兄が俺に抱かれたいのかも知れない

 両親共働きで一番先に帰宅する自分が、帰宅時に郵便物を確認することになっている。両親宛のものやチラシ類はダイニングのテーブルに、兄宛のものは兄の部屋の机の上に、自分宛てはもちろん自室に持ち帰るのだが、兄宛のDMを届けた時にふと、兄の勉強机の棚に並んだ参考書の中に漫画本が紛れていることに気づいた。しかもなぜか背表紙が見えないように前後ろに突っ込まれている。
 なんだこれ、と思った時にはそれを引っ張り出していた。
「うわっ」
 肌色の多い表紙に、あ、これ、エロ本隠してたのかということに気づいて慌てたが、すぐに違和感に気づいてマジマジとその表紙を見つめてしまう。
 あれ、これ、もしかしなくても男同士なんじゃ……?
 うわーうわーと思いながらも、手は勝手に表紙を捲り始めてしまう。そして当然の流れとして、そのままそれを読み始めてしまった。しかもしっかり椅子に腰を下ろして。
 読んでいる間にも、脳内にはうわーとかひえーとかの言葉にならない驚きが渦巻いていて、読み終えた後は心臓がバクバクと痛いくらいに脈を打つ。
 知らなかった。兄にこんな趣味があったなんて。というか、他にも隠してたりするのかな?
 部屋を漁ったなんて知られたら絶対に怒られるけど、好奇心には勝てなかった。そんなわけで定番のベッドの下から、数冊新たに発見した漫画を兄の勉強机に積み上げ、黙々と読み耽る。
 やっぱりうわーひえーうわーと思いながらページを捲ってどれくらいの時間が過ぎただろう。
「おい、何してる」
 カチャッとドアノブを捻る音、ドアが開く気配、そして兄の慌てた声が続いた。振り向き兄を見つめる顔は、間違いなく赤くなっているだろう。羞恥でってよりは、興奮で。
「兄ちゃんさ、これオカズに抜いてんの?」
 手にしたままの漫画を掲げれば、多分羞恥で顔を赤くしている兄が、怒ったみたいな険しい顔でドスドスと荒い足取りで近づいてきて、手の中からそれを取り上げてしまう。バンッと音が立つくらい勢いよく漫画を閉じて、それをベッドの方に向かって放り投げる。しかもその後も無言で、机の上に積み上げた漫画を、取り敢えずみたいな感じにベッドへ向かって全部投げてしまう。
 動揺しすぎ。いや、気持ちはわかるけど。
 弟に兄弟ものの、しかもことごとく兄が弟に抱かれてるような描写が入ったエロ本見つかって読まれるってどんな気分? って聞きたい気持ちをどうにか堪える。だって他に聞きたいことがたくさんある。
「ゲイなの?」
「ち、がう……」
「んじゃ腐男子とかいうやつ?」
「は? お前、何言って?」
「あれ? 違った? BLって言うんだろ、ああいう漫画。で、それを楽しむ女子が腐女子で男なら腐男子」
「いや、違ってない、けど。えっ、お前、気持ち悪くねぇの?」
「ビックリはしたけど、気持ち悪かったら部屋漁ってまでして何冊も読まないって」
「いやでも、だって、」
「んでさ、ゲイじゃないなら、あれはそういう漫画のいちジャンルとして楽しんでます、みたいな感じなの?」
「そ……だよ」
 困ったように視線が泳ぐから、これはきっと期待していい。
「なーんだ。残念」
「残念?」
「俺、読んでて結構興奮したけど。兄ちゃんが、あの漫画みたいなこと、俺にされたいのかと思って」
 椅子に座ったままなので、見上げる兄の既に赤い顔が、更にぶわっと赤味を増していく。
「ね、正直にいいなよ。そしたら兄さんのこと、俺がうんと可愛がってあげる」
 さっき読んでた漫画の中のセリフを投げかければ、兄はすぐに気づいたようだった。
「おまっ、それっ」
「あはは。さすがにすぐわかるね。読み込んでるね」
「からかうなよっ。つかもうお前、部屋出てけ。でもって忘れろ。全部忘れろ」
「いやですー。てか、からかってないし」
 もう一度正直にいいなと促せば、うっと言葉に詰まった後、なぜかゲンコツを落とされた。
「暴力反対!」
「お前が悪いっ」
「なんでよ」
「勝手に部屋漁んなバカヤロウ」
「漁ってすぐ出てくるとこに置いとくとか、俺に見つけて欲しかったってことじゃないの」
「違うったら違うっ」
「えーもー漫画と違って全然すんなりいなかいじゃん」
「当たり前だろ。あれはフィクション」
「でもさ、兄ちゃん気づいてる?」
「何を?」
 そんなの、漫画みたいなことをされたいのかという質問に、顔を赤らめただけで否定はしてないってことをだ。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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メルフォお返事

おかえりメッセージを下さったMさま、ありがとうございます(^^♪

今年の夏はめちゃくちゃ暑かったですが、やっと少し涼しくなって、ほんとホッとしますねぇ。
旅先に台風がかすったため、数時間のホテル待機(ホテルが揺れました)とかありましたが、無事に帰宅してしまえばそれもまた思い出の一つです。笑。

「ただいまって言い続けたい」も読んで下さってありがとうございます。
攻めの子がどんな仕事につくかにもよりますが、学生の間のが時間の融通ききそうだし、さっさと引っ越して今のうちにたっぷり甘やかしてあげたらいいよと思ってます(´∀`*)ウフフ

更新再開を待ってて貰えて嬉しいです。
またちまちまと隔日更新を続けていくつもりなので、よろしくおねがいします〜

 
 
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ただいまって言い続けたい

 玄関扉を開けた先は、廊下の明かりは点いていなくとも薄明るかった。短な廊下の突き当りにあるリビングへと続くドアに嵌った曇りガラスから、リビングの明かりが漏れているせいだ。
 そのドアが開いて、ますます廊下の明るさが増すと共に、お帰りなさいの弾んだ声が掛けられる。
「ただいま」
 帰宅時に家に誰かが待っててくれるってのはやっぱ幸せだなぁと思いながら、恋人までの短な距離を詰めていく。
「飯温めるので、手ぇ洗ってうがいしてきてください」
 差し出された手に仕事カバンを手渡せば、さっさとしろと急かされてしまう。なるほど。やたら弾んでいた声の理由がわかってしまった。今日は遅くなるから先に飯食っていいよって、遅くなるのが決定した瞬間に連絡は入れていたけれど、どうやら食べずに待っていてくれたらしい。
「そこはご飯にする? お風呂にする? ってヤツやってよ」
「やですよ。だって俺、腹減ってるし」
 知ってる、とは言わなかった。というよりも言う隙がなかった。先に食べずに待ってたんだから急いでと、かなり空腹らしい相手に再度急かされてしまったからだ。
「えー、じゃあ、せめてお帰りのちゅー」
 ねだれば一瞬うっと詰まったものの、すぐさま頬にちゅっと小さなリップ音が立った。口にしてくれないのはわかっていたけど、それでも不満ですと言いたげに口先を少しばかり尖らせれば、相手は困った人だなと言いたげに苦笑する。
「口はうがいしてからです」
 ほら行ってらっしゃいの言葉とともに、肩を掴まれ強引に回れ右させられたかと思うと、洗面所へ向けて背中押し出されてしまう。仕方がないので数歩分廊下を戻って、ハンドソープを使ってしっかり手を洗った後、うがいも念入りに数回繰り返す。
 部屋に戻って、本日の夕飯をテーブルへと運んでいる途中の相手から皿を奪うついでに唇を突き出せば、今度こそおかえりの言葉とともに唇にキスが落ちた。
 満足したので奪い取った皿をテーブルに運び、そのまま自分は席に着いて残りの準備は相手に丸投げしたけれど、相手は文句もなくキッチンとテーブルとを往復している。さすがに今日はかなり疲れているのを察してくれているんだろう。
 
 着々と腕を上げているのがはっきりわかる彼作の夕飯を食べて、既にシャワー済みだという相手に後片付けも押し付けて風呂を使い、疲れてるけどそれは別腹的に気持ちよくなって、というか正確には気持ちよくしてもらって、現在はベッドの中で甲斐甲斐しく後始末をされながらまどろみ中だ。
「最近、随分と甘ったれになりましたよね」
 ざっくりと後始末を終えたらしく、相手もベッドに潜り込んできたから、さっそくすり寄ってくっつけば、そんな苦笑交じりの言葉とともにふわりと抱きしめられる。
「それは誰かさんが目一杯甘やかすから〜」
「知ってます? 俺の夏休み、明後日には終わるんですよ」
 年下の恋人はまだ大学生で、夏休みがとても長い。けれどそれももう終わりが近づいていた。
「知ってるからこそ、この週末は甘え尽くすつもりなんだけど」
 というか彼の夏休み最後の週末を休日出勤なんかで無駄にしたくなかったからこそ、今夜の帰りがここまで遅くなったわけなんだけど。
「ならいいですけど。大丈夫なんですか?」
「大丈夫って何が?」
「甘やかすのはいいんですけど、元の生活に戻れないとかって泣きついて来ないで下さいよ、って意味ですかね」
「えーそれはちょっと保証できない」
 夏休みの大半を半同棲的にこの家で過ごしていたから、彼に行ってきますもただいまも言えない生活に戻ったら、絶対に寂しいに決まってる。もういっそこのまま、大学もここから通えばいいのに。
「それってプロポーズですか?」
「えっ?」
「いっそ大学ここから通えって、今、言いましたよね?」
 どうやら口から言葉にして出していたらしい。
「行ってきますとか、ただいまとか、お前に言える生活、続けたいよ。って言ったら、一緒に暮らしてくれんの?」
 プロポーズしていいならもちろんしたいよ、と言ったら、照れくさそうに、本気にしていいなら引っ越しも考えますと返された。

夏休みを終えて戻ってきました。ただいまです。というわけで、更新再開しますのでまた宜しくおねがいします。

 
 
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メルフォお返事

感想を下さったMさま、満足いただけたようで本当に良かった。ホッとしてます。
ナンパされてあっさりラブホ連れ込まれちゃうような子だから、攻め側からすると不安になるほどチョロいって感じそうだなぁってイメージでした。
二人の初キスは、きっとあれこれ言いくるめられて、女の子とのキスはなかったことになって、それが彼のファーストキスってことに塗り替えられることでしょう。笑。
こちらこそ、リクエストどうもありがとうございました〜

今年の夏は毎日毎日暑いですよね。お互い、体調には気をつけましょう。
9月にはもうちょっと過ごしやすくなってることを本当に願ってます。

戻ってきた時にはまた宜しくおねがいしますね(*^_^*)

 
 
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友人の友人の友人からの恋人2(終)

1話戻る→

 どうにか彼とキスできる関係になれないかと考えた結果、彼を合コンに誘ってみた。ファーストキスを男なんかにと思っているなら、女の子相手にファーストキスを済ませてもらえばいいのだ。こっちはキスどころかセックスだって経験済みなのだから、貰えたら嬉しいだろうとは思うが、なにがなんでも彼のファーストキスが欲しいと思っているわけじゃない。
 ただ、女の子の扱いを学んだところで実践と行こう。という言葉をまるっと信じて、あっさり参加を了承したあたり、本当にチョロくて不安になる。こちらの思惑通りにすんなり進むから楽でいいんだけど。
 そしてベタだけれども仕込み有りの王様ゲームをして、女の子相手のキスを経験してもらった。ファーストキスに夢見てるらしいからちょっと可愛そうかなとは思ったけれど、女の子とってのは叶えてあげたのだから許して欲しい。
 なお、照れまくって動揺して挙動不審になってた姿はたいへん可愛らしかった。けれど、ゲーム終了後、逃げるようにトイレに立った彼の顔はなんだか泣きそうだ。
 慌てて追いかけたトイレで、彼はゴシゴシと唇を擦り洗っていたから、さすがに罪悪感で胸が痛む。
「えっと、ごめん、ね」
「なんで謝るの」
「合コン連れてきたの俺だし、王様ゲーム提案したのも俺だし、あの命令した王様は俺じゃないけど、一緒になって囃し立てはしたから」
 そしてこれは言えないけど、そのキスを仕組んだのが自分だからだ。
「こんなのでもなきゃ、女の子とキスできる機会なんてないんだから、むしろラッキーだったよ」
 どうにか笑ってみせる顔が痛々しくて、ますます胸が締め付けられる。いやこれホントに、結構失敗しかもしれない。こんなショックを与えるつもりじゃなかった。
「本気でそう思ってないでしょ。ファーストキス、好きな子としたかったよね。ごめんね。止められなくて」
 言えば瞳にぶわっと涙が盛り上がる。ああ、とうとう泣かせてしまった。
「悪いのお前じゃない。自業自得、なんだ」
 全く意味がわからない。俯き涙を拭う相手に、どういう意味かと尋ねてしまうのは仕方がない。
「キス、好きな子と、しとけばよかった」
「は? え? 好きな子いたの?」
 初耳なんだけどと続いた声は、嫉妬と焦燥にまみれて、自分でも驚くくらい低く重く響いてしまった。
「ファーストキス、もったいぶらずに、さっさとお前にあげとけば、良かった」
「はぁああ? えっ、ちょっ、俺ぇ!?」
 あまりの衝撃に素っ頓狂な声を上げてしまったが、相手は俯いたまま肯定を示すように頷いている。
 ああこれ、本当に、失敗した。いつから彼の気持ちは自分に向かって居たんだろう。それに気付けず、貰えたかも知れない彼のファーストキスを、自らそこらの女に渡してしまった。あまりの自業自得さに、一緒に泣きたいくらいだ。
「ねぇそれ、本気にするけど。俺と、恋人になってくれるの?」
 確かめるように告げた言葉にもやはり頷かれたから、少し開いていた距離を詰めて相手の手を取った。
「なら、一緒に抜け出しちゃおうか」
 さすがにこんなトイレで彼との初キスを済ます気はない。というか王様ゲームのキスなんてノーカンってことに出来そうなくらい、ちょっとロマンチックな演出決めつつキスしたい。
 どこに連れていけば可能かと必死で脳内フル回転しながらも引いた腕に、彼はおとなしくついてくる。チラリと伺う背後の彼は、泣いた目も目元も頬も、耳までもが赤い。
 ようやく捕まえた恋人が、可愛すぎてたまらない。

 
 
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夏休みのお知らせとメルフォお返事(雑記)

三周年のときの雑記に休憩入れるかダラダラ書き続けるかは不明と書きましたが、昨年は長い休みなく頑張ったし、今年の夏は猛暑日続きらしいし、ここらで一度お休み入れようかなと思います。
前回と同じくらい休もうと思っているのと、9月頭に旅行の予定を既に立てているのとで、休み明けの再開は9月10日を予定してます。
そんなわけで、明日の更新(9時半に予約投稿済み)後はしばらく更新がありませんが、再開したらまたよろしくおねがいします〜

そしてメルフォから感想を下さったMさま。
さっそく読んで下さって、しかも感想までありがとうございます!
続きか相手側の視点の話というリクエストだったので、相手視点での続きとなりました。
楽しんでもらえてて良かった。嬉しいです(^^♪

 
 
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