兄の親友で親友の兄2

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 そんな顔すんなと言って、目の前の男はまたしても呆れの滲む息を、今度は大きく吐きだした。なんだかずっと、呆れられっぱなしだ。
「お前さ、いっそ告白して振られてこいよ」
「は?」
「そしたら一回だけ、あいつの代わりに抱いてやる。やってる間、あいつの名前で呼んでもいい」
「なんだそれ。わかった振られてくるね、なんて言うとでも思うの?」
 聞けばあっさりと思わないと返されたから、だったらなんでそんなことを言うんだと思う。思ったまんま口に出せば、弟の代りにされても許せるとしたらその条件くらいしかないからだと返された。
「名前呼ばないからちょっとくらい夢見させてってのはダメなの?」
「それはダメだな。基本的な話になるけど、俺、俺を好きじゃないヤツ抱きたくないし」
「さっき錯覚無しでなら抱いてもいいって言ってたけど、錯覚なしがイコールであなたを好きと思って抱かれるにはならなくない?」
「だからやっぱなしって言っただろ。だってお前、お前自身を抱けるって言っても欠片も喜ぶ素振り無かった上に、なんでお前を抱けるっつったかも全く理解してないもんな」
 兄に似てるから以外で抱く気になる理由なんてあるのかと聞いたら、また呆れられるんだろう。
「親友の弟で、弟の親友で、俺自身との繋がりはそう強くないけど、深刻な顔で抱いてくれって言われたらいいよって言っちまうくらいには元々お前を好きだと思ってた、って話だよ」
 余計なことを言ってしまわないようにキュッと唇を引き結べば、苦笑と共にそんなことを言う。なんだそれ。意味がわからないと言うよりは考えたくなくて、呆然と相手を見つめてしまえば、相手はますます苦笑を深くしていく。
「本命とそれ以外、みたいな分け方してるっぽいお前にゃわからん気持ちかもだけど、体だけ気持ちよくなれりゃいいみたいなセックスが虚しくなってんなら、試しに俺と付き合ってみるか?」
「なに、言ってんの……」
「割と本気で誘ってる」
「俺を好きとか、困る」
「お前と付き合ってもお前が本命に繰り上がるわけじゃない。って言ったら、ちょっとはその気にならないか? お互い別に本命がいるのわかった上でも、恋人として付き合えるってのを、お前は一度経験してみたらいい」
 兄の親友で、親友の兄である男と恋人になる、なんてもちろん考えたこともなくて、でもそんなの無理だとすぐに拒否できないってことは、多少なりともその提案に惹かれてもいるらしい。ただそれがどんな気持ちからなのか、想定外の展開でぐちゃぐちゃになっている思考ではわからない。それに、付き合ったって上手くいくはずがないって気持ちも強かった。
「ねぇ、その付き合い、セックス込みの話だよね?」
「そうだな。もし、あいつの代わりに抱かれたいためだけに付き合うってなら、それは無理だから断ってくれ」
「その、あいつの代わりにとか思ってなくても、抱かれたらどうしたって、錯覚はすると思うんだけど……」
 だって自分が知る中で、一番あいつに似ているのが彼なのだ。兄を本命にしながら他の恋人を何人も作ってきた彼はどうか知らないが、本命が別にいるからと体だけのセックス経験しかない自分は、なるべく本命に何かしら似たところがある男を選んでいたし、むしろ積極的に錯覚して行為を楽しんできた。
 自分を好きじゃない相手は抱きたくないと言っているような男とは、相性最悪としか思えない。
「初っ端から代わりにする気満々で抱かれるんでなきゃ構わないさ。わざとじゃなく錯覚するってなら、どっちかって言ったら俺のせいだろうし」
「え、なんで?」
「それを知りたきゃ誘いに乗って、俺に抱かれてみるんだな」
 どうする? とニヤリと笑った顔はどう考えても了承待ちで、それならもう釣られてしまえと、じゃあ付き合うから抱いてよと返していた。

続きました→

 
 
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兄の親友で親友の兄1

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 兄の親友であるその人が、兄をどんな目で見ているのか気づいたのは自分自身がそちら側だったからで、彼はその想いをとても上手に隠していたと思う。もちろん自分も、自分自身の恋情は隠しきっていたつもりだし、同類である彼にも全く気づかれなかったと言うなら、いっそ誇っていいかも知れない。まぁこちらなんてまるで彼の眼中になかった、というだけの可能性も高いけれど。
 彼にとって自分は、親友の弟で、かつ、弟の親友でしかなかった。だからなぜこんな誘いを掛けるのか、理由を告げれば相手は相当驚いていた。まさかこちらの本命が彼の弟だなんて、彼からすれば青天の霹靂もいいところだろう。
 つまりそれは、互いに互いの想い人を重ねるような、自己欺瞞に満ちた行為の誘いだ。幸いなことに、どちらの兄弟も、他者からよく似た兄弟だと言われる程度には顔の作りや雰囲気が近い。錯覚は意図的に充分起こせると思う。
 彼はめちゃくちゃ渋い顔でしばらく黙り込んだ後、大きなため息を一つ吐いて、それからわかったと言った。勝算がなければ誘いなんか掛けなかったとは言え、馬鹿なことを考えるなとゲンコツを落とされる可能性もなくはなかったのでホッとする。
「ただし、錯覚はなしだ」
「え?」
「俺を別の名前で呼ぶな。俺もお前を別の名前で呼んだりしない。俺が、俺の意思で、お前を抱く」
 それでいいなら抱いてやると言われても、想定外過ぎてわけがわからず混乱した。
「なんで?」
「だって気持ち悪いだろ。俺はあいつの兄であってあいつじゃねーし。お前がいくら兄貴に似てたって、俺からすりゃお前はお前以外の何者でもねーんだよ」
 どんだけ長い付き合いだと思ってんだと呆れ口調のその人は、本当に錯覚できると思ってるならお前はバカだと言い切った。
「え、でも、それで俺を抱く気になんてなれるわけ? それとも、元々、本命に似たような相手ばっか漁って来たタイプ? ってことはないよね。確か、けっこうなメンクイで過去の恋人、美人ばっかって話だったような気がするんだけど」
 親友の彼女を紹介されたり、兄の彼女が家に来たりということはあるが、さすがに彼の恋人を見たことはない。そもそも親友経由だったり兄経由だったりで聞いた話じゃ、彼が親友やら兄やらに紹介する恋人は気の強そうな美人ばっかりで、でもだからかあまり長くは続かないらしい。長く続かないのは別に本命が居るせいだろ、とは思っていたものの、もちろんそれを親友にも兄にも言ったことはない。
「ああ、兄さんやあいつには紹介出来なかったってだけで、男は兄さんに似たタイプ選んでたとか、そういう話?」
「わかった。やっぱ止めよう。なしなし。この話は忘れてやっから、お前ももうこんなアホなこと言い出すなよ」
「待ってよ。意味わかんないんだけど。てか、俺を俺のまま抱けるってなら、それでいいから抱いてよ」
「えーだってお前、絶対後悔する」
「後悔すると思ったら、こんな身近な相手誘うわけ無いだろ」
 言えば相手はやっぱり呆れた様子のため息を吐いた。
「お前、恋人は?」
「それ言わせる? 男も女も居たことなんてないですけど」
「だからだバーカ」
「バカってなんだよ。せめてもうちょっとわかるように説明してよ」
「お前まさか、初めての相手に俺を選んでんじゃないよな?」
「いや、さすがにそれはないけど。ちょっと虚しくなってきた、てのはある」
「相手いんなら作れよ恋人。それとも足開きゃ寄ってくるようなのばっか相手してんの?」
「そういうわけじゃ……いや、どうだろ。そうなのかな?」
「おい。大丈夫かお前」
 危なっかしいなの口調はやっぱり呆れ気味だけれど、それでも本気で心配されている気がして少し気まずい。
「だって好きになられても応えられないんだし、そんなの困る。逆に聞くけど、本命が居るのに恋人作ってすぐ破局するのって虚しくないの?」
「別に。あいつらに紹介した女の恋人はだいたい事情知ってて俺の恋人やってたし、それとは別に、ちゃんと可愛がってた恋人もいるぞ。男だったからあいつらは知らないけど、そいつとはそれなりに長く付き合ったよ」
「え、知ってるって何を? てか男の恋人もいたの? なんで別れちゃったの?」
「俺がゲイよりのバイだってこと。女の恋人が居たほうが都合いいし、女相手は最初っから期間限定恋人ごっこ、みたいなのが多かったかな。男の方はまぁそれなりに本気だったけど、向こうの家の事情的な感じで、相手の結婚決まって別れたわ」
「えーじゃあ、もしかして、兄さんが本命は俺の気のせい?」
「ではないな」
 でもそれなりに気持ちに整理はついているから、兄とは今後も変わらず親友で居られればいいのだと言って彼は笑う。本気でそう思っているのだとわかる穏やかな顔に、彼は自分と同じように親友への想いに苦しんでいる同士ではないのだとわかって、がっかりすると同時になんだか泣きたいような気持ちになった。

続きました→

 
 
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結婚したい相手はお前

 仕事で忙殺される日々の中、癒しとなるのは合鍵を渡してある恋人の存在だ。相手だって仕事を持つ社会人ではあるのだけれど、二人ともが忙しかったら会える時間がないから、などと言って相手は仕事をだいぶセーブしていた。そしてそれに甘えまくって、彼に通い妻的なことをさせてしまっている。
 相手が女なら、そろそろ責任をとって結婚、なんて話になりそうなところだけれど、というかそうなってるはずだったんだけど、なぜか現在お付き合いをしている相手は男なので、ぼんやりと思い描いていた自身の将来との齟齬に未だ戸惑っていた。多分その戸惑いを、相手もわかっていて、しかもきっと負い目に感じている。
 あの時、彼女と別れて彼を選んだのは自分の意思だし、さすがにそれは何度も言って聞かせているけれど、それでも自分のせいでと思う気持ちは彼の中に残っているようだった。相手は好きでやってると言いながら、部屋の片付けやら食事の用意などもしてくれるが、その負い目があるからじゃないのかと疑う気持ちがないわけじゃない。
 大事なのは家事をしてくれることじゃなくて、仕事で疲れ切ってあまり構ってあげられなくても、好きで居てくれることとか、怒ったり責めたりしないこととか、なるべく笑っていてくれることなんだけど。
 わかってるよ〜大丈夫だよ〜とふわふわ笑う相手が、どこまでわかっているのかはかなり疑わしい。だって多分自分とそう変わらない単なるサラリーマンななずの彼が、働き盛りなこの歳で仕事をセーブするってのは、彼の今後の人生にも大きく影響してくることだろう。なのに、男一人が取り敢えず生きていくくらい稼げてれば別にいいしと、彼はあっけらかんと笑ってしまう。
 事後の余韻がほんのりと残ったベッドの中で、余計なこと考えてないで眠りなよと、クスクスと笑う彼を引き寄せ抱きしめた。情けないことに体はもうクタクタで、目を閉じればあっという間に意識も落ちる。
 やるだけやってさっさと寝てしまうのなんて、どう考えたって恋人としてアウトだって認識はあるし、こちらが寝落ちた後にそっと腕の中から抜け出した彼が、どんな気持ちで一人で後始末をするのか考えると胸が痛む。
 いやこれ絶対、愛想尽かされるのも時間の問題じゃないの?
「結婚したい」
 翌朝、彼が先に起き用意してくれていた朝食を前に決死の覚悟で告げれば、相手は悲愴な顔になって、それから、小さな声でわかったと言った。
「やっぱ、嫌? 無理?」
 相手を手放したくない。愛想を尽かされたくない。でも今の仕事を辞める気もない。結果、考えついたのがプロポーズだなんて、それだけでも愛想を尽かされる要因になるかも知れないと、彼の反応から今更思い至って焦る。
「ううん。大丈夫。覚悟はしてた」
 俯いてしまった相手が、キーケースから外した合鍵をテーブルの上に置いた段階になって、あれ? と思う。
「待って。覚悟ってなんの覚悟?」
「そんなの……」
「まさか、別れてって言われたと思ってる?」
 頷かれて頭を抱えた。
「違う違う違う。ごめん。そうじゃない。俺が結婚したい相手はお前。さっきのは、お前に、結婚してって言ったの」
「えっ?」
「あーもう、ほんと、ごめん。突然過ぎたというか情緒も何もあったもんじゃなかった。やり直したい。てかやり直しさせて。ごめん。ごめんなさい」
 テーブルの上に頭を擦り付けて言い募れば、相手の手が躊躇いながらも頭を撫でてくる。ガバリと勢いよく頭を上げれば、相手が驚きと苦笑と愛しさとをごちゃ混ぜたような変な顔で、本気っぽいの伝わったからやり直しは要らないかなと言った。本気で受けていいなら受けるよとも。
 その後、その変な顔がふにゃふにゃと崩れて珍しく泣かれてしまったけれど、恋人の泣き顔をこんなにも愛しいと思うのは初めてだった。

 
 
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ときめく呪い

 あれなんかおかしいぞ、という事に気づいたのは、ダンジョンの中腹あたりだったろうか。少数精鋭が行き過ぎて二人パーティーになってから数ヶ月経つが、それなりの人数で動いていた頃も含めて、彼の隣に居てこんなわけがわからない気持ちになったことなんて無い。
 少ない食料を分け合うことも、同じ水筒から水を飲むことも、ダンジョン攻略中なら当たり前だし、モンスターは当然一緒に倒すし、そこらに張り巡らされている罠だって、お互い協力しあって躱していくのが基本だ。じゃなければなんのための組んでいるのかわからない。
 なのに、彼の一挙手一投足に意識が引っ張られるような気がして、彼が自分に向かって話しかけてくれるだけでも、胸がざわついて切なくなるような不思議な気持ちになる。
「うーん……」
 人の額にでかい手を押し当てながら相手が唸る。こちらは彼の手が額に触れているというそれだけで、ドクンと鼓動が跳ねて、元々いささかぼんやりしていた頭に、更に血がのぼる感覚を自覚していた。
「顔赤い割に、熱ありそうって感じではねぇんだなぁ」
 よくわからんと言いながら額の手が外れて、長身の体が屈んで相手の顔が近づいてくる。
「ひょぇっ」
 おでこ同士がぶつかって、慌てて一歩を下がろうとしてよろめけば、おっとあぶねの呟きと共に背を支えられてしまう。それを、抱きとめられたと認識するあたり、やっぱり何かがオカシイと思うし、抱きとめられたからなんだってんだと頭では思えるのに、胸がきゅうきゅうと締め付けられる気がする。
「んー……で、お前の実感としてどうなんだよ。体調悪ぃの?」
「いやだから、最初っから体調は別に悪くないんだって。ただ、なんつーか、お前に、必要以上にひたすらトキメク」
「なんかの罠に引っかかった記憶、ねえよな?」
「うん、ないね。得体の知れないアイテムも拾ってない」
「でも症状的に魔法か呪いかってとこじゃねぇの?」
「んな症状の魔法も呪いも聞いたこと無いんだけど」
「世の中にはまだまだ俺らの知らんことはいっぱいあるだろ。あと、新しく作られたものって可能性もあるし。とすると、得体の知れない症状放置しとくのもマズいよな」
 面倒だけど一回帰るかという提案に待ったをかける。
「俺がお前にトキメイてたら気が散って戦えない、ってなら諦めるけど、そうじゃないならもーちょい進んじまおうぜ」
「お前こそ、いちいち俺にトキメイてたらきつくねぇの?」
「違和感はめちゃくちゃあるけど、まぁ別に大丈夫だとは思う」
 街に戻ってなんらかの対処をしてもう一度ここまで戻ってくる、ということを考えた時の時間的ロスも金銭的ロスもそれなりにでかい。利益重視の少数精鋭二人旅なのだから、引き時を間違ってはいけない。命の危険はなさそうだし、この症状の様子見かねてもう少し先へ進んでみたいと思った。
 症状の軽さというかアホらしさに、油断していたのだと思う。結局、その後も些細なことでトキメキまくった結果、相手の方がさすがにもう耐えきれないと言い出して、そのダンジョンを出ることになった。
 どうやら呪いだったそれは、街へ戻って解呪屋に駆け込めばあっという間に払ってもらえたけれど、問題はその後だ。
「お前、もっかいあの呪いに掛かるか、俺に惚れるかしろよ」
「バカジャネーノ」
 呪いのせいで意識されまくっていた相手が、彼にトキメキまくっていた時の姿に、どうやら相当絆されてしまったらしい。
 呪いでトキメキまくってたから、ダンジョンの中という劣悪環境で手を出されてもあの時は普通に嬉しかったんだけれど、呪いが解けた今となっては、なんてバカなことをしたんだろうの一言に尽きる。
 相手側まで引っ張るような強力な呪いではなかったから、こちらだけ気持ちが冷めたのは正直かわいそうだと思わなくもないけれど。
「バカで結構。頼むからもっかいヤラせて。すげー良かったんだって、お前の体」
 いや、かわいそうとか全然嘘だった。
「お前が、もう耐えきれないっつって戻ってきたんだろ。今更だ今更」
 こんなことを言い出すのなら、あのままトキメカせて置けばよかったのに。
「しょーがねぇだろーが。お前が掛かった何かに引きずられてお前が可愛いのか、あの時は俺自身の感情に全く自信持てなかったんだよ。あの呪いが俺の感情にまで左右してないのはわかったから、俺に惚れるの無理ならもっかい呪われろ」
 でもって可愛がらせろと本気な顔で言われて、トクンと心臓が跳ねてしまったことを、いつまで隠し通せるだろうか。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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昔と違うくすぐり合戦

 自分は脇が、幼稚園からの付き合いのそいつは足の裏が特に弱くて、昔から時々、何かの拍子にくすぐり合戦のような事は起きていた。互いにゲラゲラ笑いあうと、喧嘩だったり不機嫌だったりが、なんとも些細なものに思えてどうでも良くなる感じがするからだ。
 けれど中学に入学以降はそんな戯れはグッと減った。相手の体の成長が早くて、体格差が出来てしまったせいだ。
 力で勝てない圧倒的な不利さに、自分から手を出すことは当然無くなったし、押さえ込まれて泣くほど笑わされるのが数回あって本気で怒ったら、相手からも手を出されることがなくなった。
 しかしとうとう自分にも成長期が来た。ぐんぐんと背が伸び、既に殆ど成長の終わっている相手との身長差が、目に見えて縮んでいくのは嬉しくてたまらない。
 嬉しいついでに、相手の部屋に上がり込んで一緒に借りてきた映画を見ている時、隣で胡座をかいて座る相手の足の裏を指先でツツツとなぞってやった。ビクッと大きく体を跳ねて、驚いた顔で勢いよくこちらに振り向いた相手に、ひひっと笑ってみせる。少しムッとした顔で相手の指先が脇腹を突いて、やっぱりツツッとその指先が脇を撫で下ろしていく。
 ゾワゾワっと肌が粟立って、身を竦めながらも、やっぱりひひっと笑いが溢れた。後はもう、懐かしむみたいに互いに相手の弱い場所を狙ってくすぐり合う。
 しかしやはり体の小さかった子供の頃とは違う。ぎゃはぎゃはゲラゲラ全身で笑って、部屋をのたうち回るようなスペースはもうないのだ。バタバタと暴れれば部屋のアチコチに体を打ってしまう。
「あいたっ、ちょ、ひゃっ、待っ、ひゃうっ、おいぃっっ」
 早々に懐かしさのあまり自分から仕掛けたことを後悔し、相手をくすぐる手を緩めて待ったを掛けたのに、相手の手は容赦がなく、こちらの脇を揉むのを止めない。
「ば、っか、も、あふぁ、や、アハっ」
 バカもう止めろと訴えたいのに、まともに言葉なんて出せないし、体格差はかなり縮んだもののやっぱり相手の方が力は強いしでなかなか逃げ出せない。
 またぐったりするまで泣くほど笑わされるのかもと思いながら、それでも必死に身をよじれば、自分を見つめる相手の顔が目に映ってドキリとした。
 こちらもつい先ほどまでは彼をくすぐりまくって居たのだから、上気して赤らむ頬は笑ったせいだとは思う。思うけど、でもなんか、妙に色気があるというか、エロいというか。え、なんだこれ。
 その顔がゆっくりと近づいてきて、音もなく軽く口を塞がれれた後、またゆっくり顔が離れていく。それをぼんやり眺めながら、あ、くすぐり終わってる、という事に気付いて大きく安堵の息を吐いた。
「お前さぁ」
「あ、うん、何?」
「何、じゃなくて。つか、今、何されたか理解出来てる?」
 キスしたんだけど、と言われて、ああ、あれはキスされたのかと理解した途端、ボッと顔が熱くなる気がした。
「なななな、なんで?」
「反応おっそ!」
 つーかさーと呆れた声音の相手が、ぽすんともたれ掛かってくる。
「お前がひゃんひゃん可愛く喘ぐから勃った」
「喘いでねぇよ」
「後お前、自分で気付いてないかもだけど、お前も勃ってっから。ちんぽおっ勃ててひゃんひゃん喘いでクネクネされんの目の前にして、勃起すんなってのは無理」
「はあああああ??」
 何を言っているんだと盛大に驚けば、無言のまま伸びてきた手に、ふにっと股間を揉まれてしまう。
「ひゃぅんっ」
「ほら、今、ぜったい、ひゃんて言ったろ」
 エロ過ぎなんだよと不貞腐れたように言いながら、股間をグニグニ遠慮なく揉みだす手のがよっぽどエロいと思った。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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雨が降ってる間だけ

 ふと隣に気配を感じて集中が途切れる。気配に向かって振り向けば、長めの髪をひと結びに後ろに垂らした浴衣姿の青年が、そわそわもじもじ落ち着きのない様子でこちらを窺っていた。
「ああ、雨、降り出したんだね」
 コクンと頷く彼に、じゃあ寝室に行こうかと言って立ち上がる。予報では、降り出したらしばらく強めの雨が続くようだから、前回みたいに途中でお預けなんてことにはならないだろう。
 おとなしく数歩後ろをついてくる彼を寝室に招き入れ、ベッドの上に押し倒せば、先程よりも更に落ち着きをなくした男が、期待に顔を赤く染めている。
「雨が降るの、待ち遠しかった?」
 可愛いなぁと思いながら赤くなった頬をゆるりと撫でてやれば、やっぱりコクリと頭が縦に揺れた。
「前回、イキそびれたまま雨上がったもんな。今回は雨長引きそうだし、いっぱい気持ちよくなろうな」
 告げれば嬉しそうに笑って、早くと言わんばかりに両腕が首に回される。引かれるまま顔を寄せて、初っ端から相手の口内を貪るみたいな深いキスを仕掛けていく。
 慣れた様子で絡められる相手の舌を吸い上げながら、浴衣の合わせを広げて露出させた肌に手を這わした。弄り回した胸の突起が硬さを増したら、指先で摘んで押しつぶすように転がしてやる。
「んんぅっ……」
 ビクビクと体を震わせ、苦しげに、けれど甘ったるく、鼻に掛かった息が口端から漏れた。彼の体はすっかり自分に慣らされきっている。
 血走った目でこちらを睨み、部屋の中の物をあれこれ投げつけてきていた男が、まさかこんな変貌を遂げるとは思わなかったが、彼は長年抱えている何かが癒やされているようだし、こちらも充分に楽しんでいるし、ヤバイと噂の格安物件を問題なく利用できているしで、いい事づくしだと思う。
 つまり彼は、人の形をしているが、いわゆるこの家に憑いた、人ではない何かだった。言葉は通じるし会話も出来なくはないが、彼は彼自身のことを語らないので、幽霊のたぐいなのか妖怪と呼ばれるようなものなのか今ひとつわからない。
 ポルターガイスト現象の頻繁に起こる格安の一軒家を借りたのは、仕事柄金があまりなかったのと広めの作業スペースが欲しかったからだ。
 舐めて掛かっていたと後悔するのは早かった。なんせ、皿でも飛ぶのかと思っていたら、狙ったように仕事中に仕事道具ばかりが舞った。
 相手はこちらが心底苦痛に思う嫌がらせを心得ていると思ったが、いかんせん、引っ越しにも金が掛かるし、同じ規模の別の家を借り続けられる財力だって無い。
 そんなわけで、とある雨の日、仕事場で仕事道具をアチコチに移動させている不機嫌で不健康そうな和装の男を見つけた瞬間に、何だお前ふざけんなと喧嘩を売っていた。その姿を見た瞬間から、相手が人でないことも、ポルターガイストを起こしているのがコイツだともわかっていたが、得体の知れないものへの恐怖はなかった。和装だったり髪が長かったりはあるものの、見た目はごくごく普通の人の姿をしていたからかもしれない。
 まさか見えていると思わなかったらしい相手は心底驚いて、それから手の中のものをこちらへ投げつけてきた。額の端をかすめていったそれに、こちらの怒りのボルテージは上がっていったし、触発されるように相手もどんどんと険しい顔付きになった。
 手当たり次第、手に触れたものをこちらに向かって投げてくる相手に、飛んでくるものを避けたり払ったりしながら近づいていったのだが、だんだん怯えたような表情になっていくのが印象的ではあった。
 相手に触れられるほど近づいた後は取っ組み合いへと発展したが、なんというか、相手は思いの外非力だった。仕事場の床に押さえ込んで、仕事道具に二度と触るなと脅せば、なんだか透けるみたいに青い顔をして必死にイヤイヤと首を振っていた。なぜかそれに劣情を催し、気づけば男を犯していたのだが、さんざん仕事の邪魔をされたという思いがあったからか、相手が泣いて嫌がるほどに、胸がスッとするようだった。
 数度相手の中に射精したところで、色々と冷静になり、さすがにやり過ぎたと身を離す。息も絶え絶えに横たわる体は、人ならざるものとわかっていても、罪悪感が芽生える程度に人とそう変わらなかった。つまり、見知らぬ男をいきなり犯しぬいたような気持ちになって、内心慌てながら洗面所へ向かって走ったのだが、タオルやらを持って戻った時には彼の姿は消えていた。
 それからパタリと仕事道具が舞うような現象がなくなり、なんだかやらかした感はあるが一安心と思っていたのだが、代わりとばかりに何かの気配を感じるようになった。見えないが、彼がそばにいる。見張られている。そんな日々になんとも居心地の悪い気分を味わいながらも、やっぱり引っ越しはできずに居たら、ある日またふと彼の姿が目に入った。手を伸ばしたら普通に触れたのだが、触れられた彼はこちらに見えていることに気づいていなかったのか、やはり相当驚いた顔をした。その後、こちらの手を振り払って彼は逃げた。
 雨が降ると彼が見える、と気づくまでにも彼との攻防は色々とあったが、初回に犯したことをほぼ土下座で謝り、お詫びに優しくさせて欲しいと頼み込んでどうにか再度彼に触れるチャンスを手に入れた。その頃にはもうすっかり情がわいていたから、言葉通り思いっきりその体を甘やかしてやったのだが、結果的にはそれで彼に懐かれた。のだと思う。
 それ以来、雨が降ったら彼を抱いている。たまに最中に雨が上がってしまうアクシデントも起こるが、彼との関係は概ね良好だと思う。
「ぁ、っぁ、ぁん」
 控えめながらも連続的に気持ち良さげな声が漏れている。
「ここ、気持ちぃ?」
 聞けば素直に首が縦に揺れた。聞き漏らしそうなほど小さな声ではあるが、きもちぃと教えてもくれる。抱くほどに彼は可愛くなる。
 だんだんと仕事が軌道に乗り始め、多少金銭的な余裕も出てきたのだけれど、この格安物件生活を手放す気にはなれそうにない。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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