知り合いと恋人なパラレルワールド2

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 結論から言えば、自分と先輩が恋人として付き合っているらしいパラレル世界があり、そちらの先輩とこちらの先輩がどうやら入れ替わってしまったらしい。
 なぜ入れ替わりなのかと言えば、唯一元の世界と繋がっている先輩の携帯による、向こう世界の自分情報だった。繋がっているとは言っても、現状通話は出来ないらしい。それどころか、向こうの自分とのメール以外、ほぼ全ての機能が使えないガラクタと化している。
 入れ替わり直後に自分を訪れ事が発覚した先輩はともかく、向こうへ飛んでしまった先輩は、それなりにパニックを起こしていたようだ。なぜなら、自宅の鍵が開かない上、携帯が同様に使えないガラクタと化していたからだ。
 即座に警察だとかの発想がなく、繋がらない携帯を手に、自宅前で途方に暮れていてくれたのが幸いした。
 イカレタとしか言いようのないメール内容と、全然繋がらない電話に焦れた向こうの自分が、深夜にもかかわらず先輩の暮らすアパートに押しかけたせいで、こちらの先輩は向こうの自分に保護された。さすがに目の前でやりとりした結果、向こうの自分もこの異常を受け入れたようで、混乱する先輩に事情を説明しつつ自宅へ連れ帰ったようだった。
 その後は奇妙な4人での話し合いとなった。話し合いとは言っても、当然やり取りはメールだけだ。しかも、向こうへ飛んだ先輩の携帯から、自分のアドレス宛にメールを送って貰ったりもしてみたが、それは他のアドレス宛同様、宛先不明の不着エラーが返されるとのことで、こちらの先輩と向こうの自分とだけが繋がっている。
 メールだけでチマチマと現状をやりとりするのは億劫だったが、それも仕方がない。
 結局、いくら話し合ってもわけがわからないこの状態の打開策などなく、暫く様子見ということにはなったが、それに関しても問題は山積みだ。
 向こうへ飛んだ先輩が自分の家に入れないなら、こちらへ来た先輩だって入れないに決まってる。それでも一応、確認のため先輩のアパートまで付き合って、落ち込む先輩を慰めつつ自宅へ引き返す。
 その時点でほぼ朝だった。
 怒涛の夜をこえて、二人共疲れきっている。先輩は流石に授業どころじゃないようで大学には行かないと言うし、自分も今日は午後からだったので、帰宅後ひとまず眠ることにした。
 学生の一人暮らしの部屋に、来客用の布団など存在しない。かと言って、落ち込む先輩にそこらで適当に寝て下さいとも言えず、自分だって自室の床でなど寝たくない。結果、狭いベッドに背中合わせで横になるしかなかった。
「襲わないでくださいよ」
「んな元気ねぇよ。てかそもそもお前は俺の恋人じゃないだろ」
 不機嫌そうな声が背中の向こうから返さえる。
「あ、そこちゃんと区別してくれてるんですね」
「あたり前だ。まぁ、向こうの俺の身がどうなってるかはわかったもんじゃねぇけど」
「向こうの俺って、そんな節操無く男誘うヤツなんですか?」
「まぁかなり積極的ではあったな」
「ビッチな自分とかやだなぁ」
 自分が抱かれる側というのもなんだか納得がいかない。しかも高校時代から、何度もいろんな男に抱かれる人生だったなんてゾッとする。
 先輩に抱いてくれと自分から頼んだなんて笑えない冗談にしか思えないし、それに応じた先輩にも驚きだった。今この背中の向こうにいる男は、自身より頭一つ分もデカイ男なんかに欲情出来るらしい。
「うへぇ」
 自分と先輩とのエッチを妄想しかけて思わず妙な声を漏らしてしまった。
「バカな想像してないでさっさと寝ろよ」
「頭ン中読まないでくださいよ」
「今の流れじゃわかりやすすぎんだろ。未経験のその気もない相手に、手なんか絶対出さねぇから心配すんなよ」
「心配なんてしてませんって。そんなんされたら全力で逃げますし」
「おー、そうしろそうしろ」
 投げやりに応えてから、そろそろ黙れと続けた先輩に、すみませんと返して口と目を閉じる。背中の熱はこの短いやり取りの間に既に馴染んでいて、その熱に誘われるようにして、あっという間に眠りに落ちた。

続きました→

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HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

知り合いと恋人なパラレルワールド1

目次→

 夜も遅い時間、無遠慮に何度もチャイムを鳴らされ、若干イライラとしながら玄関先へ向かう。
「どなたですか?」
『俺だっ』
 何だコイツと思いながら、そっとドアスコープへ顔を寄せてドアの向こうを窺えば、そこに居たのは大学で自分が所属するサークルの先輩だった。
 特に親しいわけではないし、一人暮らしをしているこの家に呼んだこともない。その人がなぜ、半ば怒りを露わにしつつもドアの向こうに立っているのかわからない。
 サークルでの彼を見る限り、連絡もなく押しかけてくるようなタイプではないと思っていたのに。
 それでも相手が先輩となれば無下に追い返すわけにも行かない。
 仕方なくドアを開けば、自分よりも頭ひとつ分ほど背の低い相手は、不機嫌に自分を見上げてくる。
「こんな時間にどうしたんですか?」
「どうしただと?」
「いやあの、なんでそんな不機嫌なのか、さっぱりわからないんですが……」
「はぁあ?」
 こちらの返答は更に相手の怒りに油を注いだ様子で、相手のこめかみがピクピクと震えている。
「まぁいい、取り敢えず上がるぞ」
「え、ちょっ、」
 何勝手に上がろうとしてるんですかと言う言葉を告げる前に、先輩はこちらの体を押しのけて中に入り込んでしまう。
 いったい何が起きているのかわからない。それでも尋常ではない先輩の様子に、自分が何かやらかしたのだということだけは察知して、血の気が失せる思いだった。
「おい、何やってんだ。お前も早く来い」
 狭いキッチンを抜けて部屋の入口で振り向いた先輩が呼んだ。
「あ、は、はいっ」
 慌てて後を追えば、部屋に入った先輩は勝手知ったるとばかりに、さっさと小さなローテーブルの前に腰を下ろしている。視線で座れと促され、仕方なく先輩の対面に腰を下ろせば、先輩は自分のキーケースから鍵を一本取り出した。
「俺に無断で鍵変えたって事は、俺とは別れる、って意味だと思っていいんだな?」
「は?」
「だとしても、一言何かあってもいいんじゃないのか。今日夜に行くって連絡はしたよな。それを締め出すとか、別れの意志を示すにしたって悪意がありすぎだろう。別れたいなら、まずは自分の口でそう言えよ」
「ちょ、ちょっと待って下さい。さっきから何言ってるか、俺にはさっぱりわからないんですけど」
「わからない、だと?」
「ひぃっ」
 腹の底から響くような声は明らかに怒気を孕んでいて、つり上がった眉と鋭い視線が心底怖い。
「俺を揶揄ってるならいい加減にしろよ」
「揶揄ってなんかない、です」
「自分から誘って俺をその気にさせて、それで俺が本気になったらこの仕打だろ。揶揄ってないならなんなんだ。俺を翻弄して楽しいか?」
「いやいやいや。俺が誘うって何をですか。何に本気になったんですか。てかさっき別れるとかどうとか言ってましたけど、そもそも俺らにサークルの先輩後輩以外の関係って何もないですよね。先輩ウチくるの初めてじゃないですか。その鍵なんですか。俺は鍵変えてなんかないですよ」
 先輩が口を挟めない勢いでべらべらと言い募った。だって本当に何を言われているかわからない。
「は? 何とぼけたこと言ってんだ。俺たち半年前から付き合ってただろ。俺は何度もこの部屋に来てるし、この合鍵は一昨日までは確かにこの家の鍵だった」
「ないないないです。なんすかそれ。付き合うって、俺たち男同士じゃないですか」
「お前がそれを言うのかよ」
「言いますよ。そりゃ言いますって。人生初の恋人が男とか勘弁して下さいよ」
「何言ってんだお前。恋人だったかは知らないが、高校時代からいろんな男に抱かれまくってたくせに」
「はあああ? なんすかそれどこ情報ですか。ないですないですありえないっ」
「お前がそう言ったんだろ。そう言って、俺に抱いてくれって迫ったんじゃねーかよ」
「何なんですかその妄想っ!」
 もしかして自分が知らなかっただけで、かなり危ない人だったのだろうか。この人の頭は大丈夫なのかと危ぶむ中、先輩は更に恐ろしいことを口にする。
「妄想じゃねーよ。俺はお前を何度も抱いてる」
「いやいやいや。俺は先輩にも先輩以外の男にも、抱かれた経験なんて一度たりともないですからっ」
「太もも」
「は?」
「太ももに3つ並んだホクロあるだろ。後、へその真下にも」
 確かにある。しかもどちらも下着に隠れるような際どい位置だ。いや、たとえ温泉やら銭湯やらに一緒に行ったとしても、言わなければ気づかないだろう位置にそれらのホクロはある。
「なんで知って……」
「見たからに決まってんだろ」
「いつ、ですか?」
「んなのセックスの時以外ねーだろが。あんな際どい場所のホクロ、それ以外にどう気づけってんだよ」
 口ぶりから、確かに知っているのだろうと思った。思ったがまるで納得行かない。
 そんな中、先輩の携帯がメールの着信を告げて小さく震えた。それを確認する先輩の眉間に深くシワが刻まれていく。
「おい。お前のメールアドレスってこれとは別か?」
 見せられた携帯の画面はアドレス帳で、そこには自分の名前と電話番号とメールアドレスと、ご丁寧に誕生日やら好物やらまでメモされていた。
 なにこれ怖い。
 自分の携帯にはもちろん先輩のアドレスなど登録されていないし、教えた記憶も一切ない。
「おい、どうした?」
「なんで、俺のアドレスが登録されてるんですか?」
「お前と恋人関係だったからだが、正直、ちょっと俺も良くわからない」
「は?」
「今、お前からメールが来た」
「出してませんよ」
「んなの目の前にいりゃわかってる。でも、お前からメールが届いたんだ」
「それ、なんて書いてあったんですか?」
「待ってるから早く来て、だとよ」
「意味わかりません」
「俺にだってわかんねぇよ」
 不可解過ぎる現象に、先輩の怒りの勢いもどうやら削がれたようだった。
「あの、ちょっと話を一度整理してみませんか?」
「あー……そうだな。お互い言い分が違いすぎるみたいだし」
「じゃあ、取り敢えずお茶いれます。お互い少し落ち着きましょう」
「だな。よろしく頼む」
 応じる様子を見せた先輩にひとまず安堵して、隣の小さなキッチンに移動する。
 湯が沸くのを待ちながら、今日は長い夜になりそうだと思った。

続きました→

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HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう

 自分がどちらかと言えば女性よりも、同性である男性を好きになる性癖持ちだということは自覚していたが、同性の恋人を持ったこともなければ、男と体だけの関係を結んだこともない。興味はあったが好奇心よりも不安が大きかったせいだ。
 女性とはできないというわけではないが、それも若さで持て余し気味の性欲のなせるわざだったのか、就職して数年、仕事に慣れ面白く感じるようになるにつれ、とんとそんな気にはなれなくなった。
 自慰で充分と思う気持ちと、年齢的にそれはちょっと寂しいのではと思う気持ちとの間で揺れる。そんな状態だったので、相手が男ならまた違った気持ちが湧くのだろうかと、きっと不安よりも好奇心が若干勝っていたのだろう。
 都内への出張が決まった時、その好奇心が爆発した。それで何をしたかといえば、ゲイ専門の性感マッサージへ、意を決して予約を入れた。
 お金を払いこちらが客としてサービスされる側というのも、口でのサービスも、当然本番行為もないというのが、安心に繋がったというのもあるかもしれない。
 サイトのプロフィールからたまたま目についた同じ年のスタッフを指定し、当日、予約時間より少し早めに店に着けば、そのスタッフが自分を迎えてくれた。
 サイトでは顔にモザイクのかかっていたが、実際に会った瞬間、思わず息を呑んだ。今現在、ほんのりと好意を抱いている自覚がある直属上司に、顔や雰囲気がよく似ていると思った。
 知り合いに凄く似ててと言いながら動揺を滲ませてしまったせいか、急にスタッフの変更は出来ないと、随分と申し訳無さそうに言わせてしまった。キャンセルするかと問われて慌てて首を振る。指名したスタッフが思った以上に好みだったから、なんて理由で帰るはずがない。
 こういった店どころか男との経験皆無というのは予約時に伝えてあったが、再度、通された個室でそれを伝えれば、今日は是非楽しんでリラックスしていって下さいと柔らかに笑われホッとした。
 促されるままシャワーを浴びてから施術用のベッドに横になる。
 似ていると思ったのは顔や雰囲気だけではなく、特に指がすっと綺麗に伸びた手の形がそっくりなのだと気づいていた。この手に今からマッサージを、それも性感を煽る気持ちよさを与えられるのだと考えただけで、恥ずかしいような嬉しいような興奮に襲われる。
 まずは普通のマッサージからで、緊張を解すようにアチコチを揉まれながらの軽い世間話に、緊張やら警戒心やらはあっという間に霧散していた。こんな仕事を選ぶくらいだから、相手の話術は相当だったし、自分も別段人見知りするタイプでもない。
 気づけば気になる上司の事までペラペラと話していて、似ている知り合いがその上司だということも言っていた。
「じゃあ俺、好みドンピシャってことじゃないですか」
 嬉しそうな声が降ってきて、そうだよと返す。
「嬉しいなぁ。あ、でも、そこまで似てるなら、その上司の方の手と思ってくださってもいいですよ?」
「ええっ、さすがにそれは君に失礼でしょ」
 なんてことを言っていたのに、初めて男のツボを知り尽くした同性の手で性感を煽られまくった結果、何度も繰り返す絶頂の中でその上司の名を呼んでしまった。
「ご、ごめん」
「良いって言ったの俺だよ。ほら、気にしないで、もっと気持ちよくなってご覧」
 ハッとして謝ったが丁寧語を捨ててそう返され、オマケとばかりに、上司が自分を呼ぶ時と同じように苗字に君付けで呼ばれて、錯覚が加速する。
 どちらかと言えば自分は性に淡白な方だと思っていたのに、短時間に驚くほど何度も絶頂に導かれてしまった。
 帰り際、また指名しても良いかなと躊躇いがちに問えば、笑顔でぜひと返される。
 これは癖になりそうでヤバイかもしれないと思う気持ちと、週明けに上司の顔がまともに見れるだろうかという不安に揺れながら帰ったけれど、出張も何もないのに次の予約を入れてしまったのはそれから一ヶ月ほどの事だった。

有坂レイへの今夜のお題は『好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう』です。
shindanmaker.com/464476

 
 
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タグ一覧とかツイッタアカウントとか(雑記)

作品にチョロチョロとくっつけているタグですが、ブログにあるサイドバーに使用頻度の高いタグを並べる機能を使うと、使用頻度によって文字の大きさが変わったり、使用頻度の少ないタグが表示されなかったりで、前から一覧ページ作りたいなと思ってたんですよね。
増えすぎると作業が面倒になるので、数が少ない今のうちにと一覧ページを作ってみました。
HOME頁の一番上の欄、はじめに・「ビガぱら」について の隣に並べてあります。

それと、創作用のツイッターアカウントを登録してみました。
これはHOME頁の下の方、雑記の隣に並べてあります。リンクは別タブで開きます。
BGぱらだいスで活動してる時は全部カタカナで「アリサカレイ」だったんですけど、まさかArisakaReiでツイ垢取れるとは思わなかったよ。
というわけで今まではレイとしか表示してなかったしアチコチのサーチやランキングも全部レイで登録してあるんですが、取り敢えずブログのはじめにの所とツイッターは有坂レイになってます。全部カタカナなのはさすがにイマイチだなって思ってた。
サーチやランキングも追々変更していく予定です。
ブログのコメント返信とかはレイのままにしてますが、さすがにここは変えなくてもいいかな。

ツイッターは何を呟く予定とかあんまり考えてないんですが、取り敢えず、診断メーカーで気になった結果をメモ代わりに投下したり、一応ブログの更新お知らせをしてみたりしようかなと思ってます。
ツイッターアカウント取った主な理由が、ツイッターで何かをしたいというより、このアカウントでPixivとかPictBLandとかに登録したいような気がしてるからなんですよね。独立して登録するよりツイッターアカウントで登録のが楽そう。
ピクシブの方はブログからの転載で幾つか作品置いておこうかなくらいで、そっちで別に作品を書く予定は今のところないんですが。
ピクブラは中でお題企画っぽいのやってるみたいだから参加してみたいような気がしてるけどどうだろう?
本当にそんな所に参加する気力があるのか自分でもイマイチわからない。
ピクシブやピクブラへの登録そのものが、また結構先になりそうな気もしてます。
ツイッターアカウントも、取ったほうがいいかなぁ~ってずい分前から思ってたのに随分と放置してたからね。
いざ始めちゃえばあっという間に登録なんて完了なんですけどね。
ただまぁ、今日はこれやってて明日更新用のお話、まだ一文字も書いてない……

 
 
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淫魔に取り憑かれてずっと発情期

 壁に手をつき尻を突き出しながら、熱を持った固い楔に尻穴を穿たれると、心に反して自身の熱も昂ぶっていく。発情しきった体は慣れてしまった行為に明確な反応を示すのに、こんなことは望んでいないと反発する気持ちが抑えきれない。
「ぁっ、んぁっ、やぁあっ」
「こんなぐちゃぐちゃのトロトロにして腰振って誘って、何がやぁあだ」
 背後でフンッと鼻で笑った相手は、容赦なくガツガツと尻穴の中をえぐってくる。多少乱暴に突かれても、たまらない快感が体の中を走り抜けていく。なんてイヤラシイ体だと、惨めな気持ちで泣きそうになった。
「何泣いてんだよ。気持ち良すぎってか」
 耐えられず何度かしゃくり上げれば、下卑た笑いが響いて今日の相手はハズレだなと思う。
「すっげ良さそうだもんなぁ」
 淫乱ケツマンコだなどと揶揄い混じりに告げながら、随分と自分勝手に好き放題に腰を振ってくる相手に、こんな体じゃなければ絶対に感じないのにと悔しさがこみ上げた。
「あっ、あッ、もイくっイッちゃう」
 こんな場合はさっさと終わってしまうに限る。
「ほら、イけよ」
「んっ…んっ……あぁっイッてっ……お願い、一緒にイッてぇ」
「はっ、えっろ。だったらもっとケツ締めな」
 パアンと乾いた音が響いてお尻にジンと痺れる痛みが走った。
「はぁんんっっ」
 なのに口からは甘い響きが迸る。実際、痛みと快感は背中合わせに存在している。
「叩かれても感じんのかよ。まじドMだな。おらもっと感じろよ」
 パァンパァンと続けざまに尻を叩かれて、そのたびにあっアッと甘い息を零しながら、相手の望みに応えるように肛門を締めるよう力を込めた。
「はぁっ、良いぞ。イくっ」
 一段と激しい律動の後、体の奥にドロリと熱が広がっていく。結局こちらの熱は置いてきぼりだが目的は達成だ。
 次回を誘う相手の言葉に適当な相槌を愛想よく振りまきながら、この近辺で相手を漁るのはこれで最後かなと思う。自分本位で下手くそなセックスも嫌だが、何より執着されるのが困る。下手な奴ほど執着傾向にあるから、その点から言ってもコイツは要注意人物だ。
 また別の場所を探すのもそれはそれで面倒だが仕方がない。今日のうちにもう一人くらい探したいところだけれど、次はどこへ行ってみようか。
 じゃあねと名残惜しげな相手に別れを告げてその場を後にする。
「おい、居るんだろ」
 歩きながら携帯でハッテン場と呼ばれる場所を検索しつつ、何もない空間に語りかけた。
『居るよぉ』
 声は頭のなかに響いてくる。
「あんま変なの引っ掛けてくんなよ。もうあそこ使えないぞ」
『なんでぇーそんな気にする事なくない?』
「いやアレは面倒なタイプだろどう見ても。だからもっと紳士的でセックス上手いヤツ連れて来いって」
『叩かれて喜んでたくせにぃ』
「何されたって感じる体にしたのお前だろ。あんなのまったくタイプじゃないから」
『ああいうタイプのがさっくり誘われてくれて楽なんだよねぇ。ナマ中出しにも抵抗薄いし』
「だからそこ手ぇぬくなって言ってんの」
『優しくされたらそれはそれで泣いちゃうくせにぃ』
「煩いな。誰のせいでこんな目にあってると思ってんだ」
『ボクのためってわかってるし感謝もしてるよぉ』
 声の主は、100人分の精子を集めるための任務に、女でも男に抱かれたいゲイでもない人間に取り憑いてしまうような、アホでドジで迷惑極まりない自称淫魔だ。100人の相手に中出しされるまで、この体はずっと発情し続けると言われ、実際抜いても抜いても治らない体の熱に、泣きながら初めて男に抱かれたのは二か月近く前だった。
 中出しされるとしばらくの間は体の熱が治まるけれど、それもせいぜい二、三日程度でしかない。おかげで一切そんな性癖がなかった自分が、嫌々ながらも日々男に抱かれて相手の精子を搾り集めている。
 精子を注がれるために発情している体は、男に何をされても基本気持ちが良いと言うのが楽でもあるし、切なく苦しくもあった。
 そんなこんなで、半月くらいはこの現状を呪って泣き暮らしたけれど、そのあとは開き直って積極的に男を漁っている。さっさと100人斬りを達成して、こんな生活とおさらばしたい。
 相手は自称淫魔がその場で適当に見繕ってくれるが、基本アホでドジなので、オカシナ男を連れてくることも多々あった。こんな自分に取り憑いたくらいなので、特に相手の性癖を見抜く力が低いらしい。
 どうやら自分に取り憑くのと似た方法で相手をその気にさせるようだが、その効力は相手が精を吐き出すまでしか持続しないから、ノンケを引っ掛けてきた時は色々と面倒だった。そういう意味では、事後に次の誘いを掛けてきた今日の男は、自称淫魔的には当たりなんだろう。
 わざわざハッテン場まで出向いているのだから、それくらいは当たり前にこなして欲しいし、出来ればこちらへの気遣いもある、セックスの上手い奴を探して連れて来て欲しい。けれどそんな大当たりは、今のところ片手で足りる程度しか記憶に無い。
『ごめんねぇ』
 大きくため息を吐いたら、申し訳無さそうな声音が頭に響いた。
「謝罪はいいから次行くぞ次。次はもっとマシなの引っ掛けてこいよ」
 本当に、早い所100人に抱かれて、こんな日々をさっさと終わりにしようと思った。

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女装して出歩いたら知り合いにホテルに連れ込まれた

 そいつは友人の友人の友人で、顔くらいは知っているが、たいして話をしたこともない相手だった。そんな相手に街中で声をかけられた時は女装がバレたのだと思って焦ったが、どうやらそうでもないらしい。
 めちゃくちゃ好みのタイプだと言って、躊躇いなく可愛いねと笑ってくるから、なんとなくの好奇心でお茶くらいならしてもいいと返した。
 友人の友人の友人ではあるから、バレた時のリスクは高い。けれど最悪罰ゲームとでも言えば良いと思ったし、女装男にそうと気付かずナンパを仕掛けた相手だって相当の恥辱だろう。
 相手は自分と違って割といつも人の輪の中心に居るようなタイプだけれど、納得の会話術でどんどんと相手の話に引き込まれていく。人を気分よく動かす術にも長けているようで、どう考えたってマズイのに、気づいたらラブホの一室に連れ込まれていた。
 なぜオッケーしてしまったのかイマイチわからない驚きの展開だったが、逆に、こうして女性をホテルに連れ込むのかと感心する気持ちも強い。といっても自分に同じ真似が出来るかといえば、彼女いない歴=年齢の非モテ童貞男の自分には絶対にムリなのだけれど。
 初めて訪れたラブホテルという空間に呆然と魅入っていたら、緊張してるなら先に一緒にお風呂に入ろうかなんて声が掛かって、慌てて首を横にふる。
「じゃあ取り敢えず座る?」
「あの、やっぱり……」
「怖くなっちゃった?」
 帰りたいかと問いつつも、逃さないとでも言いたげに手を取られて握られた。自然と視線はその手へ落ちる。その視界の中、ギュッと相手の手に力がこもった。思いの外強く握られ焦っていると、大丈夫と彼の言葉が続く。
「わかってるよ、大丈夫。俺、男の娘とも経験あるから、心配しないで?」
「……えっ?」
 慌てて顔を上げれば、相手は優しい顔で頷いてみせる。
「えっ……知って……?」
「ん? 君が女装子だってこと? それとも俺達が元々知り合いだってこと?」
 名前を言い当てられて血の気が引いた。
「男の君も良いなとは思ってたんだけど、女装姿も凄くいいよ。可愛いって言ったの嘘じゃないからね? 君がそっちって知れたのめちゃくちゃチャンスだと思って頑張っちゃった。警戒するのもわかるけど、もうちょっと頑張らせてくれない?」
 下手ではないと思うよと言いながら、取られた手を引かれて抱き寄せられる。近づく顔から逃げるように顔を背けて、なんとか口を開いた。
「ま、待って。待って」
「知られてると思わなかった?」
「だって、そんな……そ、そうだ、これ罰ゲームでっ」
 バレたら罰ゲームだった事にしようとしていたのを思い出して咄嗟に口走るものの、あまりにあからさま過ぎて、口に出しながら恥ずかしくなる。相手がおかしそうに吹き出すから、恥ずかしさは更に増した。
「ほんと可愛いな。女装知られたくないなら、他の奴らには言わないよ。2人だけの秘密ね」
 顔を背けたままだったからか、ちゅっと耳元に口付けられて盛大に肩が跳ねてオカシナ声が飛び出てしまった。
「ひゃぅっ」
「良い反応。でもちゃんと唇にもキスしたいなぁ。ね、こっち向いて?」
「や、やだっ」
「俺の事、嫌いじゃないでしょ? だって嫌いだったらこんなとこ付いてこないよね?」
「な、なんでこんなとこ来ちゃったのか、わかんない。ゴメン、ホント、ただの好奇心。てか女装してるけど男好きってわけじゃないし、き、キスも、初めてが男とかマジ勘弁」
「えっ……?」
「ど、どーてー拗らせまくって女装してるけど、俺は、女の子が、好きですっ」
 必死で言い募ったら無言のまま掴まれていた手も腰に回っていた腕もスルリと離れていった。
 相手はよろよろとベッドへ近づくと、そのままボスンとベッドに倒れ込む。
「騙されたー」
「えっ、えっ?」
「ねぇ、本当の本当に、好きなの女の子だけで男はなしなの?」
「今のところは」
「キスもまだの童貞拗らせて女装かぁ……」
「うっ……」
 しみじみ言われて言葉に詰まる。自分で言ってしまったことだし、それを言うなと相手に強いる立場にはなさそうだ。
「俺、結構本気で落としにかかってたんだけど、やっぱ脈なし? 諦めたほうが良い?」
 即答できずに居たら、少しばかり復活した様子で相手が嬉しげに笑う。
「取り敢えずさ、連絡先くらいは交換しない?」
 まずはお友達から始めようという提案に、否を返すことはなかった。

続きました→

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