雷が怖いので12

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 バイトは結局、土曜の昼過ぎから数時間という形で定着した。
 幾ら稼ぎたいか聞かれて毎回一万と答えていたら、四回目から聞かれなくなった。そしてだいたい一回につき三万前後は稼いでしまっている。
 エロいことなしでもいいなんて話が全くの嘘だったことに関しては、早々に諦めがついていた。多分今だって、本気でエロいことを拒否しまくったら、ただただ壁に突っ立っているだけで時給千五百円という最初の契約が復帰する可能性もあると思う。そうしないのは、間違いなく自分の意志だ。
 何々が出来たら幾ら払うと提案されることもないわけではないが、どちらかというと一方的にあれこれされてしまって、はっきりわからないまま給料に上乗せされている事のほうが圧倒的に多い。だから、何をして幾ら貰っているのか、正直さっぱりわかっていない。
 上乗せ分はその時の気分で適当みたいな事を言っていた気がするから、詳細を聞こうとも思わなかった。というよりは、聞いたら教えてくれるのだとしても、その日のプレイを反芻して何が幾らの価値かなんて聞くのは、それ自体が恥ずかしいプレイのように思えて無理だった。
 本当は、彼の中での自分の行為の価値を知りたい気持ちが、ないわけではないのだけれど。でもそれを知りたい理由は多分好奇心で、知ったからといってより高く自分を売りつけたい気持ちはないし、そもそもそんなことが出来るとも思えない。
 そんなこんなで、時給換算したら多分平均一万くらいにはなってそうだけど、それ相応の働きをしているかと言われたら首を傾げるしか無い。相変わらず恥ずかしい目にはあいまくってるし、泣かされまくってもいるから、貰って当然の報酬なのかもしれないが、やってることが異質すぎて正当な報酬なのかどうかの判断はつかなかった。
 ただ、バイト代に釣られて嫌々通っているわけではないのは確かだ。宣言通り、毎回あれこれ要求される内容は少しずつハードになっている気がするが、こんなバイトはもう嫌だ無理だ出来ないと、本気で思うような瞬間がない。
 というよりは、多分、相手のフォローが凄く上手いのだと思う。結構な無茶を強いてくることもあるのに、酷い恥ずかしさと居たたまれなさで苦しくなっても、よく出来ましただとか、いい子だとか、可愛いだとか言われながら、頭を撫でられたり優しいキスを落とされたりすると、恥ずかしさや居たたまれなさが安堵や喜びに転化してしまう。
 相手が優しくなる瞬間が、甘い声と顔を見せてくれる時間が、多分、好きなのだという自覚はさすがにもうあった。
 こんなあからさまにヤバイ気配しか無いバイトを決めた、激しい雷雨だったあの日から、彼の何がそんなに気になっているのかずっと不思議だった。最初から迂闊で警戒心がないとからかわれまくっていたのに、それでも、嫌悪や怒りではなく相手に対する興味と好奇心が勝ってしまったのだから、本当は不思議でも何でもなかったのかも知れないけれど。
 あの日もなんだかんだ言いながら、雷を怖がって震える自分に、彼は最初から優しかった。チラチラと覗く彼の優しさを、もっと見たいと思った結果がこれなのだとしたら、納得する以外ないだろう。
「次回だけど、夕方からでもいいか。後、出来れば翌日も開けておいて欲しい」
 プレイを終えて身支度を整えてからリビングへ行けば、いつも通り今日の分の給料が入った封筒を差し出されながら、そんなことを言われてびっくりした。
「えっ? 翌日?」
「無理にとは言わないが、可能なら泊まりになるつもりで来てくれ」
 もちろんこんなことを言われるのは初めてで、いったい次回はどんなプレイをするつもりか考えてしまうのは仕方がない。
「……あの、俺を、抱く気……なの?」
 前々回から、とうとう尻の穴を弄ることを許してしまっているし、今日だってそこに小さなローターを入れられて悶てしまったので、いつかはこの人に抱かれる日も来てしまうのだろうという気持ちはあった。覚悟済みというよりは、その日を少しばかり期待してさえいることを、自覚している。
「そうだ。って言ったら、お前は覚悟決めて泊まりに来るか?」
 神妙に頷いて見せたら、相手は楽しそうに笑って、じゃあそれも可能性の一つに入れといてと言った。ということは、そのための泊まりではないらしい。
「じゃあ、本当は、何をする気で泊まりなんですか」
「一緒に酒を飲もうと思って?」
「え? 酒?」
「お前、今度の水曜が誕生日だろ」
「は? 誕生日? ってなんで知ってんですかそんなの」
「なんでって、学生証に書いてあったじゃねーかよ」
「ええええっっ!?」
 確かに学生証を見せたことはあるし、しげしげと眺められた記憶もある。でも誕生日を記憶されていて、それを祝われるなんて想定外もいいところだ。
「やっと二十歳だろ。祝ってやるから酔い潰される覚悟でおいで」
 にやにやと楽しげな笑みと不穏な言葉に、けれど不安よりも嬉しさと期待とが大きいだなんて、本当にどうしようもないところまで来ているなと思った。

続きました→

 
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