑張ってきた自分を認められたようで、たまらなく嬉しかった。
 大学で所属するクラブと懇意にしている整体師だったりマッサージ師だったりは何人も居て、出張施術という形で学内で部員まとめて施術や指導みたいな場合もあるが、大学近辺に構えた店舗に通って施術を受ける場合もある。だから新人と思わしきその男とも、店舗に行きさえすればいつだって会えると思っていた。
 あの日彼が大学へ来ていたのは偶然を重ねたただのヘルプで、常勤している店舗はなく、メインの仕事は整体やらリンパマッサージやらリフレクソロジーやらの技術を教えるスクールの講師だそうだ。
 というのがわかるまでにおよそ一ヶ月。迷っていたのが半月。親を口説き落とすのに少し掛かって一ヶ月半。つまり出会ってから三ヶ月後には、そのスクールへの入学を決めていた。
 クラブ側へももちろん週に二回か三回程度練習には出れない旨を理由と共に告げたが、ベンチにすら入れない部員が、部のメンバーをサポートする側に回るための勉強に難色を示すわけがない。こちらはあっさり歓迎された。
 随時入学可能な少人数のフリータイム制というのがなんともありがたい。タイミングさえ合えば彼と一対一の個人授業だ。
 そして念願の初授業。願いどおりにその日の生徒は自分ひとりで、彼は本当に入学を決めたんだねと、歓迎の笑顔をくれた。たったそれだけのことに、思っていた以上にトキメイて開始早々こんなんで大丈夫だろうかという不安がチラリとよぎったものの、当然不安よりは喜びが大きい。
 実は体験入学のときにも一度会っていて、そのときに入学の表向きな動機は彼にも既に話してある。あからさまな下心はもちろん隠しているが、彼の指導を受けたいのだという部分は彼本人にも、スクールの受付担当の人たちにも言いまくってしまったので、彼目当ての入学だってのは早々にバレていそうな気もするけれど。なんてことを思っていたら。
「じゃあ、入学を決めた君に、ぜひとも最初に知っておいて欲しい重要なお知らせがあります」
「あ、はい。なんですか」
「講師と生徒の恋愛は禁止です」
「は?」
「いやだって君、あからさまに僕狙いっぽいから。講師として生徒には優しく接するけど、そこあまり期待されると困るなって思って」
 にこにこと笑う笑顔が途端に作り物めいてみえる。ただまぁ、こっちだって入学を決めて接点を増やした程度で、即どうこうなれると思えるほど脳天気なバカじゃない。というか、そもそもそこまではっきり、恋人になりたいだのという野望を抱いて入学したわけでもない。だいたい、彼が未婚なのか、今現在恋人が居るのか、年下男がアリかナシか、そういったことを何も知らずに飛び込んでいるのだ。というか、普通に考えたら年下男なんてまずナシだろう。
 だってただただ彼に近づきたかったから。もっと彼を知りたいと思ったから。そしてなにより、彼の手にもう一度触れて貰いたかったし、彼の声をもっと聞いていたかった。
 彼目当ての入学ではあるけれど、可能なら彼と恋愛したい気持ちがないとは言わないけれど、一番の目的は彼と恋愛することじゃない。
「あー……なるほど。わかりました。で、先生、今現在恋人は? フリー?」
「ねぇ、人の話聞いてた?」
「聞いてましたよ。先生狙いってバレてるなら、それはそれでやりやすいかなぁって。あ、言われた通り期待はしないんで大丈夫です」
 気持ちの切り替えって大事ですよねって笑ってみたら、にこにこの作り笑顔がぼろぼろと剥がれていくのが見えた。

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お題箱より「生徒×先生(弟子×師匠などでも)で先生が体を使って教えていくお話」

 
 
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追いかけて追いかけて31(終)

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 いやでも、彼にそう言わせるだけのことを、してきた自覚もなくはない。
「ごめんなさい。あと、ありがとう、ございます」
 酷い真似をたくさんしたのに、恋人になりたいと言い続けてくれて、自分勝手で欲深い本音を引きずり出して、それを許して捕まえてくれたことに感謝していた。さっき後回しにされた色々だって、きっと一緒に気持ちの落とし所を探してくれるんだろう。逃がす気ないよって言うのがそういう意味だってことは、わかっているつもりだった。
「確かに君はなかなかに残酷だったけど、でもまぁ、一応ちゃんと隙もくれたし、結果的に折れてくれたから謝罪はいらないかな。落とすの楽しんだ部分もないわけじゃないしね。でも物凄く頑張ったのは事実だから、ありがとうはもっと言って欲しい」
 ありがとうを言っての言葉に反射的にありがとうございますと繰り返したものの、言われた内容のオカシサに大量の疑問符が頭の中に湧き上がっていく。
「あの、隙とか落とすの楽しんだ、とかって……?」
 おずおずと聞けば、やっぱ気になるよねと笑われる。でもちょっと待ってと言われて、ぎゅうと抱きしめる腕が緩められ、ゆっくりと体の繋がりを解かれた。
 簡単に双方の汚れの始末をしたあと、相手に請われるまま、今度は隣に寝転がった彼の腕に頭を乗せるようにしてくっつけば、やっとさっきの話の続きをしてくれるらしい。いやでもちょっと待って欲しい。腕枕なんて落ち着かない。しかしもぞもぞと落ち着きなく動いてしまう頭を、ゆるく抱えるようにして撫でられ動きを止めてしまえば、話の続きが始まってしまう。
「つまり、狡く悪く立ち回って、君に気づかせないまま、俺の好きなようにしていい。ってやつだよ」
「は? え? ええっ?」
 腕枕が落ち着かないとか言ってる場合じゃなく驚いて、意味のある単語の一つだって出やしなかった。そんな自分に、彼はおかしそうにクスクスと小さな笑いをこぼしている。
「言われた最初はね、好きにするって言ってもさすがに恋人になるの受け入れて貰うことまでは考えてなかった。行為の上書きを求められたと思ってたし、抱かれた経験がないのも知ってたからね。そんな子の初めてを、どうにか嫌な記憶にならないようにしながら貰えないかな、という下心のが大きかったんだけど」
 さすがに途中で方向性変えたよねと言った相手は、こんなにこんなに自分を好きだと思ってくれてる子を、本当に諦めなきゃダメなのかって思わずにはいられなかったと続ける。そして極めつけが、女性が恋愛対象になるから恋人になりたくないという理由、らしい。それを聞いたら、どこまででも狡い大人になれると思ったと、柔らかで優しい声音が告げた。
「罪悪感にはつけ込んだし、君が情けなく落ち込む俺を突き放せないとこだって利用した。演技で落ち込んだわけじゃないし、君の言葉には相当心揺さぶられたけど、君を落とすためにそれらを表に出して君に見せたってとこも少なからずある。でも、それを君には謝らない」
 それでいいんだよねと問われていいですと返す。こちらが流されて頷いて受け入れたことへの罪悪感なんていらない。狡く悪く立ち回ってくれと頼んだのはこちらだ。
「さっきもチラッと言ったけど、ここまで頑張って手に入れた子、そう簡単には逃してあげられないから覚悟してよ。逃げたがっても、うんと狡く立ち回って、逃げ道塞ぐからね」
 冗談めかした軽い口調だったけれど、本気は十分に伝わってくる。ぜひそうして欲しいと思った。怖くなって逃げたくなっても、彼が上手に逃げ道を塞いでくれるのだと思うと、少しだけ安心する。
「あなたに捕まって、あなたの恋人になれて、本当に、良かった」
 嬉しいと笑えば、俺も嬉しいと笑う顔が寄せられ唇が触れ合った。

<終>

 
 
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追いかけて追いかけて30

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 区切られた時間の中でなら、恋人という関係を目一杯楽しめるんじゃないかなんて、なんて浅はかだったんだろう。
 抱きしめられるとホッとして、何もかも全部、すべてを晒してしまいたくなる。恋人となった彼をこの時間が終わっても手放したくないと考えてしまう欲深さも、彼に自分を選ばせる罪悪感と嫌悪感に耐えられなくなる未来に怯える弱さも、この彼なら許して受け止めてくれるんじゃないかと思ってしまう。
 同時に、それはダメだと引き止める自分もいる。彼にしてきた仕打ちを思い出せと、自分自身に詰られる。そんなのあまりに自分勝手が過ぎる。わかっている。それに、諦めて手を引くのが得策だとわかっていると言われた上での、今だけ恋人という提案だったってことも忘れちゃいけない。
 わかっていながら、それでも。気持ちを晒してしまいたい衝動を抱えて気持ちが揺れた。だって辛抱強くこの体を慣らして拡げてくれた事実も、幸せそうにふにゃふにゃと崩れた笑顔を見てしまったことも、今こうして抱きしめてくれる腕の暖かさも、胸の中をグズグズと甘く溶かしていくばかりなのだ。
 正直な気持ちを言ってしまっても、いいだろうか。そう思った矢先。
「もしかしてだけど、今だけ恋人、ってのが嫌になった、とか?」
 先を越されて唖然とする。
「な……んで……」
「あ、図星? え、ほんと?」
 あわあわと何も返せずにいれば、図星なんだねと疑問符を取っ払って繰り返される。その声は楽しげで嬉しげだ。
 言ってよかったのかと思ったら、安心しきって全身から力が抜けた。
 背を抱く腕の力が抜けたのを感じたらしい相手にそっとベッド上に降ろされれば、そのままずるりと腕が落ちて、拘束の解けた相手が上体を起こす。嬉しそうに笑った相手に見おろされる。
「散々、あなたと恋人にはならないって言ってた俺が、このまま恋人で居たいって言っても、いいの?」
「いいよ。嬉しい」
「でも……」
「うん。不安なこととか、罪悪感だとか、嫌悪感だとか、色々あるのわかってるけど、それはちょっと後回しにしよう。取り敢えず、簡単には逃がす気ないってのだけ、覚えててくれればいいから」
 まずは続きをさせてと言いながらゆるく腰を揺すられ、彼と繋がっている状態を意識させられる。確かに、挿入までにかなり時間を掛けた上に、繋がってからもあんな態度を見せて抱きつき拘束してしまったのだから、相手は相当焦らされきっているだろう。相手からすれば、ここからが気持ちよくなる本番なはずなのに。無事に相手と繋がれただけで、どこか満足しきっていたことを恥じた。
「ふぁっ……」
「痛くない? よね?」
「ぁ、ぁ……」
「大丈夫そうかな」
 確かめるように更に数度小さく揺すられたあと、動くよって宣言されてお腹のナカをぐちゅぐちゅと擦られ始める。押し出されるみたいに喉の奥からあふれる声が、自分のものだなんて信じられない。
 ただその声に煽られるらしい相手が、だんだんと余裕をなくして行くのを見るのはなんだか少し楽しかった。といっても、余裕がありそうだねって笑われた後は、とても相手の観察なんてしてられないくらい、あっさり追い詰められてしまったのだけど。
 経験値の差に太刀打ちできない。初めてだってのに、まさかアナルに相手のペニスを咥えこんだ状態のまま、二度目の吐精を相手の手の中で果たすとか思ってなかった。
 色々な意味で呆然としている間に、相手もどうやらイッたらしい。力を抜いて倒れ込んできたかと思うと、ぎゅうと抱きしめられてしまう。
「やっと、捕まえた」
 耳元で囁かれた声がいやに感慨深くて、さすがに大げさだと笑いそうになった。

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