酔った弟に乗られた話2

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 拙いキスと股間ばかりを撫でさする手に、慣れてなさを感じてなんだか嬉しい。
 過去に恋人がいた様子はなかったから、当然という気もするけど。もしこれで妙に慣れた様子を見せられていたら、きっと焦ったり疑ったりしてしまうから、この予想通りとも言えるぎこちなさに安心していた。
 ただ、安心はするけど興奮が煽られるかというと、そこはやっぱり微妙ではある。もちろん、それを正直に言えるわけではないんだけど。
「あんま、きもちくない?」
「そんなことないけど」
「でも」
「酒のせいだろ。俺も結構飲んでるからだって」
「俺に触られるの、イヤじゃない?」
「嫌だったら触らせてない」
「そか……」
 本当に気持ちいいよと言いながら、ほんのりしょぼくれた弟の頭を優しく撫でる。気持ちがいいのは事実で、ただただ気持ちが良いだけ、って部分を言わないだけだから嘘じゃない。酒のせい、ってのも多分ある程度は事実で嘘じゃない。
 興奮が足りないんだよね、とか言ったところで何が出来るのか。何をされるのか。わからないことに踏み込むより、このままじわじわとした気持ちよさに揺蕩っていたかった。
 でも弟はどうやらそうじゃない。こちらの反応の薄さに明らかに焦れていた。
「舐めても、いい?」
「ん?」
「アニキのこれ、舐めたい」
 手の中のペニスをきゅっと握りながら、熱い視線が許可を求めて見つめてくるから困る。
 マジか、と思う気持ちと、そういうのも込みか、と納得する気持ちが、胸の中で交錯した。
「あ……っ」
 弟が小さな声を漏らす。こちらの股間を握っているのだから、気づくのは当然なんだけど。
 つまり、いいよと言うより先に、反応したのは股間の方だった。弟の大きな口に包まれる想像に、あっさり興奮したせいだ。
「いい? よね?」
「ああ」
 再度許可を求められて素直に頷けば、いそいそと下着ごとボトムスを抜き取られ、顕になった下半身に弟の頭が落ちていく。
「んっ……」
 気持ちの良さに鼻から息が抜けて、弟が微かに笑うのがわかった。はっきりと反応があって嬉しいんだろう。
 やっぱり慣れてはなさそうで、じれったい刺激ではあったけれど、でも間違いなく先程よりも興奮が煽られた。今度はしっかりとペニスに芯が通って勃ち上がっていく。
「勃った」
 ガチガチと嬉しそうに笑われて、満足そうで良かったとは思うものの、いやこれここで放置されんの? と思ってしまうのも仕方がないと思う。口の中でイカセてとまでは言わないが、ちゃんと反応してるんだからもうちょっと続けて欲しかったというか、つまるところ最後は手でもいいけどこっちがイクとこまで頑張って欲しかった。
 というかここで一旦放されるってことは、こっちを好きに弄り回してイカせれば満足。というわけではないらしいってことだ。
「で、このあと、どーすんの?」
 弟の股間はずっとけっこうな膨らみを保っているから、こちらにそれを握らせて、互いに互いの勃起ペニスを扱きあおうとでも言うんだろうか。
 なんて思っていたのに、弟の口からは全く想像もつかない言葉が飛び出てきた。
「んー、……乗る?」
「は?」
「あにきのちんぽ勃ったら、俺のお尻で気持ちよくしてあげたいなって」
「は? え?」
「挿れていいでしょ?」
 兄貴は痛くないからいいよねと言われて、絶対痛くしないってそういう意味かとやっと理解が追いついてくる。
「まじ、か……」
 さすがに驚きすぎて声に出た。
「つかそんなすんなり入るもんじゃないだろ」
「慣らしてきたからダイジョブ。多分」
「おまっ、トイレ長いと思ったら、そんなことしてたわけ!?」
「トイレで中洗ってるし、部屋でローションたっぷりいれてきたから、たぶん、ちゃんと気持ちくできると思う」
 だからいいでしょと言われて言葉に詰まっているうちに、弟もあっさり自身のボトムスを下着ごと脱ぎ去ってしまう。それどころか、素早くこちらの腰を跨いでくる。
 弟の体格で腰をまたがれたら正直そこでもう詰みだった。いやまぁ、マジかと驚く気持ちはあるものの、抵抗する気自体はあまりないので構わないんだけど。
 それに妙に納得している部分もあった。抱きたいのではなく抱かれたい、というのが弟の本音だったなら、あれだけ気持ちをダダ漏れにさせながらも手を出してこなかった事にも頷けてしまうのだ。

続きました→

 
 
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酔った弟に乗られた話1

酔った勢いで兄に乗ってしまった話の兄視点です。兄×弟(騎乗位)。

 トイレと言ってリビングを出ていった弟が戻ってこない。ということに意識が向いたのは、弟が消えてから既に結構な時間が経ってからだった。
 なんとなくで点けっぱなしになっているテレビをぼんやりと見続けてしまったせいだ。
 自分もそれなりに酔っている自覚はある。
 もしかしてトイレで潰れているのだろうか。今日は二人して気分良く飲みまくってしまったから、その可能性は高い。
 様子を見に行ったほうが良さそうだと腰を浮かしかけたその時、リビングのドアが開いて弟が戻ってきた。
「大丈夫か?」
 ちょうど様子を見に行こうと思ってたとこだと告げれば、弟は曖昧に頷いて見せる。やはり相当酔っているのか、どこかぼんやりとしているし顔も赤い。
「大丈夫じゃなさそうだな。簡単な片付けは俺がやっとくから、お前もう、自分の部屋行っていいぞ」
「やだ」
「やだじゃなくて。お前にこれ以上飲ませられないって」
「飲まなくていいよ。けどもっと兄貴と一緒にいたい」
「なんだよ甘ったれモードなの?」
 酔って自制が効いてないのか、ずいぶん素直にもっと一緒にいたいなんて言われたら、どうしたって嬉しい。
 くすっと笑って、じゃあおいでと隣のスペースをペシペシ叩いた。さきほどまでは向かい合って座っていたのだから、どうやら酔って自制が効いてないのはお互い様だ。
 まぁ酒のせいってことでいいかと、嬉しそうな顔でそそくさとやってきて隣に腰を落とす弟を、こちらもニコニコと迎えいれる。
「酒はまじでナシな」
「ん、わかってる」
「お茶か水飲むか? 取ってきてやろうか?」
「いらない。それよりさ」
 じっとこちらを見つめる視線に気づいて振り向けば、熱に浮かされたみたいな、少し潤んだ瞳とかちあった。酒のせいで全体的に赤みを増した顔に潤んだ瞳で見つめられて、ドキリと心臓が跳ねる。
 あ、ヤバいかも。
 頭の片隅でそんなことを考えるも、既にあとの祭りだった。
「おれが欲しいの、兄貴、なんだけど」
 そんな言葉が耳に届くと同時に、体はラグの上に押し倒されていた。
「や、ちょ、欲しいとか言われても……」
 やばいやばいと心臓が跳ねまくって、酔いがいっきに冷めていく。しかし幾分冷静になったところで、この場を逃げ出せるわけじゃない。
 そもそも酔ってなくたって、自分より背も高く体格もいいこの弟に押し倒されたら、その時点で詰みでしかないんだけど。
 いつかこんな日が来るかも、という予想はあったのに、油断しすぎていた。
「兄貴が痛いようなことは絶対しない、から」
 どうしようと焦るこちらに何を思ったのか、弟が泣きそうな顔で見下ろしてくる。その顔に、緊張で固まっていた体から力を抜いた。
 いつかこんな日が来るかも、と思う程度には弟の気持ちは日々ダダ漏れだったのに、酔わなきゃ言い出せない程度には自制できてたわけだし、酔って口に出してしまうくらいには追い詰められても居るんだろう。
 だったら酒のせいってことにして、ちょっとくらいなら応じてしまってもいいんじゃないか。絶対痛くしないって言い切るってことは、尻の穴に突っ込もうとまでは考えてないのだろうし。
「あにき……?」
 力を抜いたのが不思議だったのか、不安げに呼びかけられて、じっと弟の目を見つめ返す。
「ホントだな?」
「う、うん?」
 頷くものの語尾に疑問符が見えてしまったので、再度確認するように言葉を重ねる。
「痛いの、絶対ナシだからな」
「うん!」
 勢いよく頷く弟の顔は嬉しそうに綻んでいて、思わず伸ばした手でその頭をくしゃくしゃっと撫でてしまう。
「大好き」
 ますます嬉しそうに笑った弟から、ほろりと溢れてきた好きには、胸の中が暖かくなる。言われて嬉しく思ってしまうくらいには、自分も、いつかこうなる日を待ち望んでいたのかもしれない。
「俺も好きだよ、お前のこと」
「じゃ、じゃあ、ちゅー、していぃ?」
 緊張気味に聞かれて思わず笑ってしまえば、嬉しげだった顔があっさり曇ってしまうから、ますます笑いながら弟へ向かって両手を伸ばした。
「いーよ」
 言いながら、掴んだ肩を引き寄せるようにして、自分からも顔を寄せていく。

続きました→

 
 
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バレたら終わりと思ってた(目次)

キャラ名ありません。
彼女が出来たつもりでいた(攻め視点)4話+バレたら終わりと思ってた(受け視点)13話の計17話。
社会人×女装大学生。

「彼女が出来たつもりでいた」は電車通勤で一目惚れしたと言ってきた女性と交際してたら、実は以前痴漢から助けたことがある男子大学生だった。という事実に驚きつつも、別れようとは全く思わなかった社会人男性の話。
続編の「バレたら終わりと思ってた」は受け視点で男とバレたあとの初デートがメインの話です。
一応18禁かなとは思うんですが、描写はかなり控えめ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写がある話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

彼女が出来たつもりでいた
1話 久々の彼女
2話 女装だった
3話 あのときの男の子
4話 新しく始めよう
バレたら終わりと思ってた
1話 救世主
2話 男バレ
3話 やっぱり女装で
4話 このあとの予定
5話 普通のホテル
6話 女装のままのが(R-18)
7話 やり方を学ぶ
8話 どこに惚れてるか
9話 男の自分に自身がない
10話 無理はしないで欲しい
11話 崩れたメイク(R-18)
12話 狸寝入りの理由
13話 どうか、覚えていて

 
 
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バレたら終わりと思ってた13(終)

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 先に寝落ちしたからか、目覚めるのも先だった。
 結局同じベッドで眠っていたようだけれど、さすがに寝落ちる直前のように抱きしめられたままではなかったので、相手を起こしてしまわないようにそっとベッドを降りる。けれどトイレを済ませるついでに顔を洗ってバスルームを出たら、相手もベッドの上に身を起こしていた。
「おはよう」
「お、はよう、ございます」
「どうしたの?」
「え?」
 朝の挨拶を交わしただけなのに、いったい何を聞かれているのかわからない。
「いやなんか、ぎこちないっていうか、なんだろ、なにか後ろめたいことでもあるような?」
「そ、んなに……?」
 ちょっとギクッとしてしまうのは、相手が寝てる間に着替えもメイクも済ませてしまいたいと思っていたせいだ。
「あー、俺が気にし過ぎて疑心暗鬼になってる部分もあるかも。というか、なにか気になること抱えてるなら、一緒に解決したい。って気持ちが強すぎるのかも?」
 何も無いならいいんだよ。疑り深くてごめんね。なんて謝られてしまったら、自覚があるだけになんだか申し訳ない。
「あ、や、その」
「やっぱ何か抱えてる?」
「えー……と、その、あなたが寝てる間に、支度を済ませちゃいたかったな、って思ってただけ、です」
「支度……ってメイク?」
「そうです。あと着替えも」
 そっか、と言って黙ってしまった相手は、何かを考え込んでいる。
「え、えと、バスルームでメイクしてくるので、ダイジョブ、です」
 ちょっと狭いけど出来ないことはないだろう。ただ普段以上に時間がかかるかもしれない点と、3点ユニットバスなのでトイレを占拠してしまう点が問題かもしれない。
「なのでトイレ使うなら先にどうぞ」
「興味あるな、それ」
「えっ?」
「俺が見てたらダメな感じ?」
「な、なんで!?」
 会話が噛み合わない返答に疑問符を投げれば、もっと意味がわからない応えが返って困惑する。
「君が俺好みの女の子に変身するところを見ておきたい。っていう単純な興味かな。あと、男の子の君とのデートに慣れたら女装は必要なくなるはずだから、今のうちに堪能しておきたいなっていう気持ち」
「女装デート、やっぱ減らしたほうが嬉しいですか?」
「女の子の君とのデートももちろん楽しいけど、男同士のカップルより男女のカップルっぽく見えたほうが世間的には都合がいい場面が多いこともわかってるけど、女の子の格好で出歩くのが心底楽しいってわけじゃないなら必要ないって思ってる。女装に掛かるお金と時間を、もっと別のことに使ってほしいよ。学業とバイトと俺とのデートだけ、みたいな生活じゃなくて、残りの学生生活をもっと楽しんで欲しいというかさ」
 友達とも遊びに行ってほしいけど週末デートは譲りたくないエゴもある、なんて苦笑されて、ちょっとウルッと泣きかけた。
 この人がいなかったら、あの時助けて貰えなかったら、どのみち大学には通えなくなっていた可能性が高いのに。でも助けてもらえて、好きになって、大学をやめて実家に戻るなんて考えられなくなって、必死に日々を送っていたら少しずつ友だちって言えるような関係が増えて、今は大学に通うのも結構楽しくなっている。
 この人が優先順位不動の1位だから、恋人って立場を維持するために、他の何を犠牲にしたって辛いことなんて何も無いって思ってたけど。でも、学生生活をもっと楽しんで欲しいって言われて泣きそうになるほど嬉しいのは、友人の誘いをバイトやデートで断ってしまうのを惜しむ気持ちが少なからずあるせいなんだろう。
「じゃ、じゃあ、あなたのために目一杯可愛くなるので、見てて欲しい、です」
 どうか、覚えていて欲しい。
「うん。しっかり見とく。心に刻むよ」
 その言葉通り、ずっと後ろに立って鏡に映るメイク過程を真剣な目で見続けてくれた。鏡越しにチラチラと目があって、そのたびにほんのり微笑んでくれるのが、ちょっと恥ずかしくて、嬉しい。
「どう、ですか」
 手にした道具を置いて、鏡の中の相手に問いかける。
「うん。凄く、可愛い」
 こっち向いての言葉に振り向けば、優しいキスが降ってきた。

<終>

リクエストは「男バレ後の初デートに女装で来ちゃう受け」「女装するところを見たがる攻め」「男の子のままデートとイチャイチャエッチ」でした。
男の子のままデートの描写は入れられなかったのですが、次週は攻めが買ってくれた服を着てお家デートが確定しているので、彼らのイチャイチャお家デートをぜひ色々と想像してあげてください。

1ヶ月ほどお休みして、7月29日から「酔った勢いで兄に乗ってしまった話」の乗られちゃってる時の兄視点を書く予定です。これは多分1話かせいぜい数話で終わるはずなので、そこから先は短い話を幾つか書けたらいいなと思ってます。

 
 
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バレたら終わりと思ってた12

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 バスルームから出てきた相手の、もう寝ちゃった? という問いかけを無視したら、相手がベッドの中に潜り込んできて背後からゆるっと抱きしめられる。消えてなくなりたいような気持ちを持て余して、ベッドの壁側に身を寄せるように縮こまっていたのがあだとなった。
「狸寝入りかな。もし本当に寝ちゃってるんだとしても起きてもらうつもりなんだけど、起きてるなら返事して?」
 ビックリして硬直してたし、起きてるのは絶対相手にも伝わったと思っていたけど、やはりそのまま寝かせてはくれないらしい。
「おきて、ます」
「うん。バスルームで何があったのか聞かせてくれる?」
「何があった、って……」
「立って動いたら痛いとこが出てきたとか、気持ち悪くなったとか、そういう体調不良、隠してないよな?」
「だ、ダイジョブ、です」
 様子がおかしいと感じて、まっさきに心配してくれるのはこちらの体調だっていうのは、なんとも彼らしいんだけど。果たして、メイクがドロドロだったから落ち込んでる、なんて言って、相手にこの遣る瀬無さが伝わるんだろうか。
 説明してって言われても、上手く相手に伝えられるとは全く思えなかった。
 そもそも相手はずっと可愛いって言い続けてくれたんだから、メイクだのウィッグだのの崩れを気にしているのは自分だけという可能性も高い。
 ただ、優しい人だから、どこまで本心から可愛いって言ってたのかわからないなと思ってしまうだけで。優しい人だから、ドロドロな顔を笑ったりせに、可愛いって言葉で濁してくれただけかもしれない。
 そんな事を考えて黙り込んでいたら、背後で相手が、ため息になり損ねたみたいな息を小さく吐いた。
「なら、俺に抱かれたの、後悔してる?」
「は? えぇっ、なんで!?」
 驚きすぎて素っ頓狂な声を上げてしまえば、相手が笑う気配のあと、抱きしめる腕にキュッと力がこもる。小さな声が、良かった、って言ったような気がした。
「じゃあなんで寝たふりしてたの?」
「なんで、って……」
「俺としては、シャワーしてさっぱりした後、もう無理眠いってなるまでベッドでゴロゴロイチャイチャして過ごしたかったんだけど」
 シャワー行かせずあのままイチャイチャするべきだったかな、と言った後、でも寝る前はさすがにメイク落としたいだろうしなぁ、などと続けて、どうやら口に出しながら自問自答しているらしい。
「あ、メイク?」
 メイクを落としたいだろう、という部分に体が反応した自覚はあった。でもやっぱりメイクが崩れて落ち込んでる、なんてのは想定外なんだろう。
「まさか、男の子に戻ったから俺に顔見せたくない、とか言わないよね?」
「そういのじゃなくて、多分、もの凄く下らないことで落ち込んでるだけです」
「下らないことなの?」
「その、俺のこと、本当に可愛いって、思ってました?」
「もちろん思ってたよ」
「最後の最後まで?」
「むしろ最後の最後が最高に可愛かったけど」
 即答されて、その言葉に嘘はなさそうだった。
「でも、いっぱい泣いたからメイクなんてドロドロだったし、ウィッグだってズレてたのに?」
 嘘は言われてないって思うのに、でもどうしても信じきれずに聞いてしまう。
「ああ、気にしてたのってそれ?」
「そ、です」
「そんなのちっとも気にならなかった。ってわけじゃないけど、それも含めて可愛かったし、嬉しいなとも思ってたよ」
 気にならなかったわけじゃない、って言われてやっぱりって思ったのに、でも引っかかったのは最後の言葉だった。
「え? 嬉しい?」
「メイク崩れるとかウィッグずれるとか、気にしてられないくらい、俺とのセックスに夢中になってくれてると思ってたからかな」
 初めて貰えるのめちゃくちゃ嬉しいと思ってる、って言ったのを覚えているか聞かれて、もちろん覚えていると返す。
「終わった後のメイクの崩れ見てショック受けるくらい、こういう経験してきてないってことじゃないの。って思えるのは嬉しいよ」
 今この瞬間も、嬉しいって思ってるし、可愛いなとも愛しいなとも思ってる。って言われた後、耳の後ろでチュッと小さなリップ音が弾けた。
「あ、あの、そっち向いても……?」
 相手の顔が見たくなってお願いすれば、もちろんと弾んだ声が返って、抱きしめる腕の力が弱くなる。その腕の中でくるりと身を返せば、優しい笑顔が嬉しそうに迎えてくれた。
「素顔もやっぱり可愛いな。目元まだちょっと赤いけど、痛くない? 冷やさなくて平気?」
「へいき、です」
「なら良かった」
 キスしても? に頷いてそっと目を伏せれば、すすっと顔が寄ってチュッと唇を吸っていく。
「明日、君の服買いに行くのが楽しみだよ。来週、今度は俺のベッドの上で、素のままの君を抱かせてくれる?」
 そんなの、こちらだってもちろんそのつもりでいる。
「俺も、楽しみ、です」
「男の子の姿でも女の子の姿でも、メイクがあってもなくても、そんなの君が好きって気持ちにはあまり関係ないって、きっとわかって貰えるんじゃないかな。少なくとも、そういうセックスが出来たらいいなって、思ってるよ」
 そんなの頑張ってくれなくてもいいんだけどな。と思ってしまうのは、もうわかってるから、という理由が一番ではあるけれど。
「もうメイクしたまましたいとか言わないですから、素のままの俺でも抱いて貰えるってわかれば充分ですよ」
「そうなの?」
「だって次はもう、メイク崩れてないかとか気にしちゃいそうですもん」
「確かにそうか。残念だけどそれは仕方ないよね」
 そこ気にして気持ちいいのに集中して貰えないのは俺も嫌だなと言われて、残念とか言っちゃうくらい、ドロドロに崩れたメイクもズレたウィッグも、この人には有りなんだって思うとなんだかおかしくなって笑ってしまう。
 どうやら本当に、かなり下らないことで落ち込んでいたらしい。可愛いって言ってくれた相手の言葉だけ、信じておけばいいだけだった。
「あなたを好きになって、本当に、良かった」
 言えば、それは俺のセリフだよと返される。
「俺を好きになってくれて、本当に、良かった。性別なんて関係ないなって思えるくらい君を好きになって、君を引き止められて、本当に、良かった」
 何度も繰り返される優しいキスを、目を閉じてうっとりと受け入れているうちに、ゆるやかな眠りに落ちていった。

続きました→

 
 
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バレたら終わりと思ってた11

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 結論から言えば、女装はやっぱり解いておくべきだった。
 女の子の姿の方が手を出しやすいかもとか、顔だけ女の子のがむしろ萎えるかもとか、相手がどう思うかって部分とは全く別にして、メイクなんかしてない方が多分色々マシだった。
 だって汗とか涙で顔はドロドロぐちゃぐちゃになったし、結構しっかり固定出来てたはずのウィッグは、外れはしなかったけどちょっとズレたしボサボサだ。
 だって女の子相手のセックス経験もない童貞だから、セックスがこんなに大変だって知らなかった。
 始める前に、彼が参考にしたというアナルセックスのやり方サイトを一通り読んでおいて本当に良かった。あれを読んでなかったら、途中もっと焦ったと思うし、もっと落ち込んでいたとも思う。
 出すのと挿れるのじゃ大違いで、お尻の穴を慣らして広げるのにあんなに手間と時間がかかるなんて思ってなかったせいだ。これは相手が、痛い思いをさせたくないからって、かなりしつこかったせいも大きい気がするけど。
 足を開いて相手の前に全部晒すってだけでも結構恥ずかしいのに、たっぷりのローションでヌルヌルにされた穴にクチュクチュと音を鳴らしながら何度も相手の指が出入りするのを、真剣な顔で観察される恥ずかしさと言ったらない。
 部屋の明かりはかなり落としてくれたけど、でも見られてるのはわかってたし、気配だけでなく真剣な表情そのものが、時折こちらからも見えていた。
 それが相手の思いやりで、優しさだってわかってても。必要な準備だってわかってても。このあとへの期待よりも、今を耐えるしんどさの方が勝ってしまって、ちょっとくらい痛くてもいいから、さっさと次に進んでほしかった。早く相手と繋がりたかった。
 なのに、もうヤダ早く挿れてって頼んでも聞いてくれなくて、結果、女の子の体だったら良かったのにと悲しくなってしまった。女の子の体なら、もっと簡単に相手を迎え入れられたはずで、こんなに恥ずかしい苦労をしなくて済んだはずだと思わずに居られなかった。
 結構派手に泣いてしまって相手を焦らせたけど、もし女の子の体だって初めてってわかってたらいっぱい時間かけて慣らすから一緒って言われて、初めてを貰えるのが嬉しいって喜んでもくれた。恥ずかしいの耐えて頑張ってくれてるのはわかってるし、愛しくて仕方がないし、むしろ下手でゴメンと謝られたりもした。
 相手もアナルセックスは初めてで、だから上手にリード出来てないし、時間も掛かっちゃうし、辛いの耐えさせて結局無理させてるよね。なんて言われたら、もうちょっとなら耐えられそうって思えてしまう。というよりも、相手も初めてって部分が、自分もちょっと嬉しかったんだと思う。
 だからちゃんと体を繋げられた時にも、今度は良かったって安堵でまた泣いた。
 痛いとか苦しいとかで泣いてるわけじゃないと伝わってたからだろう。相手は焦ったり困ったりした様子は見せず、約束守れて良かったって、嬉しさが滲むような優しい笑顔をくれた。
 そんな笑顔を向けられながら、そういや簡単に諦めない約束をしてたなって思い出したら、更に泣けてしまうのも仕方がないと思う。
 諦めずに続けてくれたから、もうちょっとなら耐えられそうって思わせてくれたから、今、体の中に相手を感じられてるって思ったら、嬉しさとか感謝とか好きだって気持ちが胸の中に溢れて絡み合って、胸の中に収まりきらないそれらが涙になって流れていくみたいだった。
 相手はちゃんとこの体を抱いてイッてくれたし、お尻の中を突かれながらおちんちんを扱かれて、気づけば自分もあっさり吐き出していた。というか最後の方はちょっとわけがわかんないくらい気持ちよくなっちゃって、頭の中が白く爆ぜるみたいだったのを覚えている。
 ちゃんと準備すればお尻で気持ちよくなれる、というのは嘘じゃなかった。
 しかし正直、やってる最中は必死過ぎて、自分がどんな状態なのか考えるような余裕はなかった。メイクした状態で泣くような経験が初めてだったから、イメージしにくかったのもあるかもしれない。更に言うなら、相手からは可愛いって繰り返されていたから、その言葉を信じて安心しきってた。
 大惨事に気づいたのは、疲れてるだろうけど体動くならシャワーをしておいでとバスルームに送り出された直後のことだ。つまり、明かりを絞った部屋から明るいバスルームに移動して、そこにあった鏡と対面した時だ。
 メイクはドロドロだし、ウィッグはズレてボサボサだし、可愛さの欠片もない姿を前にしばらく呆然と立ち尽くした。いつまで経ってもシャワーの水温が聞こえないことに気づいた相手が、心配してドアを叩いてくるまで立ち尽くしたあと、ようやくノロノロとメイクを落としていく。
 ウィッグも外して素の自分に戻ったけれど、散々泣いた目元は赤いままだし、気持ちよくセックスできた喜びの余韻なんか当然吹っ飛んでいて、気落ちした暗い表情はとても相手に見せられる顔じゃないと思った。
 シャワーを浴びれば少しは気持ちが落ち着いたり上向いたりするかなと思ったけれど、全然そんなことはなくて、むしろどんどん気持ちが落ちていく気がする。だから、バスルームを出たあとは無理やり笑顔を作って、交代だと相手をバスルームに押し込んだあと、自分はさっさとベッドに潜り込んでギュッと目を閉じる。
 できれば相手が出てくる前に眠ってしまいたかったし、もし眠れなくても、疲れて眠ってしまったと思わせたかった。

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