私生活がちょっとバタバタしてしまってて、頑張ってみたけど現在時刻13時半を越えたので、本日の更新は明日に回させてもらいます。
本当にすみません。
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私生活がちょっとバタバタしてしまってて、頑張ってみたけど現在時刻13時半を越えたので、本日の更新は明日に回させてもらいます。
本当にすみません。
フッ、フッ、とせわしなく息を吐く。ギュッと閉じた瞼からは時折涙があふれてしまう。それらは自分の手でグッと顔に押し付けているタオルが吸い込んでくれるが、タオルで口を塞いで息を詰めすぎれば、そうなっている原因とも言える男が背後から、呼吸はしてと促してくる。
ほぼうつ伏せた状態で、腰が浮くようにと下に枕とクッションを重ねられ、尻タブを開かれて彼の目にそんな場所を晒すというだけでも、恥ずかしすぎて息なんて止まりそうなのに。晒したアナルを撫でられて、彼がちゃっかり持ち込んでたローションを塗りたくられて、揉まれて、今はもうずっぷりと指が一本埋まってしまっている。しかも、いざ指が入りそうって時に、やっぱり怖くなって本気で逃げようとしてしまったら、またガップリとしかもかなりの強さで噛まれて、痛い痛いと喚いている内に指が入ってた。
酷すぎると詰りたい気持ちはもちろんあったけれど、中に入れた指を動かすことはしないまま、こちらが落ち着くまでゴメンも好きだもたくさん繰り返されて、宥めるみたいなキスを降らされたら、結局受け入れてしまうしかない。抱いていいと言ったのは自分だし、むしろ嬉しいとも言っちゃったし、ここまできてやっぱり嫌だを本気で言ったら、今度こそ間違いなく犯される。むりやりに体を拓かれて、互いの体も心もズタボロにするような、そんなセックスをしてしまう。
抱かれたいななんて、ふわふわと彼に求められる幸せを考えて浸っていた妄想と、現実はあまりに違った。恥ずかしくて居た堪れなくて怖くて、まだそこまで痛みはないけど、違和感だけならもうとっくに耐えられないレベルに入ってる。
ただ、こちらが相手を拒否する態度や感情を出さなければ、相手もまた必死で衝動をこらえて、優しく丁寧に扱ってくれようとしているのもわかるから、どうにか耐えているって感じだった。
それに、どうしても抱きたいんだとか、体ごと俺のものにさせてとか、ゴメンを重ねる中にチラチラと混ざり込んでいる言葉がたまらなく嬉しい。好きって気持ちが良くわからないという彼の剥き出しの欲望は、こちらが欲しがるから好きって言ってくれてるだけって気持ちを、簡単にふっ飛ばしていくようだった。
自分が彼に向ける、生身のセックスを想像できないような幼く拙い好きなんかより、ドロドロな執着心を抱えた彼の好きは、あまりに大きくて情熱的でクラクラする。まぁ、やっぱりこんなに好きなんじゃないかと思っているのは自分だけで、彼は今こうして晒している欲望を、今後も恋愛的な意味も含めた好きとは別物として扱うんだろうけれど。
未知なものはどうしたって怖いし、泣くことは許されていたからそこは我慢せずにひたすら泣きまくってしまったけれど、おかげで、そろそろ挿れられそうだから一旦指抜くわと言われる頃には、涙はほとんど枯れていた。
「このまま、挿れん、の?」
泣きまくった影響か、尋ねる声はガサガサだ。
「そりゃあ……っつか、それ、どーゆー意味で聞いてんの?」
コンドームを装着している彼を直視できずに居るくせに、こんなことを言ってもいいのかなとは思ったけれど、でもやっぱり出来ればちゃんと向き合って、抱き合う形で挿れて欲しい。
「その、出来れば正常位? がいいな、って、思って」
「ああ、そういう……」
やっぱり言わないほうが良かっただろうか。何やら色々考えさせてしまっているようだ。
「あの、やっぱいい。お前の好きに抱いて欲しい、し」
「いや、いい。しよう、正常位」
体をひっくり返されて、あっさり後悔した。向き合って抱き合いたいと思った気持ちは本当でも、やっぱり彼の顔を直視できそうにない。なのに慌てて握ったままのタオルを顔に押し付けようとしたら、それもあっさり取り上げられてしまった。
「ゴメンな。すげーひでぇ顔になってる」
困ったような苦笑顔に、胸がざわざわして不安になる。
「ご、ゴメン。やっぱいい。正常位がいいとか全然嘘だった。無理。後ろから。うんそう、後ろから抱いて欲しい」
ぐっと顔ごと上半身を捻って、ひっくり返された体をまたもとのうつ伏せに戻そうとしたのに、肩を捕まれ阻止される。
「何そんな焦ってんの? てか顔逸らすなって」
「だっ、て……てか顔近い近い」
「お前が逃げるからだろ。で、何?」
さあいざ挿入って段階でこんなことで待ったをかけられているんだから、不機嫌そうな声の理由なんて聞かなくたってわかる。なんで正常位がいいなんて言っちゃったんだろう。
枯れたと思った涙がまたじわりと滲んでくるのがわかる。既にひでぇ顔だと苦笑された顔が、ますます不細工に歪んでしまう。
「ぶ、ぶさいく過ぎて、萎えたら、困る」
「は?」
「いっぱい泣いたから。顔酷いし、向き合って抱いてとか、無茶言った」
「おまっ……」
一度言葉を詰まらせた相手はその後数回深呼吸をして、それから酷く真面目な声で、かわいいよと吐き出した。
彼が自分の前で泣くのは何年ぶりだろう。恋人止めたいって持ちかけた先日だって、みっともなくグズグズ泣いていたのは自分だけで、何度か泣きそうだとか泣いてるみたいだと思うような顔は見たけれど、結局彼が本当に涙を流すことはなかった。
どうにもならない学年差に不機嫌な様子はよく見せたけれど、子供の癇癪で怒って泣き叫ぶような姿を見せていたのはせいぜい小学校低学年くらいまでな気がする。その後も時折、悔し泣きのような姿は見てきたけれど、辛いとか苦しいとか悲しいとか、そんな感情が漏れてくるような泣き姿は見た記憶がない。こんな風に泣く彼を、今日、初めて知った。
あの日はゴメンって言われても、放さないからなって宣言されてるみたいな感じで、縋られてるような気にはならなかったけれど、これは確かに、放さないでくれと必死に縋られているようにしか感じない。
じゃあ彼は、こんな風に何度もゴメンと繰り返しこちらをがんじがらめに捕まえながら、次の手とやらを考えているんだろうか?
だったらいいな。なんて思っている自分がおかしくて、ついついクフッと笑いを漏らしてしまったら、腕の中の体がビクついた。なんだかますます愉快な気分になって、クスクスと笑い続けてしまう。
「お゛い゛っ」
耳の横で唸るように響いた不機嫌丸出しの酷い声に、また少し笑ってしまった。
「お前さ、こういうの、もっと見せなよ」
「な゛、んでっ」
「お前が泣いて謝りながら、お願いだから放さないでって縋られるの、悪くない。執着されてるってより、必要とされてるみたいでちょっと嬉しい。で、ゴメンの言葉で俺を縛り付けて、その間にお前は次のどんな手考えてんの?」
「おまえっ、ほんっと、もう、クッソ悔しいぃぃっっ」
抱きしめる腕を跳ね除けるようにガバリと起き上がった相手は、袖口で涙をゴシゴシ拭った後、すっかり強気な顔で仕切り直すと宣言した。泣いた目だけは真っ赤なままだったけれど。
「仕切り直すって、何を?」
「セックス」
「は?」
「まさかお前があんなネタで抜いてるとか思ってなかったってのもあるけど、お前に噛み付くの止められない自分にもビックリした。から、優しくする努力も甘やかす努力もするし、お前にいっぱい好きって言って色んなとこキスして抱きしめるから、笑わすの無理で泣かすと思うけど、抱かせて」
「え、ちょ、なんで」
今までこちらがして欲しいこと優先みたいな態度を一切崩さず、求められてる気がちっともしないと思わせてきた彼の口から、まさか抱かせてなんて言葉が出てくるとは思わず驚いた。
「だから、お前に噛み付くの止められなかったから」
「なぁ、お前が俺に噛み付く理由って、結局なんだったわけ? お前、妄想の中でも俺に噛み付いてんの? で、噛みつかれる俺はそれに感じたりしてたの?」
もっと強く噛んで泣かしてもいいよって言ってああなったんだから、きっと妄想の中でも泣かされてはいないだろう。
「噛み付いてるし感じてるけど」
「マジかよ。ムリだろ、普通に考えて」
「ただの妄想なんで」
「だよな。つか、だったら痛がってるだけなんだからヤメロ……って、ああ、止められないのか……」
優しいのと甘ったるいのの中に噛まれて痛いのが混ざるの、ホント気が散るどころじゃないから、出来れば止めて欲しいんだけど。でも、止められないならそれも受け入れてくしかないのかもしれない。慣れるようなものかはわからないけど、彼は自分を噛みたいんだって思えば、まぁ耐えられなくもないだろう。
なんてこちらは噛まれる前提での覚悟を固めようとしているのに、相手はだから抱かせてって言ってんだろと言ってくる。そういうのは、もう少しわかりやすく理由も一緒に言って欲しい。
「俺を抱いたら、噛まなくなるようなもんなの?」
「多分」
「なんで?」
「お前に優しくしたいし感じさせたいし気持ち良くなって欲しいのに、ぜんぜんそうならないどころかお前どんどん冷めてくし、お前がもう止めて欲しいって思ってるから、だったらこのまま犯してやろうかって思っちまうことがあって、まぁ、つまり、俺は思ったよりずっとお前を抱きたいみたいだった」
「待て待て待て。サラッと犯すとか言ったぞ、今」
「な、ホント、噛むだけで済んで良かったよな」
「なんだそれっ」
この後も彼との微妙に噛み合わない会話を続けた結果というか、多分あまりはっきりと言いたくなかったらしい彼の気持ちを根気よく引きずり出した結果、ようやく、彼があんなにガブガブやってたのは犯したいって衝動を堪えるためだったことと、噛むだけで済まずに本気で襲ってしまう前に抱かせて欲しいって話なんだと理解した。
さっきみたいな、痛い痛いと喚いてしまうほどの強さで噛まれることはなかったけれど、服を脱がされていく間、相手の唇はずっと剥き出した肌のどこかに触れていたし、抵抗しようとしたり逃げようとするたびに歯を立ててきた。本気で抵抗すれば、本気で逃げれば、容赦なく相手も本気で噛み付いてくるんだろう。
そのくせ、いざ全ての服を剥ぎ取られた後は、アチコチに優しいキスを降らされる。唇を肌の上から離している時には、何度も好きだと繰り返してくれる。甘やかに名前を呼んでくれる。
そんなことをされたら恥ずかしいばかりかと思っていたけれど、実際は羞恥よりも困惑が勝っていた。だって時折やっぱり、優しく触れるだけの唇が開かれて肌に歯が当たって、こちらが痛いと漏らすまで噛まれてしまう。
ちょっとでも痛そうな声を漏らせばすぐに開放してくれるけれど、優しいキスや好きをくれる相手と、噛み付いてくる相手とのギャップが激しすぎた。
噛まれるのがなくたって、恥ずかしいばかりできっとキモチイイなんて思えないと思っていたのに、優しい部分にだけ集中して気持ちよくなるなんて到底無理だ。優しくされながら噛まれるなんていう、全くわけがわからない状況に興奮出来るわけもない。自分で触ってないし、相手も触れてこないペニスは、もうすっかり萎えてしまった。
「痛……った」
声を上げればやっぱりすぐに顎の力は弱まって、宥めるみたいに舌が這う。ただ、噛まれる頻度や強度が僅かにだけど少しずつ上がっていってるのは、きっと気のせいじゃないはずだ。
「好きだ」
熱い吐息と一緒に吐き出される言葉には、どんな想いが篭っているんだろう。本当にこちらを喜ばせたい必死さで繰り返してくれているのか、なんだかもうわからない。
すでに惰性となって繰り返しているだけかもと疑う気持ちもあるし、もっと別の何かかもと思う気持ちもある。もっと別の何かは、とても漠然としていて検討もつかないのに。
本気で抵抗して止めさせようとしたら、本気で噛みつかれて最悪流血沙汰になるんだろうなという妙な確信だけはあったから、内心どれだけ困惑してても黙って好きにさせてしまっているけれど、本当にそれでいいのかはわからない。というか多分ダメな気配しかない。
彼がしたいという、泣かすかもしれない酷いことって、なんなんだろう?
本当はもっと強く噛み付いて、痛い痛いと泣かせたいのが本心なら、いっそやってしまえばいいのに。
「ぃっ……」
また、噛まれた。今は仰向けに押し倒されていて、腹の方から上に向かってキスを落としてきていた相手が、ここで一旦終了とでも言うみたいに噛んだのは右肩だった。宥めるように舐められて、そして繰り返される好きの言葉。けれど今回はそのあとゴメンと続いてドキッとする。
「え……」
「好きだよ。こんなに好きで、こんな好きしかなくて、本当に、ゴメン」
顔の真横から告げられる声は変わらず甘やかだけれど、言葉の内容と一致しない甘さに胸が騒いだ。どんな顔をしているか知りたくても、彼自身の頭が邪魔で振り向けない。
焦りながらも必死で考えた。何を返すのが正解なのか。彼が欲しい言葉が何か。
「いいよ」
声に出したら、自分自身、それでいいって気持ちになった。本気で噛みつかれるのが嫌だから抵抗しないんじゃなくて、酷い真似をされてもいいと思っているから抵抗しないんだと、曖昧だった自分自身の気持ちが定まっていく。
「俺も、お前が好きだよ。だからいい。お前の好きなように触ってって、俺が言ったんだよ。もっと強く噛みたいなら、痛いって言っても止めなくていいよ。だって痛くて泣いちゃってもいいんだろ? お前が俺を泣かせたいなら、泣かされても、いい。お前が俺にしたいこと、知りたい」
「違う。ゴメン、違う。優しくしたいし甘やかしたい。本当にそう、思ってる」
「うん」
もちろん彼のそんな気持ちを、嘘だなんて思っちゃいない。
「泣かせたくない。笑わせたいんだ。ホントに」
「うん」
「ゴメン。わかんない。出来ない。こんなに出来ないなんて、思ってなかった。ほんっと、キモチワルイ」
「お前……」
泣かせるかもとは聞いてても、泣くかもなんて話は聞いてないぞと思いながら、震えている体に腕を回して抱きしめてやった。
ベッドの上に座る彼の開かれた足の間に収まって、後ろからそっと抱きしめられている。服は脱いで居ないけれど、ズボンのフロントは全開で、取り出したペニスを自分で握って扱いていた。
耳元で繰り返される好きだの言葉も、呼ばれる自分の名前も、とても柔らかで甘い。
どんなことを想像しながら抜いているのか告げた最初はやっぱり酷く驚かれた上に、彼自身のエロ妄想とのあまりの差にか、だいぶ気まずそうな顔もされたけれど、それでも相手はすぐにわかったと頷いた。あっさりと、抱きしめて、好きだって言って、体中にキスを落としてくれると言った。
それを、抱きしめて好きって言ってくれるだけがいいと頼んだのはこちらだ。彼の前に裸体を晒して、隅々まで唇を落とされるなんてことが現実になったら、ちょっと耐えられる自信がなかった。絶対に恥ずかしいばっかりで、気持ち良くなれると思えなかった。
ただ、抱きしめられて好きって言われるだけでも、結果的には恥ずかしいばかりで、とても妄想と同じように気持ち良く射精することなんて出来ない。というか、実際に触れられて初めて、彼の手でイカされるという妄想をまるでしていなかった事に気づいた。
普段頭の中で繰り広げている通りのことをしてくれる気だった相手は、だから本当に抱きしめて好きだと繰り返すだけのことしかしてくれない。というのは嘘で、彼は最初、当たり前みたいに、抱きしめて好きだって言いながら握って扱いて抜いてくれる気でいた。だから、性器を彼に握られるなんて妄想をしたことがないと知った時には、やっぱり相当驚いていた。
つまりバカ正直に告げてしまったせいで、彼の腕に抱かれながら、自分で自身を慰める羽目になっている。しかも時折背後から覗きこまれてる気配がするし、耳元で響く声はびっくりするほど甘ったるいし、やたら恥ずかしくてちっとも集中できない。萎えないくせに、イケもしない。
「ね、も、やめたい」
「なんで?」
「だってムリ。イケそうにない」
「でも勃ってんじゃん」
「そうは言っても、ぁ、ひゃぅっ! ちょっ、何?」
首筋に何かが触れて、一気にゾワッとしたものが体を駆け巡った。
「んー……」
「ちょ、えっ、やっ、やんっ、なに、なにして」
何をされているかはさすがにすぐにわかったけれど、背後から抱きしめる腕にけっこうな力が込められていて、簡単に抜け出せないまま上ずったみたいな声を漏らす。というか数年前に抜かれて以降相手の方が背が高いとは言え、身長にはそこまで差がないのに、こんな簡単に腕の中に閉じ込められると思ってなかったから、内心は大いに慌てていた。
「ぁ、あっ、ぁうっ、ひっ、んんっ」
さすがに居た堪れなくなって、必死で口を閉じながら力いっぱい前傾すれば、ようやく首筋を舐めたり柔く噛んだりしていた相手の気配が遠ざかる。
「やっぱお前脱げよ」
「は? なんで。やだよ」
「取り敢えず上だけでいいから。首と背中にキス落とすの追加してみよ。あ、耳とかもキスされたい?」
「やだってば。てか俺はもーやめよって言ってんだけど」
「でもイケないのは刺激足りてないからだろ?」
「違うっ!」
恥ずかしくて集中できないのが理由だと言えば、相手は不満そうな声を上げた。
「えーっ」
しかもその後、また首筋に唇が触れる感触がする。
「おまっ、もっ、やだって言って、ぁ、あ? ちょ、えっ? いっ、痛っ、イタイイタイイタイ」
痛いと喚けば歯を立てるのは止めてもらえたが、ジンジンとした痛みは残っていたし、肌に残った歯型を確かめてでもいるように、舌が何度も行き来した。
「悪い、少し跡付いた」
多少は本気で申し訳ないと思っていそうな声だけれど、それでもそこまで悪い事をしたなんて思ってなさそうだ。
「は? 少し?」
「少しだよ。痣になるほど強く噛んでない。でも、ゴメンね?」
「かなり痛かったんだけど。つうかそれは許せって意味のゴメンなの? こんな酷いことしたけど捨てないでって縋りたい意味のゴメンなの?」
「どっちも。それと、ちょっとこの後もっと酷いことするかもだけど許して、って意味もある、かも?」
「ん? 何するって?」
「さすがにここで止めるの無理だから、もし泣かせちゃったら本当にゴメン」
大好きだよと囁く声はとても甘い。そうして欲しいと言ったからくれてるだけの言葉だとしても、こちらを喜ばせたい彼の本気が篭っているのは伝わってくるから、嬉しくてたまらない気持ちになる。なのに、まだ微かに痛みの残る場所へ再度唇を落とされれば、先程の痛みを思い出してしまう。嬉しさよりも恐怖が勝って、身が竦んで震えてしまう。
大学はとっくに春休みに突入していて、だから冬休み中になんだかんだあって付き合う事になった恋人から、バレンタインは一日デートしようって提案されたのは、当たり前に嬉しかったしチョコだってちゃんと用意した。すぐに冬休みは終わって試験期間に入ってしまったし、ちょこちょこ会ってはいたものの、デートと銘打って二人きりで出かけるのは初めてだった。
待ち合わせて映画を見て、ランチして。ところどころ恋人扱いかなって思う場面はあるものの、基本的には友人だった頃のお出かけとそう大差がない。ただ普通に楽しいところに、妙なソワソワ感が混ざり続けるのは新鮮で、なんだか面白かった。
さすがにまだチョコは渡せていないし、相手からもチョコ云々の話は一切ないけれど、でもきっと鞄の中にはちゃんとチョコが用意されているんだろうなというのはわかる。時折チラチラと不自然に視線が鞄を見つめるから、彼もどう渡そうかいつ取り出そうか迷っているのかもしれない。
というか、チラチラと鞄を見つめるたびに、だんだん相手のテンションが落ちている気がするのがめちゃくちゃ気になっていた。
午後はカラオケかボーリングか、少し移動して水族館なんてのもかなりデートっぽいねと言っていたものの、ランチセットのデザートがテーブルに乗ってもまだ午後の行き先が決まらずにいる。というか相手がイマイチはっきりしないというか、ノリが悪い。
出来れば二人きりになりたいからカラオケが嬉しいけど、でもカラオケなんてあまりにありきたりで、普段から適度に利用しているせいでデートらしさはないなと思うし、せっかくだから水族館とか行ってみたい気もしないこともない。水族館なんてもう何年も足を踏み入れてないし。
なんてことを考えながら、一部口にも出して、相手の決断を待つ。こちら任せでいいならそう言ってくるはずの相手だから、どうしようだのどれも悪くないだの言いながらもはっきりココがいいと言わない相手に、正直ちょっと焦っても居た。だって絶対おかしい。
デートしようって言われた時の、今日顔を合わせた最初の頃の、楽しみで仕方がないみたいな相手の雰囲気は、今はもう消えてしまった。
映画を見てご飯を食べただけだけど、何かやらかしてしまったのかもしれない。友人なら許せたけど、恋人と思ったら許せないとか。そういうの、ありそうな気がする。
はっきり意思が決まってるなら言ってきそうだから、午後のデートに乗り気ではないけれど、キャンセルしたいと言い切るほどではなく迷ってる結果かもしれない。
「あのさ、どうしたの?」
「どうしたって、何、が?」
またチラッと鞄を見つめる相手に掛けた声はあからさまに沈んでいて、相手は驚いた様子で慌ててこちらに視線を戻した。
「午後、出かけるのやめる?」
「えっ?」
「ここ出たらバイバイして、午後はお互い好きなことに時間使うんでもいいけど。それとも他に、どっか行きたいとこでもある?」
「あ、あ、ああ……ある、っつうか……あー」
焦り過ぎでどもり過ぎな上に、酷く気まずそうな顔をしたかと思うと、がっつり俯きながらポケットから取り出した携帯に何やら打ち込んでいる。
他に行きたいところがあったのか、とか。なんで言わないんだろう、とか。携帯持って何やってんだろう、とか。言葉には出さずに脳内でグルグル考えていれば、自分の携帯が着信を告げて小さく震えた。
送信者は目の前の相手で、届いたメッセージにサッと目を通した後、一度顔を上げて相手を見つめる。
「返事は?」
恥ずかしそうに顔を赤くしてそっぽを向きながら、ぶっきらぼうに返事を要求する相手に、小さく笑ってからいいよと返した。
「え、マジで?」
抱かせてとか抱いてとか直接的なことを送られていたら、さすがにもう少し待って欲しいと渋ったかもしれないけれど、メッセージにはラブホ入って二人きりでイチャイチャしたいと書かれていたから、こちらからしてもそれは嬉しい提案だ。
キスは何度かしていたし、その時の互いの雰囲気でその先も十分ありな関係なんだって自覚はあったものの、さすがに難しいなと思っていた。主に、場所という面で。なんせお互い実家からの通学組な上に、揃って母親は基本在宅している。
「うん、まぁ、お互い実家だとそういうとこ使うしかないよね、とは思うし」
言いながらも携帯を弄って返信を送る。ラブホに行くのは構わないけど、男同士だと断られることがあるって聞いたことがあったから、その辺大丈夫なのってのを確かめておきたかった。
もし全く想定していないで言っているなら、この店を出る前に、男同士でも入れそうなホテルを検索した方がいいだろう。
「あー……うん、それは調べてあるから、大丈夫。なはず」
「わかった。じゃあ、そろそろここ会計しよっか」
「あ、待って」
再度携帯に何やら打ち込んでいるから、それが届くのを黙って待てば、やがて携帯が震えてメッセージが表示される。
どうやら彼がチラチラと気にしていたあの鞄の中には、チョコの香りと味がするローションが入っているらしい。
バレンタインなので連載中のは一回お休み。チョコの香りどころか味までチョコな舐めれるローションてのが本当にあるらしい。