雷が怖いので プレイ32

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 人前で下着を脱ぐ機会なんてそうそうないものの、一度剃ってしまったら暫くはみっともない姿が続いてしまう。
 自宅で準備をして、渡されたアナルプラグを埋め込んで、近所で買い物をしてからバイト先へ向かう。なんてことが出来るのは、それが決まった曜日の決まった時間を超えて、日々の生活へ関わってこないからというのがやはり大きい。まぁ普段から利用する場所で買い物なんてしたら、プレイとしてでなくそこで買い物をするときに、思い出してしまう事もあるのだけれど。
 でも剃られてしまったら、綺麗に生え揃うまでそこを見るたびに、否応なく思い出してしまうだろう。だって誕生日につけて貰ったキスマークがそうだった。それが目に入るたびに、誕生日を祝ってもらった幸せな時間と、でもキスマークで誤魔化されて抱いて貰えなかった切ない気持ちとを思い出して、気持ちをユラユラと揺らしていた。
 彼がそこを剃りたいと言い出したのも、執拗に剃りたがっていたのも、誕生日後の幼い子どものような口調をかなり強要されていた頃だし、剃り落とされてツルツルになった子供みたいな体を、家に帰ってまで意識したくなんてなかった。優しい声音で剃られることを促す彼に、気持ちを揺らされながらも拒否し続けられたのは、きっとキスマークの二の舞いになることがわかりきっていたからだ。
 ただ、胸を弄られすぎたせいで日常生活に支障が、みたいな影響があるわけじゃなかったし、絶対に嫌だという態度で引いてくれたし、理由ごと口に出して、剃りたがるのは止めてくれとお願いしたことはない。それでも結局は、プレイが進む内にある程度満足したのか、想いをはっきり自覚してからは少し雰囲気が変わったとも言われたからそれで合わなくなったのか、幼い口調の強要やらは減っていったし、同時に剃りたいと言われることも減っていた。
 自分の中の気持ちが変わったのは、やはり初めて抱かれたあの日だ。彼の体に残る傷を見て、血が流れるほど強く噛まれて、その傷が自分の体にも残ればいいのにと思ってしまった。上手にできなかったら意識を飛ばされる覚悟と、起きた時には毛を剃り落とされている覚悟をしてなんて事も言われたが、意識を飛ばしても無事だったその場所に気付いた最初、安堵するのではなく、剃られてても別に良かったのにと思ってしまった。
 彼がこの体に残してくれるもの、自宅へ帰っても彼との時間を思い出せるようなものを、最近ではむしろ欲しがっている。なのに欲しい気持ちを自覚したせいで、逆に彼がこの体に痕を残さないようにしているのだろうことに、気付いてしまった。
 お金は半ば強引に突っ返してしまったけれど、傷跡なんてほとんど残らないだろう噛み傷に、十万という金額を払おうとした人だ。たまにプレイ後うっすらと拘束された痕が残っていることもあるが、多分確実に、そういう時は給料にその分が上乗せされているんだろう。考えてみれば、拘束を解いたときや、拘束を含むプレイをした日の終わり際は、念入りに体をチェックされているような気もする。
 そんなわけで、彼が気にしているのは主に拘束の痕で、毛を剃り落とすことや、こちらが望んでねだったキスマークに対して、彼がどんな感情を持つのかは知らない。
 キスマークに関しては、おぼろげな記憶ではあるが、あなたのものにしてと言ってねだった結果のものだし、彼が喜んで応じてくれていた記憶もない。当然、彼自身からつけたいと言われたことも一切ないそれを、自分からまた望むことはしないだろうと思う。
 そして剃毛に関しては、剃られたら生え揃って元通りになるまでには、そこそこの期間が必要になるはずだ。数日も残らない拘束の痕より、確実に長くこの体に剃られた事実が残るわけだけれど、それを彼がどう思うのかはやっぱりちっともわからない。でもこちらからすれば、彼からしたいと望んでくれて、体にはっきりと彼と過ごした時間の痕跡が残る行為に他ならない。しかも今日この場所でというなら、帰宅後その場所を見て思い出すのは、剃られた後でトロトロになるまで可愛がって貰った記憶なんじゃないかと思う。
 そう考えたら、むしろ期待で体の熱があがっていく。

続きました→

 
 
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