金に困ってAV出演してみた2

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 白い壁に囲まれた小さな部屋の中、置かれているのはシンプルな白いパイプベッドと、怪しげな白い箱だけだった。
 ベッドに腰掛け、壁に向かう黒い学生服の背中を見つめているところから、撮影はスタートした。
 唯一の出入り口である、壁に作られた白いドアをガチャガチャと鳴らしていた少年が振り返って、開きそうにないですと困った顔で告げる。
「そっ、か……」
 返す声はぎこちなく、更に緊張で少し震えていたかも知れないが、多分設定的になんの問題もない。
「ヤラないと出られないって、マジだと思います?」
 ベッドへと戻ってきた少年がベッドの上に置かれた紙を指差すと、カメラがその紙に寄っていく。その紙には真っ赤な太字で大きく「SEXしないと部屋の鍵は開きません」と書かれている。
「やるなら俺、突っ込む側がいいんですけど」
 演技の続きに戻るようサインが出て、相手がそう言いながら隣に腰を下ろしてくる。
 すぐ傍らにカメラを抱えたスタッフが居るというのに、全く気にした様子もなく堂々としていて自分とは全然違う。さっき聞いた話によれば、彼も今日が初の撮影らしいのに。
「ほ、ほんき、で?」
「それ、どういう意味で?」
「どういう、って……」
「本気でセックスする気かって話なら、それ試す以外、他にやれそうなことないんで。取り敢えず試したいってのは本気で思ってますけど」
「それは、うん、まぁ、俺も、そうするしかないって、思ってる、けど」
「てことは、突っ込みたいが本気かって事?」
「だって……」
 さすがにその先は言葉にしなかったけれど、何を躊躇ってるかは多分相手にも伝わっていると思う。だって今回の撮影では、どっちが抱く側になっても良いらしいのだ。一通り目を通した台本は、本当に部屋の設定や二人の状況が書かれている程度のいい加減な出来だった。
「おにーさんが、俺に任せとけってタイプなら、俺が抱かれてもいいですけど。でも俺、処女なんで、結構手間かけさせると思いますよ?」
「え、嘘。バリタチなの?」
 自己紹介の中にはタチネコの話はなかったし、渡された台本の設定的に、てっきり相手もリバ可なんだと思っていた。
「バリタチ、なんて単語が咄嗟に出てくるくらいだから、おにーさんだって、こっちの人でしょ?」
「あ、」
 ゲイAVの撮影に来てるんだから、相手だって当然ゲイなんだという認識だったけれど、そういや見知らぬ他人といきなり部屋に閉じ込められている設定だった。
 本当に見知らぬ他人と部屋に閉じ込められてセックスを強要されたなら、まずは相手のセクシャリティを気にしたとしても不思議じゃない。というか、当たり前に相手もゲイだと認識してる方がおかしい。
「セックスしないと出られないぞ、なんていう妙な部屋に見知らぬ男二人閉じ込めるなら、ノンケ連れてくることはないだろうと思ってたけど、やっぱりね。で、おにーさんは? ネコ経験有るなら、俺の童貞食って欲しいんだけど、ダメ?」
「待って。待って。情報多い。え、なに? 今、童貞って言った?」
「言った」
「え、ちょっと、意味分かんない。なんで童貞の処女がゲイAVの撮影なんて、」
「あっ」
「はいカット」
 相手が慌てるのと、撮影の中断が宣言されたのはほぼ同時だった。

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金に困ってAV出演してみた1

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 端的に言えばかなりの金欠で、返す当てもないのに金を借りるのは躊躇われて、だとすると後は払いの良い仕事を得るしか無い。どうせなら実益を兼ねて、なんて事を考えながら選んだのは、ゲイ動画のビデオモデル募集への応募だった。
 大量のソレ系動画が溢れる現代で、しかもゲイ向けとかなり限られた視聴者向けともなれば、そう簡単にバレるはずがない。とは思うものの、一応の用心で髪色を変えた。
 鏡の中に映る雑な金髪の男はいい感じにチャラそうで、少しばかりホッとする。そんな自分の姿を何枚か撮影し、さっそく応募してみればあっさり出演が決まり、メールのやりとりだけであれよあれよと撮影日と撮影場所が決まっていく。
 
 
 指定された日に指定された場所を訪れ、メールでやり取りしていた担当の方と合流し、今日の撮影の簡単な流れやらを聞きながらスタジオに案内される。
 そんなに緊張しなくて大丈夫と励まされながら開いたドアの先は、なかなかに異様な雰囲気だった。異様と言うか、まぁ撮影現場というものに馴染みがないってだけなんだろうけれど。
 まずは監督と紹介された方に挨拶をして、次に引き合わされたのは本日の撮影の相手役だ。まじまじと見つめてしまう先で、相手は可愛らしい笑顔を絶やさない。
「え、あの……」
「はじめまして。今日はよろしくお願いします」
 戸惑うこちらを気にすることなく差し出された手を、やっぱり戸惑いながらもなんとか握り返せば、相手は簡単な自己紹介をしてくれた。名前は当然偽名と言うか芸名なのだろうけれど、高校卒業したての18歳だという言葉には思わず本当なのかと確かめてしまう。
 目の前に立つ学生服の男の子は、どう見たって現役の学生である。中学卒業の間違いじゃないのかと言いたくなるくらいには、見た目といい体格といいどうにも幼かった。
「さすがに年齢はガッツリ確認されてますよ。大丈夫。合法ショタっ子ってやつです」
 自信満々に胸を張られてしまえばそれ以上疑うわけにも行かない。確かに既にいくつもの作品を作ってきたレーベルが、18歳に満たない子供を起用するとも思えないので、高校卒業済みというのも間違いなく事実なんだろう。
「そっか。にしても、学生服って……」
 その格好が余計に彼を幼く見せている気もする。
「ああ、これ。衣装です」
「衣装……ってもしかして俺も学生服に着替えるのか?」
「あれ? 今日の内容、まだ聞いてません?」
「まだ。撮影の流れ、みたいなのは聞いたけど」
 そう思いながら背後を振り返ったのは、もちろん、ここまで案内してくれた担当者に詳細を聞くためだ。しかし後ろには誰も居なかった。目の前の彼を紹介後は、あちらはあちらで別の作業のために離れてしまったらしい。
「台本、これです」
 急に心細くなった所に声を掛けられ慌てて向き直れば、薄い冊子が差し出されている。
「あ、台本なんて有るんだ。え、どうしよう。演技なんて出来る気しないんだけど」
 初撮影だし、現場に行って掘られてそれを撮影されて終わり、と思っていた。いや、応募時の自己PRにはタチ経験も一応は有ると書いたから、目の前の可愛らしい男の子が相手なら、今回は自分が抱く側という可能性もあるだろうか。
 マズい。その想定はなかった。最悪スタッフ任せで好きにされてれば終わるようなものかと思っていたのに、演技を求められたり、初対面の子供にしか見えない男の子を抱かなきゃならないなんて、無理としか思えない。緊張と罪悪感とで勃つ気がしない。
「高度な演技が必要な内容じゃないんで大丈夫ですよ。セリフもほぼ無いし。今回の設定みたいなもんかな」
 どうぞと言われて受け取った冊子の表紙には、SEXしないと出られない部屋に初対面の男の子二人を閉じ込めてみた、と書かれていた。

続きました→

 
 
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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ26(終)

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 共に体育会系なだけでなく、就職後も体を鍛えている。というよりも、基本的に体を動かすのが好きなせいで、お互い無駄に体力が有り余ってるのが多分良くなかったんだろう。
 興味本位で抱いてみた男や、恋人だった女の子たちとは経験したことのない、長時間に及ぶセックスを、しかも自分が抱かれる側で体験するとは思わなかった。
 結局何回イカされたのかも曖昧だ。途中からは、ちゃんと射精してるのかどうすら曖昧だったからだ。きっともう空っぽで何も出ない。と思うくらいには搾られ尽くした気がする。
 それでも、抱き潰されて飛ぶようなことも無ければ、終わると同時に寝落ちることもなく、暫くグッタリしていた程度であっさり復活してしまったのには、我ながら自身の体の頑強さに驚いた。
 長いこと相手を受け入れていた穴の違和感は残っているし、散々囁かれた甘い言葉やそれらと同時にもたらされた甘い痺れも、時折思い出されては幻聴や幻覚のように蘇っては来るけれど、それ以外は適度な疲労と爽快感という感じなのも、我ながら少々呆れてしまう。
「落ち着いたならシャワーにって思ってるんだけど、体、どっかおかしい?」
 ざっくりと後始末を終えたらしい相手が、脇に腰を下ろして少し不安げに聞いてくる。こちらはダラダラと横たわったまま、そんな相手を眺めていただけで何もしていないが、それはもちろん、体に支障を来たしているせいじゃない。
「いや……」
「さっきから難しい顔してるけど、何か気掛かりだったり、それとも思い返すと不快な何かがあったりする?」
「不快ってよりは、不思議って感じ?」
「不思議って?」
「ダメージが有るようでないような、あんなに長いこと抱かれてイキまくってたのに、意外とピンピンしてるよな俺、みたいな」
「え、なに、抱き潰されたかったとかそういう話?」
「そうは言ってない。けど、そうなってもおかしくないくらい、俺、お前に好き勝手されてなかったっけ?」
「好き勝手ってほど好き勝手な扱いはしてないけど。むしろ、めちゃくちゃ気を遣ってたつもりだけど。というかダメージ少ないのは、つまり俺の功績じゃないの」
「まぁそれはそうなんだろうけど」
 わかっている。わかっていた。これは充分に加減された結果だし、相手にはまだまだ余力があるって事も。
「にしては不満そうだね」
「不満っつーか、あー……でもやっぱ不満なのかな。お前とのセックスが善くて、お前が上手くて、なんか悔しい、みたいな?」
「それは褒められてる?」
「褒めてない。けど、お前が上手いの、素直に嬉しいとは言えないだろ」
「男のプライド的な何か? それとも、俺の過去に嫉妬の方?」
「どっちも」
「まさかそんなこと言い出さないって信じてるけど、セックスが上手いのが嫌だ、なんて理由で振ったりしないでよ?」
「するかよ」
「ならいいよ。いくらでも、悔しがって?」
 ふふっと笑った顔が近づいてきて、ちゅっと軽いキスを落としていく。
「その余裕がムカつくな」
「余裕ってよりは浮かれてる」
 わかってるかと聞かれて何をと返せば、あんた俺の初めての恋人だよと、嬉しそうにはにかまれてグッと胸の奥が詰まった。
「そ、っか……」
「そうだよ」
「俺、今日、こんなつもりでお前誘ったわけじゃないのに……」
 じわじわと嬉しさが込み上げると同時に、ほんの少しの罪悪感じみた気持ちが湧くのは、誰に対する罪悪感なんだろう。
「俺を好きって、隠し通したかった?」
「いや。気付かれないまま、お前の気持ちも知らないまま、終わらなくて良かったとは思ってる」
 自分が抱かれる側になることを選べば、相手からの慰めが貰えるのだと、そんな一縷の望みに掛けて誘った数時間前が、なんだかもう遠い過去のような気さえする。
「俺が、抱かれれば慰めてくれんだろ、なんて理由で、素直に慰めてあげられるお人好しじゃなくて良かったよね」
「お前はなんだかんだで俺に結構甘いとこあったから、本気で頼めばきっと許してくれるって、思ってたんだ。けど、」
 まさか相手にも恋情が育っているなんて欠片も思っていなかったから、その甘さが好意からのものとは気づけなかった。
「お前が俺に甘いの、俺を好きだったから、だよな。とすると、もしかして、俺ら、かなり時間無駄にした?」
 したね、という肯定はかなりの呆れ口調だった。
「というかそれ、今気づいたとか言う?」
「えっ?」
「あんたが呆れるほど俺の気持ちに鈍いのは、今日めちゃくちゃ思い知ったけどね」
 どういう意味かと首を傾げてしまえば、そんな事を言われた後。
「ほんっとバカ」
「お前今日、ほんっと、バカバカ言い過ぎだろ」
「そんなのわざとに決まってるでしょ」
 いちいち可愛いあんたが悪いと言われながら、再度顔が寄せられる。柔らかに長く触れ合うだけのキスは、優しい甘さで唇を包んだ。

<終>

 
 
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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ25

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 言ってしまうべきだという気持ちと、自らねだる恥ずかしさに、どうしようかと迷って口を開いたり閉じたりしていたら、こちらの躊躇いを感じ取ったらしい。
「ねぇ、言ってよ。俺にも聞かせて」
「も、……動いて、欲しい」
 甘い声に促されて諦めと共に口を開けば、くふっと笑う気配がする。
「んーこれはこれで言われたかったけど、でも惜しい。もう一声」
「お願い、だから。も、動いて、ぁっ、……ふぅっ……んんっ」
 お願いだからもう動いてくれと言わせたい、みたいなことを言っていたから、「お願い」が足りなかったんだろう。そんな判断の元、お願いを付けて繰り返せば、やっと相手が動き出す。
 体勢の問題か、先程よりもきつく締め付けているらしく、相手の形や大きさをさっきよりもずっと意識させらている。もちろん激しさもなければ大きな動きでもないけれど、締め付けによって中をずりずりと擦られるのがたまらなく気持ちがいい。擦られるたびに生まれる快感が、先程よりも大きい気がする。
「ぁ……ぁあ……ぃい……」
「なら良かった。てかそんな焦らされてると思ってなかったから、ごめんね」
「ん? ぁん……な、にが?」
「確かに、お願いだから動いてって言わせたいとは言ったけど、本当に欲しいのは別の言葉なんだよね」
「ど、ゆー……ぁあ……」
 口を開くと甘い吐息が溢れていくから、あまり長々喋る気にはならないし、体は先程よりも速いペースで快感を貪り上り詰めようとしているが、それでもまだ、相手の声ははっきりと認識できている。
「あんなに好きだよ、愛してるよって伝えたんだから、あんたからも、言ってくれても良くない?」
「好きだ、って?」
「そう」
 言ってよと続いた声が、先程よりも甘く響いた。これは促す声ってよりはねだる声だ。
「意地悪しないで、俺にも聞かせて?」
 ねだられてると思ったら薄く笑ってしまったが、それをどう取ったのか、今度は少しすねた声が、やっぱり甘えるように響く。
 意地悪なんてする気もないし、してるつもりもない。好きって言われたいのだなんて思わずに、動いてって言わせたいんだろうと思い込んだのはこいつのせいだから、自業自得と言ってやりたい気もしたが、多分言わなくたってわかっているだろうし、そんな言い合いをする余裕も気力もない。
「ぁ……好き、だ」
「うん。嬉しい」
 望み通りの言葉を吐けば、背後で相手の気配が嬉しげに緩む。
「ぁん……好き、だよ」
「うん。俺も、好き」
「お前が……ぁあ……ぃ……好きだ……ぁああっいいっ、ゃっ、きもちぃっ、ぁ、ああっ」
 好きだ好きだと繰り返してやれば、律儀に返事をしつつも少しずつ腰の動きが激しくなって、一気に射精感が募ってくる。しかも先程までと違って、腹と腹の下に突っ込まれた枕に挟まれている上に、相手の体でもって押し付けられているせいで、腰を動かされるたびにソコも一緒に枕に擦られて、ずっと刺激されっぱなしだった。
「いいよ、イッて」
「ん、ぅん、ぃい……いく、ぃくっ、ぁっ、あああっっ」
 先程までの絶頂とはまた違う快感に、目の奥がチカチカする。もちろんこんな快感も、今までに経験がない。しかも先程までは、絶頂後にこちらが落ち着くまでは相手も動きを中断してくれていたのに、イッて収縮する腸内を掻き分けるように、未だ相手のモノが前後している。
「あっ、イッた、も、いったぁ」
「知ってる。も、ちょっと、付き合って」
 もっと気持ちよくしてあげるから、という言葉に血の気が引いたが、可愛いだの好きだよだのを繰り返されながら、耳周りを中心にちゅっちゅとキスの雨を降らされてしまえば、本気で抵抗なんて出来なかった。

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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ24

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 相手の口調とその内容にセフレの線はないんだなと思ったし、てことは恋人として付き合う気があるのかとも思う。
「あいつだけが、特別なのかと、思ってた」
「それ、そっくりそのままあんたに返すよ」
「お前も、俺には気持ち隠さなくて良くて、気楽だった?」
 自分と同じように、相手にとっても二人きりの時間が安心と心地よさを感じられるものならいい。そう思ったのに。
「それもなくはないけど、あんたが、あいつにすら見せられないような想いや姿を、俺にだけ晒してるっていうのが良かったかな。プライド高いカッコつけが、自分には情けない姿を見せてくれる特別感、わかる?」
「わかったけど、それ、全く褒められてないな」
「そう? 俺を虜にしたくらい魅力的、って受け取ってくれていいけど」
「とりこ、って……」
 ここまでされててなんで気付かないんだろうね、なんて言いながら、先程残された跡にまた相手の唇が触れる。今回は軽く唇が押し当てられただけなのに、さわわっと肌の上を快感が広がっていく。
「俺のものになってよ。セフレじゃなくて恋人に。抱かれてやる気はないけど、でももう、他の誰も抱かないで」
 喋るたびに首筋に掛かる相手の息に、肌が震えるようだった。そしてその内容には、心も。
「うん」
 じわっと涙が浮かんでしまうくらいに嬉しかった。なのにその余韻に浸らせてくれる気はないらしい。
「だいたい、セフレなんか作ったこと無いあんた口説いて手に入れる気でいるのに、恋人にはなる気ないなんて言うわけ無いんだよね。というか手に入れたと思ってたし、正直、恋人になった気でいたくらいなんだけど」
 バカすぎてこっちこそ泣きそうなんだけどと言われるってことは、こっちがまた泣きかけてた事には気付かれているのかも知れない。
「だってお前が、今までのセフレとどんなセックスしてたかなんて、知らないし」
 少なくとも自分は、恋人を抱く時には好きだの言葉を多用した。さすがに愛してるまで言った事はないけれど。
 だって、相手はこちらに本命がいるなんて知らないわけだし、何度も繰り返し好きだと告げればそれが事実になる気がしてもいた。いつか、本命よりも目の前にいる恋人のが好きだと思える、そんな日の訪れを待つような気持ちで繰り返した。
 ただ自分はセフレを作ったことがないし、セフレ相手ならどんな言葉を告げるのかなんて想像が付かない。試しに抱いてみた男とは一度だけと割り切った関係だったから、好きだとも告げなかったけれど、あの男ともし続くような事になっていたら、好きだと言い出していた可能性を否定できない。
「好きだも愛してるも、あんたにしか使ったこと無いよ。って言ったら、自分が今、どれだけ俺に特別扱いされてるか、いい加減自覚湧く?」
 好きだよの甘い囁きが耳元に落とされて、ついでのように耳裏の付根に唇が触れれる。
「ぁっ……」
 触れられたのは耳なのに、腰に痺れるみたいな快感が走って驚いた。同時に、相手との繋がりを強く意識してしまう。体の奥が、熱い。
 先程聞いた、お願いだから動いてとこちらが頼むまでこのまま焦らす作戦、とやらが頭の中にチラついた。本気でそれを狙っているんだろうか。
 いやでも返答次第でと言っていたし、恋人になったならもう他の誰も抱かないし、だったら酷いことをされる理由がないはずだ。
「好きだよ。愛してる」
「ぁあっっ」
 再度の囁きに、繋がる場所をキュッと絞って相手が動くことをねだった体の反応を、自覚してしまって恥ずかしい。
「体は随分素直みたいだけど」
 当然相手にだってそれは伝わっている。だったらもう、動いてくれたっていいのに。やっぱり、動いてってねだらせたいんだろうか。

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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ23

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 それは、と言葉を濁せば、ほらみろと言わんばかりに溜め息を吐かれてしまう。
「あーもー俺が悪かったってば!」
 自分が抱かれる側で得た知識やらを誰かに試そうなんて思っていない。自慢のテクを盗んでやろうとも思っていない。というよりもあれは、こちらとしてはもっと単純に、相手のテクを凄いと讃えただけでしかなかった。
「あんなの言葉の綾だろ。お前のテクが、真似できそうにないくらい凄いと思った、てだけだって」
「うん、まぁ、さすがに俺も、意図的に悪く受け取った自覚は有るから、謝らなくてもいいと言うか、むしろこっちが謝るべきなんだけど」
「おいこら。俺の謝罪を返せっ」
「それはごめんって。ただ、俺はこれから先も、あんたに抱かれてやる気はないんだよね」
 それを気にするのはやはり、次は抱かれる側になる可能性を考えろなんて言ってしまったからだろうか。でも別にあれは、次は抱かせろなんて意味で言ったわけじゃない。相手を抱く以上に、他の誰かを抱くって話が突飛もないって言いたかっただけで。
「知ってるけど」
 抱かれてくれる気が無いことは知ってるし、それを問題にはしていないし、相手のテクの前にメロメロしている現状、抱かれる側に不満があるわけでもない。というか、こんな状態になってるのに、じゃあ次は自分が抱く番だなんて言えるはずがなかった。それこそテクニックの問題で、相手にここまで善い思いをさせてやれる自信が欠片もないのだから。
「え、それがなんか関係あんの?」
 知ってる、と言った後の妙な沈黙に首を傾げながら、さらに言葉を重ねる。どうにも、知ってるならいいけど、って感じではなかったからだ。
「関係有るっていうか、俺が譲らないから抱かれる側に甘んじてるだけで、本当は抱きたい側でしょ? 俺が抱かせなかったら、他の誰か、抱きたくならない?」
「あれ? じゃあもしかして、嫉妬っつうより不安?」
「そうだね。後は独占欲とか?」
「へぇ……」
 独占欲だなんて、聞き慣れないというか、似合わないというか、まさかそんな単語が溢れてくるとは思わなかった。
「うひっ?!」
 なぜか唐突に、首の後ろにカプッと歯を立てられて、声を上げてしまう。
 会話に意識を集中していれば、繋がった下半身を意識しなければ、そこまでドキドキすることも、体がどんどんと興奮してしまうこともなかったのに。そんなことをされたら、今自分がどんな状態かを意識せずに居られなくなる。
「あっ、ちょっ、おまっ」
 やめろと手足をバタつかせれば、首の後をヂュっと吸われてチリとした痛みが走った後、ようやく開放されたけれど、もしかしなくてもこれは、キスマークを付けられたんだろうか。
「なぁ、跡……」
「独占欲が暴走しちゃって」
 シレッと言われたけれど、つまりは独占欲と言われたのを「へぇ」なんて言葉で流したのが気に入らなかったらしい。でもって、否定されないってことは、しっかり跡が残されているんだろう。
「マジかよ。つかお前こそ、俺をどうしたいの」
「どうしたいってどういう意味?」
「俺、別に本命が居ても恋人作ってた屑だけど、最低限、二股掛けたことってないんだよ。だから、お前が俺を恋人にするってなら、お前が俺に抱かれてくれなくたって、他の誰かを抱くことはしないけど。でもセフレだってなら、お前の独占欲なんか知ったこっちゃねぇっつうか、よそで誰抱こうと口出して欲しくない」
「俺がセフレで、って言ったら、あんた、俺のセフレになる気があるの?」
 セフレなんて持ったことないくせにと言われたけれど、それを言ったら、相手は恋人を持ったことがないじゃないかと思う。
「やだけど、お前が恋人作りたくないなら、仕方ないだろ」
「あんた本当に、変なとこで謙虚。あと、ほんっとーに、どうしようもないバカ」
 呆れた口調で言われて、このやりとり、今日何回目かな、なんてことを頭の隅で考えた。

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