雷が怖いので21

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 お尻でイけるようになって、彼サイズだという玩具も受け入れるほどに慣らされて、最後に渡される封筒の中身はだいたい五万前後に増加した。でも滞在時間は減っている。とは言っても、自宅を出る前からプレイが開始するようになっただけなので、プレイ時間にそう変化はないのかもしれない。
 自宅で中を洗って、慣らして、渡されていたプラグを自分でお尻に嵌めて、彼の家に向かうのだ。途中、事前に指定された買い物をすることも多かった。買った商品と一緒にレシートも提出するので、事前に買っておいたものを持っていくことは許されない。
 エッチな玩具をお尻に入れて、素知らぬ顔で普段から利用するコンビニやらで買い物をするというドキドキに、びっくりするほど興奮した。自宅近辺なんて、同じ大学に通う学生が溢れている。実際に学科の友人と鉢合わせたのは一度だけだけれど、知人に出会う可能性というのは、何故か興奮を加速する。
 毎回興奮した状態でたどり着く自分に、彼は随分と満足そうだ。
 今日は買い物の指示がなく直接向かったけれど、チャイムを押した直後から、プラグが振動を始めて家の前でへたり込むはめになった。遠隔操作可能なモーター付きプラグということはもちろんわかっていたのだけれど、家に入る前にスイッチが押されるとは思っていなかった。
 まさか玄関先であんあん喘ぎまくるわけにも行かず、必死で両手で口を押さえる。普段のプレイ場所が防音室ということもあって、いつも快楽に任せて喘いでいるしそれを咎められることもなかったので、声を抑えようとするだけでも本当に苦しくて辛い。
 胸の中、早くドアを開けてと必死で願いながら、玩具に与えられる快楽に悶えていたのはどれくらいの時間だったのだろう。玄関扉のすぐ向こうに居るのだろう相手が、振動の強弱を変えてくるのに翻弄され、お尻だけでもイけるようになった体は途中何度か達しかけた。けれどそれも、必死で気を散らして耐える。彼の許可が降りるまでイくのを耐えられたら、優しく褒めて貰えることを、その後甘やかに触れて貰える事を、それが心まで包み込んでくるみたいにメチャクチャ気持ちが良いことを、体ごと知ってしまっている。
 だから、ようやく振動が止まって、ドアを開いて姿を表した彼が、良く声も上げず勝手にイくこともせずに頑張ったねと優しく頭をなでてくれた時には、安堵でぶわわと涙が浮かんだ。
「そんなお前に、今日は特別なご褒美を用意してるよ」
 そっと涙を拭ってくれる指先に、胸の奥がキュンキュンと甘く疼く。
 甘えるように腕を伸ばせば軽々と抱き上げられた。相変わらずの姫抱っこだ。
「よしよし。いい子だ。本当によく頑張ったよ」
 応じるように甘やかな声が降って、嬉しいのにぼろぼろと涙がこぼれてしまう。顔を隠すように身をひねり、肩口に目元を押し当てても、柔らかに笑われる気配がしただけだった。
 そのまま、ゆっくりとした足取りで運ばれていく。顔を隠していたせいで、連れて行かれた部屋がいつもの防音室じゃないことに気づいたのは、降ろされた背に触れる柔らかな感触からだった。
 部屋の中は薄暗い。厚手の遮光カーテンがしっかり閉められているせいだ。
「ここ、…は?」
「寝室」
「な、んで……」
「お前を抱くから」
 息を呑んだ。やっと抱いてもらえるという興奮や嬉しさよりも、戸惑いが大きい。だってまさか寝室で、彼が普段から使っているベッドの上で、初めてを奪われるなんて欠片も想定していなかった。
「こ、ここで、俺を抱く、の?」
「嫌だ、なんて言うなよ?」
「でも……」
「一度っきりの初めてなんだから、いつものプレイの流れで奪うより、こういう方がお前好きそう」
 誕生日の時みたいにホテルが良かった? と聞かれてブンブンと首を横に振った。

続きます→

 
 
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