親睦会14

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 その後、やっと何故こんなことをするに至ったか話し始めた相手は、間男の姿を重ねていたと言った。
 離婚の原因は奥さんの不倫で、相手の男が自分に似ていたらしい。とは言っても、直接会ったことはなく、集めた証拠写真で見ただけだそうだけれど。
 恋愛結婚だった相手に裏切られたショックが大きくて、浮気に気づいた後は奥さんともたいして会話することなく、調査会社と弁護士とに丸投げで逃げてしまったと言った相手は、あの当時しっかり向き合わずに逃げた事のしわ寄せが、今になってお前に向かった感じになって本当に申し訳ないと頭を下げた。
 しかしその経緯でなぜ自分を抱こうと思ったのかは、やっぱりさっぱりわからない。
「あの、俺が浮気相手に似てたのはわかりましたけど、でも相手の男を抱きたいって思う気持ち、全くわかんないんですけど」
「だよな」
 相手はそう言って苦笑した後、凄く歪んだ発想だけどと前置いて、離婚話が進む中で奥さんにセックスが苦痛だったと言われたこと、離婚後女性不信から一時期一切勃たなくなったこと、ある程度落ち着いた後も女性相手には勃たずそこから男との行為に嵌っていったこと、セックスが苦痛だったと言われたトラウマから行為の技巧ばかり追求してきたことなどをゆっくりと話していった。
「お前が寮に入って来た時、すっかり忘れた気になってた間男を思い出して、なんかヤバイとは思ってた。だからお前とは距離おいてたんだけど、例の件でお前っからわざわざ近寄ってきた上に、男同士にそんな抵抗なさそうだなって思ったら、お前を抱いてみたくなった。かつて俺の嫁だった女を善がらせたんだろう男が、俺の下で善がってると思うと、ざまぁみろって思って少し気分が良かった」
 お前が間男だったわけじゃないのに、それでもそんな錯覚が気持ちよかったと言った相手は、更に、お前が俺との行為をキモチイイってだけで受け入れてるのも、こんな関係を続けてしまった理由の一つになっていたと言う。
「離婚後関係を持った男は全員アナルセックス経験アリの慣れたガチゲイだったから、元々ゲイじゃなくて俺以外の男に抱かれたこと無いお前が、嫌々ながら、それでも快楽に抗えなくて、流されて理不尽に関係を続けてるってのが、下手くその烙印持ちの俺には快感だった。それがお前に与える影響なんて考えたこともなく、ただただ身勝手に楽しく、お前を弄り倒して喘がせて満足してた」
 そこまで言ってから、我に返った様子で、我ながら屑だなと独りごちる。うん、知ってた。
「ホント、徹頭徹尾クズですね。ま、知ってましたけど」
「だろうな。で、更に俺がクズでクソなのは、元嫁のセックスが苦痛だったって言葉をずっと、浮気相手よりセックスが下手くそだったって言われたんだって思い込んでたとこだな」
「違うんですか?」
「今更確かめられないけど、多分。最初に言ったけど、俺らちゃんと恋愛結婚だったんだよ。交際期間中とか新婚だった頃は、気持ちぃセックスも間違いなくしてたはずなの。というかそういう時期があったこと、すっかり忘れてた」
 さっき思い出したと言った相手は、昼間お前と一緒に昼寝しただろうと続ける。
「お前が寝てる顔見たら、浮気相手の男じゃなくて、なぜか元嫁の顔を思い出した。俺とのセックスが苦痛だって思ってただろう頃の顔だよ」
 いったいどんな寝顔を晒していたんだと思ったら、苦しくて切なくてしんどそうな寝顔だったと、あっさり答えが告げられた。
「俺に抱かれてあんなに善がってるお前が、俺とのセックスが苦痛だった頃のあいつと同じ顔で寝てるから、なんか色々ショックだった。ショックと同時に、俺は一体何やってんだろって思った。一気に目が覚めたんだよ。でもなかなかお前にしてきた酷い真似と向き合えなくて逃げてた」
 なるほど。それで夕飯時はあからさまに様子がおかしくて、深酒までしてさっさと寝てしまったのか。
「ホント、あの頃から全く成長してないな、俺」
 相手はそう言いながら深いため息を吐いた。

続きました→

 
 
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親睦会13

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 話を聞いてと言ったのは向こうなのに、部屋に戻って向かい合うように座卓に着いても、相手はすぐには話し出さない。何をどう話せば良いのか迷っているようだった。
 困ったように、あーだのうーだの唸っているのを、ただただ黙って見つめ続ける。見つめながら、別に無理して話さなくたっていいのにと思う。
 だって話を聞いても聞かなくても、この旅行を最後に、自分たちの関係が終わることには変わりがない。きっとお互い意識的に距離を置くけれど、それは結局、同期が越してくる前に戻るのと同じだ。
 何でこんなことをしたのか理由を聞かされて、たとえそれに納得したとしても、今までのことがチャラになるはずがない。体も心も変わってしまった。抱かれる快楽を知ってしまった。想いは生まれてしまった。この人に抱かれる前の自分に戻れるわけじゃない。
 出来れば恨まないでと優しくされたって、気持ちはささくれ立つばかりで、欠片も嬉しくなんてなかった。今後彼が与えてくれる償いも、癒やしも、どうせ彼が期待するような効果なんて生まない。
 手のひら返して優しくするくらいなら、恨まれる覚悟で酷い目に合わせてくれた方が、よっぽど気持ちの踏ん切りが付くのに。それにそんな風に終わっても、多分きっと、本気で相手を恨むことはしないと思う。
 酔い潰した男をレイプするような犯罪者とわかっていて、二度目を受け入れダラダラと関係を持ち続けるようなバカな真似をした自分が悪い。わかっていて、そんな相手に好意を抱いてしまった自分が悪い。
「あの」
 相手が話し出すのを待ちきれなくて、とうとう声を掛けた。相手は悩むように俯けていた頭を慌てて持ち上げる。その目をはっきりと捉えてから、口を開いた。
「俺相手には、もう、勃ちませんか?」
「えっ?」
「話、聞かなくていいです。俺に酷い真似をしたと思ってて、何かしら償いたいと思ってくれてるなら、出来るだけ酷く抱いてくださいよ」
「は? 酷く抱いてって、お前、何、言い出して」
「今更手のひら返して優しくされたって、辛いばっかりなんですよ。優しくされるより、酷くされたい。酷くされて、あなたを好きって気持ちを砕かれたい。これは俺が償いとしてあなたに望むことなので、酷い目に合わされたと恨んだりはしませんから」
 呆気にとられた顔で聞いていた相手の眉間に力がこもっていく。
「俺が恨まなければ、俺に優しくする理由もないでしょ。償い方が俺次第だってなら、酷くしてくれれば、もう、それでいいですから」
 相手は顔を両手で覆うと、目の前の座卓に肘を置き、俯いて大きくため息を吐いた。
「それとも、やっぱりもう、俺には勃ちそうにないですか?」
 なんなら手で弄ったりフェラしてみたり、この際相手を勃たせる努力をしてみてもいいのだけれど、どうせそんな提案をしても嫌がられるだけだろう。そう思うと、口にだすのはさすがに躊躇われた。でも嫌がられたってどうせ最後なのだしと思う気持ちもある。
「ゴメン」
「謝罪とかいらないんで、触らせて下さい。触っても舐めても勃たなかったら、その時は、諦めます」
 謝られて、とっさに口から溢れたのは、どうせ最後だしという気持ちの方だった。けれどすぐに、違うという単語が少し強めに吐き出されてくる。
「その話じゃなくて、あー……その、お前、俺を好きって自覚、あったんだな」
「はぁ、まぁ……」
 何を言い出しているんだと思ったら、気の抜けた声しか出なかった。
「お前、なんだって俺なんか……」
「知りませんよ。むしろそれ、知りたいのは俺の方ですから」
 セックス気持ちいい以外の良いところなんて何もないのにと続けてから、いやそれだけじゃなくてもう一つあったなと思い出す。
「あ、奢ってくれるご飯が美味しいのも良いとこの一つかも?」
「美味いもん食うくらいしか人生楽しいこと残ってねーからな。でもそんなんで好きになるとかないだろ。つーとやっぱセックスだよなぁ」
 はぁああと吐き出される大きなため息には、彼の後悔が色濃く滲んでいた。
 自分の中ではある程度、何もかも自業自得と諦めに似た納得をしているのに、この関係を始めた側の相手が、こんなにも後悔しているだなんて本当に酷いと思う。
「じゃあなんで寮に居るんですか」
「は? 寮?」
 顔を上げた相手は、何を言い出しているんだと言いたげだ。その気持ちはわかるが、それでも気付かないふりで会話を続けてしまう。
「美味しいもの食べるくらいしか楽しみないのに、あの寮に居続ける意味がわからない」
「いやそれは、さんざん世話になったし今更出てくのも面倒で、っつーかなんでお前はそこに引っかかってんだよ」
 そんなの、あのままこの人の後悔を見せられたら、また泣いてしまいそうだったからだ。
「だって気になってたんですよ。しょっちゅう俺に奢ってて、こんな旅館にも慣れた様子のあなたが、金銭的理由で寮に居るわけ無いから、何か他にあそこに居続ける理由があるんだと思って」
「あー、まぁ、そうだな。俺、バツイチで離婚してんだけど、当時は色々あって若干追い詰められててさ、逃げるみたいに寮に入ったんだ。時期的に社宅の方はいっぱいだったし、生活能力皆無というか生きる気力もイマイチだったし、飯の味なんてわかんなくなってたし、お前は知ってて利用してないのか知らないのかわからないけど、金さえ払えば洗濯だとか簡単な部屋の掃除とかもやって貰えるからさ」
「知りませんでした。知ってても、多分使ってませんけど」
「だろうな。俺だって今は平日のクリーニング受け渡しくらいしか頼んでない。でも当時はすごいありがたかったんだよ。仕事以外なんも出来なくなってたから」
 結婚するより離婚するほうが大変という話は聞いたことがあるけれど、いったいどんな理由で、何が原因で、そこまで追い詰められるような離婚をしたんだろう。
 けれど何があったんですかなんて、聞いて良いのかわからない。いやまぁなんとなく、聞いて欲しそうな気配を感じてはいるけれど。
「あっ……」
 聞いて欲しそうと思ったことで、気づいてしまった。
「もしかして、俺が巻き込まれた怨恨ってのが、その離婚、とか?」
「うん、当たり」
「じゃあ、言い渋ってたのも、当時の色々を思い出してたからですか」
「そうだな。実はバツイチでって言うのだけでもこんな時間かかって、ホント、情けない話だけど」
「俺に話して、良いんですか。てかホント、俺は聞かなくても、良いんですけど」
「俺が話したいんだよ。酷く抱いてってのも、出来れば避けたいし」
「出来れば、って、勃つんだ?」
「勃つけど、お前を酷く抱けるかは全く別問題」
 そりゃそうだ。この人はこちらを気持ちよくすることを目的としたセックスを、ずっと続けてきたのだから。

続きました→

 
 
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親睦会12

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 戸惑い、えっ、と小さく零せば、苦笑顔が近づいて目元に唇が落ちる。
「のぼせる前に上がろうか」
 左右交互に、宥めるみたいに何度か唇が触れている間に、下半身では埋められていた指がゆるゆると引き出されていく。
「ぁ、…っぁ、……」
 力のこもらない口元から反射的にこぼれる声は酷く遠くて、自分のものではないみたいだった。
「めっちゃ呆けてんな。大丈夫か?」
 大丈夫なわけが無い。意味がわからないし勝手すぎる。こちらを気持ち良くしない、これが最後のセックスだと言ったのはそっちだろう。胸の中に育った好意ごとメチャクチャにして欲しかったのに。そうして貰えると思ったから、無理矢理にでもわかったと了承したのに。
 中断したのはこんな場所で強引にねじ込むより、風呂から上がって布団の上で、いつもみたいに抱く方がいいって話だろうか。それとも、泣いたりしたから、最後のセックスすらももう、萎えて抱く気になれないって話だろうか。
「するなら、ここで、したい」
 だってそのための部屋付き露天風呂でしょうと、笑う余裕なんてもちろんなかった。馬鹿みたいに声が震えてしまうのは、これが場所を変えたいという話ではなく、抱く気が萎えたという話だと察知しているからに他ならない。
「しないよ」
「裂けても、別に、いいです、けど」
「そういう意味じゃない」
 やはり少し困った様子の、でも優しさの滲む苦笑顔のまま、指先が優しく頬を撫でていく。自分はもう、彼にとってセックスの対象ではないと、そう理解するしかないような顔だと思った。
「あなたは、酷い」
「そうだな。俺が悪い。全部俺のせいで、お前は何も悪くない」
 声を絞り出すと同時に、こらえきれずに浮かび上がった涙を、またしても宥めるみたいな目元への口づけと共に舐め取られていく。けれど今度はそれが呼び水になって、涙は次々浮かんで流れ出す。
「おっつかねぇ」
「あなたのせい」
「だな」
「なんで、今になって、優しい真似するんですか。酷い目に合わせて終わってくれたら、まだ、恨みようもあるのに」
 そうだなと肯定する声は随分と穏やかな響きをしていた。
「お前は俺を恨んで当然のことされてる。でも恨まずにいてくれたらと、都合よく願ってしまう気持ちもある」
 優しくするのはそんな下心と罪悪感からだと言って、相手は自嘲的な笑みを見せる。
「お前は俺の怨恨に巻き込まれただけの可哀想な被害者だ。ってことを、今更、ようやく、自覚したんだ」
「えん、こん?」
「そ。お前は本来無関係なのにな。許せとは言わないし、恨むなとも言えないけど、でも俺が付けた傷をどうにかして癒せたらと思う気持ちは、まぁ、ある。出来る限りの償いはするつもりだけど、どう償ってくかはお前次第かな」
「俺、しだい……」
「そう。だから、お前と話がしたいと思ってる。その涙が落ち着いたら、のぼせる前に風呂から上がって、それから少し、俺の話を聞いてくれないか」
 穏やかで優しい声音は今まで全く知らなかったもので、でもこんな形で知りたくはなかった。

続きました→

 
 
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親睦会11

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 分岐点はいったいどこだったんだろう。なんで関係を終える気になってしまったんだろう。
 記憶を遡って最初に引っかかった違和感は、やはり昼寝のときだった。らしくない柔らかな態度に随分とドキドキさせられたのを覚えている。ただあれは寝ぼけていたからで、本当の意味でらしくないことをしたのは、相手ではなく自分の方だ。
 ずっと受け身でされるがままだったのに、自分から手を伸ばして相手に触れてしまったけれど、きっとあれが最初の躓きだったんだろう。
 目を逸らしていたって、そこには生まれてしまった想いが確かに存在していたし、認めていなくたって、ないものにしたくたって、想いは自分の意志とは無関係に漏れ出てしまう。さっきだってほぼ無意識に媚びて誘う真似をした。しかも笑われるくらいあからさまに。
 どう考えたって、こちらの想いはもう、相手にも伝わっていると思って良さそうだ。そしてそれこそが、相手に関係を終えようと思わせる理由になっているのだと思う。
 寝ている相手に思いつきと衝動で手を出したりしなければ、この想いに気付かれずに済んだのだろうか。いやでもきっと、時間の問題でしかなさそうだ。目を逸らしていたせいで、それほどに大きく育ったことにも気付けずにいたのだ。向き合って、認めて、もっと厳重に押し込め隠すという手段を取るべきだったのかもしれない。もう、遅いけれど。
 相手からすれば、こちらが相手に対して好意を抱くだなんて、とんだ誤算も良いところだろうことはわからなくない。体を気持ち良くはしてくれたけれど、それだけだということはわかりやすく示されていた。そこに相手の好意がないことはちゃんとわかっていた。
 だから自分だって、どうしてと思う気持ちは強い。
 同期が恋する先輩とかなり仲が良いというのを知るまでは、同じ寮に住んでいても殆ど接点なんてなかった。探りを入れるために近づいた最初だって、どちらかといえば相手は素っ気なく、どことなく警戒されている感じさえしたのに。
 思えば愛想が良かったのなんて、同期が寮へと引っ越してくる前後の短い期間だけだった。しかもそれだって、相手の狙いはこちらを油断させて、あの親睦会で酔い潰して抱くためだったと、とっくの昔に気付いている。
 どこから湧いてくるのかもさっぱりわからない好意なんて、胸を痛めて憂鬱にさせるだけのそんなもの、邪魔でしかないのに。こんな気持ちが湧かなければ、きっとダラダラとセフレみたいな関係を続けていけたのに。
 優しくされたいとか、甘えたいとか、恋人になりたいとか、一緒に何処かに出かけたいとか、恋人に可愛がられてふわふわと幸せを振りまくようになった同期が羨ましいとか、自分一人きりの時でさえ、一度だって口に出したことはない。美味しい食事と、体がキモチイイ性欲処理なセックス以外の何かを、欲しがったこともねだったこともない。
 それでもダメなのか。そこに相手へ向かう好意があるというそれだけで、もう、ダメなのか。こちらから触れたがったり、媚びて誘う仕草を見せてはいけないのか。
 想いに応える気はないという態度を貫いてくれて構わないのに。期待なんてしてないのに。それでも今すぐ関係を終えなければならないほど、これはそんなにも厄介な感情なのか。
 グルグルと巡らす思考に、頭の中がグラグラ揺れる気がした。
 宣言通り、気持ちよさの欠片も与えられないまま強引に入り込んだ二本の指が、ただ拡げるためだけにグニグニと腸内をこね回している。ハッ、ハッ、と漏らす自分の息は耳に届いているけれど、まるで他人の物のように現実感がない。
 息苦しいのは強引さもあるけれど、湯の中でというのも大きいだろう。頭の中がグラグラと揺れるのも、半分くらいは湯のせいかもしれない。
 苦しくて、胸が、痛い。
「お前が泣いたらもっと気が晴れるかと思ってたけど、やっぱもう罪悪感しか湧かねぇな」
 諦めと呆れと不快とを混ぜたような声が掛かって、ずっと閉じていた目を押し開く。困ったような、それでいてどこか優しげな苦笑顔で、相手が自分を見つめていた。

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親睦会10

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 すぐに塞がれた唇にホッとする。ゆるく唇を解いて舌先を差し出せば、応じるように柔く食まれて、それだけで体に小さな痺れが走った。
「んっ……」
 甘えた響きの吐息が漏れて、小さく笑われた気配がする。笑われたことで、今のは媚びて誘う行動だったと自覚した。気持ちが良いと素直に喘ぐのとは、少しばかり意味が違う。
 自分から媚び誘う真似など、今までしたことがなかったので恥ずかしい。
 羞恥に身を焼かれて逃げ出したくなるのに、相手の舌が口内に入り込んで既に知られたイイトコロを舐め嬲ってくるから、気持ちよさで羞恥も逃げたい気持ちも塗りつぶしてしまう。だってこんなの今更だ。気持ちよければなんでも良いしどうでもいい。ずっとそういう気持ちで続けてきた関係だろう。
 体の力を極力抜いて、気持ちよさだけを追いかける。与えられるままに享受する。今度は気持ちが良いと知らせるように、熱い吐息を漏らした。
 そんな中、顎を支えるのとは逆の手が、肌を撫で降りて尻肉を割る。無遠慮に差し込まれた指先はすぐさまアナルに辿り着き、シワを伸ばすようにグニグニと蠢き圧を掛けてくる。
 そのままグイグイと強引に侵入を開始する指先に、さすがに驚き慌てたが、顎を掴む手に力が入って、逃さないとばかりに深いキスが続行された。宥める優しさなんてない。どちらかと言うと、気を散らすための快楽を強引に引き出されるような、少し乱暴なキスだった。
「んぅっっ」
 ローションの滑りはないが湯という湿りはあるからか、それとも慣れた行為に指一本程度ならやすやす入ってしまうものなのか、すぐに根本まで押し込まれてしまった。
「ぁ、ぁあ、なん、で……」
 解放された口からこぼれるのは、どうしたって戸惑いだ。指一本とは言え、こうも簡単に受け入れた自分自身の体に、呆然としてもいた。
 強い痛みはないが、いつになく違和感が酷くて、気持ち良さもない。それとも馴染んでくれば、中のイイトコロを明確に刺激されれば、ここからでも十分気持ち良くなれるのだろうか。
「ここ、裂けるような無茶だけはしない。っつったら、俺を信じて、このまま突っ込むの許すか?」
「好きに、すれば」
「お前気持ち良くしないけど、そしたら、お前はもう俺とのセックス止めるんだよな。じゃあこれ、お前との最後のセックスな」
 なんて酷い宣言なんだろう。でも心の何処かに、やっぱりと思う気持ちがある。
 嫌だ止めていつもみたいに気持ちよくしてと頼んでも、この人にはもう、自分相手にそんなセックスをする気はなさそうな気がする。ここで抱かれても、抱かれなくても、どうせこの旅行から帰ったら、自分たちの関係は終わりになる。そしてそれを引き止める手段は、自分にはないのだ。
 このまま抱かれて、今まで気持ちよくして貰った記憶をかき消すみたいに酷くされたら、認めたくなくて目を逸らし続けた想いも、砕けて散ってくれるだろうか。それを期待して、最後に気持ち良くないセックスをしておくのも、悪くないかもしれない。
「わかり、ました」
 関係を終えることを了承したくない本音をねじ伏せ、なんとか肯定を絞り出せば、すぐに噛み付くみたいなキスに襲われた。

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親睦会9

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 隣で人の動く気配に、浅い眠りを彷徨っていた意識はわりとすぐに覚醒した。遠ざかる気配と襖を開け閉めする音の後、酷く静かになったから、トイレにでも行ったのかも知れない。
 起き上がって近くで充電中の携帯を取り上げ時間を確認する。時刻は午前1時を少し過ぎた所だった。
 部屋の露天風呂を満喫した後、テレビを見ながら時間を潰して見たものの、全く起きてくる様子のない相手に、あれだけ飲んでいたのだからそれも仕方がないかと諦めて横になったのは、日付が変わる少し前だ。寝具が変わったせいか、やはり隣で眠る相手が気にかかるのか、布団の中、ずっと上手く寝付けずウトウトと微睡むような時間を過ごしていた。
 トイレに起きたのだとしたら多分すぐに戻ってくるだろうけれど、このまま起きて待っていた方がいいのかを迷う。ヤる気があるならこちらが寝ていたってお構いなしに手を出してくるだろうし、酔いが残ってそんな気になれないなら黙って再度眠るだろう。
 起きて待ってたら、相手にヤる気があろうとなかろうと、取り敢えずで、そんなに抱かれたいのと意地悪く聞いてくるくらいはされそうな気がする。
 正直言うと、このままヤらずに帰るかもしれない可能性が高いことに、なんとも気持ちが落ち着かない。だってこんな豪勢な旅行を奢られる理由が、相手の好きにさせるセックス以外にない。
 酔って出来なかったのは自業自得だろうと知らん振りして、対価ゼロで旅行を奢って貰えてラッキーだと喜んでしまえば良いんだろうか。それが出来ないのは、心の何処かに、ただただ相手に抱かれたい気持ちがあるからじゃないのか。
 上手い食事と温泉で釣ってまでしてやりたい事があったはずなのに、でもあの飲み方を考えたら、途中でなにがしかの理由から、ヤる気が失せたと考えることも出来そうな気がする。それを放置して、気付かなかった振りをして、起こる結果に後悔しないと言い切れる自信がない。
 もちろん何事もなかったみたいに、曖昧で殺伐としながらも気持ち良くセックスするだけの関係が、今後も続いていく可能性はある。でもやっぱり夕飯時の相手の様子はおかしかったし、しれっと何もなかったみたいに関係が続いていくなんて、のん気に信じられはしなかった。
 そうやってぐるぐると思考を巡らせる中、ふと気づけば、トイレに起きたにしては随分と時間が経過していた。
 慌てて立ち上がりトイレへ向かう。体調が悪くて戻ってこれないのかもしれない。
 しかし向かった先に目当ての人物は居なかった。というよりも、トイレを覗くより先に、洗面台の横に設置された脱衣カゴに相手の浴衣が置かれているのを見つけてしまった。
 ホッとするのと同時に脱力し、少し迷った後で自分も着ていた浴衣の帯を解く。裸になって露天風呂へと続くドアを開け、ずかずかと中へ進んでいった。
 目があった相手は驚いた顔をしていたけれど、何も言っては来なかったので、こちらも無言で掛け湯しそのまま浴槽内へ身を滑らせる。部屋付きの風呂とは言えそこそこの広さがあるので、向かい合う位置に腰を据え、それからもう一度相手の顔へはっきりと視線を向けた。
 相手はやはりどこかバツが悪そうな顔をしながら、こちらの様子を窺っている。
「酔いは覚めたんですか?」
「まぁ、ある程度は」
「また1人で勝手に起き出して。風呂に入るなら声かけてってください」
「昼寝ん時とは違うだろ。てかお前、」
 ニヤけるのを失敗したような顔をして言葉を止めたので、なんとなく、続けたかった言葉はわかってしまった。
「一緒に入りたがるの、オカシイですか。というか場所変えてヤろうと思ってって言って、部屋に露天風呂ついてるような宿連れてこられたんで、そういうプレイがしたいのかと思ってたんですけど」
「つまり、今ここにお前が居るってのは、そういうプレイもオッケーって話?」
「美味いタダ飯に温泉まで付けてくれたんで、やりたいなら勝手にどうぞ。ってさっきも言いましたよ」
「勝手にどうぞ、ね」
 ふーんとイマイチ興味なさげな音を立てながらも、対面に座っていた相手の体が湯の中をするりと滑って寄ってくる。あっさり顎を取られて、更にグッと近づく顔に目を閉じた。
 フッとおかしそうな吐息が唇に掛かる。
「お前から一緒に入りたがってんだから、そんなプレイがやりたいのはお前の方だろ?」
 意地の悪い問いかけに、唇が小さく震えて眉を寄せた。
 否定したい気持ちはもちろんあって、けれど、相手がそう言いたくなる態度や言葉を投げた事は自覚している。それに、これを否定したらこれ幸いと、顎にかかった手が外されるだろう予感がする。
「そ、です」
 呟くように肯定を返したが、さすがに相手の反応を見るのは怖くて目は閉じたままだった。

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