弟の親友がヤバイ4

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 風呂の湯に浸かりながら、あー出たくねぇなぁと思う。もちろん、のんびりゆったりバスタイムを満喫したい、などという理由ではない。
 結局抱かれることを了承し、せめて体くらいは洗ってきたいと頼み込んで、風呂場へ逃げたというのがここへ至る過程だった。
 いきなり抱かせてと言われて、はいどうぞなんて返せるわけがない事を、相手だって充分にわかっていた。わかっていた相手は、こちらの弱い部分を的確に突いてきた。
 要するに、抱かれてくれないなら弟に手を出すぞと脅された。愛すべき可愛い弟を人質に取られて、彼の要求を飲むしかなくなった。
「お前みたいな男があいつの親友だなんて、ホント信じらんねぇよ。まさか、あいつまで脅して、親友面してるわけじゃないよな?」
「俺は、貴方みたいな男があいつの兄貴なの、かなり納得できますけどね。もちろん、脅したりなんかしなくても、あいつは俺を大好きですよ?」
 風呂場へ逃げ込む直前に交わした会話を思い出してため息を吐く。自信満々で弟に好かれていると口に出すその態度が腹立たしい。
「知ってんよバーカ」
 小さくこぼした呟きだけど、声に出したら結構落ち込んだ。
 二人の仲の良さなんて、黙々と勉強しているだけの姿を一日見ていただけでも充分に伝わっている。弟のあの顔も態度も、脅されて出来るようなものじゃない。
 弟が信頼をおいている親友なのは本当だろう。きっと普段はいい男なんだろうなとも思う。成長して随分と背が伸びたし、小柄とはいえない男の体を、優しく抱き上げて運んでやると豪語するだけの筋力があるみたいだし、見た目は悪く無いどころか笑顔はうっかり見とれるレベルだし、話し口調は丁寧だし、勉強していた様子からすると、たぶんきっと頭もそう悪くない。
 女の子にだってちゃんとモテそうなのに、親友の兄貴を脅して抱こうとしてるなんて、本当どうかしている。けれど言い換えれば、それほどまでに幼い彼を傷つけたのだろう。
 まぁ中学生相手に大人気ない事をしたとは思う。まさかそこまでトラウマになっているとも思わなかったが、そんなのなんの言い訳にもならない事は明白だし、それを口にして相手の傷をさらにえぐろうとも思わない。
 脅されて抱かれろと迫られるのは、復讐してやると思わせるほどの仕打ちをした、過去の自分が悪い。わかっている。これは自業自得だ。
「あーもう、しょうがねぇなぁ」
 大きく息を吐きだして、覚悟を決めて風呂を出た。
 ざっと体を拭いてリビングへ戻れば、ソファに腰掛けてぼんやりと空を見つめていた相手が、扉の開閉音で気付いたのか振り返る。
「ちょっ……」
 やられる気満々の腰タオル一丁という格好に、相手が息を呑むのがわかった。
「ソファ汚すわけに行かないからこっちな」
 彼の反応は無視して、ソファ脇を通り過ぎ、隣接の和室へ続く襖に手をかける。和室の中には、彼が今夜寝るための布団が既に敷かれている。
「ま、待って」
 慌てたように伸びてきた手に腕を掴まれた。
「何?」
 既に開けてしまった襖に背を向けて、背後に立つ困惑顔の男と向き合った。
「本当に、俺に抱かれるつもり、なんですか?」
「脅しておいてよく言うよ。あれ言われて、抱かれないって選択なんて出来るわけないだろ」
「ブラコンにもほどがありますよ」
「うっせ。わかっ」
 わかってるの言葉は最後まで言えなかった。相手の唇を押し当てられてしまったからだ。
「やっぱりいいです」
「は? 何が?」
「貴方を抱く気が萎えました」
「はぁあ?」
 今のキスの意味はだとか、風呂にまで入って決めた覚悟をどうしてくれるだとか、何泣きそうになってんだよとか、頭の中にぐるぐると回る言葉はどれも口から出てくることはなかった。
「いやだって、お前……」
「心配しなくても、貴方の大事な弟に手を出したりしませんよ。俺にとっても大事な親友ですし、今後も躊躇いなく大好きって言われてたいですしね」
 可愛いですよね、あいつ。と続いた言葉に、そうだろ~と言いかけて慌てて口を閉じた。弟の可愛さを語り合う相手でも場面でもない。
 なんだか辛そうな顔に傷つけたらしいとは思ったが、やっぱりわけがわからなかった。
「じゃあ、そういうわけで、おやすみなさい」
「えっ、ちょっ、」
 するりと脇を抜けて和室へ踏み込んだ相手は、後ろ手にピシャリと襖を閉めてしまう。
「ええええー」
 もらした戸惑いに応えてくれる者はなく、けれど閉じた襖を自ら開けて、どういうことだと問い詰めるのも躊躇われた。
 暫くそこに立ち尽くしていたが、襖が開く気配はない。やがて肌寒さに気付いて、仕方なく、もやもやとしたまま自室に引き上げた。

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弟の親友がヤバイ3

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 こんな異様な状況の中、男の手なんかで興奮するわけがない。
 お前と違って誰の手でも感じちゃう淫乱じゃないからな。なんて事を思ったりもしたけれど、それを口に出したりはしなかった。そういった事に慣れてない中学生と、そこそこ経験のある現在の自分とでは比較することそのものがオカシイのもわかっているし、そんな言葉を口に出して相手を煽ったらもっと酷い目にあわされそうだ。
 しかし諦めて大人しくされるがままになっても、反応しないことに焦れた相手によって、行為はあっさりエスカレートしていく。
 何をされたかというと、目隠しされた上で咥えられた。しかし目隠しなんてなんの意味もない。相手の顔を見なければ興奮できる、というような状況をとっくに超えている。
 両手を括られ拘束されていることも、ムリヤリ感じさせようという動きも、弟と極力二人きりにさせたくなくてまだ風呂を済ませていないという事実も、はっきり言って萎える要素ばかりだった。
 正直ここまでくると、必死になってバカだなぁという気持ちが強い。復讐だの負けず嫌いだの根に持つタイプだの言いつつも、これじゃ結局、相手にも相当ダメージがありそうだ。
 はぁ、と溜息を吐いたら、相手の動きが止まった。それからそっと体を離す気配がして、相手もとうとう諦める気になったのかもしれないと思う。できればそうであって欲しい。
 その願いが届いたのか、やがて目隠しが外された。ようやく開けた視界の先、困惑を混ぜた泣きそうな顔の相手が、インポかよと怒っている。さっきの余裕は当然無くて、そんな顔で睨まれたって欠片も怖さはない。
 その顔を見ていたら思わず笑ってしまって、相手はますます泣きそうな顔になった。せっかくそこそこ男前に育ったのに台無しだ。そして、そんな顔をさせているのが自分なのかと思うと、さすがに悪いことをした気になって胸が少し痛んだ。
「あのさ、俺、Mじゃないんだよね」
「だったら何?」
「酷いことされたら萎える系なの。でもお前の泣きそうな顔見てたら、ちょっと勃ちそうかもって気になった。……かも?」
「変態」
「まぁ否定はしない」
「ドS」
「そこまでではない、と思う。てか、ちょっと聞いていい?」
 相手は諦めきった顔で一つ息を吐き出すした。
「どうぞ」
「復讐って俺に何したいわけ? 俺がお前の手でイッたらそれで満足して終わり?」
「まさか。取り敢えずやられたことはやり返すってだけで、貴方に気持ちよくなってもらった後は、俺が気持ちよくさせて貰う予定でしたよ。だって遊びに来たら、あいつの代わりに、またキモチイ事してくれるって言ってましたよね?」
 覚えてますかと問われたので、覚えてるけどと返す。
 けれど相手はもう高校三年生だ。きっと手コキ程度で満足なんてしないだろう。だとしたら彼がしたみたいにフェラをしろだとか、もしかしたらそれ以上を求めてくる気なのかもしれない。
「てことは何? お前、俺に抱いて欲しいとか思ってんの?」
 あの時さっさと逃げ出した中学生が、すっかり成長を終えてから戻ってくる意味を考えたら、そのあたりかなと思うがどうなんだろう?
「逆です」
「逆?」
「抱かれるのは貴方の方」
「あっ、あー……そっち、か」
 それならがっちり成長を終えた後じゃなきゃ、近づく気にもならなかっただろうと、思わず納得してしまった。
「だってあいつの代わりだって言うなら、そっちのが自然でしょう?」
「そうね。お前の言い分は間違ってないよ」
 納得はできると、苦笑を零すしかない。
 さて、相手の希望を吐かせてみたけれど、これはどうすればいいだろう?
 彼の泣きそうな顔に過去の所業を反省し、少しくらいなら相手をしてもと思ったりもしたけれど、最終目的が抱くこととか言われてしまうと、やはりそう簡単には、じゃあお互いちょっとキモチクなってみようかなんて持ちかけられない。
「うーん……どうすっかなぁ」
「俺に、抱かれてくれます?」
 迷ったせいで、多少は見込みがあるとでも思ったのだろうか?
「いいよ。なんて言うと思うか?」
「全く欠片も思いませんね」
 相手もさすがに落ち着いて来たようで、返す口調がふてぶてしい。しかし、はっきり否定されてホッとしたのも事実だった。

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弟の親友がヤバイ2

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 夕飯後もまだリビングで勉強を続ける彼らの邪魔になるわけにはいかないが、当然、自室に戻る気はない。リビングとはいえ極力二人きりにさせたくない。
 さすがにテーブルの向かいで見張り続けるのは悪いし、TVをつけることも出来ないので、少し離れた場所にあるソファーにだらしなく身を預け、取り敢えずスマホを弄り続ける。
 時折互いに何かを教え合っている会話のほかは、シャーペンがノートの上を走るかすかな音が聞こえるだけの、至って静かな空間だ。思っていた以上に二人は真面目に受験勉強をしていて驚いた。
 静かすぎて眠い。
 気付けば寝入っていたようで、体を揺すられ起こされた。
「んぁ……?」
「目、覚めましたか?」
 目の前、随分と近い距離にある顔は、弟のものではなく弟の親友である男のものだ。
「あー……なんで、お前?」
「さて、なんででしょう」
 寝起きでぼんやりした頭でもイラッときた。
「ヒント、復讐」
 こちらの苛つきをわかっている様子で、なのに柔らかに笑う。綺麗な笑顔だなんて思ってつい見惚れた事も、顔とセリフとのチグハグさにも、混乱が加速する。
「ふく、しゅう……?」
「俺、めちゃくちゃ負けず嫌いなんですよね。あと結構根に持つタイプです」
 軽やかに、まるで歌でも口ずさむように告げながら、彼の手がジーンズの股間をさらりと撫でていくから、ギョッとして立ち上がろうとする。しかしそれは叶わなかった。
 グッと腰を押さえられ、体のバランスが崩れる。慌てて座面に手を突こうとしたが、何故か両手が一纏めにタオルと紐とでぐるぐる巻きにされていて、焦って余計にバランスが崩れただけだった。
「えっ、えっ??」
 腰を横に強く引かれる感覚の後、ずるりと上体が傾いでいき、気づけば横長のソファに半ば押し倒された上、相手が自分の膝辺りにまたがっていて身動きが取れない。
「抵抗されると面倒なんで、手は括らせて貰いました」
「ふざっけんな。退けよ」
「嫌です」
「っつかお前ら勉強はどうした。あいつはどこ行った」
「眠そうだったんでお開きになりましたよ。寝るって言って自室戻りました」
 三十分くらい前にと言って、もう寝てるんじゃないかなと続ける。さすがにもう寝起きのぼんやり感は抜けたが、それでも相手の言葉がほとんど理解できない。
「意味わかんねぇ。で、なんでお前だけここに居んだよ」
 二人で勉強するスペースすら確保できない弟の部屋は、当たり前だが彼が寝るための布団を敷くスペースもなく、彼が寝るのはリビング隣接の和室の予定だ。母が出しておいた来客用の布団は、夕飯後、彼が風呂を使っている間に弟が和室に敷いていた。
「寝るならお前もさっさと隣行けって」
「何言ってんですか。ここに俺だけ残った理由なんて、そんなの、お兄さんと二人きりになりたかったからに決まってるじゃないですか」
 楽しげな顔に背筋を冷たいものが走る。これはかなりマズイ状況なんじゃないかと、ようやく気付いた。
「や、やめろっ!」
 スボンのフロントボタンに手がかかり、慌てて声を上げる。
「静かにしてください。騒ぐと大事な大事な弟に、醜態さらす事になりますよ。あいつだけ部屋に戻した俺の気遣い、むしろ感謝して欲しいとこですからね?」
 リビングで寝落ちしてたから、特別にここで済ませてあげるんですよと、随分な上から目線に頭の中がグラグラと揺れた。本当に意味がわからない。
「大丈夫ですか? まったくわからないって顔してますけど。可愛い弟の隣の部屋で、俺にアンアン言わされるの堪える方が良かったっていうなら、今から場所移しましょうか」
 優しく抱き上げて連れて行ってあげますよなんて、これまた柔らかで楽しげな顔で笑うけれど、その顔を見てももう恐怖しか湧かない。
「心配しなくても、こう見えて結構鍛えてるんで、派手に暴れたりしなきゃ落としませんよ。というわけで部屋、戻ります?」
「い、…やだ……」
 かろうじて絞り出した声は震えた上に掠れている。
「あー良い反応ですね。怯えてるの。俺もあの日、めちゃくちゃ貴方が怖かったですから、これでおあいこって事で」
 じゃ、まずは俺の手で気持ちよくなりましょうかと言われながら、とうとうジッパーが下された。

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弟の親友がヤバイ1

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 仕事休みな土曜の朝というか昼近く、のそのそと起きだしてリビングへ向かえば、そこでは見知らぬ男が大事な弟とイチャイチャしていた。リビングのテーブルに、横に並んで座っている二人の距離がやたら近い。
「誰だそいつ」
 ドアに背を向けて仲良く寄り添う頭が二つとも振り向いて、弟がおはようではなく「おそよう」と笑う。そして隣の男は軽く頭を下げた後で、お久しぶりですと言った。
 会ったことがある相手なのかと、しげしげ相手を見つめて思い出す。随分男くさくなったが、その顔には面影がある。
「あっ、お前、なんで……」
 弟の前だったことを思い出して慌てて口を閉ざした。
 彼は弟が小学校に上がった頃から頻繁に訪れるようになり、中学二年の夏休みを境にここ四年ほど会うことがなかった男だ。何故彼が家に来なくなったかはわかっている。
 弟の親友だというそいつは、明らかに弟に懸想していたから、弟と引き離したくてちょっとした意地悪というか悪戯を仕掛けた。だって大事な大事な弟を、男なんかにどうこうされたらたまらない。
 五つ違いの兄弟だから、弟が中学二年当時はこちらはもう大学生で、成長期などとっくに終わった大人の体だった。背が高いというほどではないが平均的な成長を遂げていた自分が、成長期入りかけの小さな体を後ろから抱き込んでしまえば、相手は抵抗を奪われたも同然だ。
 そして何をしたのかといえば、無遠慮に股間を弄り回して、勃たせて扱いて吐精させた。誰の手でも感じちゃう淫乱だと罵って、弟に手を出したら許さないと脅して、弟の代わりに気持ちよくしてやるからまた遊びにおいでと誘ってやった。
 その後ピタリと顔を見せなくなったことから、遊びに来たらまたやるよという宣言を、彼は正しく理解したようだった。
「今日さー、母さんたち居ないじゃん。泊まりで勉強しに来ないかって誘ったら、たまにはいいかもって言ってくれたから、呼んじゃった。すっげ久々で滾る」
「受験勉強だからな? 遊びに来てるわけじゃないからな?」
 にっこにこで報告してくれる弟に、やれやれといった様子で男が返しているが、その目は随分と優しげだ。
「お前らって、未だに親友やってんの……?」
「は? 当たり前じゃん」
 肯定は弟から即座に返ってきた。
 こんな危険な兄が居たんじゃ親友なんてやってられないと、弟から離れてくれたのだと安心していたが甘かったようだ。家に来なくなったというだけで、学校では変わらず仲良くしていたのかと思うと、騙されたような気持ちすら湧いてくる。
「母さん知ってんのか?」
「もっちろーん。オッケー貰って、布団も用意してもらったもん」
 男同士だからってさすがに一緒のベッドじゃ狭いしねーとあっけらかんと話す弟に、もっと危機感持てよなんてことは言えるわけがない。むしろそこが弟の魅力であり可愛いところであり、だから守ってやらねばと愛しく思うのだ。
「あ、兄さんのご飯ここあるよ。ここ片付けたほうが良い? でも別に目の前で俺らが勉強してたからって構わないよね?」
「ああ、いいよ。どうせお前の部屋、二人で勉強できるスペースなんてないんだろ?」
「えへへ。ゴメンね」
 あまり本気で悪いとは思っていないだろう事は明らかだったが、部屋を片付けておかないからだと小言を続ける気にはならない。むしろ散らかし放題グッジョブ! と言ってやりたいくらいだ。
 弟の部屋で二人きりになどさせてたまるか。こいつはまだ絶対、弟を諦めてなんかいない。むしろ久々に訪れたのは、宣戦布告かもしれないとすら思う。
 なぜなら弟達の正面の席へ腰を下ろして、用意された朝食を食べ始めた自分を見つめる瞳が、ふてぶてしく挑戦的だからだ。
「なに?」
「いえ、別に……ただ、綺麗な箸使いだなと見とれてただけです」
「は?」
「でっしょー。魚とかの骨もね、兄さんすっごく綺麗に取るからね」
 何を言い出してるんだこいつはと呆気にとられたその横で、弟が自慢気に告げた。
「それ前聞いた。だから気になったってのもある」
「あ、そっか。言った言った。で、どうよ。俺が言った通りっしょ?」
「うん。お前が言った通りだった」
 やはり弟に向ける瞳は優しげで、あーこれちょっとマズイんじゃないの? という気がして少し焦る。
 だってさっき、泊まりで誘ったと言っていた。相手は自分がいるのをわかって乗り込んできているのだから、明らかにこちらが不利だろう。
 取り敢えずはゆっくりと朝食を食べつつ目の前の二人を観察して、どうやって邪魔してやるかしっかり考えなければと思った。

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ゲイを公言するおっさんの蔵書

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 近所に住む変わり者のおっさんは男が好きだそうで、昔から親には近づくなと言われ続けていたが、そのおっさん本人がガキは範疇外だとかいくら男が好きでもタイプってもんがあるだとか言うので、安心して親にはナイショで良くこっそり遊びに行っていた。
 目当ては彼の蔵書だった。彼自身が本部屋と呼ぶ広めの部屋の中は本棚が立ち並び、そこには学校の図書館にはないような、図鑑や小説や漫画や雑誌が割と適当な感じで収められていた。その雑多さも含めて魅力的で、彼の家に行ったら基本本部屋にこもりきりだった。
 持ち出し禁止。本部屋への飲食物持ち込み禁止。本は丁寧に扱うこと。という3つの約束はあるものの、持ち出し禁止以外は図書館と同じだ。
 何度か親バレしてその都度怒られもしたが、共働きの鍵っ子だったので、実質的な親の拘束などないに等しい。密室に二人きりで変なことをされたらという心配をする親には、ガキは範疇外で俺は好みのタイプじゃないってよと彼の言葉をそのまま伝えてみたが、それを信じたのかどうかは知らない。本を借りて読んでるだけとももちろん言った。
 そもそも、漫画もそれなりの量があったので、本部屋に通っているのは自分だけではなかった。自分だって最初は、友だちに連れられて彼の部屋に行ったのだ。ただ、自分が通う頻度が一番高いことは自覚していたし、二人きりになることもないわけではなかった。まぁ、二人きりとは言っても家の中に二人しか居ないだけであって、本部屋の中で二人きりで過ごすなんてことは一度もなかったのだけれど。
 言っても聞かないから諦めたのか、おっさんは子供に無害と理解したのか、だんだん親も何も言わなくなって、自分はますますおっさんの本部屋通いが加速した。
 男を好きだということを隠さずにいるおっさんは確かに変わり者かも知れないが、意外と近所には馴染んでもいたようだとわかったのは、自分が高校に進学した頃だろうか。子供の目から見たおっさんは、実はそこまでおっさんではなかったこともその頃に知った。
 おっさんは自分のことはほとんど話さないので、情報源は近所のおばちゃんだ。高校になってもおっさんの本部屋に通い続けるのは自分くらいで、おばちゃん的にも珍しかったのかもしれない。
 お喋りなおばちゃんは、おっさんの可哀想な生い立ちを聞いてもいないのに教えてくれた。思ったほどおっさんではないものの、それでも干支一回りは違う相手に、仲良くしてあげてねと言われても困ると思った記憶がある。
 聞いたことをおっさんに確かめることはしなかった。踏み込み過ぎたらさすがにもう来るなと言われそうな気がしたからかもしれない。
 時代のせいかも知れないが、彼の本部屋に子供が入り込む頻度がどんどんと減って、大学卒業を待つ現在、彼の家に本目当てで通うのはどうやら自分一人になっている。
 おっさんとの関係は子供だった頃とほとんど変わっていない。それは互いにそう意識して距離を保ってきたからだ。それを破るつもりで、今日は本部屋をぐるりと一回り歩いただけで、彼の仕事部屋のドアを叩いた。
 そこは鍵のかかる部屋で、子供の立ち入り禁止区域だ。子どもと呼べない年齢になった今も、その中に入ったことはない。
 誰かが来ているときは、基本彼はそこにいる。彼と話をするのは、家に訪れ部屋に入れてもらう時と、帰る前の挨拶をする時の二度だけだ。
「もう帰るのか?」
 いつもは最低でも一時間は本部屋で過ごすので、さすがに少し驚いた様子を見せる。
「じゃなくて。お茶、しない?」
「お茶?」
 今度ははっきりと驚きを見せた。こんな誘いをしたのは初めてだから当然かも知れない。
「俺、来週大学卒業するからさ。少し、話がしたいんだけど。嫌?」
「いや、いい。ならリビング行くか」
 あっさり承諾されて少し拍子抜けだった。
「それで、話って?」
 初めて通されるリビングのソファに並んで座る。目の前のローテーブルには湯気を立てた紅茶が置かれ、その先にはそこそこ大画面のテレビが鎮座している。
 要するに、向い合って座れる形に席がない。まさかの距離に緊張がやばい。
「あの……」
「俺の好みの男のタイプが聞きたい?」
「は?」
 慌てて彼に振り向いたら、苦笑しながらそういう系の話だろと言われた。
「こんな通われたらさすがに気づくって」
「で、俺は、今も全然タイプじゃ、ない?」
「それに答えるのは難しいな。お前の成長見過ぎたよ」
「それ、って、どういう……」
 緊張からかどうにも言葉がつかえてしまうが、彼がそれを気にする様子はない。
「就職先ってこの近く? 実家から通うのか?」
「あ、はい」
「となると、卒業前に一度だけってお願いでもねぇよなぁ」
 付き合って下さいって告白なの? と聞かれたので、わからないと返したら、苦笑が深くなった。
「もう通わないから最後に一回だけ寝てくれ、ってなら、応じないこともない。……かな」
「えー……」
 それは結局、どういう意味なんだろう。お前はタイプじゃないって言われたってことなのだろうか。
「じゃあ、ちょっと提案だけど」
 どうすればいいのか迷っていたら、彼が立ち上がりついて来いと誘う。連れて行かれたのは彼の仕事部屋だった。
 初めて入った仕事部屋も、作業用の机があるのと若干狭い以外は本部屋と大差がない。
「こっちは大人向けの本ばっかな。男同士ももちろんあるけど、女同士も男女物もある。写真集も動画もある」
「え、読んでいいの? てかどういう意図なの?」
「会社実家から通うってならこっちも開放するから、もう暫くここ通えば?」
 自分がどうしたいのか、どうなりたいのかくらいははっきりさせてから再チャレンジよろしくと言われて、困ったような嬉しいような気持ちが確かに湧いたのだけれど、それよりも目の前の本の山に意識が奪われている。
 さっそく本棚の前に立ち、タイトルを確かめだした自分の背後で、小さな溜息が零れた気がした。

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竜人がご飯4(終)

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 目覚めはスッキリとしていて体がめちゃくちゃ軽かった。隣では竜人の姿に戻った男が、まだ軽いイビキと共に眠っている。
 行為を終えたのは彼の変化の術が解ける直前で、要するに人型が保てている間いっぱいが食事の時間ということらしかった。
 竜人の姿に戻ってもわかる、色濃く漂う疲れの気配。ここでそのまま休めばいいと誘えば、相手は随分と驚いていた。躊躇う相手にこの後の予定はと聞けば、後は自室に戻って休むだけだと言うので、もう少しそばに居て欲しいと頼み込んで引き止めたのは自分だ。
 めちゃくちゃ広いベッドは、二人で横になってもまだ充分に余裕がある。だから、まぁいいかといった様子でベッドに沈んだ男の隣に寄り添えば、やはり相手は驚いたようだった。
 この姿が怖くはないのかと聞かれたが、今更過ぎて笑ってしまった。姿形は多少違っても、つい先程まで体を繋いで睦言を繰り返していた相手だ。
 倒すべき敵として対峙すれば間違いなく恐怖するだろうが、モンスター相手に戦闘を繰り広げていた記憶は既に遠い過去のものになっている。むしろ、殺してやれないと言って謝るような相手を、どう恐怖すればいいのかわからない。
 そう告げれば、そうかと言ったきり、彼はあっさり眠りに落ちてしまった。やはり相当疲れていたらしい。
 無防備に眠る姿は、こちらへの警戒心がまるでない証のようだ。事実、眠る彼に傷をつける術など一切ないし、そんな気持ちも微塵もない。
 どちらかと言えば、相手に対して感じるのは深い興味と好奇心だった。相手は本来の自分の実力では到底お目にかかれないレベルの竜人だ。しかも敵意も悪意もなく、自分を生かすために精を分け与えるという、信じがたい行動を見せている。
 疲れた様子の彼を起こしてしまうのが忍びなくて我慢していたが、一眠りした後の今なら、少しくらいは触れても大丈夫だろうか。
 体に掛かる布をそろりとどければ、仰向けに転がる相手の腹が見えた。確かに彼の性器をこの体に受け入れていたはずが、下腹部もツルリとして何もない。
 不思議に思って体を起こし、その周辺に顔を寄せて確かめる。それは見た目より先に香りで気付いた。
 覚えのある甘い芳香が、下腹部の一部から漏れ出ている。食事前だったら、迷わずそこへ舌を伸ばして舐め啜っていただろう。
 なるほど、性交時以外は体内に収まる仕組みらしい。
 人のように、その近辺を刺激したら、勃起して飛び出してくるのだろうか。などという下世話な興味で、その香りが濃い部分周辺を撫で擦ってみた。
 勃起したペニスが飛び出てくることはなかったが、香りが強くなるのを感じ、腹の隙間にじわりと汁が滲み出る。その汁に誘われて、とうとうその場所へ舌を伸ばしてしまった。ちろりと舐めとった汁は、キスによって与えられる彼の唾液とはまた違った、少し酸味のある旨さだ。
 性器を収めているのだろう袋の中は、濃厚な先走りの液体で満たされていて、差し込んだ舌ですくうようにベロベロと舐め回す。
「こら。なにをしてる」
 つい夢中になって舐め啜っていたら、どうやら起きたらしい男の声が静かに響いた。
「食べ足りない、ということはないだろう?」
 そっと肩を捕まれ引き剥がされる。
「もっと食べれそう。って言ったらまだ俺を抱く?」
 勃起させてよと言ったらダメだとそっけなく返され少し残念だった。
「この姿で抱いたらお前の体を傷つける。次に人型が取れるまで少し待ってくれ。それに今日は他に予定が詰まっている」
「それは残念。というか、次回もあるのか?」
「無事に食事が摂れたのだから、暫くは私がお前の食事として定期的に供される事になる」
 それを聞いてホッとする。
「なるべく、早く、来て」
 縋るように頼んでしまうのは、この部屋に一人閉じ込められる時間を思い出して、どうにも寂しく感じてしまったからだ。目の前の男にさんざん優しく抱かれたせいで、気持ちが弱っているのかもしれない。
「私が来れない間、できればお前を世話する者を戻したいのだが……」
「え、あいつにまた会えるのか?」
「無断でスリットに舌を差し込んで舐め回す、などということをされてしまうと、彼の身が危険な気がして考え中だ」
 初心な彼を襲わずにいられるならと言われて、うーんと唸ってしまった。美味しそうな香りを撒き散らすのは彼もまた同じだからだ。しかも、目の前の男からたくさんの栄養を貰って、体はメキメキと回復している。小さくても竜人だから力比べで勝てるとは思わないが、前ほど簡単に振り払われる事もないかもしれない。
「まぁ、だいぶ元気になったようだし、私が来れない間の暇が潰せるよう、何かしら考慮はしておこう」
 そう言い残して彼が部屋を去ってから程なくして、パタパタと走ってくる軽い足音が近づき、もどかしげに鍵を開けて飛び込んできたのは世話係の小さな竜人だった。
 体力が回復したおかげで、この部屋に運び込まれて初めてベッドを降り、部屋の中をウロウロ見まわっていた自分に、飛びつく勢いで抱きついてくる。
「凄い、お前、歩ける」
「あー、うん。腹いっぱい食べたら、元気でた」
「おまえ、食事、出来た。良かった」
 半泣きの声に、随分と心配をかけていたようだと気付いて、腹にまとわりつく小さな竜人の頭をそっと撫でた。撫でながら、さてどうしようかと思う。
 腹は満たされているからか、尻穴や腸内が蠢くことはないけれど、やはり甘い香りが鼻腔をくすぐってくるのだ。
 再度彼に逃げられたくはないからもちろん我慢するけれど、竜人の味をはっきりと知ってしまった上に体が動くようになった今となっては、これは結構きつい状況かもしれない。
 次の食事がいつなのかはっきりしないから不安でしょうがない。腹が減ってこの小さな竜人に襲いかかってしまう前に、はやくもう一度食事担当の彼に戻ってもらいたいと切に願った。

<終>

遅刻すみません。最後がどうにも迷って時間食いました。
適当ファンタジーにお付き合いどうもありがとうございました。いつか竜人受も書いてみたい……

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