雷が怖いので プレイおまけ3

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 バイトに来る前に何を食べたか、それは何時頃かというのを聞かれて、更に、現在服用している薬があるかも尋ねられた。まるで問診でも受けている気分になりながら、問われるままに答えれば、大丈夫そうだなのセリフとともに小さな瓶から取り出した錠剤が二粒渡される。
 飲めって意味なのはもちろんわかるのだけれど、水の入ったペットボトルを差し出す相手の、絶対に何かを企んでいる顔が引っかかってしまって、素直にそれを口にすることは出来なかった。
 このバイトを始めてからそこそこの期間が経っているけれど、バイト中、こんな風に薬らしきものを渡されるのは初めてだ。
 いや違う。一度だけあった。
 誕生日の翌日に二日酔いの薬だかサプリだかを口に放り込まれて、あの時はそのまま素直に飲み下してしまった。けれどどう考えても、これがあの時と同じものな訳がない。
「さすがに警戒してるか?」
 手の平の錠剤を凝視したまま動けずにいれば、おかしそうにそんな声が掛かった。絶対、こちらの戸惑いすら面白がられている。
「そりゃあ……」
「それな、ちょっとばかりお前の感度上げるお薬」
「かんどを、あげる」
 言われた言葉を噛みしめるように繰り返してみるものの、イマイチ脳内がそれを把握しない。何を言われているのかわからない。というよりも、多分、理解することを拒否したがっている。
「依存性の有るような危ないやつじゃないし、副作用の心配も殆ど無いくらいの、ごくごく軽い媚薬だよ。ほんの少しぼんやりして、ほんの少しいつもより感じやすくなるだけだから、出来れば飲んで。それとも、それなりに信用は得られてると思ってるけど、得体の知れない薬を飲まされるのはやっぱり不安?」
 その聞き方はズルいなと思いながら、いいえと返して小さく首を横に振った。信頼は、してる。これは本当に、飲んだってそんなに危ない薬ではないんだろう。
「あの、感じやすくなるって、どれくらい、ですか?」
 聞けば、不安はそれなのと笑われたけど、でもかなり重要なことだと思う。だって今日はもう既に、充分すぎるほど興奮しているのだから。
「少しは少しだよ。いつもよりちょっと感じやすくなるはず、ってだけ。薬が効きにくい体なら、効果なんて殆ど無い可能性もある。ただ、もし俺が狙った通りの効果が出たら、今のお前にはそこそこキツイだろうってのはわかってるし、だからこそ、今日はそれを飲ませてしたい」
 それは、既に興奮してる状態の体を、更に感じやすくされて弄られるという、今日のプレイ内容の宣言だ。そこそこキツイだろうと言われたってことは、感じすぎてイキまくって、もうイキたくないと泣き喘ぐくらいの状態にされるってことだろうか。
 そんな自分の想像に、ゾクリと背を走るのは、恐怖と期待が半々だ。
 彼の前で、みっともないくらい感じまくってイクことへの抵抗は、もう随分と薄くなっている。それどころか、そんな自分を楽しげに見ていてくれる彼の目に、いっぱい感じて可愛いよと言ってくれる声に、安堵と幸福と更なる快感を得ているのだということを、自覚してもいた。
 胸の奥が甘く疼くことも多くて、好きだ好きだと零れそうになる気持ちを飲み込むのが大変だった。
「それを飲む気にはなってそうなのにな。もう一歩が踏み出せないなら、言葉を変えようか」
 飲みなさいと穏やかな声に促されて、手の平に乗った錠剤を口に放り込み、こちらへ向かって差し出されたままのペットボトルへ手を伸ばす。口の中の錠剤を水とともに飲み下して、大きく息をついた。
「いい子だ。じゃあ次はお尻の方だな」
「えっ……」
「今日はそっちにも、少しだけ薬を使うよ」
 これもそんなに強いものじゃないけどと言って彼が取り上げたのは、先程棚に置かれたばかりの、見慣れないチューブ状の何かだった。つまりそれの中身は、媚薬クリームのたぐいだってことらしい。

続きました→

 
 
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