雷が怖いので11

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 ピチャピチャと晒した片耳を嬲られ震えながら、ぼろりぼろりと涙が零れていく。お前のやだはもっとしてって意味だと言われてしまったから、イヤダイヤダとこぼしそうになる口を必死で閉じた。それでも時折、しゃくりあげてしまうのに合わせて、甘ったるい吐息やら嬌声やらをこぼしててしまう。
 足の間に挟み込まれた相手の足はそのままで、与えられる刺激に体の力が抜けて腰が落ちれば、濡れた下着を意識せずには居られない。さすがに先ほどみたいにそこを揺すっては来ないが、でもこれも、きっと時間の問題だろう。本気で感じて再度勃起してしまったら、どうせまたそっちも弄られてしまうのだ。
 しかし、恥ずかしくて気持ちのいい事を期待する気持ちより、今はただただこんな自分が情けなくて苦しい。迂闊で警戒心が薄くて、高時給に釣られてこんなバイトを始めて、のこのこと相手の良いようにされて泣きながら、それでも本気で抵抗することも逃げ出すことも出来ずにいる。だって本気で逃げたら、きっともう次はない。
 自分の気持がわからなかった。泣くほど苦しいのに、このバイトを手放すのは惜しいらしい。きっと時給への魅力だけではないから、自分自身がわからなくて、頭の中はぐちゃぐちゃに混乱していて、ますます涙があふれ落ちた。
「あー……マジ泣き入ってんなこれ」
 不意に諦めに似た声音とともに、スッと相手の顔が離れていく。足の間に差し込まれていた相手の足も抜かれて、代わりに、支えるように脇の下から差し込まれた両腕が背にまわり、ふわりと優しく抱きしめられた。宥めるように背中をポンポンと軽いリズムで叩かれる。
「よしよし。怖かったな。お前が泣き止んだら、今日はおしまいにしような」
 おしまいと聞いてホッとして、体中の力がヘロヘロと抜けていく。もちろんその場に座り込むようなことにはならなかったが、脇の下に差し込まれている腕にぐっと体重を掛けてしまえば、慣れたしぐさで体勢を変えられた。というか抱き上げられた。
 降ろされたのは前回この部屋に入った最初に座ったテーブルセットの椅子の上で、少し待ってての言葉とともに相手は防音室を出て行ってしまう。
 次に戻ってきた時には手に何やら抱えていて、テーブルの上に並べられたそれらは新品の下着類だった。
「どのタイプ使ってんのわかんねーから適当に持ってきた。好きなのやるから着替えて帰りな。あ、着替える前にシャワー使うか?」
 首を横に振れば、テーブルの上にティッシュとウェットティッシュとを並べて、着替え終わったらリビングにおいでと言い残してまた部屋を出て行ってしまう。
 着替えるところを見せたら幾らとか言い出さなかった辺り、本当に今日はもうあれで終わりということらしい。
 もそもそと着替えて、汚した下着は小さく丸めて、来た時に扉の脇に置いていたカバンの奥に突っ込んだ。その頃にはもう気持ちもだいぶ落ち着いていて、涙は治まっていた。
 一応ウェットティッシュで顔を拭いてから、よしと気合を入れて部屋を出る。
 リビングでは甘めのホットミルクと蒸しタオルが渡され、ホットミルクを飲み終えたところで封筒が差し出された。
「今日の給料。マジ泣きさせた分、ちょっと多めに入れてある」
 ごめんなと苦笑する顔に、ゆるく首を横に振る。
「で、まだ続ける気、ある?」
「あり、ます」
「少しずつ、今日以上のこと要求してくけど、それでも?」
 黙って頷けば、じゃあ次は来週の同じ時間でと言われた。出来れば月給八万くらいを狙っているので、本当は土日両方働けたらと思っていたが、今日これだけ泣いて明日も来たいと言うのは流石にちょっと憚られる。
 わかりましたと告げて家を出れば、今日のバイトはこれにて終了だ。
 あの場で確かめるのを躊躇った封筒を、帰宅後真っ先に開けてみる。中から出てきた三枚の一万円札に心底驚いた。

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