イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった5

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「ねぇ、お礼、していい?」
「それ、ご褒美ちょうだい、としか聞こえねぇんだけど」
「させてくれんならどっちでもいいよ」
 ご褒美ちょうだいって言う? と聞かれて、要らないと返す。やることは変わらないので、ご褒美を与えるよりもお礼を受け取る方がまだマシだ。
 強く拒否を示さなければ許可したも同然で、了承と受け取った相手が立ち上がる。短な距離だが手を引かれて、先程まで腰掛けていたベッドに逆戻りし、相手のなすがままズボンも下着も手早く脱がされてしまう。股間はまったく萌していなかったけれど、大きな手に包まれて慣れ親しんだ仕草で撫で擦られれば、すぐに頭を擡げていく。
「ふふっ」
 反応の速さに、満足気に笑った相手の口元に指を伸ばした。唇を指先で軽くなぞってやれば、相手は何かを察したらしい。
「舐めて欲しいの?」
「そりゃ、めちゃくちゃ気持ちよかった、し。礼だってなら……いやまぁ、今日は酔ってるわけじゃないから、無理にとは言わないけど」
 先日の誕生日に、双方ともに酔っ払うという経験をした結果、人の口でして貰う気持ちよさを知ってしまった。シラフだったら相手は舐めれそうなどと言い出さなかったと思うし、自分だってそんなことはするなとお断りしていたと思う。
「無理じゃないけど、先にキスしていい?」
「えっ?」
「この前、舐めた後でキスしたのめちゃくちゃ嫌そうにしてたから。今日は先にキスさせてよ」
「え、キスもすんの?」
「だめなの? キスも気持ちよさそうにしてたと思ったんだけど」
 実のところ、酔っ払った勢いでキスもしていた。自分にとってはファーストキスで、もちろん、この男相手にファーストキスを済ませる気など一切なかったのに。酔ってふわふわと思考を散らしていたせいで、普段なら嫌だとかダメだとか素早く一蹴しているところを、拒絶しそこねてしまったのだ。
 嫌そうにしていたのは、ファーストキスを奪われたことに気づいたせいもある。もちろん、あれを舐めた後の口、というのに抵抗感があったのも事実だけれど。
「あー……まぁ、確かに」
 気持ちが良かったことを否定する気はないし、既にファーストキスを失ってしまった以上、拒否する理由も特に無い。今までは興奮した相手が口を寄せてくるのをきっぱり拒否してツレナイと気落ちさせてきたが、そのせいもあってか、初めてのキスで気持ちよく喘いでしまったこちらに、随分と嬉しそうにしていたのを覚えている。あの顔がまた見れるなら、まぁいいか、と気持ちが揺れた。愛想のいいイケメンはズルい。
「いい?」
「ぅん」
 小さく頷けば、それだけでふわっと嬉しげに笑ってみせるから、本当にズルい。しかもその顔がどんどんと近づいてくるのだから、直視し続けるのがツラくなって早々に目を閉じてしまった。
 唇に、ふわりと柔らかな感触が押し当てられて、軽く吸われたり喰まれたりを何度か繰り返すうちに、体の力が抜けていく。シラフでのキスに多少なりとも緊張していたらしいと、力が抜けてから気づいた。
「んっ……んっ、ふっ……」
 意図的に唇を解いて隙間を作ってやれば、見逃すことなくその隙間に舌が伸びてくる。さっそく舌先に口蓋を擽られて、ゾクゾクとした何かが背を這った。
「ん、ぁ……おまっ、……ぁっ」
 口の中を探られながらペニスを扱かれると、気持ちよさが何倍にも跳ね上がる。
「きもちよさそ」
「そりゃ、てか、やり過ぎたら先イッちまうぞ」
「それは一応気をつけてる」
「あんま焦らされんのもヤなんだけど」
「わかってるよ」
 キスできるの嬉しくてついいっぱいしちゃったと言いながら、最後にチュッとわざとらしく音を立てて唇を吸った後、ようやく相手の頭が股間へ向かって下がっていった。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった4

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 ちょっと休憩、と言って立ち上がった相手は玄関へ向かう。少しして、玄関扉が開閉する音が聞こえてきてから、手持ち無沙汰に読んでいた本を閉じて放置された書きかけレポートを手に取った。
 軽く目を通しながら、これなら次の休憩前には書き上がるなと思う。明日の朝イチ講義の提出にはしっかり間に合うどころか、まだ日付を超えてもいないので、睡眠時間だって充分に取れる。泊まりのつもりで来ていたが、一旦帰宅するのだってありかもしれない。
 相変わらず机に向かっていられる時間は1時間程度だけれど、初めて見張ってて欲しいと頼まれた頃に比べたら徐々に休憩を挟むまでの時間は長くなっているし、休憩を終えて戻ってくる時間も短くなっている。
「ただいま」
「ん、おかえり」
 5分と経たずに戻ってきた相手は、真っ直ぐに机に向かうとレポートの続きに取り掛かる。真剣な横顔をジッと見つめてしまっても、集中しているのか気づかれる様子はない。
 彼がようやく二桁年齢になった頃、母親に治療の難しい病気が見つかったそうで、家族全員その対応に追われる数年を過ごした結果、彼自身の学習習慣がほとんど身につかないままここまで来てしまった。というのがどうやら提出物が出せない原因らしい。
 すこぶる頭が良かったせいで、日々の授業を受けるだけで問題なくテストで高得点を得られていたのと中学は家庭事情を考慮されていたのか、高校1年時に未提出課題の多さで留年しかけるまで問題が発覚しなかったというのだから恐ろしい。
 自主的な学習時間なしで大学受験を乗り切るなんてさすがに無理があるだろうと思ったら、高校3年時には塾にも行ったし少しは家でも勉強したとは言ってはいたけれど。その少しは家で、というのも、どうやら家族が協力していたようで、つまりは今時分がしているように、机に向かう彼を家族の誰かしらが見守っていた。
 その頃には母親の容態がかなり落ち着いていたというから、今度は家族全員で彼の大学受験を支えたという話かもしれない。
 彼が実家を離れて大学生活を送れているのも母親の回復があってこそだし、相当大変だったはずなのに、彼が母親の闘病生活含む思い出を語る時はいつも穏やかで幸せそうな顔をしているので、家族の全力サポートが報われたことは本当に良かったのだと思う。
 学習習慣を身につけられなかっただとか、母親が倒れてからは友人と遊んだ記憶もほぼないだとか、自分だったら、大事な学生時代を母親のせいで台無しにされた的なことを思ってしまいそうだから、そんなことは考え付きもしていなそうな彼のことを、かわいそうに思うのはきっと間違っている。学習習慣が身についていればもっとレベルの高い大学を狙えただろうに勿体ない。なんて気持ちだって、自分の価値観での話だということもわかっていた。
 狙った大学への入学も、狙った相手と親しくなることも、たくさんの友人を作ることも、友人たちと遊ぶことも。全部成功している彼に、現状不満は一切ないのだ。高校時代が嘘みたいに、柔らかに笑う顔を毎日のように見ている。
 レポートと向き合う真剣な横顔と、その周りの張り詰めた空気が高校時代を思い出させて、あの無愛想な孤高のイケメンが、今じゃふわふわと笑顔を振りまいているだなんて不思議だよなと思う。決してあの頃に戻って欲しいわけじゃないし、事情を知ったら笑えるようになって良かった以外の感情なんてないはずなのに、それでも時折、あの頃の彼を懐かしく思ってしまうのはなんでだろう。
「おわった〜」
 くるりと体ごと振り向いた相手とばっちり目があってしまったが、思いっきり見つめていた事への言及はなかった。ふにゃんと顔を緩ませ、先程までの硬い雰囲気ごと綺麗サッパリどこかへ押しやってしまった彼は、甘えるみたいに両腕を開いて見せる。
 その腕に誘われてやるのは癪だと思うのに、黙って立ち上がり彼に向かって歩いている自分自身のことがわからない。特別面食いだと思ったことはないし、そもそも男じゃねーかと思っても居るのに、イケメンの緩んだ笑顔にどうにも逆らい難い。
 無愛想イケメンのままなら、ふざけんなの一言で終わらせる自信があるから、もしかしてそれであの頃の彼が懐かしいのだろうか。あの頃のままの彼で居てくれたら、甘える相手を受け入れて、お疲れと言いながら頭を撫でてやるような、どう考えたって男友達相手の対応じゃない真似をせずに済んだだろう。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった3

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 男子校だったのもあって、態度が悪かろうが冷たかろうが顔が良けりゃいいと群がるような女はおらず、常に一人だったし感情を削ぎ落としたような無表情が多かったし、あれで高校生活楽しかったなどと言われる方が驚きだ。自分だって、運悪くクラス委員になどなっていなければ、極力関わらずにいただろう。
 なのに、同じ大学の同じ学部学科に入って一緒に行動することが増えたら、高校時代が嘘みたいに随分と人当たりが良くなって、しかもこのお綺麗な顔で気安く笑顔を振りまくものだから、あっという間に友人が増えて拍子抜けしたのを覚えている。そもそも本当に同じ学部学科に進学を決めてくると思っていなかったせいで、相手も合格したと知ったときには、入学前から大変なお荷物を抱え込んでしまったと暗澹たる気持ちになっていたのに。
 残念ながら進学先も男子学生の割合がかなり高い学部だったので、出来たのは男の友人ばかりだけれど。もし半分でも女子がいる学部だったら、今、こんな関係になっては居なかっただろうか。などと思考がおかしな方向へ行きかけた時、相手の次の言葉が耳に飛び込んできて意識を戻した。危ない危ない。
「あと提出物出さなすぎて単位不足で、という可能性もあった」
「あー、それは納得だわ。てか3年の時はどうしてたんだよ」
 1年時はまさにそれで留年しかけたらしいのは知っている。2年時は自分がしつこく声掛けして出させていた。
 そのせいで面倒見が良いと思われているらしいが、それは担任が部活の顧問だったのもかなり関係している。運悪くクラス委員になってしまったのもそれで、つまり担任からすると自分は、頼みごとのしやすい大変使いやすい駒だったというだけだ。留年しかけた生徒の提出物の管理など、本来ならクラス委員の仕事ではなかったと思う。
 こんな妙な懐かれ方をするとわかっていたら、もっと手を抜いていたかも知れないが後の祭りだ。
「3年の時は先生たちが結構煩かったし、一緒の大学行こって思ってからは、卒業できないの困るから俺もちゃんと頑張って出したよ」
「あっそ」
「2年の時の経験があったからできたと思ってるよ?」
「いやそういうのいいから」
「今だって、レポート提出とか忘れないように何回も確認してくれるの、本当に助かってるんだからね?」
「だってお前が俺にひっついてんのって、完全にそれ目的だもんな」
 進路希望調査を提出しようと歩いていた廊下で、目の前を歩いてきたこいつに通りすがりに手の中のその紙を奪われたのだ。ジロジロと人の進学希望先を眺めたと思ったら、唐突に、じゃあ俺もここ行こうなどと言い出すからわけが分からなくて随分と混乱した。
 だってあの頃はちっとも仲良くなかったし、こいつは無愛想な孤高のイケメンだったし、言い方があまりに一方的だったし、こいつのイカレタ頭の良さなんて知らなかったから留年しかけた奴がじゃあ行こうで行けるわけないだろと思ったし。しかも、なんでと聞いたら、シレッと面倒見てもらえそうだからと返されて、はっきりきっぱり、見るわけ無いだろと返したはずなのに。
 まぁ一方的に面倒を見ているわけではないし、今はもう提出物がなかなか出せない理由も知っているし、自覚はなさそうだが、親しくなるにつれて世話焼き属性を発揮してるのはむしろ相手の方なのだけれど。
「まぁ、同じとこ行ったら大学も卒業できそうとは思ったけど、別にそれだけが目的ってわけじゃなかったよ」
「他の目的って?」
「それはさ、同じとこ行ったら、友だちになれるかな、って思って」
「え、誰と? てか俺と?」
「そう」
「ともだち、ねぇ……」
「だからこうやって誕生日お祝い出来るのも、凄く嬉しくってさ」
 友だちの誕生日祝うのなんて小学生以来だよなんてサラリと言ってくるので、ぎゅっと拳を握りしめる。冷蔵庫の前、運んできた酒をちょうど相手に全て託したところだったので、そうしていないと相手の頭に手を伸ばして、グシャグシャとその柔らかそうな髪をかき混ぜてしまいそうだった。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった2

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 相手よりも2ヶ月半ほど遅れて20歳の誕生日を迎えたその日、相手はウキウキな顔で様々なアルコール飲料が並んだテーブルを見せた。
「誕生日祝ってやるって、もしかして、これ?」
「ケーキもあるよ。ちっちゃいけど丸いやつ。あとハッピーバースデーのプレート」
 小さなプレートだから名前は書いてないと言われたけれど、充分すぎるというか、想定外すぎる。
「家で、とか言うから、金欠か溜まってるかだと思ってたわ」
「まぁせっかく揃って飲めるようになったんだから、色々試しておきたいし。あとやっぱ誕生日に丸いケーキないのは寂しいからさ」
 2ヶ月半ほど前のこいつの誕生日は、夕飯をデザート付きで奢ってやってまぁまぁの出費になったから、その金が惜しいのかと思っていた。昨年までは互いの誕生日を祝うようなことはしてなかったから、まさかこういう祝い方をしたいタイプとは思わなかった。
「お前、去年とか今年の誕生日、自分で丸いケーキ買って食ったの? 一人で?」
「してないよ。してないけど、去年それでちょっと寂しかったから、今年はお祝いしてって事前にお願いしたんでしょ」
 それはもしかして、夕飯を奢るのでは不満だったという話だろうか。丸いケーキが欲しかったなら、ちゃんと言っておいて欲しかった。というか、つまりこれは今言われてるってことなのか?
「えーと、来年は丸いケーキも用意しろって言ってる?」
「んー……それはどっちでもいいかな」
「なんでだよ!」
「自分の誕生日に丸いケーキがあったら嬉しいとは思うけど、なくてもまた、お前の誕生日に丸いケーキ買ってくればいいかなって」
「じゃあ、お前の誕生日に丸いケーキ買ったら、俺の誕生日はケーキなし?」
「いやちゃんと買うけど」
「なんっじゃそりゃ」
「それよりどれから飲む?」
 ケーキの話は終わりとばかりに、相手が俺はこれと缶を1つ手に取った。
 なんとなくのイメージで、飲み会とはまずはビールからスタートなのかと思っていたが、相手があっさりと低アルコールを売りにしたフルーツ酒の缶を選んだので、取り敢えずは自分も似たようなのを選んでおく。
 色々試しておきたい、という色々は酒の種類を指しているのかと思ったが、アルコール度数が低いものから手を出すというなら、酔った時の状態を段階的に知っておきたい的な話なのかも知れないと思ったからだ。
 たった2ヶ月半の差なので、この間に相手だけが酒を飲むという機会はなく、相手が酒に強いのか弱いのかはわからない。もちろん自分だって、これまで一切飲んだことがないとは言わないが、はっきりと酔っ払うほどアルコールを摂取したことはない。なので、自分だけがさっさと酔った姿を晒すことになるのを避けたかったのも、当然ある。
「じゃあ、他は冷蔵庫しまっとこう。あと、つまみも適当に用意してあるから持ってくるね」
「いや俺も手伝うって」
 いそいそと選ばれなかった酒の瓶や缶の一部を抱えて立ち上がる相手を追うように、自分も残りを抱えて立ち上がる。
「主役は座ってていいのに」
「俺もう結構腹減ってんの」
「ふふっ、素直じゃないなぁ〜」
「なんだって?」
「相変わらず面倒見が良いよねって」
「前から言ってるけど、そんなん言ってんの、お前だけだぞ」
「大学はクラス委員とかないからね」
「じゃなくて。昔っから。高校の時から」
「えー俺、高2の時の委員長がお前じゃなかったら、高校中退してた可能性もあるのに?」
「は? なんで?」
「学校つまんなかったから」
「まぁ確かに楽しそうではなかったけど」
 高校が同じでクラスが一緒だったこともあるが、その頃からの友人ではない。あの頃のこいつは、孤高を気取るいけ好かないイケメン扱いだった。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった1

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 眼前の男の顔はまず間違いなくイケメンに分類されるはずで、降ろされた目蓋は長いまつげが縁取り、滑らかな頬は薄く色づき、口紅なんか塗っているはずもない唇はふっくらと艶があって、薄く開かれたそこからは時折気持ちよさそうな吐息が漏れていてたいそう色っぽい。とはいえ相手は間違えようもなく男で、色っぽかろうが性的衝動が湧くわけではなく、手を伸ばしてその頬に触れてみようだとか、顔を寄せてキスをしてみようだとか、試す以前にしたいと思ったことがない。
 試したところで多分嫌がられることはなく、むしろ喜ばれる可能性までが脳裏をよぎるが、積極的に喜ばせてやりたい相手でもないので、結局、相変わらず変な男、と思いながらそんな彼の顔を見ているしかなかった。
「なに?」
 見つめすぎたのか、相手の目蓋がゆるっと持ち上がって、興奮でいくらか潤みの増した瞳に見据えられてドキリとする。
「なんでも、ぁっ」
「こっち、集中してよ」
「するっ、するから、そこやめろって」
「先っぽ、ほんと弱いよね」
「ぁ、ぁっ、ちょっ、やめ」
「先イッとく?」
「や、やだっ」
「イッたあと触られるのは感じ過ぎちゃうんだもんね?」
「わか、ってんならっ」
「ん、だいじょぶ、俺も一緒にイケるから」
 イッていいよの甘い囁きと共に、亀頭をグニグニと撫で揉まれながら竿を擦られてあっけなく果てた。
「ああああっっ」
 一緒にイケると言ったくせに、果てたあとのペニスを擦られ続けて目の前がチカチカと明滅する。こっちが果てた時点でこちらのペニスだけ開放してくれないか、とはさすがに言えないので我慢するしか無いのだけれど。
 だって、上り詰める最後の瞬間にそんな気を回す余裕はないかも知れないし、相手のペニスと擦れる気持ちよさもわかっているから、最後の最後でそれを取り上げるのは忍びない。けれどイッた直後のペニスを刺激されるのは気持ちが良すぎて辛かった。
「んっ……」
 それが長引けば長引くほど辛さは増すので、すぐに相手が小さく呻いて動きを止めたのでホッとする。
「はぁ……気持ちよかった」
 余韻を引きずったようにうっとりと、本当に気持ちよさそうに吐き出されてくる声に、そりゃ良かったと思う気持ちと、口に出すなよと思う気持ちとがある。どっちも口に出したりしないけど。
「そっちは? 気持ちよくイケた?」
「聞くな」
 これはすぐさま口に出した。
「だって途中、なんか考え事してたし、ちゃんと気持ちよくイケたのか気になるじゃん」
 何考えてたのと言われて、先程と同じように、なんでもないと返しておく。何をどう説明すればいいかわからないというか、突き詰めて話し合いたくないと言うか、今はまだ曖昧にしておきたい。
「それよりティッシュ」
「ああ、うん。はい」
 差し出されたティッシュの箱から一度に数枚引き抜いて、まずは腹部に付いた汚れを拭いた。脱がずに捲り上げただけの服は、どうやら今回も汚さず済んだらしい。服を汚したのは初めての時くらいだから、多分、イク時に飛び散らないように気を遣ってくれているのだろう。
「あー、腹減った。なにか作るけど、食べてく?」
 さっさと身支度を終えた相手が立ち上がって、どうやらキッチンへ向かうらしい。
「食べてく」
「わかったー」
 即答すれば、少し間延びした声と共に相手が出ていった扉が閉まる。一人きりになってしまった部屋の中、吐き出したため息は思いの外大きく響いた。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった(目次)

キャラ名ありません。全38話。
二十歳になったから一緒に飲みに行きたいと押しかけてきた、一回り以上年下の従兄弟に散々振り回された挙げ句、絆されて恋人にする話。自称ケチでクズな社会人(視点の主)×二十歳なりたて大学生。
年が離れすぎているせいで、祖父の葬儀から祖母の葬儀まで全く接点がなく、祖母の葬儀後も法事で顔を合わせる程度の関係だった従兄弟が、ある朝突然尋ねてきて、二十歳になったから一緒に飲みに連れて行って欲しいと頼まれます。
帰りがけ、酔った従兄弟にホテルに誘われ、てっきり慣れてるのだと思い込んで据え膳を食うだけのつもりでホテルの部屋を取ったら、実は全くの未経験者だと知らされるものの、相手の抱かれたい意思の強さに流されて抱いてあげることに。視点の主に男性との経験はありませんが、女性相手のアナルセックス経験はあり。
相手が、視点の主を初恋相手だの、理想の具現化だの言い出して、そのくせ恋愛がしたわけじゃないだの、都合よく抱かれる穴になりたいだの言うせいで、かなり混乱するものの、途中で相手の恋情に気づいてしまい、視点の主側から相手を落として恋人にします。
相手が今現在の視点の主へ向かう恋情を隠すせいで、その恋情に気づくまでにかなりの文字数を費やしてしまったのと、その後もだらだらと二人の初セックスを描写してしまって長いです。
自称ケチでクズの視点の主ですが、年齢差が有りすぎるせいか、相手の献身的な想いのせいか、最終的には相手が可愛くて仕方がない状態になります。
かなり初期(8話目)に洗腸を手伝う描写があります。プレイ的な要素はないのですが、相手のお腹にお湯を注いで目の前のトイレで排泄させています。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 突然の訪問
2話 一緒に飲みに行きたい
3話 安居酒屋3軒目
4話 ビジネスホテルのツインルーム
5話 初めてじゃだめですか?
6話 初恋のようなもの
7話 本気なら準備を
8話 洗腸の手伝い(R-18)
9話 冷えたカラダ
10話 躊躇いながらも無意識に
11話 多分きっとファーストキス
12話 気持ちよくなりたくない
13話 正直に全部話して
14話 期待したくなるから
15話 泣き出すタイミング
16話 どうせ泣くなら腕の中で
17話 危なっかしい
18話 勘違いしたくなる
19話 割りに合わないのはどっち?
20話 恋愛感情有り
21話 いっそ落としてしまおうか
22話 恋愛できない理由
23話 一年の価値
24話 結婚する気なんて無いのに
25話 恋人にするメリット
26話 恋人にして下さい
27話 褒められたい
28話 まずはただただ気持ちよく(R-18)
29話 賢者タイム
30話 アナルを解す(R-18)
31話 指を増やして(R-18)
32話 相互にゴムを着け合う(R-18)
33話 一生懸命に欲しがられる(R-18)
34話 ゆっくりと感じていく(R-18)
35話 一緒に気持ちよくなろう(R-18)
36話 お願いイッて(R-18)
37話 可愛くて仕方がない
38話 いってらっしゃいのキス

 
 
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