親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった10(終)

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 今までも可愛いと言われながら触れられることは多々あって、恋人になったからといって、その言葉や響きに大きな変化があったわけじゃない。変わってしまったのはその言葉を受け取る自分自身だ。
「ん……、ふっぁ…ぁ……」
 薄いインナーシャツの上から両胸の先をいじられるだけでも、熱い吐息が抑えられない。胸の先がしびれるように疼いて、連動するように、触れられても居ないペニスの先まで疼いてしまう。
「胸だけでそんなに感じて、相変わらず可愛いな」
 少し楽しげに、そしてどこか嬉しげに笑む顔は優しい。この表情だって、前とそんなに変わったわけじゃない。ただ、気づけることが増えたのだ。
 そういえば、最初は楽しげだとか嬉しげだとかという表情だって、読み取れはしなかった。こちらにそんな余裕がなかったのもあるが、目の前の男はあまり感情表現が豊かではないせいが大きい。
 なのに今はどうだろう。可愛いという言葉の響きの中に、柔らかに笑む瞳の中に、愛しくてたまらないといった彼の感情が溢れているのを感じるようになった。パッとはわかりにくい彼の感情表現にも、ずいぶんと慣れてきたたようだ。
 嬉しくて、けれどまだ少し恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じるから、きっと赤面しているんだろう。
「いや、最近はますます可愛くなったか」
「だ、って、お前が……」
「俺が?」
「俺のこと、すごく好きって、わかるから」
「隠すのをやめたからな」
 好きだよと続く言葉に、やはり嬉しさ半分照れくささ半分。
「ねぇ、前は、本当に隠してた?」
「どういう意味だ?」
「好きって言ってくれるようになった以外、実はそんなに変わってない。気もして」
 気づこうとしなかっただけで、前からずっと、愛しいという気持ちで触れてくれていたに違いない。それを「優しい」という一括りにして、目をそらしていただけなんだろう。そのほうが都合が良くて、なにより彼と向き合うのを怖がっていたから。
「まぁ、最初からお前が好きで誘ったし、途中で気持ちが変わったわけではないからな」
「ずっと、気付かなくてゴメン。お前だって辛かったろ?」
 別の相手を好きだと言い続ける相手を、ずっと優しい態度で抱き続けてきたのだ。
「それを気にされると困るな。人がいいのもお前の魅力の一つではあるが、俺はお前の弱みに付け込んだだけだぞ」
 感度の良さと快楽への弱さは嬉しい誤算だったが、と続けながらシャツをまくり上げられ、胸の先を直に摘まれて捏ねられた。
「ぁああっっ」
 油断して上げてしまった大きな声が恥ずかしいが、相手はしてやったりと満足気だ。
 そのまま胸の先を緩急をつけつつクリクリと摘まれ続ければ、既に張り詰めたペニスの先から、トロリとこぼれる先走りを感じてしまう。
「ぁっ、あっ、ダメぇっ」
 その訴えに、彼はちらりと視線を下腹部へ落とす。
 シワになるからと制服のズボンは最初に脱いでいたので、きっと下着に広がる先走りのシミを見られてしまった。そう思うと体の熱が更に上がっていくのがわかる。自分で自分を追い詰めるような悪循環だった。
「このままイッてみないか?」
「ヤぁ、だっ」
「替えの下着はあるんだろう?」
 まだ恋人関係になる前、一度下着の中で果ててしまって以降は、確かに一応持参している。ただ、あの時は下着の上から握られ擦られたのが原因で、胸を弄られるだけでイきたくなんてなかった。
 両親共働きで案外家事スキルの高い相手は、汚してもまたウチで洗ってやるぞと言いながら刺激を強めてくるから困る。
「やっ、やぁっ、ダメ、ムリっ、むりだっ…て」
「仕方ないな」
 やめてもらえると思ってホッと息を吐いたその瞬間。
「あぁあっだめぇっっ」
 股間の膨らみをグリっと圧迫される刺激に、たまらず声を上げて果ててしまった。何が起きたかわからなくて呆然としていたら、汚れた下着を脱がされる。
「奥、触るぞ」
「今、何したの?」
「ん? ああ、膝で押した」
「ひざ……」
 そうか、あれは膝の刺激なのか。
「やだって言ったのに」
「だから胸だけでイかせるのは諦めた」
「ずるい……」
「言っただろう。もっとたくさんの快楽を刻みこんでやると」
 いつか胸の刺激だけでもイけるようになって貰うと宣言されて、今は触れられていない胸の先が、先ほどの刺激を思い出して疼いてしまうのだから、きっとそんな日もそう遠くなく訪れそうだ。
「お前から離れられないように?」
「そうだ」
「とっく、んあぁっ」
 とっくにそうなってる。と告げるより先に、ローションをまぶし終わった彼の指先に入口を掻かれて、別の声があがってしまう。
「お前が思うより、きっと俺は欲深い。この場所も、もっともっと気持ち良くしてやりたいが、しかし恋人になったことを後悔してる、などと言われるのも困るな」
「言わねーよ」
 即答したら、彼にしては珍しいほど、随分と嬉しげに笑われてマイッタなと思う。だって恋人になったら、なんだかだんだん相手が可愛くなってしまった。正確には、可愛いと感じるようになってしまった。
 だから、ぬるりと入り込んできた彼の指が与えてくれる、まだ緩やかな刺激に甘い吐息をこぼしながら。
「お前が好きだよ。お前こそ、もっともっと欲深く俺を求めて、俺なしじゃいられなくなればいいよ」
 告げたら中を弄る指の動きが止まった。驚いた様子でこちらを見下ろす呆然とした顔に笑いそうになる。というか笑った。
「本気だよ」
 笑いながらもダメ押しとばかりに本気を伝えれば、うっすらと相手の頬が色づいていくから困る。照れる彼なんて初めて見た。
 可愛いなぁという気持ちはどうやらそのままこぼれたらしく、ますます驚き照れさせてしまったので、彼が持ち直して行為が再開するまで少しばかり待たされたけれど、こんな風にまだ知らない彼を、これから先もたくさん知ることになるのだろうと思うと楽しみで仕方がない。この男と、恋人という関係に進めてほんとうに良かったと思った。

< 終 >
数話で終わるつもりだったのに、長々とお付き合いどうもありがとうございました。

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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった9

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 勢いで立ち上がってしまった後、落ち着くように言われて再度座り直し、そこから更にいろいろと話し合った。もちろん、互いの想いについてが主な話題だった。
 こちらの気持ちの変化はなんとなく感じていたものの、親友が好きだという態度を崩さなかったので、ずっと気づいていないふりをしてくれていたらしい。しかも、いつから好きだったのか聞いたら、あっさり声をかけた最初からだがと返ってきてなんとも言えない気持ちになった。彼はこちらの負担にならないようにと、ずっと自分の気持ちを隠していたようだ。
 確かに初めて触れられた時、あまりの優しさに好かれている可能性を考えた。最初に感じたあれは、どうやら間違いではなかったらしい。
 いつだって自分の都合のいいように解釈し、彼の気持ちを一度も確かめることをしなかったのは自分だ。なんてバカバカしい話だ。もっと早く確かめればよかった。
「お前を好きになったなんて言ったら、気持ちよさに気持ちが引きずられてるだけってか、こんな関係にあるからとか言われるんじゃって思ってた。関係解消したらそんな気持ちはなくなるだろうって言うかなって」
「実際それは間違ってないんじゃないのか?」
「それはそうかもだけど。だってこんな関係になってなかったら好きになりようがないだろ」
「そうだな」
「俺はさ、お前に好きって言えないことより、この関係をやめるって言われるのが嫌だった。気持ち隠してでも、お前に抱かれていたかった。臆病でごめん」
「いや、気持ちを隠していたのも、相手の気持を確かめずに居たのも、お互い様だろう」
「最初から俺を好きだったのに、俺の変化感じても俺の気持ち、確かめようとは思わなかったの?」
「確信があったわけではないからな」
 お前とそう変わらない臆病者で、それどころか、相手の弱みに付け込んで抱こうと考えるような下衆だと続けて、彼は自嘲気味に笑う。
「でもお前はずっと優しかったよ。無茶しなかったし、キモチイばっかだったもん」
「それも、無茶して嫌われたくなかっただけだ」
「じゃあさ、いつ、確信したの?」
 聞いたらあからさまに動揺されて、あまり感情を表に出さない彼にしては珍しくて驚いた。
「え、何? なんかヤバイこと聞いた?」
「あ、いや……それは、なんというか、少し後ろめたい事情が……」
 聞かれたくないことには触れないほうがいいのかとも思ったが、口ごもるというのもやはり珍しくてますます興味が湧いてしまう。
「なにそれめっちゃ気になる」
 彼は少し迷った後、わかったと言って立ち上がった。それからリビングの窓を開けて、こっちへ来いと誘う。
 促されてベランダに出れば、彼は手すりの向こうを指さして、わかるかと言った。そこにあったのは先日親友と話しこんだ公園だ。ここが2階というのもあってか想像以上に近い。
 マンション脇の公園というのは当然認識していたが、彼の家の位置などは頭になかった。しかも彼の部屋はリビングと反対側にあり、部屋から見える位置に公園はないのだ。

「え、嘘。俺らの声、聞こえた?」
「全部が聞こえていたわけじゃないが、それなりに」
 すまないと言って彼は律儀に深々と頭を下げる。
 怒る気にはならなかったが、それでもやはり、なんとなく恥ずかしい。あの日の会話を聞いて確信を持ったというなら、彼への想いを吐露した部分は聞かれているに違いないのだ。
「時々、お前が切なそうに泣いている理由が自分にあるとも、そこまで気持ちが育っているとも思ってなかった。だから俺も色々考えたんだ。お前があいつを好きだと言い続ける限り、このまま知らないふりを続けたほうがいいかどうか」
「そういうプレイかもしれないし?」
「完全に自覚があって、しかも既に抱きあう仲だというのに、好きだと言わない理由がわからなかったんだ。さっきまでは」
「けっこーくだらない理由で安心した?」
 彼とのエッチが気持ちよすぎて、自分の心よりも体の快楽を優先した結果だなんて、なんともしょうもない理由だという自覚はあって、照れ隠しに笑ってみせた。
「丁寧に慣らしたかいがあったな。とは正直少し思ったが、理由を知って逆に不安になったこともある」
「不安?」
「これから先も気持ちが良い思いはさせてやれるが、俺自身はさっきも言ったように、弱みに付け込んででも好きな相手に触れようとするゲスな面もあれば、こうして盗み聞きだってするような男だからな。こんな男はお前の本来のタイプとはだいぶ違うだろう?」
 確かに、親友と目の前の彼とでは随分と違う。似ているところがあるとすれば、自分に優しいところくらいだが、その優しさの表現はやはりだいぶ違っている。けれどどんな理由にしろ、好きだと思ってしまった気持ちは、いまさら変えようがないのだ。
「こんな話を聞いた後でも、まだ俺を好きだと言えるか?」
「言えるよ。好きだよ」
「お前の気持ちが肉体的快楽に引きずられたものである可能性が高くても、お前の想像とは真逆で、関係解消なんて欠片も考えないどころか、これから先もっとたくさんの快楽を刻みこんでやろうとか、それでますます俺から離れられなくなればいい。なんてことを考えていても?」
 もっとたくさんの快楽を刻み込んで、なんてセリフだけで、期待にドキドキしてしまう。それくらい、既にこちらの体は、彼によってイヤラシく作り変えられた後なのだ。
「いー、よ」
「では、もう一度言うが、お前が好きだ。恋人として付き合ってもらえるか?」
 今度はもちろん、嘘だなんて言わずに頷いてみせた。

続きました→

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった8

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 その日だけで何人に真相を尋ねられただろうか。聞かれたものには正直に、自分たちの関係は変わらず親友だと返したけれど、憶測と噂はやはりじわりと広がっているようだった。
 彼女を追いかけていった親友が、そのまま彼女と険悪気味になっているらしいことも、聞いても居ないのに知らされた。それを、むしろチャンスじゃないかと囃し立てる、外野の気持ちはさっぱりわからない。自分のことで親友が彼女と揉めるだなんて、申し訳ない気持ちしかないのに。
 それとも、アイツが気づいていたように、親友を好きだった気持ちは周りにも知られていたって事だろうか?
 そんな不安がよぎりつつも、親友とその彼女は似合いのカップルだと思っているし、自分自身、恋人は居なくても好きな相手はいると告げてみた。しかし結局、無理はしなくていいだとか、その好きな相手ってのが親友なんだろうとか言われて辟易する。
 ついでに言えば、二人が付き合っても応援するだとか、男同士に偏見ないよだとか、実はあれだけ好き好き言ってて彼女を作った親友を許せないと思ってたとか、ここぞとばかりに寄せられる意見には苦笑するしかなかった。
 他人の言葉は無責任に自分勝手で、この状況を面白がられていることだけは確かだ。
 そんな中、アイツは何も言ってはこなかった。最近は教室内でもそこそこ一緒に居ることが増えていたのに、スッと距離を置かれた気がして内心焦る。
 放課後、話したいことがあるから一緒に帰ろうと誘えば、断られることはなく、しかも当たり前のように彼の自宅へ招かれた。けれど通されたのは彼の部屋ではなくリビングだ。
 なんとなくの成り行きで一緒に食事をしたこともあるので、リビングに入ったことがないとは言わないが、最初からずっと当たり前のように彼の部屋に直行だった分、それだけでもショックを受けている自分に気づいて泣きそうになる。この関係を終えたくはなかった。
 4人がけのダイニングテーブル向い合って座ると、その距離感がなんとも寂しい。二人の間のテーブルが、まるで彼の拒絶のようで、彼の顔を見ていられずに軽くうつむき話し始める。
「あいつとの噂のことなんだけど……」
「ただの噂で、親友は親友のまま、なんだろう?」
 誤解されているわけではなさそうでホッとする。
「そうだよ。だから俺らの関係、終わりにしようとか言わないで」
「あいつへの想いを紛らわせるために、これからも慰め続けて欲しいと」
「うん、そう」
「本当にそれでいいのか?」
「いいよ」
 即答したものの、どういう意味だと不安になった。
「てかさ、お前もチャンスだとか、思ってる?」
「まぁ、いい機会だという気はしている」
「でも俺、あいつと彼女の邪魔する気、一切ないよ」
 こわごわと尋ねてみたら肯定されて、返す声は震えてしまった。
「何の話だ」
「だから、チャンスだよ。あいつが彼女と揉めてるうちに、彼女からあいつを奪い返せって。奪い返すも何も、もともと親友で、今も親友なんだから、何も奪われてないのにさぁ」
「ああ……そういえばそんな話も聞こえていたような気がするな」
 机の位置はあまり近くないけれど、同じクラスなのだから、こちらの会話が届いていてもおかしくはない。しかしだとしたら、彼の言う機会とは何をさすんだろう?
「皆随分と好き勝手言っていたな」
「だよな。ホント、まいった」
「しかし的を得ていた言葉もあったろう」
「え、どれ?」
「好きなら好きだと本人にきちんと伝えないと意味が無い」
 確かに半分説教じみた感じに言われた記憶はある。たしか、恋人は居なくても好きな相手は居る、という話の時だっただろうか。
「それが言えてたら、そもそもお前に抱かれるような目にあってないだろ」
 苦笑しつつちらりと見てしまった彼の顔が、思いの外真剣でなんだか落ち着かない。彼の視線から逃げるように、ずっとややうつむき気味でいたのに、ますます頭が下がってしまう。
「顔を上げてくれないか」
 ビクリと体が震えるのがわかった。腿の上でぎゅっと拳を握りしめれば、優しく名前を呼ばれる。促されてゆっくりと顔をあげるものの、やはり真剣な彼の顔を直視できない。
 彼は困った様子で、わずかばかり苦笑したようだった。
「いまの俺達の関係を、本当にこのままの状態で続けたいか?」
「ダメ?」
「ダメではないが、辛くないのか」
「そりゃ辛いよ。言えるなら好きだってちゃんと本人に伝えたいし、恋人になれるなら恋人にだってなりたい」
 それは紛れもない本心で、けれど伝えたい相手はもちろん親友ではない。好きだと伝えたいのは目の前に居る彼だった。けれどそれを隠すための言葉を続ける。
「でも、仕方ないだろ。あいつは彼女が居て、俺はそれを邪魔したいわけじゃない」
「そういうプレイが燃える。などと言うなら黙っていたほうがいいかと迷っていたんだが、恋人になれるならなりたいとまで思っているなら、正直に言ってくれてもいいんじゃないか?」
「は? プレイ? 燃える? てか正直に言えって……」
 あれ? もしかして気持ちバレてる? などと焦るなか、彼は更にとんでもないことを言い出した。
「本当に好きな相手とは出来ないから、仕方なく好きでもない相手に抱かれる。というシチュエーションが気に入っているのかと……」
「えっ、いやいやいや。なんだそれっ」
「どうやら少し誤解していたらしい。恋人になりたい気持ちがあるなら、何もお前から言わせる必要もないな」
 俺から言おうと続けた後。
「お前が好きだ。誰かの代わりではなく、今度は恋人として、お前との関係を作り直したい」
「嘘だっ!」
 勢い良く立ち上がりながら叫べば、やはり酷く真剣な顔で、嘘じゃないと返された。

続きました→

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった7

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 結局、親友とギクシャクしのは数日だけだった。
 ちょっとツラかせよなどと凄みながら呼び出され、しかも向かった先が体育館裏だなんてあまりにもベタな場所だったせいで、ぼんやりと数発くらいなら殴られても仕方ないかと思っていたが、いざ向かい合って告げられたのは「お前の恋を応援することにした」という驚きの言葉だった。
 むりやり納得したと言わんばかりの顔だったけれど、それでもひどく嬉しかった。嬉しくて、あの夜にはこぼれなかった涙が、ボロリとこぼれ落ちていく。
「えっ、ちょっ」
 慌てた親友に引き寄せられて抱きしめられる。そこそこ身長差があるので、相手の胸に顔を埋めるなんて体勢にはもちろんならず、ぼやけた視界に映るのは肩越しに見える相手の背中と地面だった。
 抱きしめるというよりは抱きつかれているような状態で、それでも必死でこちらをなだめるように背中をポンポンと叩く仕草にどこかホッとして、安心したらなんだかおかしくなる。
「もう泣いてねぇ?」
「ううん。まだ泣いてる」
「なんだよ。泣きながら笑ってんのかよ」
「うん」
「ゴメン。その、泣かすつもりはなかった」
「わかってる。嬉しいだけ。親友がお前でよかった」
「おう」
「照れた」
「ばっ、っか。俺だって同じこと思ってるっつーの」
「うん。嬉しい。大好き」
「言うのが遅ぇんだよばーかばーか」
 躊躇いなく抱きついてきて、大好きと笑ってくれても、俺も大好きと笑い返したことはなかった。言葉は同じでも、そこに含む想いが違うことは明白だったからだ。
 そもそも彼がそんな態度を見せるのは、周りに友人やらクラスメイトやらがいるような場所が多く、パフォーマンス的要素が強かったし、だからこちらも、はいはいわかったわかった。といなすスタンスが多かったように思う。
「だって今まではお前と同じ好きじゃなかったもん」
「あー……ゴメン」
「謝んなよ」
「てか自己嫌悪だから。お前の辛いこと、ぜんぜんわかってなかったなって」
「まぁ必死で隠してたから」
「俺がふざけた調子で好き好き言ってなかったら、お前、最初から俺に告白した?」
「しないよ。関係壊れるの怖かったし」
「だよなー……あっ、」
「えっ、何?」
「ちょっ、待て誤解っ!」
 背を抱き込んでいた腕が離れたかと思うと、ゴメンと言い捨て親友が横をすり抜け駆けていく。親友の反応から、追いかけなくても状況はなんとなくわかっていた。というよりも、振り向くのが怖い。彼が追いかけていったのが彼女だとして、彼女だけに見られていたとは考えにくいからだ。
 自分たちの仲の良さは周知の事実で、それが数日ギクシャクした後、ツラかせよなどと言いつつ体育館裏だ。好奇心旺盛に覗きに来ていたヤジウマはいったいどれくらいいるんだろう。そして、先程までの自分たちの真実が、どこまで正確に周りに伝わっているのか。
 多分、思いっきり誤解されている。どう考えたって、自分たちがとうとう出来上がってしまったように思われただろう。という気がした。
 随分と面倒なことになったらしい。そう思いながら、大きなため息を一つ吐き出した。

続きました→

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった6

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 マンションのエントランスを抜けた所で思わず歩みを止める。植え込みの縁に腰掛けて、出入口を不機嫌そうな顔で見つめている男が、親友だと気づいてしまったからだ。
 どう考えても、自分を待っていたのだとしか思えない。
 お前、なんか最近おかしくない? などと探りを入れられてはいたが、まさか後をつけてきたのだろうか。今日はデートだと言って、授業の後早々に帰っていったはずなのに、わけがわからない。
 立ち止まってしまったこちらに焦れたのか、親友が立ち上がって歩み寄ってくる。思わず後ずさるが、逃げれる場所などないのは明白だ。
 すぐに距離は詰められて、グッと手首を掴まれた。男の中では小柄な方とはいえ、身体能力はむしろ高いほうだ。掴む力の強さに手首が痛んで、思わず眉が寄る。
「泣いたの?」
 明るいエントランスで顔を寄せられれば、赤くなった目元にだって気づいただろう。けれどそれを肯定は出来なかった。
「ねぇ、お前アイツに何されてんの? なんか弱み握られてんの?」
 抱かれているなんて言えるわけがない。確かに弱みは握られているのかも知れないが、それによって何かを強制されたことは一度だってないのだから、被害者ぶるつもりも毛頭ない。
 結局、何も言えずに黙るしかなかった。そんな自分に、目の前の相手は更に焦れたようだ。
「アイツの部屋どこよ?」
「えっ?」
「だって直接文句言う方が早いっしょ」
 本当は一軒ずつ表札チェックでもしようかと思ったけど、ありふれた苗字だし、探してるうちにお前帰っちゃっても困るから、出てくるのを待ってただけだと彼は言う。あからさまに敵意むき出しの彼に困ったなと思いながら、悪いのは自分なのだと言ってみた。
「文句……って、アイツは何も悪くないよ。悪いのは、俺の方」
「洗脳されてそう思わされてるだけかもしんねーだろ。事実、お前泣いてんだし。親友泣かされて黙ってられっか」
「本当に違うって。すごく、優しくしてもらってる。あんまり優しいから、それで少し泣いちゃうだけ」
「嘘つくな。お前の嘘なんてすぐわかんだからな」
 長い付き合いだから、その言葉は確かに正しい。自分だって相手の顔から、この件に関しては譲らないという強い意志を読み取れている。
「そもそも俺に何隠してんの? アイツが優しいってのが本当なら、俺に言えないような何をアイツに相談してんの?」
 小さなため息を一つ吐き出した。今、家への押しかけをむりやり阻止したって、どちらにしろ学校へ行けば簡単に相手を捕まえられるのだから、この勢いで親友がアイツに殴りこみを掛ける前に、自分の口でちゃんと説明したほうがいいだろう。
「わかった。説明はする。でもとりあえず、場所変えない?」
 出入口の脇で揉めてる自分たちの横を、不審そうな顔で行き来するマンションの住人に迷惑すぎる。
 了承した相手と連れ立って、マンション脇の小さな公園へ移動した。一つだけのベンチに並んで腰掛ける。
 そしてまずは、自分は恋愛対象が女性ではなく男性らしいとカミングアウトした。目の前の親友を好きだった事実までを告げるべきかは迷ったけれど、そこを話さずに彼との関係を説明できる自信がなくて、結局きっかけから何から全てを晒す。
 今では彼を恋愛対象として好きなのだということも。結局それも片想いには変わりがなく、泣いてしまうのはそのせいで、彼はまったく悪くないのだということも。
 最初はちらちらと言葉を挟んでいた親友も、親友への想いを抱えるのが辛くて彼に抱かれることにした辺りの話で絶句し、話し終える頃にはすっかりうなだれてしまって表情を読むことは出来なかった。 
「変な話聞かせてゴメン。俺が気持ち悪くなったなら、友達やめていいよ。でも、アイツのことは責めないで」
 さすがに居たたまれなくなって、座っていたベンチを立った。
「本当に、ゴメン。さすがに一緒に帰るの無理だと思うし、俺、先行くな」
 少しだけ待ったが何も返ってこないので、了承と取って公園を後にする。きっと明日から、自分たちはもう親友どころか友人ですらないのだろう。
 胸が痛い。けれど涙が零れ落ちることはなかった。

続きました→

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった5

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 忘れてしまえと言われてなかったコトにできるほど、あれはぬるい記憶じゃない。
 もう一度したいと口にしたら相手は少し困った様子で、後腐れなく1回だけだというから出来る限り優しくしたのだと言った。繰り返したらいつまで自制がきくかわからないぞというそれは半分脅しで、半分は本気だっただろう。
 最初から抱かれる覚悟で彼の誘いに乗ったのだから、別に構わないと思った。充分楽しんだとは言われたが、彼自身はなんら気持の良い行為ではなかったはずだから、一緒に気持ちよくなれるのならそちらの方が良いとさえ思う。
 正直にそう言ったら、お前は言葉と実際の反応がアンバランスだからとますます困った様子で言われたが、結局、アイツの事を忘れたいというセリフによって関係はその後も定期的に続いている。
 彼に触れられている間は、親友への想いをあれこれ考えなくて済む。気持ちの良さにどうでもよくなってしまう。だからもっと触れて欲しい。あの日みたいに気持ちよくなりたい。そう言って誘えば、嫌だとは言われなかった。
 ただし、そこに嘘はないけれど、それが全てでもなかった。
 親友のことがなくても、もっと彼に触れられたいという欲求。初めて知った人肌と、他者によって与えられる快楽の虜だった。自慰ではあの気持ちよさに遠く及ばない。しかも、さらにその先が見えている。きっともっと気持ちよくなれる。
 体の示す欲望にあっさり負けた結果だ。大好きで大好きで、けれど本気を伝えられずに苦しむような想いを捨てて、一時的にでも優しく甘やかしてくれる手に溺れる方がましだとさえ考えていた。
 モノシラズでアサハカだった。
 お互いに気持ちよければイーブンだと本気で思っていたくらいに、抱かれるという事の重大さが、まるでわかっていなかったのだ。自分の体の中に男を受け入れ、その男に快楽を刻まれるという行為をナメていた。
 重ねる行為に情が湧くものだなんて知らなかったし、好きだという気持ちから始めなかった関係は、結局また自分を苦しめるのだとも知らなかった。気づいた時にはもう、後戻りなんて出来ないところへ踏み込んだ後だった。
 彼はひたすらに優しいし、多分それなりに好かれてもいるだろう。けれどやはり、代わりでしかないのだ。想いを伝えられない親友の代わりとしてそこにいる。そのスタンスだけは始めから一貫していて揺るがない。
 それがはっきりとわかるから、こちらも正直な気持ちは晒せなかった。晒してもどうせ困らせるだけだし、こんな関係にあるから勘違いするのだと言って、終わりにされそうな気さえする。それだけは嫌だった。
 結果、もうほとんど心揺れることのなくなった親友を、未だ想い続けるふりをしている。
 バカで愚かで、本当にどうしようもない。心も体もはっきりと変わっていくのに、自分たちの関係がほとんど変わっていかないことが苦しかった。
 いつまで自制がきくかわからないと言いつつも、彼は辛抱強くゆっくりとその場所を彼を受け入れるための性器に変えたから、そんな場所を弄られてさえたまらなく気持ちがいい。
「あっ、…あっ、……ぁんっ…、やっ…、やぁ、…」
 ローションの助けを借りて、ぬちゃりくちゃりと押し広げるように出入りする指先に、既に知った悦びをじわりじわりと引き出されていく。もどかしくて、けれど期待に体はますます熱を持ち、その先に待ち受けている強烈な悦楽を想像してしまって怖くなる。
「やめるか?」
 やめて欲しくてこぼれているわけではないとわかっていながら、そんな風に言うのは意地が悪いと思う。イヤではなくイイと言って欲しいと言われながら、やだやだ繰り返してしまうこちらが悪いこともわかってはいたけれど。
「や、っ…ちがっ」
「気持ちがいいならいいんだ」
 必死で頷けば、柔らかに笑う気配がした。
「入ってもいいだろうか」
 それにも必死で頷けば、埋められていた指が抜かれて、すぐさま代わりに彼の熱が押し入ってくる。
「ふぁああぁぁっんんっ、んぁっ、ぁああっっ」
 彼の熱で弱い場所を擦られるとたまらない。
 気持ちが良くて、気持ちが良い以外の何も考えられなくなるのに、なんだか酷く息苦しい。ひたすら気持ちが良くて、胸の内が甘い優しさで満たされていくのに、胸の底の奥のほうがシクシクと痛い。
 突かれるたびに、あッ、アッとこぼれる高い声を自分のものと認識できない。なのに、突き上げられて揺すられてこぼれ落ちていく涙が頬を伝う冷たさだけは、いやにリアルに感じてしまう。
 それを、生理的にあふれる涙なのだと、いつまでごまかせるだろうか。

続きました→

 
 
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