別れた男の弟が気になって仕方がない17

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 放しそこねていた手をそっと引き寄せる。ビクリと体を震わせた相手に、極力優しい声音を心掛けながらおいでと誘えば、もぞりと動いて引き寄せる力に従った。
「抱っこしていい?」
 嫌だとは返らなかったけれど、身を固くするのはわかってしまった。本当は嫌なんだろうなと思いながら、抱っこするよと宣言して更に相手を引き寄せる。身を固くしても逆らう様子のない、筋肉の乗った細い体を抱きしめる。宥めるように背を撫でても、相手は何かを警戒するように緊張しっぱなしだ。
 密やかに吐き出される息が、それでも時折、未だ泣いているのを示すように乱れている。
「なぁ、今お前、すごく緊張してるの、自分でもわかってるよな?」
「……はい」
「最初にキスしたときは、お前、こんな反応してなかったよ」
「それ、はっ」
 息が乱れて苦しげに喘ぐから、トントンと背中を叩きながら、無理に喋らなくていいから話を聞いてとお願いした。すぐに頷かれたけれど、乱れた息が多少落ち着くのを待ってから口を開く。
「別にそれがダメって話じゃなくてさ。セックスしてる間に嫌悪感湧いちゃったなら、それはそれでいいんだよ。初めてなのに、好きでも何でもない男に抱かれてるんだから。知識と実体験じゃどうしたって違うでしょ」
 やってみたら色々混乱したり、辛くなったりしても、それは当たり前の事なのだと、なるべく説教臭くならないように気をつけつつ言葉を紡いでいく。また、どこまでも保護者と言われるような事を話している自覚はあった。
「お前がどうしても、何が何でも今すぐ抱かれたいって言うから、今回はお前が俺を拒み始めてるのわかっててもお前の体拓いて突っ込んだけど、お前はセックスしたい抱かれたいって気持ちが強すぎて、自分の気持ちを蔑ろにしすぎだよ。あと、お前の年齢とか経験の無さ考えたらこれも当たり前なんだろうけど、お前すごく頭でっかちなの」
 問いかけというほどでもなかったが、男同士のセックスのやり方とか、そんな知識ばっかり詰め込んだんじゃないのかと言えば、腕の中から、そんなことはと動揺の滲む呟きが小さく返った。辛そうな呼吸はもう殆ど聞こえていないので、涙はだいぶ落ち着いていそうだ。それでもまた軽くポンポンと背を叩きながら、こちらも小さく笑って、それが悪いと言ってるわけじゃないし、知識はないよりあったほうがいいよと返す。
「ただ、知識は飽くまでも知識で、セックスって一人でするものじゃないからさ。セックスなんて十人十色で、基本的には相手と自分の、気持ちや性嗜好を摺り合わせてやってくものだと思ってる。俺にはお前が酷くされて喜ぶ性癖があるように思えなかったし、奥使ってってのも、なんか色々我慢して、すごく無理して言ってるように聞こえたよ」
 レイプされたいのとレイプでもいいのは違う。酷くされたいのと酷くされてもいいだって違う。ただし、明確な理由や拘りはわからなくても、無理して我慢して、それでも奥をもっと激しく突かれて何も考えられなくなるようなセックスを、本気でされたかったのだろうというのはわかっている。
「正直に言えば、お前のそういう無理してるようにみえるとこ、可愛いなって思う。せっかくストップワード決めたのに、あんなに泣かされてもそれ言わない強情なとことかも、けっこう好きだよ。だからお前が望むことはしてあげたかったけど、さすがにお前が望んでるからってだけで続けるには、理由が足りなすぎた」
「りゆう……が、足りない……?」
「そう。俺はお前を知らなすぎる。お前が誰でもいいから、どうしても早急に抱かれたい理由だって、結局聞いてないだろ。なんで善くもないのに奥まで使って欲しいのか、好奇心とかセックスってそういうものでしょって理由以外に何かあったとしても、俺はそれを知らない」
「りゆう……あれば、まだ、してくれるんですか?」
 それとも何を言っても今更で、本当にもう終わりなのかと、おずおずと繰り出される質問に少なからず驚かされた。

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別れた男の弟が気になって仕方がない16

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 驚きながらも咄嗟に、奥では気持ちよくなれないだろと返してしまえば、これ以上気持ちよくなりたくないという身も蓋もない言葉を、やはり苦しげな泣き声に乗せて吐き出してくる。更には、もう何も考えたくないのだとも。
 レイプでいい。苦しくていい。酷くしていい。だから奥を使ってください。と続いた言い分に、何も考えられなくなるくらい、先程のように追い詰めて欲しいという話なのだと理解する。
 なんとも寂しい話だ。
「俺に感じさせられるの、そんなに嫌?」
 驚きついでに腰の動きは止めていたし、先程も会話が成立していたのだから、こちらの言葉は理解できているはずだ。なのにしばらく待っても、嫌かどうかの返事はなかった。
「正直に嫌だって言っていいのに。お前さ、ちょっと変な方向に意地張りすぎてない?」
 否定も肯定もない。口を閉ざしてしまった相手が、何を考えているかなんてわからない。
 大きく息を吐いて、それからゆっくりと、埋めていたものをズルリと全て引き抜いた。
「え……っ?」
 小さく声を上げてから、途中ですっかり崩れるように伏せてしまっていた上体をゆっくりと起こす。相手の困惑と戸惑いははっきりと伝わっていた。
 四つ這いの状態に戻ってからも暫く迷う様子を見せて、それから腰を落としてその場に座り込むと、ようやくこわごわとこちらを振り返る。しかし当然その目はアイマスクで隠されていて、互いの顔を確認することは出来なかった。
 どうするのかと見守る中、相手の手がアイマスクへ伸びていく。迷い続ける相手の動きは鈍く、その手を掴むのは簡単だった。
「まだダメだよ。もう少し待って」
「な、……んで……」
 阻止されるとは思わなかったのか、声が不安げに揺れている。
「お前の泣き顔直視したら、これ以上酷いことは出来なくなるから」
「ぁ……おわり、じゃ……ない?」
 ホッとしたように息を吐くから、やっぱりまだ続けて欲しいのかと思って、また一つため息がこぼれ落ちた。
「終わりだよ」
 告げれば驚いた様子で息を呑んで、それから震える声が嫌だと吐き出してくる。
「どうして? とにかく抱いて欲しいってお前の希望は叶えてやった。間違いなく俺はお前の中に入ったし、お前はもう未経験とはいえない状態にある。なのにこのまま終わったらダメなの?」
「だ、って……まだ……だってそんな、」
 ひぅっと喉が鳴って、また泣かせたようだった。アイマスクを掛けたままにしておいて良かった。泣いている目元が見えなくてさえ、抱きしめてキスをして泣かなくていいとあやしたい衝動がこんなにも押し寄せている。
 そんな衝動をグッと飲み込んで、そっと深呼吸を繰り返した。
「俺が側にいたらずっと辛いままかな。少し一人にしようか」
「ぃヤダっっ」
 反応が返るとは思っていなかったし、返事がなければ部屋を出ていくつもりでいたのに、思いの外強い声が拒否を示す。
「まさかと思うけど、お前、俺の言葉は取り敢えず否定したい、とかでイヤって言ってんじゃないだろうな?」
 ありえそうだと自嘲していたら、もう一度嫌だと零した相手が、その後置いて行かないでと言ったようだった。
「なんだって?」
 何かの聞き間違いかと、思わず聞き返す。
「おね、がい。一人に、しないで。ごめんなさい。おねがい、おいてか、ないで。ごめん、なさい」
 聞き間違いではなかったらしい。あまりに驚いて、呆気にとられたまま相手を見つめてしまえば、視界を塞がれこちらの驚きには気付いていない相手が「ごめんなさい」と「おねがい」を何度も繰り返した。

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別れた男の弟が気になって仕方がない15

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 先ほどと同じように、苦痛を紛らわすように、快感を錯覚させるように、前に回した手で相手のペニスをゆるりと扱く。手で扱くだけなので、挿入で随分と萎えてしまっていたペニスに、かろうじて引っかかったままだったゴムは外してしまった。
 もちろんペニスを弄らず空いている方の手は、相手の肌の上を滑らせている。時折身を屈めて相手の背に唇を押し付け、舐めて吸って軽く噛み付いてやれば、フルリと震えながら幾分甘い声を漏らした。
 苦しさを紛らわすには、多少強い刺激がいいようだ。胸の先を弄って勃たせて抓りあげても、やはり鋭く甘い悲鳴が漏れる。
 それを可愛い声があがっているだとか、少しずつ気持ちが良くなってるねだとか、言葉によっても錯覚を与えていく。苦しくても気持ちがいいのだと、思わせていく。
 嫌がるように首を振ることはしても、なぜかもう、嫌だとも止めてともこぼれては来なかった。泣いている様子もほとんどない。
 だからといって喜び楽しんでいる様子だって欠片もないのに、まさか本当に酷くされるのが善いのかと思ってしまう。こちらが錯覚しそうになる。
 試しに尻でも叩いてやろうかと、チラリと過ぎった思考を振り払うように小さく頭を振った。
 自分の役割は彼を最後まで抱ききることで、初めての体にあまりムチャをさせることなく、彼がどうしてもと望む行為を終えてやることだ。たとえ酷くされてもいいから早く抱かれたいと言っただけで、彼が自ら叩いて酷く扱ってとお願いしてきたわけでなし、彼の性癖をアレコレ探って、無自覚かもしれないものを引き出す必要も、それを満たしてやる必要もない。
「奥の方も馴染んできたから、少し大きく動くよ」
 彼が頷くのは待たなかった。
 深く埋めたまま、小さく揺する程度にしか動かしていなかったモノを、軽く引き抜きまた押し込んでやる。それを繰り返す。
「あ゛あ゛あ゛ぁ゛っっ」
 苦しげな悲鳴があがるが、ナカが引きつるような抵抗はない。
「慣らしても今日すぐに奥で感じさせてはあげられないから、苦しいままでゴメンな。もう終わろうな」
 優しく語りかけても、ホッとする様子は見せなかった。それどころか嫌がるように首を振られて苦笑する。
 つまりこれはもう、こちらの掛ける言葉をほとんど理解していないと思って良さそうだ。こちらの掛ける言葉に、反射で首を振って嫌がっているのかもしれない。
 もしかして、嫌だとも止めてとも零せないほど、好きでもない男に抱かれて辛いとか悲しいとかの感情がわかないほど、泣くことも忘れてしまうほど、深い場所を慣らされ拡げられる行為に追い詰められていたのだろうか。
 徹頭徹尾強情で、むちゃをしたがる困った子で……
「お前は本当に、どこまでも可愛いね」
 ふふっと小さな笑いと一緒に零れ落ちた言葉にも、やはり嫌がる様子で頭を振られてしまう。
「残念ながら、どれだけ嫌がられても変わらないよ。俺の気持ちなんて要らないのわかってるけど、それでもお前が好きだよ。ゴメンね。もう終わりにするから、もう少しだけ、頑張ろうな」
 どうせ言葉の内容なんてほとんど届いていない。動きは少しずつ大きくしていたから、苦しげな悲鳴をあげ続けるのに必死だろう。それでもこちらの声に反応して、ブンブンと首を横に振るその姿が酷く痛ましい。
 さすがに可哀想になってしまって口を閉ざした。
 吐き出される声と息から苦しいばかりだとわかるから、少し大きめに抜いて、浅い場所から前立腺までを狙って擦りあげる。もちろん同時に、ペニスを握って扱いてもやった。しかし、甘い声と息が混ざるようになるまで繰り返せば、今度は嫌だと泣き出すから難しい。
 体の反応からはそこまでの拒絶は感じないけれど、もしかしなくても、相当嫌われてしまったのかもしれない。まぁ嫌われることそのものは想定内ではあるのだけれど。
「困ったね。どうしたら一緒に気持ちよくなれるだろうね?」
「おく、つか……って、ください」
 返事があるなんて思っていなかったのに、泣き声に混ざってそんな言葉が聞こえてきてビックリした。

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別れた男の弟が気になって仕方がない14

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 早く抱いてと返された答えに、小さく息を吐きだした。そう言うだろうと思っていた。
 わかったと返して、ベッド脇に置いてあるサイドテーブの引き出しを開ける。中から取り出したのはアイマスクだ。
 涙を隠すように、さきほどからずっと彼の片腕が目元に乗せられたままだった。
「目は閉じたままでいいから、ちょっと一回腕どけて」
 一瞬の躊躇いの後、それでも素直に腕が外されるのを待って、アイマスクを着けてやる。
「えっ?」
 突然目元を覆った感触に、驚き戸惑うのは当然だろう。
「ただの安眠用アイマスク。これで腕で隠してなくても、俺にお前の泣き顔は見えないし、お前も俺を見なくて済むから、四つ這いにだってなれるよな」
 四つ這いにという単語に納得した様子で、相手は一つ頷いた後で寝返りをうち、促した通りの格好を取った。
「うん、いい子。初めてはこっちのが入れやすいし、キツくても向き合って正常位で抱かれたいなんて可愛いこと、お前は言ってくれそうにないもんな」
 言いながら素早く自身のペニスにコンドームを装着し、尖端をアナルにピタリと押し付けてやる。ピクリと体を震わせた相手は、息を潜めてその続きを待っている。
「十分慣らしてるから、そこまで痛くはないと思うけど、痛かったら我慢してないで痛いって言えよ」
 相手が頷くのを待ってゆっくりと腰を押し進めれば、慣らして拡げたその場所は、柔からに開いて尖端を飲み込んでいった。
「ぁあ、ああぁぁっっ」
「そう。そのまま口開けて、息は出してると楽だよ」
 浅い場所が一番感じるようだから、抵抗があるようならそこをたっぷり擦ってやろうと思っていたのだが、大丈夫そうだったのでそのままゆっくりと指では届かなかった深くまで掘り進む。痛みを訴えたらすぐにでもそれ以上の侵入は止めるつもりだった。けれど、苦しげな声を上げはしても痛いとは言わなかったし、もちろん最初に設定したストップワードもない。
「全部、入ったよ」
 相手の尻タブに自分の腰を押し付けた。相手は荒い息を吐きながら、わかっていると言いたげに何度も頷いている。しゃくりあげる余裕もなさそうなその息遣いからは、泣いているかまではわからなかった。
「さすがに全部は苦しいね。初めてのお前相手に、こんな奥の方まで突き荒らす気はないから安心していいよ」
「待っ、て」
 ゆっくりと腰を引いていけば、苦しげな息の中でそれを止める声がする。
「どうしたの?」
「平気、です」
「なに? もしかして、奥までガンガン突き上げられてみたいとか、そういう話?」
 そうだと言うように頷くから、でも気持ちよくはなれないよと忠告混じりに苦笑した。
「いい、です」
「俺があんまり良くないんだけど。それともレイプ願望無いって思ってたのが勘違いで、本当は酷くされたいの?」
 聞けば長いこと逡巡した後で、はいと肯定を返してくる。本当に困ったバカな子だ。その逡巡が、既に否定を示しているのに。
「でもお前、さっさと終わって欲しいんだよな? 俺に奥まで犯せってなら、さっさと終わるのは無理だよ?」
 痛い痛いと泣かれたらこちらが精神的に萎えてしまうのは目に見えているから、どうしても奥を突いて欲しいと言うなら、それなりに奥を馴染ませ慣らして拡げる必要がある。さっき指が届く範囲を散々慣らして拡げたが、指ではなくペニスを使って同じ要領で慣らしていく。
「それにきっとまたいっぱい泣くよ?」
 お前に泣かれるのは辛いよとまでは言えなかった。嫌がられても、たとえ暴れられても、最後まで抱ききってやるという前提で始めた行為で、泣かれることだって十分想定内だ。こちらが辛いから泣くのを我慢しろなんて、言えるわけがない。
「それでも奥まで使って欲しいの?」
 聞けば頷かれて、諦めに似たため息がこぼれ落ちる。怯えたように身を竦ませてしまうから、別に怒っているわけではないと、掴んだままだった腰を宥めるように優しく撫でた。
「じゃあお願いして。奥まで使ってってはっきり言えたら、してあげる」
「…………奥まで、使って」
 覚悟を見せてと言うつもりで告げれば、暫く待たされた後、躊躇いがちに、それでもはっきりとした声が聞こえてくる。
「良く言えました。じゃあ、奥も慣らして拡げていくよ」
 言いながら、さきほど引き抜いた分をもう一度奥まで押し込んだ。

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お題ありがとうございます(お返事)

本日朝、お題箱に複数のお題を入れてくださった方、どうもありがとうございます。
全部は無理そうですが、書けそうと思えたものにはチャレンジしたいと思っています。
しかし取り掛かれるのが現在連載中の話にエンドを付けて、その後続きをとコメント頂いた話を1本書いた後になるので、ちょっと先になりそうです。
すぐには取り掛かれないので、ひとまずお題はしっかり受け取りましたしチャレンジもさせて貰いますという事だけお返事させて貰いました〜

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない13

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 一度経験した後だからか、先ほどよりは格段に早く、前立腺を弄りながらでも甘い声ばかりが響くようになる。やはり時折ヤダヤダ漏らしてはいるものの、お願いされて中断することはないまま、やがて苦しげでそのくせ酷く甘ったるい吐息とともに、ビクビク震えて吐精した。
 脱力した体から指を引き抜く時だけはゆっくりと、けれどその後は色々放置で、取り敢えず相手の隣に転がり抱きしめてやる。一瞬体に緊張が走るのはわかったが、体に回した腕にぎゅうと力を込めれば、どうやらそれを受け入れたようだった。もしくは、振り払う余裕が精神的にも肉体的にも無いのかもしれない。
 仰向けに転がる相手は、目元に自分の腕を乗せてまだ整わない息を不規則に吐き出している。荒い息遣いの中、時折妙な音が混じっているのはしゃくりあげているせいだ。つまり、泣かせてしまった。
 中断を望まなかったのは彼自身なので、謝るのもおかしい気がして、黙ってそんな彼を抱きしめ続ける。
「そろそろ落ち着いた?」
 静かな呼吸を繰り返すのを待って問いかければ、肯定するように頭が一度上下した。
「じゃあ再開していい? この後もっとしんどい思いすると思うけど、覚悟できてる?」
「ちょっと泣いた、くらいで、イチイチ気にしすぎ、なんですよ」
 不機嫌そうに掠れた声がさっさと続けて下さいと促す。本当に困った子だなと、こぼしそうになるため息をどうにか飲み込んだ。
「嫌がられて興奮するタイプじゃないって言ったろ。後、お前だってレイプ願望なんて無いだろうが」
「今の気持ち的には、いっそレイプでいいから、さっさと終わって欲しいんですけど」
「頼むから、お前はもっと自分を大事にしてくれ。これから先、誰と付き合うことになってもだ」
「煩いな。わかってますよ。だからさっさと終わらせて下さいってば」
 ピリピリとした声が喚くように響いて、確かに好きでもない相手にいくら優しくされたって、苦痛が長引くだけかとも思う。
「はいはい。じゃあもう泣いても休憩してあげないから、好きなだけ泣いてなさい」
 横たえていた体を起こして、放置していたものを簡単に処理してから、慣らし拡げる行為を再開する。先程普通のゴムとの比較ならさせてあげられると言ってあったので、一度吐き出した程度では萎え切らずにいた彼のペニスには、新らしくコンドームを被せてやった。何度もイかせて疲れさせる気もないし、後ろを拡げられる違和感が散る程度の快感は十分に拾えるだろう。
 好きなだけ泣いてなさいと言った通り、相手が苦しげに吐き出す息遣いから泣いている気配を感じ取っても、手も口も止めることなくその場所がペニスを挿れられても傷つかないだろう程度にまで、拡げる事だけに集中する。
「泣いてていいけど、深呼吸して。体、固くなってる。さっさと終わりたいならそこは協力して」
 どうしたって泣いて体が緊張してこわばるせいで、途中そう声を掛けたのだけれど、その後ますます泣かせてしまったようだった。
 優しく甘やかされるのを嫌がるくせに、ただただ行為を成すために事務的に扱われればもっと傷つくのだと、そうされるまで自覚ができないくらい相手はまだ未熟なのだとわかっていて、それを突きつけてしまうのはもしかしてただの意地悪だろうか。自分の未熟さに気付いて欲しいと思うのはこちらの都合で、そんなものは優しさでも何でもなく、結局泣かせているだけだと思うと胸が苦しい。
「強情っ張りのおばかさん、抱くための準備はほぼ終わったよ。このまま泣きながら抱かれるか、泣き止んでからにするか、どっちがいいの?」
 声を掛けてみたものの、聞かなくても答えはきっとわかっている。

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