サーカス6話 クスリの排泄

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 コンコンと部屋の扉が叩かれる。
「入ってこい」
 机の上の写真を握りつぶしたビリーは、それをゴミ箱に放りこんでから入室の許可を与えた。
 ゆっくりと扉を押し開いたのは、セージではなくガイ自身だった。
 前と変わらない、何か強い意思を秘める瞳。だから同じように、ビリーもガイを前と変わらぬ冷たい視線で射抜く。
「ここに帰って来るということが、どういうことか。分かってるんだろうな?」
 その視線をしっかりと受け止めながら、ガイは黙って頷いた。
「服をすべて脱いで、こっちへ来い」
 一瞬のためらいさえ許さない口調に、ガイはおとなしく服に手をかけていくが、その様子を見ていたセージは驚きに目を見張った。
「ビリー……?」
「セージ、席を外してくれ」
「でもビリー、ガイは戻ってきたばかりでまだ身体に傷が残ってる状態なんだよ。もし、これ以上ガイを傷つけるようなことをするつもりなら、僕はガイを自分の部屋へ連れていく」
「今のお前に、そんなことをする権利はないだろう?」
「なくても、放っておけない」
 セージは服を脱いでいくガイの腕をとってその行為をやめさせる。けれどガイは、セージを見上げながらゆっくりと首を横に振る。
「ええねん。こうなることはわかっとったし。それでも、ここに、帰って来たんやから」
 だから平気やと、ガイはほんの少しだけ微笑んでみせた。それを見たビリーは、わずかに眉を寄せる。ガイの笑顔など、初めてだったからだ。
「セージ……おおきに。また、会えるとええな」
「会えるよ。会いに、来るから」
 目尻に涙をためたセージは優しく微笑んで、ガイの額に小さなキスを一つ落とした。擽ったそうに身を竦ませたガイは、それでも一瞬、瞳の中に嬉しさを滲ませる。
 ビリーはその一瞬を見逃したりはしなかった。
「セージ」
 呼んだ名前は、やはり咎めるような響きだった。
「出ていくよ。でも、本当に……」
 何かを言いかけて、けれど。
「君を、信じてるよ。ビリー」
 ビリーにも同じように優しい笑みを向けて、セージは部屋を出て行った。
「チッ」
 扉の閉まる音にまぎれてビリーがもらした舌打ちは、ガイの耳には届かなかった。
 
 
 口内に放たれたものをむせることなく飲み下したガイは、ホッとして肩の力を抜いた。
「イイコだ、ガイ」
 その言葉に驚いて、ガイは顔をあげる。ビリーがそんな風に言葉の上だけでもガイを褒めたのは初めてだった。
 一瞬見せた期待に応えてやったほうが良いのか、ビリーも瞬時に考える。けれど結局、そんなのは自分に似合わないだろうと結論付けた。
 セージのように優しく微笑んでなんてやれない。
「ずいぶん上手くなったもんだ」
 作りやすいのは、蔑むような表情。ガイの瞳の中、明らかに落胆の色が見て取れる。
「他にも色々教わってきたんだろう?」
 先ほどセージに見せた微笑が脳裏に過ぎったが、意識的に掻き消した。
「ココで、相手を喜ばす術も、仕込まれて来たのか?」
 ビリーはガイを引き寄せると、言いながらその場所へと指を這わす。
 ガイの身体がピクリと震えた。仕込むという言葉が当てはまるほど、丁寧に扱われてはいなかっただろう。ビリーが確かめたいのは、むしろ傷の具合だった。
「言え」
 震える唇から言葉は生めず、ガイは辛うじて首を縦に振る。
「なら、次はココで楽しませて貰おうか?」
「ぅっ……」
 指先を潜り込ませれば、息を詰めて身体を強張らせる。
「力は抜いておけ」
 一応そう声を掛けながらも、緊張したままのガイに構わず、ゆっくりと奥を探っていく。指に触れる違和感に、すぐにビリーは眉を寄せた。
「……んっ、ふぅ……」
 小刻みに震えるガイの体と、こぼれ出す熱い吐息に、確信を持つ。
 ビリーはガイの体の中を探っていた指を引き抜くと、ガイの腕を掴んで立ちあがった。うるんだ瞳から、今にも溢れてしまいそうな涙は見なかったことにして、顔を背けたビリーはそのまま引きずるようにガイを部屋の隅に造られたシャワールームへと引っ張って行く。
「この、バカが……」
 焦りが滲み出た強い口調に、ガイの身体が怯えて竦む。
 バカなのは俺か……
 そんな自嘲めいた思いを抱えながら、ビリーは狭いシャワールームにガイを押し込んだ。戸惑うガイを放置したまま、フックに掛かったシャワーを手に取ると、ヘッドを外してからお湯の温度と流出量を調節する。
「壁に手をつけて、ケツをこっちに向けるんだ」
「何、する気やの……」
 震える声にようやくガイの顔をまっすぐに見つめれば、そこにあったのはいつも見せる強気の瞳ではなかった。本気で、怯えていた。
「入れられた薬を洗い流すに決まってんだろ」
「い、嫌や!」
「そのままにしてたら、気が狂うぞ?」
 子供相手に使うような物ではない媚薬。それがたっぷりとガイの腸内に注がれていた。
 館ではこんなことまでが日常なのだろうかと一瞬考え、さすがにそれは否定する。ただ、この酷く扱いにくい子供を今後も調教していかなければならないビリーに対する心遣いだというのなら、余計なお世話もいい所だ。
「それでも、ええ」
「お前が良くても、俺が困るんだ」
「お願いや……中、洗うんは、堪忍して……」
 すっと視線を逸らせたガイから、細く吐き出されてくる声は、やはり震えている。『お願い』などという言葉をガイの口から聞く日がくるとは思わなかった。
 目の前で震える小さな身体を、優しく抱きしめてやりたい衝動がビリーを襲う。そう出来ない代わりに、ビリーは努めて柔らかな口調で尋ねた。
「残念だが、わかった……と言ってやれる状況じゃない。しかし、何がそんなに嫌なんだ?」
 館に居る間、経験した相手の数だけ、身体の中を洗うという行為も繰り返されていたはずだ。毎回この調子で嫌がっていたとは思えないし、そんなことは許されないだろう。
 ガイはキュッと唇を噛んで、答える事を拒んでいる。
「言えないならそれでもいいが、とにかく薬を洗い流すから背中を向けろ」
 フルフルと首を横に振るガイに、ビリーは溜め息を一つ吐き出した。
 やはり、力尽くでやるしかないのか。諦めて伸ばした手を、ガイの手が力なく払う。当然、そんなものはたいした障害にはならなかった。
 入り口にビリーが立ち塞がっている状況のシャワールームに逃げ場などない。ビリーは無言のままガイの身体を捕らえると、後ろを向かせて腰を抱えあげる。
 チョロチョロと流しっぱなしになっていたシャワーホースを掴んで、その先を入り口へと押し当てた。
「やっ! 嫌や!!」
 逃れようと暴れる身体を、ビリーは強い力で押さえつける。ガイの嫌がる声だけが大きく響く中、ビリーは頃合いを見計らって、一度目の排泄を促した。ビリーの服の裾を強く握り締めて、ガイは必死で頭を振る。
「何我慢してるんだ。いいから出せ」
「やぁ……ぁぁ……」
 トロリとした薄紅色の薬と湯が混ざり合って流れ出し、排水溝へと吸い込まれていく。ぐったりと力の抜けた身体がズルズルと崩れて行くのを、ビリーは慌てて支えてやった。
「しっかりしろ。まだ終わっちゃいないんだぞ」
「も、堪忍や……」
 こぼれる涙を隠すように、ガイは腕を上げて目元を隠す。
 ビリーは腕の中の身体を抱えなおすと、確認するようにガイの中へと指を埋めた。先ほどの排泄で緩んだ入り口は、こぼれ出た薬の滑りもあって、やすやすとビリーの指を受け入れる。
「あっ、あっ、なにを……?」
 ガイの身体が大きく弾む。
「湯で洗われるのが嫌なら、指で掻き出してやる」
「そんなん、あっ、ああん」
 溢れてしまう嬌声に、ガイの顔が羞恥で赤く染まった。
「感じるのは薬のせいで、おかしな事じゃない。イきたければイってもいい」
 幼い身体でありながらも、明らかに快楽を示し始めたガイに、ビリーはそう声を掛ける。しかしやはり、ガイは困ったように首をふるだけだった。
 それでもだんだんと、先ほどのように、ただ嫌がってもがくのとは少し違った反応に変わって行く。
「どうした?」
 あふれ出る嬌声すら枯れて、苦しそうに短く息を吐き出し始めたガイの顔を覗きこんだビリーは、その泣き顔に思わず息を飲んだ。顔中を涙で濡らしたガイは、どうやら自分の中に湧きあがる快楽の波を持て余しているらしい。
 他人のモノを口に含んでイかせることも覚えたくせに、自分の精を吐き出す術をまだ知らないのだ。気付いて苦笑を洩らしたビリーは、ガイの幼い性器へもう片方の空いた指先を伸ばした。
「……ぃ」
 力の入らない身体を捻って、それでも逃げようとするガイの零した呟きは『怖い』。
「大丈夫だ。心配するな」
 言いながら、涙の滲む目元へ、頬へ、優しく唇を押し当てる。そうしながら、手の中のモノをイかせる目的でゆっくりと扱いていく。
「あっ、ああっ……」
 ビクビクと身体を震わせてガイは意識を手放してしまったが、その手を汚すモノはない。
 そこまで子供だったのだと思い知らされるようで、胸の中に広がる罪悪感。それを振り払うように、ガイの身体を軽く洗ってやったビリーは、柔らかなタオルにその身体を包んで抱き上げた。

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